9月13日に開幕の東京六大学野球2025秋季リーグ戦も、残すは最終第8週・早慶戦のみ。東大・立大から勝ち点を獲得し、5勝6敗1分、勝ち点2で現在5位の慶大は、11月1日・2日に5勝5敗、勝ち点2で現在2位の早大と戦う。伝統の一戦を直前に控え、気迫をみなぎらせる選手たちにインタビューを行いました!今回は常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)選手です!(このインタビューは10月24日に対面で実施しました)
――今季の自身の成績を振り返って点数をつけるなら
80点くらいだと思っています。数字で見ると、打率3割3分3厘でホームラン1本打って、打点も8でチームトップ。OPS(出塁率+長打率)も8割5分くらいなので、全然落胆するような結果ではないと思いますし、結構大事なところでホームラン1本出せたのは嬉しかったんですけど、チームとして勝てなかったっていうところが僕自身悔しいですし、寂しいなという風に思います。もっとできるはずのチームだったので、そういったところでは責任を感じています。(残りの20点は)三冠王を取れたらベストだったので、5~10点ぐらいが自分に足りなくて、残りはチームが優勝できなかったという点です。
――昨季は全試合に出場し、チームトップタイの3本塁打と9打点を記録。打撃成績全てでキャリアハイを残しましたが、そこから得られた課題と収穫は
課題としては、四死球5個に対して三振が15個。三振数が明らかに多いので、そこを同じ数にしたいなと思って、秋に向けて取り組んできました。今季は四死球5個に対して三振6個で、結構近い数字になっているので、そこは課題に対して取り組めたかなというふうに思います。良かったのはホームランをたくさん打ったり、強い球をたくさん打てた。六大学の投手は全員が自信あって、基本ファーストストライクで気づいたら追い込まれてるというか、それで結構カウントが不利になることが3年の時はあったので。そこはもう初球からいくっていうのをとにかく意識して、甘い球を打てた結果なのかなと思います。
――今季は長打が減少(本塁打1本のみ)し、試合数あたりの安打数は増加(4カード終了時点で、昨季12試合で13安打→今季10試合で12安打)。チームとしても本塁打が減る一方で、三振数も減少。出塁や安打で得点につなぐスタイルにシフトしている
監督主体に「あと1本が出なくて春は負けた」というところで、逆方向に打ったり、絶対に三振しないというところが、夏のオープン戦で評価基準として設けられていましたし、競争が行われていました。自分自身としても試合に出るために変わらないといけない部分もあったので、そういう風な変化があるのは必然なのかなと思っています。
――豪快なバッティングフォームのルーツ
(慶應湘南藤沢)高校時代かなとは思います。高校時代はチームが弱くて、どんな時でも4番だったので。特に何も言われることなく、自分自身で取り組めることも多かったです。競争がない分自分に目を向けて、大学でも大きな当たりを打てるフォームは何だろう、ということでとにかくそれ(フォーム)にこだわってできたのは、逆に強豪校出身の選手にはできないことだったかなと思います。
――秋季はここまで出場した10試合すべてで「4番・左翼」で先発出場。これまでの経験から、4番としての“理想の打撃像”のイメージは
僕が小さい頃って、プロ野球は“THE4番”みたいな。例えばラミレスだとか、新井貴浩だとか、松中信彦だとか、中田翔とか。そういう“THE4番”みたいなバッターは右でも左でもゴツい人が多いので、そういう相手に威圧感を与えるようなバッターがなるのかなとは思います。
――立大1回戦と2回戦ではスタメンを外れたが、その理由は
自分の実力不足ですね。(怪我、コンディション不良で外れたわけでは)ないです。
――その中でも3回戦は再び先発に復帰すると、1打席目で左翼席中段へ今季1号の先制ソロ本塁打を放った。1ボール2ストライクと追い込まれてからの一発だったが、打った球種やその感触、打席中に考えていたことを教えてください
小畠一心(営4・智弁学園)と相性が良かった(昨季も立大2回戦でソロ本塁打を記録)ので、失礼な言い方にならない範囲で言うと、自分としては三振する怖さがありませんでした。とりあえずコンタクトすれば長打になるかな、と思っていたので、高めの球を狙って結果的にホームランが打てたという感じです。
――相性がいいと感じる投手や、やりにくいと感じる投手のタイプ
僕が凡退しやすいピッチャーってスライダーの曲がりが大きいピッチャーで、それと外角のストレートを出し入れする右ピッチャーだと嫌だな、っていうのがあります。そこは小畠投手はフォーク主体なので、そこまで僕的には嫌じゃないというか、横の変化よりは全然対応できるのかなという風には思っています。
――幼少期はアメリカに滞在。日本の野球とアメリカのベースボールの違い
本当に基本的なところは一緒だとは思うんですけど、アメリカはいろんな人が集まってできた国家なので、「全員がそもそも違う」っていう認識があった上で、チームでやろうよっていう規律を強く持てる部分はあるんですけど、結果として結構自由にできる部分もすごく多いです。一応「規律、規律」とは言うんですけど、実際にそこまで規律が強いチームもそんなにないので、自分の個性を出しやすいと思います。一方で、日本はみんな生い立ちも似てますし、その上で集まってチームとしてやろうという意識が強い。「チームの勝利に向けてみたいな」という意識が高いので、日本とアメリカどちらにも良さがあって、両方好きですけど。日本の野球はやっぱり勝った時の喜びっていうのが一番大きいかなという風には思うので、だからこそ(このチームで)勝ちたかったなというふうには思います。
――野球を除いてほかの競技歴は。またその競技経験が野球に活きていることは
小学校の時はずっとバスケとアメフトと野球をやっていて、日本に帰ってきてはアメフトを一番やりたかったんですけど、SFC(慶應湘南藤沢)にアメフト部がなくて(笑)。(部活)外でやることじゃないかなというので、野球をもともとシニアでやる予定だったんですけど、授業で土曜日が行けないので(シニアも)ちょっと厳しいかな、と。ならどうせ高校も一緒だから、中学生の時期でやろうって思って、初めて軟式野球をやりました。意外と(軟式と硬式の)移行に手間取らなかったというかというか、基本的にアメリカではみんないろんなスポーツをやるっていうのがデフォルトとしてあるので、それが今のその身体能力に活きている可能性はありますし、「もっと野球を突き詰めてやればよかったな」って思うこともあるんですけど、でも違う部分で活きていると思うので、息子がいても同じことをやらせます(笑)。
――先日プロ志望届を提出されましたが、惜しくも指名には至りませんでした。現在の率直な心境は(取材は10月24日に対面で実施しました)
普通に予想通りっていうか、そうだろうなっていう風には思ってたんですけど。最後は出した方が面白いだろうなと思って、自分自身の腕試しというか、評価されてるかどうかも気になりますし、そういった意味では(志望届を)出してよかったなと思っています。
――最終カード・早慶戦に向けて、個人としてチームとして取り組んでいること
これまでと変わらず、個人としては打撃の中でいろんなミートポイントを、よりボールを引きつけて打つためにバッティングスタンドを使って練習して、そこをしっかり試合でも対応、生かせればなというふうに思っています。チームとしては守備のところでこの秋にいろいろな課題が出たんで、そこをしっかり詰めようっていう意識が全員あると思います。
――座右の銘とその言葉が自身のプレースタイルに活きている部分は
「粗にして野だが卑ではない(意味:見た目や言動が粗削りで洗練されていなくても、人格的には卑しくなく、気高い品性を持っている)」。父から読めって言われた本があって、商売の話なんですけど、その言葉が大事だと思っています。僕のプレースタイルは粗くて、野蛮かもしれませんけど、卑ではないという意味でピッチャーと真っ直ぐに対戦しているつもちはありますし、相手に対しても、仲の良い選手の数も六大学の中では多いので。スポーツマンシップはある程度あるし、リスペクトしながらできてるんじゃないかなと思います。
――各大学で仲良い選手の具体名を挙げるなら
明治だったら今井英寿(政経4・松商学園)選手とか瀨千皓(営4・天理)とかは今津(慶介、総3・旭川東)含めてよく焼肉とか行きます。リーグ戦の前日は、法政の片山(悠真)選手(文3・八王子学園八王子)と藤森(康淳)選手(営3・天理)と僕と今津で武蔵小杉にある生パスタを食べに行くというルーティンがあって、そこに行くと絶対に打てます。ワセダだと、伊藤樹選手(スポ4・仙台育英)や大内(碧真、スポ3・浦和学院)とよく連絡を取りますし、立教だとサードベースに行ったらよく丸山一喜(コミュ3・大阪桐蔭)とお喋りしますね。
――この4年間を振り返って、一番印象に残っている試合や瞬間は
3年春のキャンプ前に行われたセレクションで、全員が3試合ずつ出場して、そこで遠征メンバーが決まるんですけど、僕は全然打てなくて『これはもう無理だな』と思っていたんです。そうしたら最後の試合、2アウトから2人出塁して、3点差の場面で僕に回ってきて。同点ホームランを打てて、ギリギリ鹿児島のAチームに入れました。その後もキャンプ中のシート打撃でデッドボールを受けて、『もう1打席下さい』と監督にお願いしたら怒られました(笑)。それでも結局、たまたまピッチャーが1人投げたいと言ってくれて、僕も打席に入ることになって、またホームランを打ったんですよ。「これあるんじゃない?」と思って、次の試合で「9番・DH」に抜擢されると、4打数4安打。そこからずっと1ヶ月間打ち続けて、鹿児島の打率が5割、6割ぐらいまで上がりました。最終的にはスタメンを掴めたのが、最初は最終打席まで追い込まれた絶体絶命の中で、「うまくいきすぎだよな」とか思いながらも、すごく楽しい思い出でした。あと4年春は僕と今津がベンチで出番がなくて、2人で『どこかでチャンスを掴まないと絶対に干される』って思いこんで毎日必死に練習していました。そのまま2人でスタメンを勝ち取って、一緒に駆け上がっていったのは本当に楽しかったです。
――ともに慶大野球部で過ごしてきた同期はどのような存在か
本当に優しい同期。僕はマイペースで、周りに言動を全然合わせられないというか、自分が言いたいこと言いますし、自分がやりたいことやるようになって、めちゃくちゃ周りに迷惑をかけたと思います。それでも「常(常松の愛称)は自由にやれ」みたいな感じで、サポートをしてくれたのが同期で、他の代だったらもっと怒られたりとかするのかもしれないですけど、本当にこの代じゃなかったら、ここまで活躍できなかったなと思います。あとは外丸(東眞、環4・前橋育英)が2年の時点であそこまで活躍して、それを見て自分もリーグ戦で活躍したい、と本当に強く思えるようになったので、そういう意味でも彼には本当に感謝しかないです。
――期待している後輩は
毎日ずっと一緒に遊んでる今津で。もうすでにいい選手ですけど、今後チームを率いて勝たない、勝たせないといけない選手なので。単純に活躍する選手と大きく違うっていうのは、僕がこの1年感じたことですし、彼にはもう1年猶予があるので、僕も彼の活躍をどこで見てるかわかんないですけど(笑)。期待したいです。
――今津選手と仲良くなったきっかけは
気が付いたらもう仲が良かった(笑)。結構好きなことが似ているので、ストレスなくずっと一緒にいますね。
――慶應湘南藤沢中等部から10年間「慶應」に在籍。改めて常松選手にとって「慶應」とは
慶應だったからこそ、今の自分があると思っています。まず学歴で困ることはないですし、普通だったら「調子乗ってんじゃねえぞ」って思われるようなことでも、慶應内だと「割とユニークでいいじゃん」っていう感じで、リベラルな雰囲気がある。あと卒業後も深い関わりがお互いにあるっていうのが、人生を通して「慶應じゃないとダメなんだな」っていうのもいろいろな瞬間で感じるので。今後もその繋がりを大事にして、後輩たちも可愛がって、先輩にも可愛がってもらって、いい人生を歩める学校だなというふうに思います。
――今季のワセダの印象
タレント揃いだとはあると思うし、4連覇を懸けたシーズンだったので凄く気合も入ってたと思うんですけど、なかなかうまくいってないところもあるとは思うので。僕自身としては、強いワセダとしっかり最後に試合をするためにも、残り1週間でしっかり仕上げて、最高の状態で迎えたいと思います。
――ワセダの選手に一言
伊藤樹選手へ、全球真っ直ぐ待ってます!
――最後にラストシーズンとして迎える早慶戦に懸ける意気込みをお願いします!
たくさんのファンが来てくれて、それがあっての早慶戦だと思うので、ファンを魅了できるような豪快なスイングでホームランを打てるようにしっかりと準備をして、最後笑顔で終われたらいいなというふうに思います。
(取材、記事:加藤由衣)

 
  
  
  
  
