降格圏争いから脱したい慶大は、オノノジュ慶吏(政1・前橋育英)をスタメンに起用。最下位の東海大相手に突き放したい慶大だったが、0-2で前半を折り返す。さらに後半、ミスから失点を許し、0-3という厳しい展開に。しかし、69分、主将・田中雄大(商4・成城学園/三菱養和SCユース)のミドルシュートで1点を返すと、84分には立石宗悟 (法4・桐蔭学園)が追加点を奪う。このままでは終われない慶大は90+4分、齋藤真之介(経4・桜修館/FC町田ゼルビアユース)がPKを獲得すると、角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース)が落ち着いてゴール左上に蹴り込み、同点に。3点差を見事に追いつき、なんとか勝ち点1を掴み取った慶大。荒鷲の執念を見せつける一節となった。
2025/10/4(土)14:00キックオフ@東海大学湘南キャンパスグラウンド
【スコア】
慶應義塾大学3-3東海大学
【得点者】
11分 東海大 田畑知起(玉田滉喜)
23分 東海大 玉田滉喜(田畑知起)
59分 東海大 星景虎
69分 慶大 田中雄大(齋藤真之介)
84分 慶大 立石宗悟(角田 惠風)
90+4分 慶大 角田惠風(PK)
【慶大出場選手】 | |
ポジション | 背番号 選手名(学部学年・出身高校) |
GK | 1 洪潤太(政4・東京朝鮮中高級学校/三菱養和SCユース) |
DF | 2 大下崚太(商4・慶應/東京ヴェルディユース) |
| 4 斎藤大雅(文3・立命館宇治/京都サンガF.C.U-18) |
| 6 永澤昂大(政4・國學院久我山) |
| 16 藤平一寿(法4・桐蔭学園) |
| →89分 27 霜田晟那(理1・都立八王子東/FC町田ゼルビアユース) |
MF | 7 齋藤真之介(経4・桜修館/FC町田ゼルビアユース) |
| 8 田中雄大(商4・成城学園/三菱養和SCユース) |
| 10 角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース) |
| 23 三浦大其(経2・慶應) |
| →HT 19 朔浩太朗(理3・学習院高等科) |
| 30 オノノジュ慶吏(政1・前橋育英) |
| →62分 17 辻野悠河(商4・暁星国際) |
FW | 11 立石宗悟 (法4・桐蔭学園) |
リーグ戦再開から2戦連続ドロー発進となり、最下位こそ脱出したものの、混迷を極める残留争いからは抜け出せていない慶大。先週慶大と入れ替わりで最下位に沈んだ東海大から勝ち点3を奪うことは至上命題だ。しかし、開始直後にチャンスを作ったのは東海大。CB斎藤大雅(文3・立命館宇治/京都サンガF.C.U-18)から右SB藤平一寿(法4・桐蔭学園)へ送られたパスを相手ボランチに奪われると、そのままゴール前までドリブルで運ばれる。それでも、ここは守護神・洪潤太(政4・東京朝鮮中高級学校/三菱養和SCユース)がファインセーブを見せ、失点は許さない。

久々のスタメン起用となった藤平
慶大は左サイドの相手のハイプレスを掻い潜ると、左WG齋藤真之介(経4・桜修館/FC町田ゼルビアユース)のドリブルで相手ゴール前に迫り、前期リーグ戦では出場がなかった慶大の新たな怪物・オノノジュ慶吏(政1・前橋育英)とピッチを駆け回る狂犬・ 立石宗悟 (法4・桐蔭学園)を起用した前線に積極的にクロスを供給。しかし、このボールが精度を欠き、相手DFにクリアされるシーンが続く。

安定した攻撃をみせた齋藤真
すると10分、自陣深くで東海大にスローインを与えると、ロングスローからエリア内中央でシュートを打たれ、痛恨の失点を許す。厳しい立ち上がりとなった慶大は、東海大のハイプレスとピッチの横幅を広く使った攻撃に苦しみ、なかなか敵陣深くまで侵攻できない時間帯が続くと、22分に相手の高精度なコーナーキックから追加点を許し、窮地に追い込まれる。

三浦大らがゴールを狙う
1部残留に向け、この試合を落とすわけにはいかない慶大は31分、右サイドをドリブルで駆け上がった右WG三浦大其(経2・慶應)が相手DFに倒されフリーキックを獲得すると、ボランチ角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース)の相手の隙を突いた素早いリスタートで再び三浦大にボールが渡る。鋭いカットインからニアに強烈なシュートを放つが、これは相手キーパーのビッグセーブに阻まれ、追撃点を挙げることはできない。しかし、このシュートを起点に勢いを取り戻した慶大は、37分に自陣からCB大下崚太(商4・慶應/東京ヴェルディユース)、左SB永澤昂大(政4・國學院久我山)、角田、齋藤真、そしてもう一度永澤とテンポよくボールを繋いでビルドアップを完結させ、左サイドから敵陣に侵入しチャンスを作るなど、徐々に相手ゴールに迫る機会を増やしていく。

今日もスタメンの斎藤雅
更に42分、自陣深くで相手のプレスを引き付けたGK洪から齋藤真へのロングパスが通って疑似カウンターを繰り出すと、永澤からボールを受けた立石が相手センターバックと入れ替わるタイミングでファールを受け、絶好の位置でフリーキックを獲得する。前期からセットプレーで得点を生み出してきた角田が右足でゴール左上隅を狙ったが、これは枠外に逸れてしまう。最大のチャンスは46分、主将・田中雄大(商4・成城学園/三菱養和SCユース)のコーナーキックに中央でフリーとなった大下が頭で合わせるが、このヘディングシュートも枠を捉えられず、2点ビハインドで試合を折り返した。

2点ビハインドで折り返す
なんとか追いつきたい慶大は、ハーフタイムに右ウイングの三浦大に代えて朔浩太朗(理3・学習院高等科)を投入。47分、相手がポケットにスルーパスを通し、キーパーと1対1になりかけたが、ここはGK洪潤太が勇気ある飛び出しで防ぐ。50分、最終ライン付近からの田中のロングスルーパスに齋藤真が素早く反応。背後のスペースに抜け出すと、相手DFのトラップミスも重なり、一気にキーパーとの1対1の場面を迎えた。しかし、放ったシュートは大きく枠の上へと外れ、1点を返すことはできない。

途中出場の朔
すると59分、味方からのバックパスを受けたGK洪潤太が相手の激しいプレッシャーを受ける。滑りやすいピッチコンディションも影響したのか、ボールをコントロールしきれずに奪われてしまい、そのままゴールを決められて痛恨の追加点。点差は3点に広がってしまった。東海大とは勝ち点1差という状況の中、慶大にとってこの試合は絶対に負けられない一戦。ここから、意地と執念をかけた反撃が幕を開ける。62分、この日関東リーグで初出場・初スタメンとなったオノノジュに代えて、経験豊富な辻野悠河(商4・暁星国際)を投入。前線での推進力を高め、攻撃のリズムを変える。

辻野の出場で攻撃に厚みが加わる
69分、慶大がコーナーキックを獲得。キッカーの角田がショートコーナーを選択し、齋藤真が受けてバイタルエリアの田中へパスを送る。田中は迷わず右足を振り抜き、放たれたボールは美しい弧を描きながらゴール右隅へと吸い込まれた。待望の1点を返し、反撃の狼煙を上げる。

田中のミドルシュートで1点を返す
勢いづいた慶大は果敢に攻め込み、相手ゴールに迫る場面を幾度となく作り出す。しかし、東海大DF陣の堅固なブロックに阻まれ、なかなか追加点を奪うことができない。84分、左サイドでボールを受けた角田が相手DFと1対1の駆け引き。相手がパスコースを消そうとスライディングを仕掛けたその瞬間、角田は左足でGKとDFの間のGKが飛び出しづらい絶妙なスペースへ鋭いパスを通す。これに反応した立石が体勢を崩しながらも滑り込み、右足でシュート。ボールはゴールネットを揺らし、慶大が再び1点を返して点差を1点に詰め寄った。

2点目を奪った立石
89分、右サイドバックの藤平に代えて霜田晟那(理1・都立八王子東/FC町田ゼルビアユース)を投入。すると90+3分、齋藤真が角田とのワンツーで相手守備網を突破し、ペナルティエリア左のポケットへと侵入。そこで相手DFに倒され、慶大がPKを獲得する。重圧のかかる場面だったが、キッカーの角田が冷静にゴール左上へと蹴り込み、ついにスコアを3−3の同点に戻す。

冷静に打ち込んだ角田
試合はこのまま終了し、慶大は3試合連続の引き分けとなった。依然としてセットプレーからの失点が続き、守備の安定には課題を残したものの、後半に見せた執念の3連発はチームに確かな自信と勢いをもたらした。この反撃の力を次戦へとつなげ、勝利への一歩としたい。
(記事:髙木謙、小野寺叶翔 取材:塩田隆貴、髙木謙、小野寺叶翔)
【試合後インタビュー】
◇角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース)

1ゴール1アシストの角田
――3点差を追いついてのドロー、今日の試合を終えての率直な感想
前の2試合も先制点を許していて、自分たちの攻撃力で地力はついてきているとはいえ、ゲームの展開を難しくしてしまったので、なんとしても先制点を取りたいという気持ちで臨んだんですけれど、相手のやりたいことをやられて、セットプレーで2失点して、ゲーム展開のところで自分がもうちょっとやらなきゃなというのと、前半で点を取れなかったこと、0−2で終わってしまったことが今日の勝てなかった原因かなと思います。そこを次回変えていきたいなと思います。
――前半に比べて後半はビルドアップがより円滑に、前半と後半で変わった点は
前半はビルドアップをバックラインとキーパーに任せていて、自分は高い位置でスペース見つけてそこで受けようという形で考えていたんですけれど、前半やってみて外回しで自分たちの右ウイングと左ウイングまでボールが届く感覚があったので、なるべく早くそこにいけるように、僕とか雄大(=田中雄大)がバックラインの脇に入ったりして、すぐにウイングにつけて、もう一回自分たちもラインを上げて相手のゴール前で何か起こすという形を後半は取れたのかなと思います。そこは自分たちのビルドアップの変化の仕方で攻撃が円滑になったと思うんですけど、相手の強度が少し落ちたのも一つ要因かなと思います。相手の前半の強度の中でそれができるかというのが筑波戦大事かなと思います。
――後半アディショナルタイムの場面で得たPK、どのような気持ちでキッカーを務めたか
決めた後に「残り1分」って言われて、「あ、そんなにないんだ」と思いました。攻めるのに夢中すぎて、決めたあとも次のことを考えていたので、あまり緊張とかはなかったです。もう少し時間があると思っていたので……悔しかったです。
――次節は中2日で筑波大学戦、意気込みをお願いします
前期は自分たちのやりたい攻撃を出せて4得点取れたものの、試合終了間際にそれこそ(東海大学戦の)逆の立場になって点決められてしまって追いつかれたので、まず同じゲーム展開にできるようにするのと、今日の勝ち点1を意味あるものにするためにも、絶対に勝てるようにまた全員で準備したいと思います。
◇立石宗悟 (法4・桐蔭学園)

同点に追いつくも悔しさを滲ませた立石
――今日の試合を振り返って
後期始まってからまだ勝利が出来ていなかったので、絶対に勝ち点3が欲しかったんですけど、勝ち切ることが出来なくて悔しかったです。全然自分たちのサッカーが出来なかったので、次は中2日ですぐ試合があるので、しっかり勝ち点3取れるように準備していきたいです。
――3点差をつけられビハインドの状況で、どういう気持ちで後半を戦ったか
自分はとにかくゴールを決めないといけない役割なので、相手との駆け引きのなかで、点を取ることだけを考えていました。
――3点差を追いついた要因は
前期リーグから自分たちはこういう状況でも得点を重ねてきていたので、最後まで諦めずに自信もってプレーできたのはすごくよかったかなと思います。
――次節への意気込み
しっかり今日出た課題を2日間で修正して、筑波相手に自分たちのサッカーが出来るように準備していきたいです。
◇中町公祐監督

オノノジュをトップ下で起用した中町監督
――今日の試合を振り返って
準備してきたセットプレーの部分でやられてしまったこと、強度やクオリティの部分で自分たちで試合を難しくしてしまった中で、最後0-3の状況から追いつくことが出来たことについては、自分たちが積み上げてきた成果が現れたと思います。一方で、勝ち切るために必要なモノはより一層明確になりました。
――オノノジュ慶吏(政1・前橋育英)をトップ下で起用
藤井漱介(商3・静岡学園)が出られない状況で、関東選抜の遠征に行く前に慶吏のコンディションがとても良かったので、後期のどこかでデビューさせたいという思いがありました。また、前線に宗悟(=立石、法4・桐蔭学園)と慶吏を置くことで、相手への脅威になるという意図で起用しました。
――セットプレーからの失点が増えている
マーキングのトレーニングを積むしかない中で、パーフェクトに抑えられる準備はしていると思っています。ただ、サッカーというスポーツはゴール前に全てが凝縮されている競技です。あのような失点はプロでも起こりますし、得点したから攻撃側が常に優位なのか、失点したから守備側のクオリティが低いのか、という単純なものではないですし、とにかく積み上げていくしかない部分だと思います。
――0-3から追いついた。前半と後半で変化はあったか
前半もチャンスはあった中で、早い時間帯に決め切れていればもっと長い時間、自分たちが優位に立って、相手に圧力をかけ続けることができたと思います。後半に1点取った後から自分たちのエネルギーが前に向かったと考えています。
――次戦・筑波大戦に向けて
どこが相手でも勝ち点3を目指す、勝ち点3を取っていくことが必要なので、中2日と準備期間が短い状況ではありますが、選手たちと共に挑んで行きたいと思っています。