前節の2部リーグ再開初戦を勝利し、首位キープに成功したソッカー部女子。チームとして「1部昇格に向け大事な3試合」と位置付ける再開から3ゲームの2戦目、立教大学とのアウェイマッチに臨んだ。
試合は前節と同様に、慶大がボールを保持する展開。しかし、立大DFの粘り強い守りをなかなか攻略しきれず、終盤までスコアレスで進行する。両軍決め手に欠き、引き分けも見えていたが、待望の瞬間は83分、10番・野口初奈(環3・十文字)がFKを蹴り入れると、ボールはゴールマウスに吸い込まれ、先制点を挙げる。ついに立大ゴールをこじ開け、完全にペースを掴んだ慶大は89分、ショートコーナーからチャンスを作ると、こぼれ球を宮嶋ひかり(環2・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)が押し込み、2点目。貴重な追加点を奪う。さらに90+4分、途中出場の田中紗莉(総2・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)がスーパーミドルシュートを決め、3点目。終盤の怒涛の得点ラッシュで、終わってみれば3−0で勝利した。
この勝利で、前期第3節から続く連勝を12に伸ばし、首位を固めることに成功。2部優勝・1部昇格に向け、着実に歩を進めた。
2025/10/5(日)16:00キックオフ@立教大学富士見総合グラウンド
【スコア】
慶應義塾大学3ー0立教大学
【慶大得点者】
83分 野口初奈
89分 宮嶋ひかり
90+4分 田中紗莉(佐藤凜)
【慶大出場選手】 | |
ポジション | 背番号 選手名(学部学年・出身高校) |
GK | 12 中村美桜(理4・慶應湘南藤沢) |
DF | 18 岩田理子(総2・十文字) |
→54分 8 佐藤凜(総3・常盤木学園) | |
| 4 米口和花(総2・十文字) |
| 5 小熊藤子(環4・山脇学園/スフィーダ世田谷ユース、RB大宮アルディージャWOMEN内定) |
| 15 宮嶋ひかり(環2・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18) |
| 23 坂口芹(総4・仙台大学附明成) |
MF | 11 森原日胡(総1・作陽学園) |
→75分 24 田中紗莉(総2・県立市ヶ尾/日体大SMG横浜U18) | |
| 2 竹内あゆみ(看3・日ノ本学園) |
| → 75分 13 山田葵(総1・聖和学園) |
10 野口初奈(環3・十文字) | |
7 髙松芽衣(環2・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18) | |
FW | 9 野村亜未 (総3・十文字) |
関東大学女子サッカーリーグ戦2部を戦う慶大ソッカー部女子。前期第3節に今季初勝利を挙げると、そこから10連勝でリーグ戦中断期間に突入した。首位で迎えたリーグ再開初戦の国際武道大学戦では、序盤からボールを保持しながらも、得点することは出来ずに前半終了。ゴールが遠く、嫌な流れかと思われたが、後半開始早々、野口が立て続けにゴラッソを決めて2点のリードを取ると、2−1で迎えた終了間際、山田葵(総1・聖和学園)がダメ押しゴールを決め、3−1で勝利した。
2部リーグから自動昇格出来るのは1位のチームのみで、2位・3位のチームは入れ替え戦に出場する規定となっている。慶大は後期第5節・立大戦の試合前時点で、1試合消化が少ないながら2位の国士舘大学を勝ち点1差で上回る1位。何としてでもこのまま首位を死守し、逃げ切りを図りたいところだ。
前節の試合後インタビューでは、野口が「(再開からの)3試合が1部昇格という目標を達成出来るか出来ないかという自分たちにとって大事な試合」と話していた。この日はその3試合のうち2試合目。前期リーグでは接戦の末、82分に野村亜未(総3・十文字)が値千金の先制点を決めて勝利した立大戦に、アウェイ、立教大学富士見総合グランドで臨む。
慶大はいつも通りの3−4−2−1システム。前節は後半開始からピッチに入り、右WBで安定したプレーを見せた岩田理子(総2・十文字)がリーグ戦2試合ぶりのスタメン。前節、右WBで先発出場し、後半は岩田の投入に伴い右シャドウでプレーした森原日胡(総1・作陽学園)をこの日はスタートから右シャドウに配置した。
対する立大は攻撃時4−3−3、プレス時4−2−3−1のシステム。前節の国際武道大とは違い、低いラインで構える形は取らず、ときには慶大のビルドアップに対し連動したプレスを見せ、ボールを奪うと慶大DFラインの裏へスルーパスを供給。スピードを活かした攻撃でゴールを狙う。

2試合ぶりのスタメンとなった岩田
4分、いきなり慶大らしいパスワークからチャンスを作る。左CB・宮嶋から左シャドウ・髙松芽衣(環2・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)にパスが入ると、髙松から左WB・坂口芹(総4・仙台大学附明成)→アンダーラップしてきた宮嶋→トップ下の野口→アンカーの竹内あゆみ(看3・日ノ本学園)へとテンポ良くボールが回る。竹内がボールを受けた瞬間、フリーになったCF・野村に縦パスが渡り、PAに侵入するが、相手に阻まれ、惜しくもゴールには至らない。

宮嶋を起点にチャンスメイク
その後も慶大がボールを握る時間が続く。ビルドアップの際、積極的にボールを受けて攻撃のタクトを振るう竹内に対し、マンマークをつけて守る立大。いつも通りのパス回しとは行かない中でも、多彩な攻撃パターンからチャンスを作っていく。
左右CBの宮嶋、米口和花(総2・十文字)は思い切った攻撃参加でサイドから攻め、相手のハイプレスがかかると左シャドウの髙松、右シャドウの森原が低い位置でボールを引き出し、広いエリアに顔を出すトップ下・野口を起点にゴールに迫る。

豊富な運動量を誇る髙松
18分、パスがずれ、相手にボールを取られるも、野村が素早い切り替えから奪回。左サイドで相手を抜き去ると、森原にパスをつけ、リターンを受けてシュートを放つ。相手守備陣のブロックに合い、得点には至らなかったが、持ち味のスピードを活かしたプレーで相手ゴールを脅かす。

何度も好機を作った9番・野村
給水タイム明けの29分頃、縦パスを受けた森原が大外の岩田にはたくと見せかけ、鋭い切り返しからボールを運ぶと、野村が斜めのランニングからパスを受けてシュートを放つ。しかし、これはキーパーの正面を突き、ネットを揺らすことは出来ない。前半最大のピンチは32分頃、CKのクリアボールを拾われ、ロングシュートを放たれるが、キーパー・中村美桜(理4・慶應湘南藤沢)が落ち着いてキャッチ。ゴールは割らせない。

右シャドウでスタメンの森原が躍動
前半終了まで、森原、岩田による右サイドからの流動的な攻撃や、野村のスピードを活かしたスルーパスでチャンスを何度か演出するも、エリア内に侵入して決定的なシュートを放つ場面を多くは作れず。
一方、被カウンターの局面では、宮嶋、米口がボールにチャレンジし、圧倒的な対人の強さを誇るプロ内定の主将・小熊藤子(環4・山脇学園/スフィーダ世田谷ユース、RB大宮アルディージャWOMEN内定)が最後尾に構える盤石の布陣。大きなピンチはなく、裏へのスルーパスにはキーパーの中村とDFラインが安定した連携で対処し、0−0のスコアレスで折り返した。

この日も安定感を見せた主将の小熊
選手交代なく迎えた後半、開始早々からチャンスを作る。左サイドで宮嶋から髙松に縦パスが入ると、髙松から落としを受けた坂口から野口へ、野口は相手に寄せられながらもボールをキープすると、坂口にリターンし、坂口は抜け出した野村にスルーパス。惜しくも相手に防がれたが、このシーンを筆頭に相手ゴールに近いエリアでボールを持つシーンが増えてくる。54分、岩田に代えてテクニシャン・佐藤凜(総3・常盤木学園)を右シャドウに投入。右シャドウでプレーしていた森原が右WBに動く。

先制を狙い、佐藤を右シャドウに投入
勝ち点3獲得のため、慶大はよりアグレッシブに攻める。左右CBの宮嶋・米口がかなり高い位置まで上がり、WB・シャドウとのトライアングルでサイドを突破。クロスからチャンスメイクし、相手を押し込んでいく。60分、竹内からパスを受けた髙松が左サイドの裏へ絶妙なスルーパス。抜け出した荒鷲の翼・坂口がクロスを上げるが、ストライカー・野村は厳しいマークに合い、シュートまではつながらない。しかし、確実に好機が増え、得点の香りが漂ってくる。

後半、髙松・宮嶋とのコンビで幾度となく左サイドを突破した坂口
75分には2枚代えを敢行。竹内に代え山田を、森原に代え田中紗をピッチに送り込む。この交代により、慶大は大きく配置を変更。右CBの米口を右WBに動かし、右CBには田中紗が。山田が右シャドウに入り、佐藤が右シャドウからトップ下、トップ下の野口はアンカーへ。選手たちのユーティリティ性を活かした采配で勝負に出る。

米口がポジションを1つ上げる
それでもゴールが遠く、刻々と時間は過ぎていったが、焦ることなく、キーパーの中村を含めた最終ラインからのボール回しで丁寧に攻めていくと、83分、ついに立大ゴールを破る。慶大左サイド、ゴールから30mほどの位置でFKを獲得。野口が右足で入れた高い放物線のボールは美しい弧を描くと、そのままゴールへ。野口の2試合連続となる直接FK弾で待望の先制点を挙げる。
1点のリードを取った慶大は、米口を右CBに戻し、田中紗を右WBへとポジションチェンジ。対する立大も入れ替え戦進出に向け、是が非でも勝ち点1は取っておきたいところ。ビハインドを背負うと前掛かりになり、プレスをかけ始める。しかし、そのプレスをものともせず、磨き上げてきた確かな技術でパスを繋ぎ続けると、慶大左サイドからのCKのチャンスを迎える。キッカーは野口。ショートコーナーから髙松に繋ぎ、リターンを受けると、ゴール方向へのクロス。一度は弾き出されるが、こぼれ球を宮嶋が頭で押し込み、2-0。自身リーグ戦初ゴールを挙げた。先日行った宮嶋と米口の対談インタビューでは、米口から「ヘディングが強く、セットプレーの中心人物になっている」と得点に期待を寄せられていた宮嶋。その願いに応え、チームにとっても貴重な追加点を奪った。
90+2分、自陣左サイドでファウルを与え、FKのピンチ。前節はセットプレーから失点を喫していたが、この場面ではセンタリングに対し先にボールに触れて弾き出すと、こぼれ球のシュートを狙った相手にも素早く詰め、見事に守り抜く。その直後、センターサークル付近でボールを受けた佐藤が絶妙なファーストタッチで振り向くと、右サイドの田中紗にパスを供給。田中紗はカットインでマークをはがし、エリア外から左足でミドルシュートを放つ。これがゴール左上の隅に収まり、追加点。間もなくタイムアップのホイッスルが鳴り響き、3-0で勝利した。
前節と同様に、支配しながらも得点出来ない時間が長かったが、終盤に10番・野口の2試合連続ゴールで先制すると、CKのチャンスを宮嶋が活かし、また田中紗のスーパーゴールもあり、昇格に向け大きな勝ち点3を手にした。試合後半からの細かな配置変更は、黄大城監督が今年のチームの特長として挙げた、「器用に、真面目に、愚直に、チームのやり方を頭に入れながらプレーしている」ことによって実現している「組み合わせによっていろいろな戦い方を出来る」という強みが存分に発揮された形。また、前節の試合後にチームの課題として挙がったセットプレーの守備の場面でも、集中力を切らさずに守り抜き、クリーンシートでの勝利を達成した。
慶大の選手たちにとって、このグラウンドは特別な場所だ。昨季の慶大は、序盤は昇格を狙える位置に付けていたものの、中盤から失速。後期第4節、立教大学富士見総合グランドで立大に1-2で逆転負けを喫し、昇格の道が絶たれた。あの敗戦から悔しい想いを忘れず、一人ひとりが日々、努力を重ねてきた。そして、およそ1年の月日が流れ、首位で迎えた今節。悲願の昇格に向け、負けられない一戦を見事な勝利で飾り、難敵・立大にリベンジを果たした。
前日に2位の国士舘大が勝利していたため、慶大は1試合未消化ながら試合前の勝ち点差は1となっていたが、そのプレッシャーをものともせず、勝ち点3を積み重ねた。2位の国士舘大との勝ち点差は前節終了時点から4のまま変わらず、2部優勝&1部昇格決定は最速で10月19日(日)の上武大学戦後となる。
次節は10月11日(土)、順天堂大学とのアウェイマッチに臨む。前期は後半に2点を挙げ、2−0で勝利した順天堂大戦。相手も入れ替え戦進出が懸かっており、立大戦と同じようにタフなゲームとなることが予想される。ここで勝ち点3を獲得すれば、昇格に大きく近づくため、TEAM2025にとってまさしく”大一番”となりそうだ。
(取材:塩田隆貴、柄澤晃希)
【インタビュー】

左から田中紗莉、野口初奈、宮嶋ひかり
◇野口初奈(環3・十文字)
ーータフなゲームを取りました。今の率直な気持ちを教えてください。
立教戦は去年も一昨年もリーグ戦を通して悔しい終わり方をしていて、その2年分の想いというか、ここで勝って自分たちが1部昇格を掴み取る気持ちで臨んだので、取れて嬉しかったです!
ーー昨日、国士舘大学が勝利したため、慶大の試合前時点で勝ち点差は1という状況でした。どういった想いで試合に臨みましたか。
自分たちがたとえ引き分けたり負けたりして勝ち点が縮まったとしても、残り4試合で追い抜かされない自信があるので、あまり心配せずに臨めました。
ーー後半からチャンスが増えた印象です。その要因はどんなところにあったと考えていますか。
前半は自分としてもボールに関わるプレーが少なかったので、後半はもう少し動きを増やして決定機を作れるように、意識的に動こうと思っていました。それが良かったと思います。
ーー得点シーンを振り返ってください。
合わせようと思って中にクロスを上げたのですが、キーパーの逆を突いて入ってくれたので良かったです。
ーーこの勝利を今後の試合にどのような形でつなげていきたいですか。
残りの試合も自分の得点で勝てたら個人としては1番嬉しいですし、自分の得点でなくてもチームとして勝てたら嬉しいので頑張りたいと思います。
◇宮嶋ひかり(環2・芝浦工業大学柏/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
ーー今の率直な気持ちを教えてください。
これまで11連勝と積み上げてきましたが、テソンさん(監督)が試合前にも言っていたように、11連勝しているからと言って今日の試合も勝てるわけではないので、だからこそ今日の1試合もしっかりと勝ち切れて良かったと思います。
ーー得点の場面を振り返ってください。
初奈さん(野口)のクロスがそのまま入ると思ったのですが、自分の前にこぼれてきて、相手とぶつかると思い、ボールもあまり見てなかったので、気付いたらゴールの中に入っていて嬉しかったです。
ーー米口選手との対談の際に、米口選手から宮嶋選手のゴールに期待するというお話がありました。
のんちゃん(米口)の期待に応えられて良かったと思います!
ーー前半の試合展開はいかがでしたか。
前半は自分たちがボールを持つ時間が長かった中、相手にも分析されていてなかなか進めなかったりもして、自分たちのサッカーが上手く出来なかったのですが、その流れにも呑まれず、耐えながら後半に入れて、後半はしっかり自分たちのサッカーが出来たので良かったと思います。
ーー次節はどのような戦いをしたいですか。
次節も順天堂戦で簡単なゲームではないので、チーム一丸となって慶應らしいサッカーでしっかり勝ち切りたいと思います。
◇田中紗莉(総2・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)
ーー今の率直な気持ちを教えてください。
自分は途中出場で、すごく緊張感のある試合に入っていくので、最初は上手く入れなかった部分もあったのですが、初奈さん、ひかり(宮嶋)と点を取ってくれたことで迷いなくプレー出来て、チームとしても難しい試合を勝つことが出来たのはすごく良かったと思います。
ーー75分、まずDFラインに入られましたが、ここではどのような意識でプレーしていましたか。
入ったときは0−0の状態で、のんちゃん(米口)を1個前に上げて、攻撃的に、前に、アグレッシブに行っているところだったので、シンプルにプレーすることを意識していました。
ーー1点先制してからウイングバックにポジションが変わりました。意識として変わったことはありましたか。
DFに入ったときはリスク管理を意識していましたが、1点取ってからは守備的な意識よりも攻撃的な意識を高めようと思いました。それはポジションが変わったこともありましたが、チーム全体として守備に回るのではなくて、前に、前に行こうという話は出来ていたので、それが得点にもつながったと思います。
ーー得点シーンを振り返ってください。
あの形でボールを受けられそうなシーンが点の前にも1回あったので、イメージは出来ていて、リードしていたので、迷いなく打ってやろうと思って、打ちました!
ーーご自身の利き足はどちらですか。
右利きです。
ーーあのシュートはイメージ通りでしたか。
そうですね。左足を振り抜くことを意識していたので、結果としてゴールになって良かったです。
ーーこの勝利で連勝は続きました。次節以降の戦いに向け、意気込みをお願いします。
波に乗っているときこそ、自分たちの力が試されると思うので、怠ることなく、やることをやって、次も勝ちたいと思います。