慶大は、この週、法政大学と対戦した。優勝に向けて負けられない激闘は、引き分けや雨も絡み、決着したのは水曜日に行われた第4回戦となった。今回の記事では、第1、3回戦の応援席の様子をレポートする。
5月18日(日)慶應義塾大学 6-6 法政大学 (第1回戦)
~試合概要~
試合は2回、慶大先発・渡辺和大(商3・高松商業)が2点先制を許す。3回に林純司(環2・報徳学園)のリーグ戦初本塁打で1点差に迫ったが、5回に渡辺和が中村騎士(営2・東邦)にリーグ戦初となる3点本塁打を献上するなど5点差に。しかし5回以降毎イニング得点を重ね再び1点差とすると、8回に福井直睦(商2・慶應)のリーグ戦初本塁打で同点に追いつくと、9回はエース・外丸東眞(環4・前橋育英)が登板し、2死満塁を背負うもしのいで両者譲らず引き分けとなった。
この日の試合前には、慶大OBの高橋由伸さんによる始球式が行われた。応援席からは「よしのぶ、よしのぶ」という声援が聞かれたほか、高橋さんが所属したプロ野球・巨人のタオル(オレンジ色)を掲げる人もいた。
3回の攻撃前には部員からひとこと。「本日我々應援指導部にある変化がおきた。入部した1年生が応援席の仲間に加わったことである。まさしく本日の応援席はフレッシュである。どんなオレンジよりもフレッシュである。我々のフレッシュさで優勝をもぎ取るぞ」と法大のイメージカラーであるオレンジにかけ、1年生の加入を報告した。
その3回、2死一塁で主砲・常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)が打席に立つと、応援席からは名応援歌である『朱雀』が。最近は試合の終盤に流れることの多かった『朱雀』だが、この日は序盤での演奏となった。常松はこの期待に応え、チャンスを広げるヒット。『朱雀』の威力を再認識させられた。
試合は慶大が前半にリードを奪われるも、6回以降は粘り強く得点を重ねる。そして8回、福井直睦(商2・慶應)が劇的な同点ホームランを放ちついに同点に。得点後の若き血では、吹奏楽団の部員がメイン台に登場。広池浩成(経3・慶應)ら野球部員も壇上に上がり、豪華なメンバーで若き血を歌唱した。
この日はプロ併用日で、手に汗握る一戦は9回引き分けに。試合後、枝廣二葉代表は「ただ勝利あるのみですので、明日明後日と必ず勝って、慶早戦に臨みたいと思います」と観客に呼びかけ、慶大の優勝に望みをつなげた。
【試合後インタビュー】
A.Tさん
Q.引き分けに持ち込んだ。率直な感想は
A.後半の盛り上がり方は良かったですが前半の立ち上がり方は課題があって。応援で盛り上げたというよりはプレーの結果によって流れが生まれたという方が合っていると感じました。そこに対して我々は課題を持つべきかなと感じております。
Q.明日以降に向けて意気込みを
A.授業の関係で人数が少なくなるので、1人1人が自分たちのやれることをいつも以上に、120%150%を出して、各々の役割を全うしたら間違いなく勝てると思うので。いい流れをつなげられるように、全員で頑張っていきたいと思います。
第2回戦は、4-6で慶大の勝利となった。
5月20日(火)慶應義塾大学 ●5-6◯ 法政大学 (第3回戦)
~試合概要~
4点を追う展開となった慶應だが、2回に林純司(環2・報徳学園)の適時二塁打で1点を返すと、5回・6回にも林や小原大和(環3・花巻東)の活躍でそれぞれ2点を加え、試合は5-5の同点に。投げては、田上遼平(商3・慶應湘南藤沢)や入江祥太(環1・石橋)ら新戦力を含む継投策で3回以降は1失点に抑える。しかし9回、勝ち越しの適時打を許し、これが決勝点に。5-6で敗れ、勝負の行方は第4戦へ持ち越された。
平日の昼間、気温30度近い晴天の中で行われた第3戦。限られた人数の中、應援指導部は野球部に負けない“総力戦”を展開した。
5回裏、慶大が1-5と4点を追う中、壇上に上がった部員:S.Kさんは「“チャンス法政”って言うけど、実際は“ピンチ法政”になってることが多いだろ!」と法大応援部の決まり文句を逆手に取り、「この回はチャンスを慶應に持ってくるぞ!」と観客を盛り上げた。
その直後の投手交代の小休止には、枝廣代表が満を持して登壇。「中盤以降に逆転してくれるのが、今季の慶應だ。今こそ本気の応援を見せるときだぞ!」と力強い鼓舞を受けた応援席は、大応援歌『朱雀』で一体感をさらに高めた。人数の少なさを一切感じさせない、圧倒的な迫力だった。
この流れが選手に届いたのか、慶大は5・6回に計4点を返して5-5の同点に追いつく。厳しい暑さの中での応援に対し枝廣代表は、「暑さが大変なんて言っていたら二流。応援って、そういう厳しさもすべてエネルギーに変えるもの」と語り、ペットボトルの水を頭からかぶりながら応援に臨む部員たちの姿が印象的だった。
また、少数精鋭で臨んだこの日、部内の連携も光った。野球サブ:G.Hさんは、「今日は本当に“チーム”を感じた日だった。互いに補い合って自然に動けるようになったことが、また一つチームとしての成長につながった」と語った。
惜しくも9回に勝ち越し点を許し、5-6での悔しい敗戦となったが、應援席から放たれたエネルギーは確かに選手へと届いていた。勝負の行方は、明日の第4戦に委ねられた。
【試合後インタビュー】
代表・枝廣二葉さん
Q.率直な今の感想は?
A.やっぱり甘くないなと感じました。この慶法戦で2連勝して慶早戦に臨み、その先の「日本一を目指す」という目標がある分、少し気持ちが先走ってしまった部分もあったのかなと思います。でも、今年の野球部は試合の後半に追いつくような粘り強さが魅力だと感じているので、応援する側としても、最後の1球まであきらめずに粘り強く声を届けようと思いました。
Q.リードされる中で迎えた5回裏、相手の投手交代の場面で、非常に気持ちのこもった声かけが印象的でしたが、その点についてはいかがですか?
A.今日のように応援の人数が少ない日は、すきま時間の声出しがすごく重要になってくるんです。特に守っている時間帯に、どれだけ一体感のある声を出せるかというのが鍵になります。だからこそ、あの場面では、決まったコールじゃなくて、自分の「塾生注目」の一声で応援席全体をまとめようという意識を持って登壇しました。その点は、うまくできたのかなと感じています。
Q.今後の試合に向けての意気込みをお願いします。
A.慶法戦がタフな戦いになることは分かっていました。だからこそ、いつも通り最後のイニングまで全力で戦い抜きます。そして、必ず勝利を掴んで、万全の形で慶早戦に臨みます!明日も全力で頑張ります!
野球サブ G.Hさん
Q.試合後の率直な感想
A.序盤に少し点差が開いてしまったのは痛かったですが、打撃陣もよく頑張っていたので、2日前や昨日の試合のように、今日もいい流れで得点できるかなと期待していました。ただ、あと一歩、逆転まで持っていけなかったのが悔しくて…。応援席としても、そのもどかしさを強く感じています。
Q.今日は序盤からリードされる展開でしたが、野球サブとしてはどのような点を意識されていましたか?
A.やはり今日は気温も高かったので、応援の中で「上げるところは一気に上げる」というような、瞬発力や爆発力を意識していました。メリハリをつけながら、適切にサインを出して、全体として緩急のある応援を作り上げられたらいいなと考えて構成を組み立てていました。
Q.今後の試合に向けた意気込みをお願いします。
まずは、明日の第4戦に向けてしっかり準備したいと思います。おそらく明日も人員が限られると思うので、今日得られた気づきや経験を明日のメンバーにも一人ひとりに丁寧に伝えていきたいです。選手たちも疲れているからこそ、僕たち応援側がもう一度エネルギーにあふれた応援席をつくなきゃいけない、そう感じています。また、早慶戦では内野席と外野席で応援が分かれる形になるので、応援の範囲がさらに広がります。だからこそ、今回の試合で得たチーム内のコミュニケーションや連携を活かして、離れていても一体感のある応援ができるように、これからの2週間でしっかり準備していきたいと思います。
第4回戦は、9-6で慶大は敗戦した。
法政大学との激闘において、應援指導部員は水曜日まで共に戦った。授業の関係で出席できる部員数が減少していく中、部員は様々な工夫を凝らし、応援席を運営した。次に迎えるのは、華の慶早戦。特別な舞台で輝く應援指導部員の様子が楽しみだ。
(取材:岩切太志、工藤佑太、小野寺叶翔、竹腰環)
(記事:岩切太志、工藤佑太、竹腰環)