箱根駅伝予選会まであと9日!慶スポでは本番を直前に控えた選手方・スタッフ・コーチにインタビューを行いました。箱根駅伝予選会特集1日目の本日は、共に1年間長距離ブロックを牽引し続けてきたこの2人!慶大競走部に入ったきっかけや駅伝の魅力、本番の意気込みまでを2部構成でお送りします!これを読んで是非当日も声援を送りましょう!
(写真左)東叶夢(環4・出水中央) 長距離ブロック長/駅伝主将
(写真右)安田陸人(商4・開成) 競走部副将
――お互いの自己紹介をお願いします
安田のことは、入部当初は、正直すごい苦手でした。彼のように少し変わったタイプ、奇声を発したり、突拍子もない行動をしたりするような人が苦手で、嫌だなと思っていました(
東はわがままなところも多いんですけれど、自分はむしろそういうタイプに振り回される方がうまくやっていけます。4年間いろんな出来事がありましたが、東がブロック長・駅伝主将を務めてくれたことで、1人では抱え込んでしまうようなことも、2人なら解決できた場面が多かったと思います。東はわがままな一方でしっかり者でもあり、その存在がこの1年間チームにとって本当に大きかったと感じます。
走りの面では、記録上は自分のほうがハーフ以外は上なんですが、印象に残っているのは1年生の時、予選会の1〜2週間後に出場した地方のロードレースです。6キロの1対1の勝負で、「予選会でも勝ってるし負けないだろ」と思っていたのに、東には全く歯が立たなかった。さすが都大路を走ってきた選手だと感じました。あの時の悔しさはいまだに覚えていますし、お互いに「負けたくない」という気持ちをどこかで持ち続けていると思います。
東:僕はスポーツ推薦で箱根駅伝常連校に進む予定だったんですが、直前になって将来について考えるようになりました。ちょうど今のヘッドコーチ・保科さんが高校の監督の先輩で、僕、

「主役となってチームを強くするプロセスに惹かれたんです」(東)
安田:
東:いろんなバックグラウンドの人が集まっているのが、大学の特徴だと思います。僕のように箱根駅伝出場を目指して入ってきた人もいれば、「陸上をやってみたい」くらいの気持ちで入ってきた人もいる。陸上以外に大事なことを持っている人も多くて、自分の価値観だけで判断できない瞬間がたくさんあります。高校の時は中学時代に結果を残した選手ばかりで、意思疎通も取りやすく、「やる時は全員でやる」という空気がありました。でも大学では、それぞれの価値観が違う。そこが一番の違いであり、良い意味でも悪い意味でも刺激になりました。
安田:自分はいわゆる進学校出身だったので、

「集団で練習することが新鮮で」(安田)
――東選手は都大路初出場を主将として導いた高校時代と今の自分を比較した
これまでの自分は、「自分の意見が正しい」と思い込んでいて、人に押し付けるようなところがありました。でも、いろんな考え方や境遇を持つ人と関わる中で、新しい価値観を受け入れ、自分の中に取り入れられるようになったのは、競技者としても人間としても大きな成長だったと思います。また、以前は弱さを見せることを絶対にしなかったんですが、大学に入ってからはそういう部分も素直に出せるようになった。ありのままの自分でいていいと思えるようになったのは、大きな変化ですね。

「価値観を受け入れ、
――長距離ブロック長に選ばれた経緯は?
去年の夏合宿の時に途中で保科さんに呼ばれて、「
――保科ヘッドコーチから選ばれた理由についてはどのようにお考えですか?
ブロック長をやるとしたら、自分か安田のどちらかだったと思います。ただ、去年の自分に強い責任感があったかといえば、そうでもなかったですね。僕は「ブロック長」という立場があった方が、自分を律して頑張れるタイプなので、その役職があったからこそタイムも伸ばせたと思っています。そういう性格も見抜かれていたのかもしれません。まとめるのは得意で、コミュニケーションも苦手ではないので、自分の成長のために監督が投資してくれたのかなと思います。
――駅伝の主将として、この1年間長距離、
嫌われるのは少し怖かったですが、今年のチームが始まってからは「気にしていても仕方ない」と思い、厳しく言うべきところはしっかり言うように意識していました。人に言うからには自分もやらなければならないし、できていないのに他人に言うわけにはいかない。だからこそ、自分にも厳しく向き合うようにしていました。
また、チームの課題から逃げずに向き合うため、悪い部分をきちんと話し合うミーティングを開くようにしました。代替わり後は自分を含めて問題から目をそらすところもあったと思いますが、そこにしっかり向き合うことを意識しました。

「チームの悪いところから逃げずに向き合うこと」(東)
――主将を務める上で大変だったことはありますか?
4年生が多いチームなので、就活との両立が一番大変でした。就活中の4年生との温度差がきつくて、みんなが陸上だけを目的に来ているわけではないと分かりつつも、練習をおろそかにさせるわけにもいかない。その一方で、就活は将来がかかっているので強くは言えないというジレンマがありました。それでも5月ごろに全員で話し合う機会があって、4年生も気持ちを入れ直してくれました。今ではBチームを引っ張ってくれているので、あのときぶつかり合ったことも、結果的には良かったのかなと思います。
――逆に、やりがいを感じるような瞬間はありましたか?
――競走部の副将になった経緯は?

主将から『俺が迷った時には、
4年生になった時、「108代は弱い」と言われていたのが悔しくて、「俺たちでもできる」というところを示したくて主将になりたいと思っていました。ただ、目立ちたがりな反面かなり緊張しやすくて、主将立候補のスピーチの時にもじもじしてしまい、「お前には任せられないかも」と言われてしまいました。結局、大島主将が堂々と話してみんなの信頼を得て主将になったんですが、性格が正反対の僕を「自分が迷った時にガンガン行くタイプの安田を副将にした
――競走部の副将として、長距離ブロックだけではなく、

「競技以外の部分でしっかりしていこうと」(安田)
――役職を与えられたことで、
以前は「自分が目立てばそれでいい」と思っていて、まずは自分が注目されることを優先していました。でも今は、目立つだけではなく、愛される存在でなければ意味がないと感じています。いろんな選手に声をかけることで、逆に自分が試合などの大事な場面で「頑張れ」と声をかけてもらえるようになり、その言葉が最後の力を引き出してくれると実感しました。副将になったことで、自分のことだけでなくチーム全体を見渡し、より多くの視点から考えられるようになったと思います。
――安田選手にとって”理想の選手像”とは?
“華のある選手”でありたいという思いはずっとあります。もちろん青学のような強豪大学で走るスター選手たちには憧れますが、強豪でなくても「なぜか印象に残る」「あの選手は知ってる」と言われるような存在になりたいです。たとえば川内優輝さんのように、記録では大迫傑選手に及ばなくても、“公務員ランナー”として多くの人に知られるような、何か一つ輝くものを持つ選手。自分もそんなふうに、タイムだけでなく“華のある選手”と“知名度があってみんなから応援されるような選手”が、自分の中で目指している競技者の形ですね。

“華のある選手”
東:チームメイトは結構取り扱いの難しい人たちが多いので、
安田:1、2年の時は自分が先輩についていく側だったので、

「“家庭教師の生徒”みたいな存在です」(安田)
東:僕は、駅伝は区間配置がすごく面白いと思っています。高校の時は年間で10本ほど駅伝を走っていたのですが、大学に入ってからはまだ1本も走っておらず、少し寂しいです。駅伝は、ただ速い人を順に並べたり、長い距離にエースを配置すれば勝てるわけではありません。たとえば高校駅伝では3キロや10キロなど区間の長さが違い、3キロ区間に誰を入れるかなど、前後の選手との兼ね合いが重要になります。区間が発表されたときに監督の意図や自分への期待を感じ取れ、「速さ」だけでは成り立たない奥深いスポーツ、そこが駅伝の魅力かなと思います。

「ただ速いだけでできるスポーツじゃない」(東)
安田:自分はずっと「駅伝をやりたい」と思っていました。中学・高校でも駅伝に出ていましたが、毎回人数が足りず、短距離の選手を借りて出場していました(笑)。僕にとっての駅伝は、前半区間に長距離選手を詰めて、後半は短距離で粘る。それでも意外と面白くて、中3や高1の時には1区で区間賞を取ったり、8番で帰ってきたりして、「この学校がこの順位に?」と驚かれることもありました。先頭集団には強豪校が並びますが、たまに全然強豪じゃない学校の選手がその中に食い込むのが面白いんです。逆に気づけば消えていたりして、一瞬の輝きが見られるのも駅伝の魅力だと思います。でもやっぱり、いつかはしっかりしたメンバーで駅伝を走りたいですね。
(取材:野村康介、小林由奈、吾妻志穂、中原亜季帆、編集:野村康介)
最後までお読みいただきありがとうございます。後編記事では二人の予選会にかける意気込みなどを記載しております。ぜひそちらもご一読下さい。