【弓術】『信じ、頂点へ』 監督最終年で伊勢に臨む島田監督 王座決定戦直前企画第③弾

弓道

11月21日、22日に伊勢神宮で開催される全日本学生弓道王座決定戦に出場する弓術部男子。優勝した2021年以来、4年ぶりの伊勢の舞台で、頂点を目指す。

今回は、塾生時代は選手として、2020年からは指揮官として弓術部に多大な貢献をしてきた島田壮監督(平7卒)にインタビューを行った。今年限りでの退任が決まっている島田監督。塾生時代から憧れをもち続けてきた伊勢の舞台への想いと、部員たちへの厚い信頼を語ってくれた。(このインタビューは11月16日に行いました。)

――昨年度からの成長を感じている部分を教えてください。

2つあります。

1つ目は、チームのコミュニケーションの部分です。今年は主将(森住俊祐、経4・慶應湘南藤沢)が意見を吸い上げる機会がすごく増えたように思います。幹事同士の話し合いでも意見をよく聞いていますし、部員からの意見もたくさん聞き入れています。『信じ、頂点へ』という目標を掲げている通り、強い信頼関係のもと、みんながお互いに信じ合っているのが今年のチームの特徴だと思います。

2つ目は、技術的なところです。毎年、いろいろな工夫をして取り組んできましたが、今年、特にてこ入れしたのが丹田(へその下あたり)の力を意識するところです。体の土台がしっかりしている上で、力強い矢が出ていくので、土台は絶対に崩してはいけない部分なのですが、以前はなかなかクローズアップできていませんでした。今年は幹事から「土台の部分を強化したいです。なにか良いトレーニングはありませんか。」という話があったので、足腰の強化を得意とするトレーナーの方をお呼びしました。その方にも弓道を見ていただいて、弓道に合ったトレーニングをいっしょに考えていただき、毎日5分間のトレーニングを続けてきました。以前は、試合の後半になると緩み(矢に力をうまく伝えられないこと)がでてきて、矢が抜けてしまうこともありましたが、今年は土台がしっかりしてきたので、試合後半でも力強い矢を出せるようになりました。

その2点が今年、すごく成長したところです。

 

――土台を安定させるために、他に取り組んできたことはありますか。

まっすぐ立って、土台をしっかりして、腰を据えて、丹田を意識して、その上で弓を持つことで初めて威力が発揮されます。その基本に対して忠実に練習するために、道場に「まっすぐ立とう」と貼り紙をして、道場に入ってから退場するまでの動作も含めて丁寧に取り組んできました。

 

――慶大弓術部の指針やポリシー、理念を教えてください。

弓術部は、「気品の泉源、智徳の模範たらんことを目指し、弓道を通じて全社会の先導者を育成、輩出する」という理念を持っています。

監督の立場としては、もちろん勝利にこだわりますし、部員たちには日本一を達成してほしいですが、卒業してからも立派な社会人になって活躍してほしいという想いがあります。部員たちが慶應義塾の目的である「気品の泉源、智徳の模範」を実現し、全社会の先導者になるために、この場で多くの経験を積んでもらうことを意識しています。

 

――ここからは王座決定戦について、4年前の2021年に出場し、優勝を果たしました。このときのことを振り返ってください。

ほんとうに熱い戦いで、決勝戦の最後は1本差でした。当時の主将が、僕の目の前で勝負の矢を中ててくれて勝てたのですが、今でもその光景を鮮明に覚えています。決勝の相手は(都学)Ⅰ部で優勝した日本大学で、我々は前年のインカレの優勝枠で王座決定戦に出場していたので、立場としては挑戦者でしたが、当たっても音がしなくなるくらい星(的の中央の黒い部分)の中に矢を集めることができ、精度の高い射をできました。

部員たちの射を見て、きっと勝てると思って見守っていましたが、とはいえ、いざ勝ったときは嬉しくて、涙が止まらなかったです。

 

――島田監督にとって、伊勢はどんな舞台ですか。

僕の現役時代は、行きたくて行きたくてしょうがなくて、どんなにあがいてもどうしても行けなかった場所なんです。その時の慶應は4年間Ⅰ部に在籍していたのですが、僕が4年生の時もどうしても勝てない相手がいて、とても悔しい想いをしました。慶應の選手たちも「伊勢にいこう!」「王座決定戦にいこう!」と日本一になるためにやっていたように、誰しもが目指す舞台ですし、決して簡単にいける場所ではないです。なので、監督をしている間に2回もいくことができるというのは、ほんとうに恵まれていることだと思います。

ただ、4年前と今年とでは全く違うと思います。4年前に優勝した時もものすごく嬉しかったのですが、Ⅱ部からインカレ優勝枠での出場でした。決勝戦の後に「Ⅰ部で優勝して王座決定戦にいこう」とみんなで誓って、ここまでやってきたので、その目標を実現できたのは嬉しいです。

 

――島田監督のラストイヤーで、ここまでの結果を収めることができていますが、どのように思われていますか。

6年間、たくさんの部員と接してきましたが、みんなほんとうによくやってきてくれたと思います。その頑張りが積み重なって、今年は王座決定戦に出られるので、連れていってくれる部員に感謝しています。

 

――この1年間、部員たちの成長を見てどのようなことを感じていますか。

ものすごく成長してくれたと思います。先ほどもお話した、丹田に力を入れるためのトレーニングも、4年生が先導してストイックに頑張ってくれました。この1年間、成長を見られたのはすごく幸せなことですし、嬉しいことですね。

 

――残りの1週間、監督としてはどのような取り組みをしていきたいと考えていますか。

ここから僕にできることは限られていますが、部員たちが試合で中てられるように、最大限支えていきたいです。今日も部員みんなにお守りを配ったので、それを糧に頑張ってくれればと思います。あとは、今年の目標の通り「信じる」ことですね。言葉に出さなくても、僕の想いを汲み取ってやってくれる部員たちなので、「信じる」だけです。

『信じ、頂点へ』の文字が刻まれたお守り

部員たちにお守りを渡す様子

――伊勢の舞台に臨む部員たちに、どんな言葉をかけたいですか。

最後の1本が終わるまで結果は分からないので、これでシーズン終わりだとか、これで引退だとか考えずに、最後まで引ききってほしいと思います。

 

(取材:蕭敏星、柄澤晃希)

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