2021年以来4年ぶりの勝利を目指すソッカー部。今年は慶大が1部リーグ、早大が2部リーグと所属リーグに差があるだけに絶対に負けられない展開となった。早慶クラシコ直前企画第7弾となる今回は藤平一寿(法4・桐蔭学園)、大下崚太(商4・慶應 /東京ヴェルディユース)、永澤昂大(政4・國學院久我山)の4年生サイドバック3人にインタビューを行った。
ーー他己紹介
大下→藤平:カズ(藤平)は、選手としては「奇想天外」という言葉が当てはまると思います。フットサルの経験があるなど経歴も変わっていますし、型に縛られることなく、誰も思いつかないようなプレーをするのが特徴です。前期リーグ戦の東洋戦では、同サイドからのクロスをニアで合わせるなど、見ていて面白いプレーをする選手だなと思っています
藤平→永澤:僕の運転手です(笑)プレーヤーとしては堅実さが持ち味で、特別足が速いということはありませんが、技術が高かったり、サイドバックとしての守備へのアプローチなどで頭を使ってプレーしていて、一緒に出場するときは逆サイドは永澤に任せられるという安心感があります。個人的に0歳からの仲で、生まれた場所や住んでいたマンションも同じなので、一緒に早慶戦のピッチに立ちたいという思いがあります。
大下:え、そうなの?初めて知った
永澤→大下:僕は小学校6年生の頃にトレセンで出会って、当時はかなり守備の印象が強く、「東京の壁」として君臨していたのですが、今は攻守両面に隙の無いオールラウンダーという印象です。大下が怪我をする前までは自分は試合に出れていませんでしたし、全ての部分でプロレベルに達している選手だという印象です。
ーーお互いの生活面の印象は
大下→藤平:カズは遊び好きだね。
藤平→永澤:昂大(永澤)は彼女がいるんですけど、最近ずっと彼女と会っているので、昔と比べて一緒に遊ぶ機会が減ってしまいました。とはいえ家も近いので、会う機会は多いよね。
永澤:この間も一緒に温泉行ったね。
永澤→大下:メリハリがしっかりしてるよね(笑)ピッチから離れてもトランジション(攻守の切り替え)への意識が高く、チームのムードメイカー的存在です。
ーー今シーズンここまでのチームのパフォーマンスを振り返って
永澤:右肩上がりになってきたという印象ですね。
大下:前提として「うまくいった」とは言えないよね。
永澤:チームとしてやりたいサッカーというのはできなかったし、やりたいサッカーが発揮できなかったとしても勝たなければいけない試合を落としてしまった印象もありました。
藤平:昨シーズンとの違いとしては、健人(塩貝健人:2024年まで慶大ソッカー部所属/現在オランダ1部・NECナイメヘンで活躍)の穴を感じます。彼が理不尽にゴールを奪って、そこから流れを慶大に持ってくるという展開に持ち込むことが出来ましたが、今年はチームとして各スポットで選手がそれぞれ相手を上回らなければいけないという中で、序盤は結果が出せず、徐々に改善していったとはいえ、調子が上がり切らないままリーグ戦は中断期間に入ってしまったという印象です。
大下:怪我の影響で今季はまだ出場機会がありませんが、外からチームを見ていて、昨季からコンスタントにリーグ戦に出場していた選手が少なかった中で、序盤は経験不足を露呈するシーンもありました。ただ、その一方でリーグ戦を通して関東で最も多くの選手が経験を積んだチームになったと思います。その結果が、アミノバイタルカップでの総理大臣杯の出場権獲得という結果に表れたのではないかと考えています。そういう意味では、昂大が言っていたように右肩上がりにはなってきていると思います。

ポジショニングが強みの永澤
ーーサイドバックとしてプレーする上で、意識していることや参考にしている選手は?
藤平:僕はさっき昂大が紹介してくれたように、奇想天外なプレーを特徴としているのですが、自分は「ゴールを取らなければ試合には勝てない」という信念の元にプレーしていて、チームの他のサイドバックの選手たちに比べると攻撃への意識がより強いと思っています。参考にしている選手はダニエウ・アウヴェス(元ブラジル代表/元バルセロナなど)です。
永澤:僕は個の能力があるタイプではないので、周りを活かし、周りを活かされることに重点をおいてプレーしています。その上で自分はアーセナル(イングランド1部)が好きなので、ベン・ホワイト(元イングランド代表/アーセナル)やユリエン・ティンバー(オランダ代表/アーセナル)を参考にしています。
大下:僕はディフェンダーとしての歴が長く、守備に自信があるので、まずサイドを絶対に攻略されないということを意識しつつ、攻撃では味方が優位性を持ってプレーできるようなポジショニングを重視しています。参考にしている選手は居ませんが、好きな選手はセサル・アスピリクエタ(元スペイン代表/元チェルシーなど)です。
ーー慶大のサイドバックに求められる役割はどのようなものか
永澤:ウィングやインサイドハーフの選手をどう活かすかを重視しています。アタッカー陣のクオリティは関東でもレベルが高いと思っているので、自分には彼らがプレーするための時間やスペースを提供する役割が求められていると思っています。
藤平:中町監督は特にウィングをどう活かすかを考えていると思っています。ウィングにボールを到達させるまでに、自分が受けてからウィングに渡すのか、自分が囮のランニングを仕掛けてウィングへのパスコースを作るのか、インサイドハーフを経由するのか、シチュエーションによって最適なプレーを選択できるように心がけています。
大下:去年自分がプレーしていた頃のイメージですが、ビルドアップをディフェンス陣だけで完結できれば中盤から前線までの選手がよりゴールに近い位置でプレーできるので、相手がどのようなプレスをかけてきても、自分のポジショニングで相手のマークのズレを引き起こすことが、慶大のサイドバックに求められている役割だと思っています。
ーー1部に昇格してからサイドバックが攻撃時によりゴールに近いポジションに立つことが求められるようになったという話を聞いた
永澤:去年は前線だけで完結できる試合も多かったですが、今年は相手の守備のレベルも上がり、サイドバックが攻撃に関与しないとゴールが奪えないという印象があったので、自分たちがゴール前に侵入していくようなプレーも増えてきたと思います。
大下:ピッチ外から見ている感触とピッチ内でプレーしている感触は違うけど、大枠として求められている役割が変化したという印象はあまりない気がする。
永澤:2部では相手を簡単に敵陣に押し込める展開が多かったけど、1部では逆に自分たちの陣地に押し込まれる展開も増えていて、自分たちからどうやって敵陣に侵入していくかを考える上で、若干サイドバックの動きが変わったっていう感じかな?

奇想天外なプレーで魅せる藤平
ーー昨年の早慶クラシコでは、大下はスタメン出場、永澤、藤平は直前までAチームに帯同していながらのベンチ外となったが、0-4での敗戦をどう受け止めたか
大下:前期リーグ戦で早稲田と対戦した時は4-1と大勝していたこともあり、チームの誰もがあのような展開になるとは誰も思っていなかったと思います。昨年1年間を通して、あのようなスコアで敗戦した試合は早慶クラシコだけでしたし、上手く言い表せませんが、悔しかったですし、周りからも期待されていた分、申し訳ないという気持ちで一杯でした。
藤平:スタンドからピッチに立っている選手たちに声援を送り続けるしかありませんでした。ピッチ上の雰囲気も伝わってきましたが、僕は自分自身に矢印を向けていました。リーグ戦の試合でベンチメンバーに選ばれる機会は多かったですが、ベンチを温める時間が長く、出場機会を得られていないという状況で、早慶クラシコ前日のメンバー発表で自分の名前が呼ばれなかった時は自分に幻滅しました。また、19年間サッカーをプレーしてきた中で、まだ届かない場所があるということを痛感し、圧倒的な実力を持った選手にならなければと感じました。
永澤:僕は悔しさのあまり、試合を直視することもできないような状況でした。応援席側に居なかったということもありましたが、後半に関してはほとんど試合内容を覚えていません。自分がメンバー入りしていないチームが大敗し、「自分は何をやっているんだろう」と自問自答しましたし、不甲斐なかったです。
ーー今年の早慶クラシコで、慶應のキーマンとなる選手は
大下:立石宗悟(法4・桐蔭学園)じゃない?
藤平、永澤:そうだね。
大下:彼は目立ちたがり屋で、入部当初から早慶クラシコという大舞台で、大観衆の中でゴールを決めたいという意識がとても強かったです。ただ、1年生の頃から出場を続けて居る中で、まだ早慶クラシコではゴールを決められていません。最後の舞台で彼が慶大にとって4年ぶりのゴールを決めてくれると信じています。
ーー意識している早稲田の選手は
藤平:去年の天皇杯予選で本保奏希(スポ4・JFAアカデミー福島U-18)にボコボコにやられてしまったので、借りを返したいです。
永澤:高校の後輩である高橋作和(法3・国学院久我山)は意識せざるを得ないですね。
大下:佐々木奈琉(社学4・帝京長岡)です。去年ずっと対戦していて、とても足の速い選手でついていくのが大変なのですが、今年も対戦したいです。
ーー最後の早慶戦に向けての抱負を
大下:昨年の早慶クラシコの1か月後に前十字(靭帯)を切っていまい、つい先週復帰したばかりで迎える早慶クラシコということで、ずっとリーグ戦に出場していた中で迎えた去年と比べて、今年は全く状況が違います。リハビリ中、苦しい時期があっても「早慶クラシコに出場し、チームを勝利に導く」という目標が自分の心の支えになりましたし、早慶クラシコと総理大臣杯で早稲田に負けた直後の怪我だったので、早稲田に負けたまま慶大ソッカー部を去るわけにはいかないと思っています。まずは試合に出れるよう、万全のコンディションを整えることを一番に考えています。
藤平:僕は高3の時に初めて早慶クラシコを観て、ピッチに立っている大学生が人生を賭けて戦っている姿を観て心を打たれました。自分がその舞台に立てる可能性があることに感謝し、19年間の自分のサッカー人生を支えてくれた両親に万全のプレーを見せたいなと思っています。そして、自分が入学してから一度も早慶クラシコに勝利していないので、最後に早稲田に勝利して「慶應旋風」を巻き起こし、チームの一員として「慶應旋風」に貢献したいと考えています。
永澤:カズと若干被るけど、自分も中2の時に初めて早慶クラシコを観戦して、そこからずっと早慶クラシコという舞台に憧れてサッカーを続けてきて、今年が一番勝てるチャンスがあると思いますし、慶大を勝たせる責任が自分にあると考えています。MVPを狙っていますし、サイドバックの自分がポロっと得点を奪ってしまうビジョンも描けています(笑)早慶クラシコという大舞台で、今まで自分を支えてきてくれた全ての人に感謝の気持ちを表現できればいいな、と思っています。

大下の電撃復帰に期待したい
ーー本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました!
一同:ありがとうございました!
(取材:髙木謙)