今季ここまで12試合を戦い、勝ち点31で首位、第3節から10連勝という最高の形でリーグ戦を折り返した慶大ソッカー部女子。およそ2ヶ月のリーグ戦中断期間を経て、再開初戦となる国際武道大学戦に臨んだ。前半は相手の堅いブロックに苦しみ、得点を挙げることは出来ずスコアレスで折り返す。保持しながらも決め切れない嫌な流れかと思われたが、後半開始早々の49分、こぼれ球に反応した野口初奈(環3・十文字)が右足を振り抜くと、これがゴール右上の隅に決まり、欲しかった先制点を挙げる。さらに、直後の52分、野口が直接FKを決め、2−0と点差を拡げる。60分に1点を返されたものの、終了間際の90分、山田葵(総1・聖和学園)が相手キーパーとの1対1を冷静に沈め、ダメ押し点。そのままリードを守り切り、3−1で勝利した。これで連勝は11に伸び、首位をキープすることに成功。リーグ戦再開初戦は、1部昇格に向け大きな勝ち点3を獲得する結果となった。
2025/9/28(日)15:00キックオフ@国際武道大学サッカー場
【スコア】
慶應義塾大学3ー1国際武道大学
【慶大得点者】
49分 野口初奈(米口和花)
52分 野口初奈
90分 山田葵(野村亜未)
【慶大出場選手】 | |
ポジション | 背番号 選手名(学部学年・出身高校) |
GK | 12 中村美桜(理4・慶應湘南藤沢) |
DF | 11 森原日胡(総1・作陽学園) |
→73分 13 山田葵(総1・聖和学園) | |
| 4 米口和花(総2・十文字) |
| 5 小熊藤子(環4・山脇学園/スフィーダ世田谷ユース、RB大宮アルディージャWOMEN内定) |
| 15 宮嶋ひかり(環2・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18) |
| 23 坂口芹(総4・仙台大学附明成) |
MF | 8 佐藤凜(総3・常盤木学園) |
→HT 18 岩田理子(総2・十文字) | |
| 2 竹内あゆみ(看3・日ノ本学園) |
| → 90+6分 6 守部葵(環4・十文字) |
10 野口初奈(環3・十文字) | |
7 髙松芽衣(環2・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18) | |
| → 84分 24 田中紗莉(総2・県立市ヶ尾/日体大SMG横浜U18) |
FW | 9 野村亜未 (総3・十文字) |
関東大学女子サッカーリーグ戦2部を戦うソッカー部女子。開幕からの2試合は勝利することが出来なかったものの、第3節の日本女子体育大学戦で初勝利を挙げると、その後も勢いに乗り10連勝を達成して首位に立ち、最高の形でリーグ戦中断期間に入った。
8月17日に開催された早慶定期戦では、1部の早稲田大学相手に0ー2で惜しくも敗れたが、慶大らしい「賢く泥臭く、虜にさせる」プレーも随所に見られた。一方で、黄大城監督は「もっとクオリティを上げていかなければならないと感じました」、小熊藤子(環4・山脇学園/スフィーダ世田谷ユース、RB大宮アルディージャWOMEN内定)主将は「普段の生活から質を変えていかなくてはいけないことが分かりました」と語るなど、課題を見つめ直し、普段の練習に加えて遠征でもハードなトレーニングを重ねてきた。
約2ヶ月の中断期間を経て、チームがどのような成長を遂げたのか。注目のリーグ再開初戦は、国際武道大学とのアウェイマッチに臨んだ。
慶大はいつも通り、3−4−2−1のシステム。WBが高い位置を取り、中盤の流動的な崩しから得点機を伺う。一方、国際武道大は5−2−3のシステムを採用。慶大のWBにマークを付け、ガッチリと組み合う形に。前からのプレスには行かず、堅いブロックを敷いて守り、手数を掛けないカウンターやセットプレーのワンチャンスを狙う。
慶大のファーストチャンスは8分、右サイドの高い位置でボールを受けた右WB・森原日胡(総1・作陽学園)がカットインから左足でクロスを上げると、中に入っていた左WB・坂口芹(総4・仙台大学附明成)がゴールエリア付近でヘディングシュートを放つ。しかし、これはバーを越え、先制点とはならない。さらに9分、坂口が相手DFラインの裏にアーリークロスを供給し、攻撃時はトップ下に入る野口が抜群のタイミングで飛び出して合わせるが、惜しくも枠を外れる。

左サイドでチャンスを演出した坂口
17分には野口がCFで副将の野村亜未 (総3・十文字)とのホットラインで立て続けにチャンスを演出するも、相手の粘り強い守りによって阻まれる。20分、右CB・米口和花(総2・十文字)と野口のワンツーから野村にパスが入ると、右シャドウ・佐藤凜(総3・常盤木学園)が見事なオフザボールの動きからボールを受けてエリアに侵入するが、これも相手の体を張った守りに防がれ、0-0で飲水タイムに突入。前半を折り返す。

テクニシャン・佐藤がゴールに迫るも防がれた
前半最大のピンチは30分、エリア内でシュートを放たれるが、竹内あゆみ(看3・日ノ本学園)がブロック。さらに、相手の二次攻撃からミドルシュートを浴びるが、主将・小熊が足を投げ出して防ぎ、泥臭く守り切る。

主将・小熊を中心に守る
ピンチを凌いだ後は、序盤と同様に慶大がボールを握る。ビルドアップ時、アンカーに入る竹内を経由して丁寧にボールを回し、相手守備の陣形をずらしながら、一瞬の隙を狙っていく。また、ときには右CBの米口と左CB・宮嶋ひかり(環2・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)がサイド攻撃に加勢し、小熊、竹内とキーパー・中村美桜(理4・慶應湘南藤沢)によるビルドアップから攻めるパターンも見せる。

米口・小熊・宮嶋の3CBらによるビルドアップで攻める
34分、左サイドから坂口がクロスを上げ、佐藤がゴール前に走り込む。慶大の十八番の形だったが、佐藤が合わせる手前で相手キーパーにキャッチされ、シュートまでは至らない。左サイドではシャドウ・髙松芽衣(環2・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)がボールを引き出し、攻撃にテンポを生み出していたもののゴールにはつなげられず、0-0で前半終了。相手の低いラインにより、CF・野村のスピードを活かした裏への抜け出しをなかなか仕掛けられず、ロングボールやクロスからシュートを放つ場面はあったが、得点を挙げることは出来なかった。また、国際武道大はフィジカルに優れた選手が多く、デュエルで慶大の得点の芽を摘むと、スピーディーに攻めてチャンスを作り、積極的なミドルシュートで慶大ゴールを脅かす場面も見られた。前半途中から徐々に雨脚も強まり、「保持しながらもゴール出来ない」、慶大にとっては雲行きが怪しい展開で後半が開始した。
後半から、佐藤に代えて岩田理子(総2・十文字)を投入。前半は右WBでプレーしていた森原が右シャドウに動き、岩田は右WBに入る。すると、後半開始早々の49分、待望の瞬間が訪れる。右サイドで米口が岩田とのパス交換からドリブルで持ち上がると、野村に相手守備のギャップを通したパスを送る。野村は相手と競り合い、ボールに触れられなかったものの、こぼれ球に野口が反応。ゴールからおよそ16m、ほぼ正面の位置から右足を振り抜くと、強烈な一撃がキーパーの手を弾いてゴール右上に決まり、1点を先制する。米口の積極的な持ち運びは、「相手を見ながら自分たちで判断をしていく」サッカーの象徴。ソッカー部女子らしい得点で、優位に立つことに成功した。

得点を決め、ベンチにガッツポーズを見せる野口(左)
しとしとと落ちていた雨もすっかり止んだ50分、野村がゴール正面やや左、ペナルティアーク付近でファウルを受け、直接FKのチャンスを得る。キッカーは、先制点を挙げた野口。インフロントにかけたスピードのあるボールは美しいカーブを描くと、ゴールネットを揺らして2点目。慶大の10番がその背番号に相応しい2つのゴラッソを決め、リードを拡げる。

2点目のFKを放つ野口
2-0となった後は、国際武道大も少し前がかりになる。慶大の後方からつなぐビルドアップに対し、中盤でボールを引っ掛けてルーズボールを拾うと、CFの選手のポストプレーを活かしたショートカウンターから攻めるシーンも増えてくる。すると60分、慶大左サイドのハーフウェイラインあたりで相手にFKを与えてしまう。慶大はロングボールに警戒し、7人の選手を並べて最終ラインを形成したが、意表をつく縦パスからフリーでクロスを上げられると、最後はヘディングで押し込まれ、失点。1-2と点差が縮まる。

豊富な運動量で貢献した髙松
その後、同点のピンチを招きながらもなんとか危機を脱した慶大は、飲水タイム明けの73分、宮嶋と髙松の阿吽の呼吸で攻め上がると、野口から森原にスルーパスが渡り、絶好機を迎える。しかし、相手のブロックに合い、シュートは枠を外れる。このプレーの後、選手交代を敢行。森原に代えて山田を投入し、山田はそのまま右シャドウに入る。84分には、攻守に渡り広いエリアに顔を出し、豊富な運動量で貢献した髙松に代え、田中紗莉(総2・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)をピッチに送り込む。

野村からのパスに反応した山田が抜け出す
追加点が欲しい終盤。相手の守備を冷静にいなしながらボールを保持して時間を経過させると、大チャンスがやってくる。敵陣で相手のスローインを坂口が跳ね返すと、野村がボールを拾ってキープ。飛び出した山田にパスを通すと、山田はキーパーとの1対1をゴール右隅に落ち着いて沈め、3ー1。90分に大きなダメ押し点を挙げる。
2点差とし、余裕のある展開となった慶大。90+2分に相手にPKを献上するが、シュートは枠を外れ、なんとか失点を免れる。90+6分には試合を締めるため、最後の交代機会を使用。ビルドアップにリズムを生み出し、守備では体を張ったプレーを見せた竹内に代え、副将・守部葵(環4・十文字)をボランチに投入する。その後も集中を切らさずにプレーし続け、10分ほどあったアディショナルタイムを無失点で守り切り、試合終了のホイッスル。慶大が3ー1で勝利した。
前半はほとんどの時間でボールを持ちながらも、得点には至らないもどかしい展開だったが、後半開始早々に野口のスーパーゴールで先制すると、直後に野口のFKで中押し。1点差とされ緊迫した状況になりながらも、最後は山田のダメ押し点。欲しいところで点を奪い、2点差のゲームをモノにした。
早慶定期戦で無念の敗北を喫し、関西遠征でもなかなか結果が出ずに迎えたリーグ再開初戦。失点シーンなど課題が出る場面もあったが、今季の躍進の要因でもある「勝ち切る力」を発揮し、チームとして「昇格に向け大事な3試合」と捉えるリーグ再開から最初の3ゲームの初戦で勝ち点3を挙げた。この勝利で連勝を11に伸ばし、勝ち点は34に。2位の国士舘大学との勝ち点差は4に拡がり、2部優勝・1部昇格へ一歩前進した。慶大の次節は10月5日(日)、立教大学とのアウェイマッチに臨む。前期は接戦の末、1-0で勝利した立大戦。勢いそのままに連勝を伸ばし、目標に向け突き進んでいきたい。
(取材:柄澤晃希)
【試合後インタビュー】

左から、森原、山田、野口
◇野口初奈(環3・十文字)
――2得点を挙げて勝利しました。今の率直な気持ちを教えてください。
再開初戦で、最初の3試合が1部昇格という目標を達成出来るか出来ないかという自分たちにとって大事な試合だったので、「絶対勝たなきゃな」という想いで臨みました。なので、自分のシュートでチームに勝利を届けることが出来て良かったです。
――1得点目のシーンを振り返ってください。
1得点目のシーンはあまり覚えていないんです、、(一同笑い)。亜未(=野村、 総3・十文字)が相手とぶつかってボールに触れず、自分のところに転がってきて、何も考えずに、ゴールも見ずにシュートを打ったら入った感じだったので、あまり覚えてないです(笑)。
――2点目のフリーキックも素晴らしいゴールでした。
ここで決めることで、2点差を付けて優位な状況を持って来られるシーンだったので、自分の得意なコース・距離からちゃんと決められて良かったです!
――2―0となった後に1点を返され、少し押し込まれる時間帯もありました。
1点取られたんですけど、逆転されるとか同点に追い付かれる怖さはあまりなかったので、自分としてはいつもと特に変わらずプレーしてました。ただ、チームの状況とか流れもあったので、「流れを相手に持っていかれないようにしなきゃな」という気持ちでやりました。
――試合後のミーティングではどんなお話がありましたか。
勝利は出来たけど、失点のシーンとか、自分たちの緩みでPKを与えてしまって、そこの緩みが今後の試合で出ると、負けるかもしれないですし、勝敗につながるので、「厳しさをもっと自分たちで持っていこう」と話しました。今週はセットプレーなど自分たちの課題に向き合っていかないといけないと思いました。
◇森原日胡(総1・作陽学園)
――今日の試合を振り返ってください。
今日の試合は再開初戦で、相手も(前期に)1試合やっている中で気合を入れて首位を倒しに来ることは分かっていたので、「難しい試合になるだろうな」と思っていたんですけど、自分たちは早慶戦や韓国遠征、関西遠征を通してチームの強化も出来ていたので、自信を持って臨めました。
――前半は右ウイングバックでプレーされました。どういったことを心掛けていましたか。
自分の強みは走力だったり、細かいプレーとか動き出しだったりするので、そこの部分では絶対相手に負けないように、しっかり攻撃のときは相手のサイドバックを押し込んで、守備のときは先に戻って優位性を持つことを意識して、攻撃にも守備にも参加出来るようにプレーしました。
――後半から右シャドウでプレーされました。何か意識として変わったことはありましたか。
ボールを積極的に受けることや、受けた後のつながりと、最終ラインに向かってアクションを起こし続けるというところはずっと意識してプレーしました。
――先日、黄大城監督がインタビューで、チームの成長を感じるところの1つに「下級生の台頭」を挙げていました。ご自身のここまでの活躍をどのように見ていますか。
自分は、前期開幕戦はスタメンで出させてもらったものの、そこでケガをしてしまって前期のほとんどの試合は出られてなくて、後期の第2節(国士舘大学戦)から復帰したので、試合の経験はあまりないですが、普段の練習から下級生とか関係なくコミュニケーションを取ることや、自分の強みを活かしてプレーするというところは出来ているかなと思います。
――次節に向けての意気込みをお願いします。
これからあと2節がまず山場になると思うので、そこに向けてしっかり準備をして、個人としてはもっと得点に絡むプレーが出来るように頑張りたいです!
◇山田葵(総1・聖和学園)
――今の率直な気持ちを教えてください。
得点をして、チームの勝利に貢献することが出来て良かったなと思います。
――後半途中から出場されました。どんなことを意識してピッチに入られましたか。
1失点して、少しチームがバタバタしている状態でもあったので、少しでもチームを落ち着かせられるようにすることや、チームのために走ることと、得点のチャンスがあれば絡めるようにすることも意識していました。
――得点シーンを振り返ってください。
亜未さんが抜け出しているのが見えて、中に行ったら「ボール来るかな」と思って走ったら、しっかりボールが来たので、キーパーと1対1ですごく緊張したんですけど、ちゃんと隅に流し込めて良かったと思います。
――山田選手は葵(あおい)というお名前ですが、試合中、「うた」と呼ばれていました。愛称の由来を教えてください。
テソンさんが練習中に、「(柔道の)阿部詩(あべ・うた)選手に似てる」と言い始めて(笑)、4年生に葵(あおい)さん(=守部葵(環4・十文字))がいるので、区別するために「うた」って呼ばれてます(笑)。
――4年間でどんな選手になっていきたいですか。
前の方の位置でプレーしているので、得点などでしっかりチームの勝利に貢献出来るようになりたいと思います!