後期関東リーグ初戦となる今節は、アミノバイタルカップで劇的勝利を収めた明治大学をホームに迎えての一戦となった。最下位からの巻き返しに向けて是が非でも勝ち点3が欲しい慶大は、前期から一貫して用いてきた4-1-4-1から4-2-1-3へシステムを変更。前半はこのシステム変更が功を奏し攻め込む場面を多く作るが、フィニッシュの精度を欠いて決めきれない。また相手の守備も対応してきたため膠着状態となり、0-0で終了。後半開始直後の49分、慶大は自陣深い位置でボールを失い、そのままシュートを打たれ先制点を許す。慶大はその後細かいパスワークから反撃を試みるも、相手の堅い守備を崩すことはできない。一方ディフェンスラインは相手の猛攻を集中した守備で防ぎ追加点を許さず、再び膠着状態になる。しかし89分、左サイドの崩しから辻野悠河(商4・暁星国際)の値千金の同点ゴールが生まれ、土壇場で試合を振り出しに戻す。試合はこのまま1-1で終了し、後期初戦は勝ち点1を分け合う形となった。
2025/9/20(土)18:00キックオフ@慶應義塾大学下田グラウンド
【スコア】
慶應義塾大学1-1明治大学
【得点者】
49分 明大 真鍋隼虎(高足善)
89分 慶大 辻野悠河(村井亮友)
【慶大出場選手】 | |
ポジション | 背番号 選手名(学部学年・出身高校) |
GK | 1 洪潤太(政4・東京朝鮮中高級学校/三菱養和SCユース) |
DF | 6 永澤昂大(政4・国学院久我山) |
| 2 大下崚太(商4・慶應 /東京ヴェルディユース) |
| → 77分 27 霜田晟那(理1・都立八王子東/FC町田ゼルビアユース) |
| 4 斎藤大雅(文3・立命館宇治/京都サンガF.C.U-18) |
| 3 三浦成貴(商3・浜松開誠館) |
MF | 8 田中雄大(商4・成城学園/三菱養和SCユース) |
| 10 角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース) |
| 13 藤井漱介(商3・静岡学園) |
| → 54分 17 辻野悠河(商4・暁星国際) |
FW | 7 齋藤真之介(経4・桜修館/FC町田ゼルビアユース) |
| → 81分 14 村井亮友(桐生/ザスパクサツ群馬 U-18) |
| 11 立石宗悟 (法4・桐蔭学園) |
| 23 三浦大其(経2・慶應) |
| →77分 梅野真生(総2・成蹊高/横河武蔵野FC U-18) |
1部残留を果たすべく勝利が求められる慶大は、前期リーグ戦から総理大臣杯まで採用していた4-1-4-1から、4-2-1-3にシステムを変更。今季リーグ戦未出場のテクニシャン・藤井漱介(商3・静岡学園)をトップ下で起用するという、大胆な作戦に打って出る。

大胆な起用で打倒・明治へ
4-4-2のシステムを採用し、ハイリスクハイリターンなマンツーマンプレスを決行する明大に対し、慶大はGK洪潤太(政4・東京朝鮮中高級学校 /三菱養和SCユース)をビルドアップに加え、数的優位を作ってボールを握り、明大ダブルボランチの背後に陣取ったトップ下の藤井がビルドアップの出口役を務め、CF立石宗悟(法4・桐蔭学園)へのロングボールのこぼれ球の回収も担うことで敵陣への侵入経路を確保。また、守備でも藤井と立石が横並びになり、明大のGK、CBからボランチへのパスコースを塞ぐことで、クリーンな前進を阻止することに成功。システム変更が的中した慶大がペースを握る。

果敢な攻撃でゴールを狙う
そんな慶大に訪れた最初のビッグチャンスは10分。ボランチで起用されたエース・角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース) が中盤でボールを奪うと、角田からパスを受け、右サイドを駆け上がった右ウィング三浦大其(経2・慶應)が切れ味抜群のドリブルでペナルティエリア内に侵入。放ったシュートはブロックされるが、セカンドボールを拾って二次攻撃を展開すると、右CB斎藤大雅(文3・立命館宇治/京都サンガF.C.Uー18)がアーリークロスを供給。相手GKがキャッチし損ねたボールに立石が詰めるが、これは明大CBにゴールライン目前でクリアされてしまう。

クロスを上げた斎藤
更に19分、自陣左サイドで相手のハイプレスを引き込んだ慶大は、左SB永澤昂大(政4・國學院久我山)と角田のワンツーでプレスを剥がすと、ボールを運んだ永澤が、相手の背後に抜け出した左ウィング齋藤真之介(経4・桜修館/FC町田ゼルビアユース)にスルーパスを供給。スピードに乗った齋藤真が利き足とは逆の左足でクロスを上げたが、ニアポスト付近に突っ込んだ立石の頭にはわずかに合わず、これも先制点とはならない。

黒子のようなプレーを見せた永澤
続く21分、右サイド大外から三浦大其のカットインで明大の守備組織を崩すと、大下を経由して齋藤真にサイドチェンジ。齋藤真が相手に正対し、ディフェンスラインを押し下げると、手前に出来たスペースでフリーになった角田がファーサイドへクロスを上げるが、これも精度を欠きゴールキックとなる。何度もゴールに迫りながらフィニッシュの局面で仕留めきれず、先制点を奪えない時間が続いた慶大。一方、徐々に慶大の秘策に適応してきた明大は、無理にボールを奪いに行かず、ダブルボランチのどちらかが常に藤井を監視する形にシフト。慶大はビルドアップから加速してゴールに迫る機会が減っていく。

エース・角田を中心に攻撃を組み立てる
すると25分、明大に与えたセットプレーからの二次攻撃からペナルティーエリア内に上がったクロスを上手く合わされ、総理大臣杯での失点がよぎるピンチを迎える。しかし、ここは守護神・洪が上手くボールの正面に入ってキャッチし、窮地を脱する。34分にもフリーキックからファーサイドでフリーになった明大の選手にシュートを浴びるが、これも枠を外れ、両チーム得点がないまま時間が過ぎる。

この日3番を背負った三浦成
明大が守備の重心を下げ、中央のエリアを固めたことで、ウィングの齋藤真、三浦大がサイドライン付近でボールを持つ機会が増えたが、ドリブル突破を長所とする慶大両ウィングは、明大サイドバックとサイドハーフの2枚に対応され、なかなか持ち味を発揮できず、ゴール付近に侵入できない。一方で、明大のロングカウンターに繋がるような致命的なボールロストは犯さず、ボールを失っても素早くボール回収/帰陣に移行したことで、自陣ゴール前に迫られても枚数が足りている状況を作り出し、試合は停滞する。

立石らがゴールを狙うも得点は奪えず
そんな中、前半最後の決定機は慶大に訪れる。37分、左サイドで齋藤真、藤井、角田、永澤、そして左CB大下崚太(商4・慶應/東京ヴェルディユース)が関わる細かいパスワークで明大ディフェンスを翻弄すると、最後は角田がエリア内にクロスを入れる。このボールを立石がキープし、三浦大がシュートを放つがこれも明大ディフェンスのブロックに阻まれ、枠を捉えられない。

CBで出場の大下
序盤はシステム変更で得られたメリットを最大限に生かし、決定機を量産した慶大だったが、明大が守備の構造を変化させると、試合は膠着。慶大は残留に向けて、明大は優勝争いに食らいつくため、敗北が許されない状況を踏まえ、中盤以降は締まった展開となった。後半はピッチに立つ選手だけでなく、両チームのベンチから繰り出される次の一手にも注目が集まる。

スタメン起用に応えた藤井
後半開始直後の49分、慶大はゴールキックの流れから左サイドの深い位置でボールを失い、ペナルティーエリア内で鋭いシュートを決められて先制を許す。反撃に転じたい慶大は54分、トップ下の藤井に代えて辻野悠河(商4・暁星国際)を投入。59分には右サイドの軽快なパスワークからペナルティーエリア内で辻野がワンタッチパスで立石の裏を狙うも、相手ディフェンダーの必死のスライディングタックルでシュートには持ち込めない。その後相手はディフェンスラインからの質の高いロングボールを中心に攻撃を仕掛けるも、大下を中心とする慶大ディフェンスラインが集中した守備を見せ追加点を許さない。

霜田がリーグ戦初出場
早い時間で同点に追いつきたい慶大は、ビルドアップ時ボランチの田中がセンターバックの間に入り、両サイドバックが中央に絞ることによって中央の人数を増やし、中央の短いパス交換からの突破を試みる場面を増やしていく。74分にはハーフウェイライン付近でパスカットした齋藤真からボランチの角田を経由してボールを受けた三浦大が、ドリブル突破から左足を振り抜くも相手ブロックに阻まれてしまう。このプレーの後三浦大、大下が負傷のため交代となり、左サイドバックの永澤を左センターバックへ移し、この試合が関東リーグデビュー戦となる霜田晟那(理1・都立八王子東/FC町田ゼルビアユース)を左サイドバック、梅野真生(総2・成蹊/横河武蔵野FCU-18)を三浦大のいた右ウィングへと投入した。

村井を投入し再起を図る
78分、左サイドで角田を中心にテンポのいいパスワークで相手守備を躱し、齋藤真のパスから抜け出した霜田が中央へグラウンダーのクロスを送る。このクロスへの相手のクリアが甘くなり、絶好の位置でボールを拾った角田が右足を振り抜くも、僅かにゴール右へと外れ、決定機を逃す。81分には齋藤真に代えて村井亮友(商4・桐生/ザスパクサツ群馬U-18)を投入し、規定の交代回数を使い切った。

途中出場で見事ゴールを決めた辻野
その後は相手の高さを活かしたコーナーキックや激しいプレッシャーに耐える展開が続くも89分、ハーフウェイライン付近でフリーになった角田からセンターバックとサイドバックの間を通すスルーパスを受けた村井が中央へ折り返し、これを辻野が冷静に左隅に決めて土壇場で同点に追いつく。この得点で勢いに乗った慶大は攻撃の手を緩めず、90+4分にはカウンターの流れから村井が左足を振り抜くが、相手キーパーの好セーブにより勝ち越し点を奪えない。終了間際には相手のコーナーキックやロングスローからの猛攻を受けるも、ゴールキーパーの洪が安定した対応を見せゴールを許さず、1-1で試合終了。後期リーグ戦初戦となった今節だが、アミノバイタルカップや早慶戦、総理大臣杯で得た収穫や反省を基にチームとしてより強度の高いプレーを見せていた。現状は最下位であるが、ここからの巻き返しに期待したい。
(記事:甲大吾、髙木謙 取材:愛宕百華、小野寺叶翔、柄澤晃希、甲大吾、髙木謙)
◇辻野悠河(商4・暁星国際)
ーー今日の試合振り返って一言お願いします
自分たちが優勝目指す上で後期1試合も落とせない中で、絶対に勝ち点3が欲しかった試合だったかなと思います。
ーー後半からの投入となりましたがどのような気持ちで臨みましたか
今週の練習で途中から入ることになるかなと予想していたので、スコアも自分が入る前に失点してしまっていたので、いかに自分が得点を取るかということを考えてピッチに入りました。
ーーゴールシーンを振り返って
惠風がボール持った時に亮友が走り出していたのが見えて、惠風ならそこにボールを出すと絶対思って、自分は亮友にボールが入った後に宗悟が突っ込んで相手のラインが下がった後のマイナスのところが一番自分の得意なゾーンなのでそこにしっかり入ることだけ意識して動いていました。
-ー最後に次節に向けて一言お願いします
まず今日の結果をネガティブに捉えるのではなくて、勝ち点を奪えたというところでポジティブに捉えてチームの雰囲気も大臣杯の敗戦からうまく立て直していると思うので、この勢いを落とすことなく来週の試合で勝ち点3を奪えるようにチームで頑張っていきたいなと思います。
◇村井亮友(商4・桐生/ザスパクサツ群馬U−18)
ーー終了間際に追い付いて、引き分けに持ち込みました。今の率直な気持ちをお聞かせください。
今日、後期開幕ってことで、入りとしてはすごく良く入れたんですけど、結果的に先制されてしまって、ほんとうに追い付けて良かったっていう率直な気持ちです。
ーー0対1と1点ビハインドの状況で81分から出場されました。どういった意識でゲームに入りましたか
本当に追い付く以外ないと思うんで、前に前に、ゴールにどれだけ行けるかっていうところを意識して入りました。
ーーアシストの場面を振り返って
あの場面は惠風(=角田、商4・慶應/横浜F・マリノスユース)からすごいいいボールが来て、合わせるだけだったんですけど、普段からああいうところ狙って、意識してるところが試合でも出たので良かったシーンかなって思います。
ーー出場機会にあまり恵まれない中で、得点に絡む活躍を見せました。今後に向けご自身としても大きなアシストとなったのではないでしょうか
そうですね。前期は自分の身体も思うように行かなくて、すごい葛藤してたんですけど、総理大臣杯、早慶定期戦とかそういった試合を踏まえて結構コンディションも上がってきてるので、後期はよりチームに貢献出来ればなと思ってます。
ーーチームとして、この「勝ち点1」をどのように捉えていますか
今日の勝ち点1は、勝ち点1を取ったというよりは勝ち点2を失ったというのが大きいと思ってます。
ーー次節に向け、意気込みをお願いします
次節の中央大学戦は、ほぼ勝ち点が変わらない中(第12節終了時点で慶大勝ち点10、中大勝ち点13)で、上に上がるために落とせない一戦なので、絶対勝つっていうところを踏まえて、自分もスタートで出れるようにこの1週間準備してやって行きたいと思ってます。
◇中町公祐監督
――今日の試合を振り返って
勝てた試合でもあり、負ける可能性もあった試合でした。
――普段と違う4-2-3-1のシステムを採用。「明治対策」のようなゲームプランだったのか
明治対策という部分では、明治さんはロングボールを使って前進するパターンが多いので、その事を踏まえてこのフォーメーションを採用しました。そして、後期リーグを戦う上で、色んなシチュエーションを考慮して、オプションとしてこの形も使えるようになっておきたいという部分もありました。
――前半の序盤は主導権を握ったが、徐々にプレス回避の糸口を掴めなくなった前半を踏まえて、ハーフタイムにはどんな指示を
「前半の途中から悪くなった」という感触はあまりありませんでした。(明大が慶大のビルドアップを警戒して重心を下げる中で)あの試合運びを続けていれば、どこかで明治さんも前から攻撃的な姿勢を見せなくてはならなくなるので、ハーフタイムには「このままコントロールし続けよう」という話をしました。ただ、後半の立ち上がりに失点を許してしまい、ゲームプランが壊れてしまったので、この部分は反省したいです。一方で、自分たちのサッカーを実現するという部分に加え、前提として「勝つための意欲をどう表現できるか」ということを選手たちには求めていたので、その部分については(ドローに持ち込んだことで)最低限こなしてくれたと思いますし、この試合をベースにしていきたいと思います。
――次節・中央大学戦に向けて
我々はまだ順位表の1番下に居るので、次こそは勝ち点3を獲得できるよう頑張っていきたいと思います。