【應援指導部】4年生のラスト神宮 こだわり抜いた応援席とは/ 対早稲田大学戦 1.2回戦

應援指導部

ついに迎えた華の慶早戦。優勝こそ逃したものの、2位の可能性を残す野球部に声援を送り続けた應援指導部の姿に迫った。

11/1(土) 慶應義塾大学 3-5 早稲田大学

〜試合概要〜
東京六大学野球は創設100周年を迎え、明大が全勝優勝を果たした。優勝争いから外れた慶大と早大による早慶戦は、慶大が勝ち点を取れば2位、落とせば3季連続5位が決まる重要な一戦となった。慶大は渡辺和大(商3・高松商業)が先発し、打線は小原大和(環3・花巻東)が復帰。3回に竹田一遥(環1・聖光学院)の適時打で先制するも、直後に早大・寺尾拳聖(人3・佐久長聖)の本塁打で同点とされる。両チーム無得点のまま迎えた8回、渡辺和が四球と死球で満塁のピンチを招き、救援の外丸東眞(環4・前橋育英)が小澤周平(スポ4・健大高崎)に勝ち越し打を浴びる。さらに連打を浴びてこの回4失点。慶大は8回裏に今津慶介(総3・旭川東)の適時打、9回に渡辺憩(商2・慶應)の適時打で反撃するも届かず、3―5で敗戦した

試合前には、早慶戦ならではの試合前企画が実施された。一貫校の生徒がチア演技などを披露したほか、弊団体も出演させていただき、野球号の紹介などを行った。

また、「陣中見舞い」も実施された。陣中見舞いとは、宿敵・ワセダの応援席に一部の部員が出向き、慶應の応援歌などを披露するというものだ。4年生を中心とする部員が三色旗を持って早稲田の応援席に登場した。敵であるワセダとも肩を組みながら早慶讃歌を熱唱した他、若き血、ダッシュケイオウなど、慶應の名応援歌を敵陣に響かせた。枝廣代表が行った「学生注目」では、球場で配布されていた「ユンケル」を5秒で飲み干すというパフォーマンスを行い、観客席を盛り上げた。また、「優勝はかかっていないからこそ、早慶の本気の勝負が見られる」と観客に伝えた。

1回、内野応援席の壇上に立った枝廣代表がマイクを握り、「義塾社中一体となって、内野応援席、外野応援席で野球部を支えるぞ!」と声を張り上げる。その瞬間、拍手と歓声が一斉に湧き起こり、『若き血』の大合唱が神宮を包み込んだ。

0―0で迎えた3回裏の攻撃。この回、壇上に上がった部員は、慶早戦で「塾生注目」を担当するのが6回目だという。しかし、これまでその回で得点が入ったことは一度もなかった。
それでも、「何が起こるか分からないのが慶早戦だ。この回こそ得点が入る気がする。絶対に入れるぞ!」と声を張り上げる。続けて「そのためにも、応援席全体で大きな三色旗を作って、声を合わせて『三色旗のもとに』を歌おう!」と呼びかけ、スタンドを一体にした。
そしてその思いに応えるかのように、この回、竹田一の適時打で待望の先制点が生まれた。

5回は、2025年度秋季リーグ戦のチア曲である、『学園天国』の演奏から幕を開けた。裏の攻撃前には、早慶合同曲で学校名だけが歌詞で異なる『BLUE SKY KEIO』が歌われた。早大よりも約1000人も多くの観客で満たされた慶大応援席は、「同じ曲だからこそ慶應の方が大きな声で歌ってほしい」という部員の期待に応えるように、大熱唱で選手を鼓舞した。

8回は表に早大による4点の手痛い追加点に加え、丸田湊斗(法2・慶應)の怪我による途中退場などで慶大応援席は動揺と緊張に包まれていた。しかし、裏の攻撃で先頭打者の渡辺憩が二塁打で出塁すると、絶対にものにしたいこの場面で応援席は皆、総立ちをしてこの日初めての『朱雀』が奏でられた。すると慶大は今津の適時打で1点を返すことに成功し、応援席では観客一同、肩を組んで『若き血』を熱唱した。

3点を追いかける9回裏の攻撃前には、「サヨナラ逆転勝ちをするためには、あと4回『若き血』を歌う必要があるぞ!」という部員による声掛けがされた。4回とはいかなかったものの、慶大は渡辺憩の適時打による1点の追加点を奪取するなど最後まで粘り強い打撃で奮闘した。

結果は悔しさの残る形となったが、観戦に訪れた多くの観客に感謝の気持ちを述べた應援指導部には、観客席からも大きな拍手が送られた。

〜試合後インタビュー〜
應援指導部 枝廣二葉代表
--華の慶早戦・初戦を振り返って
まず、これだけの多くの方が内野席・外野席に駆けつけてくださって、一緒に応援出来たことがとても嬉しかったです。慶應にとってこの慶早戦が、いかに特別な試合であるか再認識しました。ただ一方で、試合に負けてしまったことはとても悔しいです。明日、明後日と、しっかりリベンジしたいと思います。

--序盤から締まった投手戦となったが、どのように応援を統率したか
投手戦だと長時間の応援ができない分、1回ずつの応援が大事になってくるので、メリハリの部分を意識していました。カズ(渡辺和大/商3・高松商)のテンポの良い投球に合わせて、テンポ良く応援をしようと心がけていました。

--終盤に挙げた2得点をどう捉えるか
あの2点が明日に繋がると思うので、今日の8回、9回の勢いのまま、明日は序盤から良い流れを作っていきたいです。

--2回戦に向けて
明日、必ず勝つためにも多くの人に応援に来てもらいたいと思いますし、月曜日もまた応援席に集えるように、全力で野球部を応援しようと思います。

 

11/2(日) 慶應義塾大学 0-3 早稲田大学

初戦を落とし、絶対に負けられない2回戦に臨んだ慶大は3回に2死三塁から、先発・小川琳太郎(経4・小松)の暴投間に先制を許す。6回には2番手・鈴木佳門(経1・慶應)が寺尾拳聖(人3・佐久長聖)に適時打を浴びると、なおも1死三塁から代わった水野敬太(経2・札幌南)が2死満塁から渋谷泰生(スポ4・静岡)に押し出し四球を与え、3点差となった。一方打線はワセダ先発・髙橋煌稀(スポ2・仙台育英)から6回に無死一、二塁の絶好機を作ったが、中軸が凡退。その後は香西一希(スポ3・九州国際大付)、伊藤樹(スポ4・仙台育英)、田和廉(教育4・早稲田実業)とワセダが誇る鉄壁投手陣の前に決定打を欠き、“チーム外丸”の最終戦は、無念の完封負けで幕を閉じた。

初回、枝廣代表は塾生注目にて、「今日は負けてらんねえぞ!」と決意新たに、若き血で応援席の一体感を高めた。

3回、無死一、二塁の苦しい場面では、リーグ戦初先発の小川琳太郎を応援席から盛り立てる。応援席全体が「おがりん」とエールを送ると、小川は打者を併殺打に打ち取ってみせた。

6回表は、先頭の丸田湊斗(法2・慶應)が失策により出塁。次は渡辺憩(商2・慶應)というところで、部員たちは観客に起立を促し『朱雀』を演奏。すると渡辺憩がヒットを放ちチャンスを拡大。得点とはならなかったものの、後半の反撃につながるイニングとなった。

6回裏、早大の守備時には、部員からこの日の朝に行われたワールドシリーズの話題が。「ドジャース対ブルージェイズの一戦は、大谷翔平選手の所属するドジャースが勝利した。つまり青が強いということだ。だから、本日勝つのは慶應義塾大学である」というタイムリーな声かけが飛び出した。

早慶戦は他のカードと異なり、外野席でも応援活動が行われる。この日も外野席に多数の部員が配置され、早慶戦仕様のメイン台を用意して応援が行われた。7回表には、『若き血』を斉唱するエール後に部員から「現在、内野と外野で全く同じテンポで、同じ曲を使用しています」との紹介が。内野と外野が一体となって応援する、早慶戦ならではの光景となった。

この日ここまで得点を取れておらず、得点時の『若き血』を歌唱することができていない慶大応援席。ついに9回表を迎え、代表として部をけん引してきた枝廣二葉さんが壇上に。「応援は理想を現実にする」という先輩から受けた言葉を紹介し「みなさんの応援の力が必要である」と応援席を鼓舞した。1アウトから加藤右悟(環1・慶應)がヒットを放つと『朱雀』が流れたものの、3点のビハインドを跳ねのけることができず終戦となった。

試合後、応援席では應援指導部員に加え野球部の選手たちも参加し、セレモニーが行われた。枝廣代表は秋のリーグ戦を振り返り、各カードの思い出を語った。
「秋のリーグ戦、たくさんの感動を見せてもらった。法政戦、覚えているか。1回戦から7ー7、小原の一打で追いついたぞ。明治戦、覚えているか。あいつら強かったな。あいつら優勝したな。あいつらには六大学野球の誇りとプライドを持って、明治神宮大会、優勝してもらおう。
東大戦、覚えているか。1敗したな。我々もいい思い出になった。そこから2連勝して、めちゃめちゃ勢いづいた。立教戦、覚えているか。正直本当にきつい戦いだったけど、10回の表に5点も入れたの覚えているか。応援席、最高だったぞ。そして、慶早戦、そりゃ覚えているよな。勝つことはできなかったけど、いい思い出ができたと思う。『丘の上』は3年生たちの代に託そうじゃないか」

この後に、応援曲メドレーが演奏され、野球部とともに最後の応援を神宮に響かせた。さらに、野球部・外丸東眞(環4・前橋育英)主将のあいさつでは、應援指導部員に向けて「勝った時は自分のことのように喜び、負けた時は自分たち以上に悲しむ、そんな仲間たちと戦えて幸せだった」という言葉があった。応援する側とされる側が共鳴する、彼らの締めくくりにふさわしいセレモニーとなった。

応援席を支えたのは、部員たちだけではない。塾生・塾員をはじめとする観客もまた、慶應の勝利を信じて応援を続けた。野球部、應援指導部、試合に訪れる観客。それらが一体となって初めて、神宮の応援席は成り立っていることを思い知る2日間となった。この秋、そして春も含めてこの1年、勝利した試合後にのみ歌う『丘の上』を神宮に響かせることは叶わなかった。しかし部員たちの勇姿は確かに神宮を彩り、100年の歴史を紡いできた東京六大学野球に欠かせない存在となった。

(記事: 岩切太志、工藤佑太、小林由奈、小野寺叶翔)

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