前節の桜美林大戦で今シーズン初勝利を飾った慶大。勢いそのまま、開始早々にQB・山岡葵竜(政4・佼成学園)が自ら25ydを駆け抜け、タッチダウンを決め、先制に成功する。第2Qではタッチダウンを許すも、K・北村朔也(商2・宇都宮短大附属)がフィールドゴール2本を正確に決め、強豪・早大をリードしたまま後半戦に突入。しかし、第4Qに慶大ディフェンスが攻略されてしまい、3つのタッチダウンを許す。最終スコアは13-28。2連勝とはならず、2年連続の甲子園ボウル(大学全国大会)出場が絶望的となってしまった。
慶應義塾大学 UNICORNS | 早稲田大学 BIG BEARS | |
第1Q | 7 | 0 |
第2Q | 6 | 7 |
第3Q | 0 | 0 |
第4Q | 0 | 21 |
計 | 13 | 28 |
今シーズン未だ無敗の早大に、初黒星をつけるべく臨んだ第5節。この日は「華の早慶戦」ということもあり、多くの観客が富士通スタジアム川崎に詰めかけた。試合前のセレモニーには子供たちも参加し、普段よりも微笑ましい雰囲気の中でキックオフを迎える。第1Qは田中玄樹(理2・本郷)のリターンで始まり、自陣35yd地点から攻撃を開始。慶大は立ち上がりから、RB・石井和希(商3・慶應)やQB・山岡の自らのランを軸に着実に前進し、相手陣へと攻め込んでいく。敵陣25ydまで侵入すると、慶大はトリックプレーを仕掛け、山岡が自ら走路を切り拓いてタッチダウン。TFPでも北村がきっちりとキックを決め、スコアは7-0。幸先よく先制に成功した。早大も得意のランプレーで慶大陣地への侵入を試みるも、DB・千葉陽太(環4・鎌倉学園)や主将のDB・横手謙太朗(医4・慶應)を中心としたディフェンス陣が好プレーを連発。"ワンチーム"で強力・早大オフェンス陣を食い止め、第2Qへと突入する。

この日、先制のタッチダウンを決めたQB・山岡
第2Qは慶大の攻撃から再開。敵陣49ydで4th&4となった場面、慶大はフィールドゴールを選択する。ここで北村が見事にロングキックを決め、今シーズン最長だった37ydの成功記録を大幅に更新。スコアは10-0となり、貴重な追加点でリードを広げる。その後はDL・篠原晴(経2・慶應湘南藤沢)のQBサックや、LB・渡辺晴(経3・慶應)によるビッグプレーが続き、試合は慶大ペースに見えた。しかし、早大もさすがの粘りを見せる。慶大のミスや隙を突き、じわじわと慶大陣地に侵入して、タッチダウンを奪取。スコアは10ー7と迫られる展開に。それでも慶大はすぐに反撃に転じる。RB・山内哲耀(経4・慶應)のランプレーで敵陣に侵入すると、残り2秒でフィールドゴールを選択。北村が再び44ydのロングキックを見事に決め、13-7とリードを広げて前半を終える。何とかこのリードを守り切り、リーグ戦で9年ぶりの早慶戦勝利を掴み取りたい。

この日2本のフィールドゴールを決めたK・北村
掴んだリードでこのまま逃げ切りたい慶大。一方の早大は、今シーズン初めてビハインド状態で後半戦に突入する。第3Qは早大のレシーブからスタート。慶大は、早大お得意の地道なショートパスとランプレーに苦しむが、DL・千葉とDL・山田向洋(経3・慶應)にビッグプレーが飛び出すと、4th&2となり、早大がパントを選択したことによってピンチを切り抜けることに成功する。しかし、流石は早大。前半と同じミスは絶対繰り返さない。試合後半では一転、慶大は早大ディフェンスに歯が立たず、再びディフェンスに回る展開が続く。その後も早大は、まるで前半とは違うチームかのように、積極果敢に攻撃を仕掛けてくる。早大は4th&6でこの日3度目のギャンブルを仕掛けることになったが、結果的にパスはインコンプリートで、ターンオーバーと、積極性が裏目に出ることになるも、早大が猛追する姿勢を見せる。対する慶大はQB・山岡がWR・飯塚奏太(経4・慶應)へ針の穴を通すような正確なパスで敵陣への侵入を目指すが、早大の鉄壁なディフェンス陣がこれを許さない。その後は慶大側にミスが増え、前半と比べて壮大に押される展開が続く。結果的にはスコアに変動のないまま第2Qを終える。果たして慶大はこのままリードを守り切れるのか。

9年ぶりの勝利まであと1Qと迫る。
早大の不敗神話を打ち破るまで目前となった。第4Qは、2nd&1で早大の攻撃から。慶大は早速1ドライブ目からピンチを迎える。開始早々に相手オフェンスの代名詞でもあるランプレーで1st downを更新されると、次のプレーで慶大ディフェンスのカバーミスで30yd越えのロングパスを決められ、一気に自陣10yd付近まで侵入されてしまう。次のプレイで早大はランプレイを選択すると、そのままエンドゾーンまで走り切りタッチダウン。同点に。またTFPも成功し、1点を追加して逆転。スコアは13ー14。この日初めてリードを許してしまう。慶大はRB・田中のランプレイなどで、再びリードを奪い返し、流れを掴もうとするも、ファンブルをしてしまい、チャンスを逃してしまう。日本を代表する早大RB・安藤慶太郎(社学4・早大学院)の強靭なランタッチダウンを2本献上してしまい、最終スコアは13ー28。前半のリードを生かせず、悔しさの残る結果となった。

確かな成長とともに、課題も出た早慶戦。
今年度のUNICORNSの最大の課題である「後半の粘り」は、この日も克服には至らず、課題として浮き彫りとなった。しかしながらUNICORNSの"スーパースター"久保宙(経4・慶應)の復帰など、明るい材料もある。次節の相手は、昨季BIG8を制し、甲子園ボウル決勝まで駒を進めた強豪・法政大学だ。この試合は横浜スタジアムでの開催予定であったが、プロ野球のポストシーズンの影響でアミノバイタルフィールドに変更された。第1、2、3節も行われ、関東大学アメリカンフットボールではお馴染みのアミノバイタルフィールド。慣れ親しんだこの場所で、この日の屈辱的な負けを糧にし、「後半」の課題を克服できるかに注目したい。

"スーパースター"WR・久保が帰還(写真中央)
戦評:佐藤凜汰朗、水野翔馬
写真:長掛真依、神戸佑貴、鈴木拓己、中原亜季帆
ーー試合の振り返り
毎試合前半は立ち上がり良くできていて、課題が後半にあるというのはチームの中でも分かっていたところだったので、上手くいっても常に気を引き締めてプレーできていたんですけど、最後の最後で流れを掴み切れなかったのが敗因かなと思っています。
ーーインターセプトについて
とにかくディフェンスで、ボールに集まるというのを、この1、2週間の間意識してきていたので、そういったなかで集まることで、千葉(陽太)のハードタックルで浮いた球を自分がインターセプトすることができて、ディフェンス全体としても良かったプレーなのかなと思っています。そこで自分自身も喜びを大きく表して、チームの流れも持っていけるのかなと思ったんですけど、そこから後半の伸びというのが、課題かなと感じています。
ーー次節への意気込みを
次が法政で相手が前回のリーグ1位です。我々は1勝4敗のチームということで、多くのチーム、多くの観客からも自分たちが勝つと期待されていないかもしれませんが、やることをやり切って、自分たちが最後目標を達成し、課題を克服する。そんないい試合に出来たらいいなと思っています。

見事なインターセプトに笑みも溢れたLB・赤木
ーー先制のタッチダウンについて
早大戦は、本当に自分のランが一つ鍵になってくるのは、僕自身もそうですし、チーム全員が自覚していたので、自分の強みとしているランで、タッチダウンを取れて、しかもファーストドライブでチーム全体を活気づけることが出来たのは良かったなと思っています。
ーー以前よりもランプレイが多かった印象があるが、何か意識したことは
やはり、ゲームプラン的にも早稲田さんはすごく強いDLのパスラッシュがあるので、よりランというのを狙っていきたいというのは事前に決めていたので、そういったゲームプラン的に、ランが多かった印象があるのではないかと思います。
ーー後半で崩れてしまったが、チーム全体のその原因についてどう考えるか
後半の粘り強さというのは、シーズンを通して、自分たちの課題だと思っています。後半で粘り勝つ、というスローガンを挙げているなかで、やはり早稲田さんのアジャスト能力というのは、非常に素晴らしくて、自分自身のQBランというものに対してもしっかりとアジャストをしてきたので、結局その結果、オフェンスが手詰まってしまって、負けを喫することになってしまったのかなと思っています。
ーー早大は後半の追い上げが強い印象
これはもうリーグでも有名なことで、早稲田さんの後半のアジャスト能力は本当に国内屈指のものです。後半に入ると、全く違うディフェンスを敷いてくるレベルで調整をしてくるんですけれど、そこで完全に前半の慶應のプレーを対策されたなというところで、後半手詰まる結果になってしまったかなと思います。
ーーそれに対して何か対策は
後半最初の1シリーズ目は、結構特殊なフォーメーションとかを用いて攻めようと思っていたんですけど、それが想定通りにはいかなくて。それは一つもったいなかった点かなと思っています。
ーー次節、法政戦への意気込みを
本気で勝ちに行きます。今回早稲田戦があって、法政、そして最終戦が立教と、強豪校がずっと続きますが、自分たちがこだわってきたフットボール、僕自身にとってはオフェンスというのを強豪校さんに対して出して、そして、勝つというチームビクトリーを勝ち取りたいと思っているので、絶対勝ちに行きます。

最後2節、QB・山岡が魅せる"本気"に期待したい。
ーー試合の振り返り
ディフェンスとしては、用意したことはやれたかなと思うんですけど、そのなかでも、自分たちがやれたと思っても、相手が上だったというところは正直感想で、あと一歩、あと1ヤード奥にタックル出来たりとか、そのタックルミスがなければ、もっと良い流れが持ってこれたのではないかなと思っているので、そこは反省しなければならないと思ってます。
ーー自身のプレーについて
自分は誰よりも早慶戦に懸けてきて、強い気持ちで臨んだので、その思いを出せて良かったとは思うんですけど、そのなかでも、自分が後半でもタックルすれば止まったプレーというのがいくつかあったので、そこでミスが出てしまったというのは、自分の中で悔いの残るところです。
ーー相手がランを多用していたが、ディフェンス全体のゲームプランは
相手の7番のRB・安藤慶太郎選手は関東でもトップクラスのRBなので、そのランを止めるというのを一番に掲げてやってきたと思います。それに関して前半は、安藤選手のランを止めることは出来たんですけど、後半は粘り強さで負けてしまったので、全体的には負けたという印象です。
ーー次節法政戦への意気込み
まずは、今日大勢の方に応援に来ていただいて、本当に嬉しい限りで、応援に報いることが出来なかったということは自分たちの反省点なので、その反省を糧にして、法政戦に全力で臨みたいと思いますし、法政戦も皆さんに足を運んでいただけたらと思います。

LB・千葉の早慶戦に懸ける "想い"は人一倍強い
ーーチームでの自分の役割として意識していたことは
がむしゃらにプレーすることは今シーズン意識していることで、すこしでもビッグプレーを起こして、チームに良い流れを持ってくることを意識していました。
ーー第2QではQBサックを決めるなど躍動。今日のプレーを振り返って
早稲田戦というものは特別な感情が入るもので、気持ちの部分でみんなは入りから気持ちを高ぶらせて戦えていたのが良い内容に繋がったと思います。
ーー第3、4Qで結果的に早稲田に逆転を許してしまった。そこに関してチームの課題は
劣勢の状況になった時に、状況を変えられる選手が下級生とかに少ないというのと、後半になるにつれて基礎の技術の部分で負けてしまうのが課題だと思っていて、下級生として、下級生から動き出すというのは自分たちから変えていかないとなと考えています。
ーー残りの法政、立教戦に向けての意気込み
チームとしては、試合を経てどんどん成長していると思いますし、法政、立教ともに絶対に勝てない相手ではないと思うので、自分は、下級生としてがむしゃらなプレーを見せていきたいと思います。

この日、見事なQBサックを決めたDL・篠原
ーー今日の試合を振り返って
ここから4連勝しないと全国行けないというところで、自分は東大戦に大事な場面で外してしまって、チームを負けさせてしまったっていう責任感が結構あったので、絶対に4連勝して全国行くために、ここは絶対一勝して流れに乗りたいっていうところで、自分はもう全部切れるベストのパフォーマンスをするっていう準備をずっとしてきました。
ーー今日はフィールドゴール2本を決めた。今日の自身のプレーを振り返って
自分はフィールドゴール専門のキッカーなので、いつもグランドの端の方で1人で試行錯誤をしながら、毎日ずっと練習していて、その成果と勝ちたいっていう気持ちがあの2本を決めさせてくれたと思います。
ーーフィールドゴール決めた後の雄叫びには鬼気迫るものがあった
昔から感情が爆発してしまうような性格で、特に意識はしてないんですけどその決まった喜びと、加えてフィールドゴールは決めて当たり前みたいなところがあるので、それもそれでいいんですけど、自分はどちらかと言えば、どんな簡単なキックでも自分がしっかり決めて、ちゃんと感情を表現することで、その後のチームの流れを、作っていくっていうのを意識してるっていう2つがあります。
ーー残りの試合への意気込み
まずはもうチームとして勝利、2連勝っていうのを絶対的な目標としています。あとは、やさり4年生がチームを大きく引っ張ってきてくれて、本当に4年生が作ってくれたチームなので、最後4年生の華道を飾れるような最後の2試合にしたいと思います。

気迫のこもった咆哮でチームを鼓舞し続ける