【アメフト】これがUNICORNSの「本気」 “ラスト1分”からの劇的勝利でTOP8残留!/関東大学チャレンジマッチvs青山学院大学

記事

チーム2025のラストを飾るは、チームの命運を分かつチャレンジマッチ。いつものアミノバイタルフィールドで、いつもと違う緊張感に包まれて、ゲームクロックが最後の48分を刻み始める。立ち上がりは青学大の堅守を前に攻撃のリズムを掴めず、第1Qに先制のタッチダウン(TD)を許し0−7。第2QにもあわやTDのピンチを迎えるが、DL・篠原晴(経2・慶應湘南藤沢)の好守で失点を最小限に抑えると、K・北村朔也(商2・宇都宮短大附)がフィールドゴール(FG)で3点を返し、3−10で前半を終える。第3Qは開始直後。青学大をこの試合初のパントに追い込むと、直後の攻撃でSB・猪ノ原浩臣(経4・慶應)が意地のTD。K・北村の右足で10ー10の同点に追いつき、良い形でラスト12分へ。しかし第4Qには、自陣深くでの罰退から痛恨のTD。それでも残り1分11秒、QB・山岡葵竜(政4・佼成学園)の執念のTDから、TFP成功で再び17-17の同点に。そして、残り4秒。K・北村が29ヤードのFGを決め、20ー17で逆転に成功。慶大が歓喜に包まれる中、時を同じくしてゲームクロックは”0”を刻んだ。この瞬間、慶大のTOP8残留が決定。白熱のチャレンジマッチ、そしてチーム2025の戦いは慶大の劇的勝利で幕を閉じた。

12月13日(土)@アミノバイタルフィールド 

 慶大
UNICORNS
青学大
LIGHTNING
第1Q
第2Q
第3Q
第4Q10
2017

底冷えする寒晴のアミノバイタルフィールドで、チーム2025の最終章が幕を開ける。先攻の慶大は、自陣30ヤード付近で攻撃を開始。QB・山岡葵竜のランプレーとWR・田村遼(法4・慶應)へのパスを軸に前進も、青学大の堅守を前に攻撃のリズムを掴むことができない。自陣で4thダウンを迎えた慶大は、TOP8有数の飛距離を誇るP・加藤雄大(理2・本郷)のパントで陣地を回復。直後のシリーズでは、青学大オフェンスにじわじわと後退を強いられ、自陣19ヤードで迎えた青学大の3&11。TDパスを通され、先制点を許してしまう。キッキオフでは、青学大が徹底して慶大エース/WR・久保宙(経4・慶應)を避け、リターンを封じにかかる。さらに、QB・山岡からRB・山内啓耀(経4・慶應)へのハンドオフが読まれると、ベンチから思わず「まじか」という声も。2ドライブ連続のパントで攻撃権を譲り渡すと、青学大がロングゲインを決めたところで第1Qが終了する。

QB・山岡葵竜

第2Q開始の合図で、青学大の攻撃が再開。慶大は相手を4th Downに追い込むが、自陣7ヤードでフレッシュ獲得を許し大きな山場を迎える。フィールド上で主将/DB・横手謙太朗(医4・慶應)が「ここよ」と仲間を鼓舞すれば、ベンチの部員たちも「行くぞD!焦るな」とディフェンス陣の背中を押す。3&2(to goal)のピンチでは、DB・横手が冷静に相手RBを抑え込んでガッツポーズ。尚もピンチの4&2(to goal)には、DL・篠原晴が相手RBを一瞬で仕留めるナイスタックル。このシリーズを無失点に抑え、自陣5ヤードで攻守交代。好守を機に流れを掴みたい慶大だったが、FGでビハインドを10点に広げられてしまう。それでもQB・山岡が持ち前の機動力を発揮して敵陣13ヤードに迫ると、残り10秒。スパイクに見せかけたフェイクプレーで、WR・久保宙へパス。しかし、判定は悔しくもアウトオブバウンズでパス失敗。慶大はタイムアウトでゲームクロックを止めると、K・北村朔也が30ヤードのFG。まずは3点を返し、3ー10で前半を終える。

好守を見せた主将・横手謙太朗

第3Qは開始直後、青学大をこの試合初のパントに追い込み攻守交代。自陣37ヤード付近で1&10を迎えると、慶大オフェンスがその実力を遺憾なく発揮する。パスを受けたWR・久保宙は、迫り来る相手選手を次々にかわして敵陣46ヤードに侵入。さらに、WR・田村遼のブロックを活かして、RB・山内啓耀が1st  Downを更新。敵陣36ヤードで迎えた2&11の場面でも、慶大の技巧が光る好プレー。QB・山岡が前方のWR・牧野仰希(総3・成城)にパスを出すと、牧野が左に抜けながらWR・久保宙にバックパス。WR・久保宙はボールをQB・山岡に戻してマークを外すと、再びボールを持って右サイドを駆け上がる。相手の意表を突くトリッキーなプレーで、8ヤードを前進。続く3&3では、相手ディフェンスを切り裂く鋭いパスをWR・鈴木郁実(総3・公文国際)がランニングキャッチ。敵陣17ヤードに切り込むロングゲインでチームを勢いづける。QB・山岡が3連続でボールを運び、迎えた2&4(to goal)。試合の流れを大きく分けるこの場面で、山岡がボールを託したのはSB・猪ノ原浩臣。パスを受けた猪ノ原は左に抜け出して相手選手を振り払うと、そのままエンドゾーンに転がり込みTD。さらに北村の右足で10ー10の同点に追いつき、良い形でラスト12分へ。

TDを決めた猪ノ原浩臣

第4Qでは、DB・横手謙太朗のパスカットやLB・赤木龍士朗(政4・鎌倉学園)のナイスタックルが炸裂。この調子ならきっと大丈夫。そんな淡い期待を抱いた矢先、慶大の反則により青学大が自動的にフレッシュを獲得。なんとしても失点は避けたい慶大だったが、ここで痛恨のTD。残り9分30秒にして、再び7点を追う波乱の展開に。それでも、慶大は立て続けにギャンブルを成功させて1st Downを更新。敵陣1ヤードに迫ると、最後はQB・山岡葵竜が執念のTD。K・北村朔也のTFPも決まり、残り1分11秒で再び試合を振り出しに戻す。続く青学大の攻撃をパントに抑えると、残りは47秒。慶大は自陣34ヤードからQB・山岡のスクランブル、WR・久保宙へのパスで前進も、後が続かず残りは15秒。「絶対勝つぞ慶應」のチャントが響く中、自陣46ヤードで迎えた3&10。QB・山岡がボールを託したのは、またもSB・猪ノ原浩臣。この大一番で42ヤードの超ロングパスを成功させ、一気に敵陣へと侵入。そして、残り時間は4秒。総立ちの観客が息を呑んで見守る中、K・北村の蹴り上げたボールは弧を描いて29ヤード先のゴールを通過する。このFGで3点を追加し、20ー17で逆転に成功。慶大サイドが歓喜に包まれる中、時を同じくしてゲームクロックは”0”を刻んだ。この瞬間、慶大のTOP8残留が決定。白熱のチャレンジマッチは慶大の劇的勝利で幕を閉じた。

FGで残留を決めたK・北村朔也

今季は苦しい戦いが続いた中で、最後の最後にUNICORNSの「本気」と「意地」を見せつける結果となった。ラスト4秒でTOP8残留を決めた瞬間。これまで絶対に泣かなかった選手たちが人目を憚らずに涙して喜ぶ姿を見た時、胸に込み上げるものがあった。最後に慶大らしいアメフトを見せてくれたこと、最高の景色を見せてくれたことに心から感謝したい。来季以降もTOP8の舞台で走り続けるUNICORNSの姿を楽しみに、筆を置く。

引退を迎えたUNICORNS4年生

(記事・取材:長掛真依、取材:神戸佑貴、水野翔馬、鈴木拓己、吾妻志穂、奈須龍成、神谷直樹)

 

▽以下、選手インタビュー

DB・横手謙太朗(医4・慶應)

ーー今日の試合振り返って

本当にギリギリの試合で、途中は震えが止まらなかったりもしたんですけど。きつい試合になるよっていうのは皆にも言っていた中で、実際そうなって。それでも最後の最後まで自分、仲間、今までやってきたこと全てを信じていれば絶対勝てると思えるような練習をしてきたので、それが結果に繋がったのかなと思っています。

ーー最後の最後の試合で、後半に力を見せたチームを主将としてどう見るか

この試合では本当にこの2025年シーズンの集大成を見せようっていうことで約1ヶ月間準備を重ねてきて。確かに後半の弱さだったりっていうところも、結局は基礎の部分が徹底されてないという話に還元されるので、もう一度基礎やフィジカルだったりを見つめ直して準備した結果勝てた。確実に基礎の徹底が今日の勝利に直結していると思います。

ーー試合後には涙ぐむ場面も

込み上げてくるものがありました。やっぱこの1年間はもう本当にしんどくて。怪我とかもあってなかなか出られないところもあったりしながら、やはり最後まで主将としての重圧を感じていました。

ーー横手選手としてはここで1つ区切り、後輩たちへのメッセージをお願いします

本当にここからが現役選手はスタートだと思うので。明日からもう来年の日本一への道のりは始まるわけなので、そこに切り替えてやってほしいなと思っています。

WR・久保宙(経4・慶應)

ーー今日の試合を振り返って

練習の時からこういう厳しい試合になるっていうのはずっと言っていました。ただ、いざ厳しい試合になるとみんな焦っちゃって。それでも最後までお互いのことを信じてやろうっていう部分は徹底しました。最後勝ててよかったなと思います。

ーー個人としての今日のプレー

自分自身は今シーズン怪我でずっと出れてない部分もあって、最後の試合なんとか戻ってきてチームの中心に立って、プレーを作ってもらってた部分もあったので。なんとかチームを前に進めよう、前に進めようという部分で貢献できたかなというふうに考えて嬉しかったです。

ーー後輩へのメッセージをお願いします!

アメフトは、時間をかければかけるほど報われるスポーツなのかなって思っていて。もちろん身体能力も大事なんですけど、戦術だったり、テクニックだったりっていうのは自分からこう時間かければかけるほど上達できる部分だと思うので、とにかくアメフト好きになってアメフトに時間かけてほしいなと思います。

QB・山岡葵竜(政4・佼成学園)

ーー試合を振り返って

青学は去年の入替戦で負けていたので、今年の入替戦に懸ける気持ちが強いこと、厳しい試合になることは分かっていたので。想定内ではあったけれど序盤は向こうに勢いで押されてしまって、それでも自分たちのやるべきことをやって流れを取り返すしかないなと思っていました。

ーー流れをつかめたきっかけは

まず前半最後に3点を取れたというのは、チームを勢いづける上で大切だったのかなと思っています。点を取って後半に入ることができたというのは、一つ大きかったかなと思います。

ーー試合中はどんな想いで戦っていましたか

本当に勝つしかないというか。勝たせることが自分の最後の責務であって、後輩たちにTOP8の舞台を残すということが自分の唯一の使命だなと思ってプレーしていました。

ーー高校同期・大坪英泰選手(政4・佼成学園)のスナップも最後でした

彼自身は入替戦が決まった1ヶ月前くらいからメンタル的にも結構苦しい部分があったと思うんですけど、彼と最後までフィールドに立てて勝利という形で終われたのでとても嬉しいです。

ーー後輩QB・瀧沢徹選手(経2・慶應)について

本当に有望で、僕にないものを持っていると思います。来年は誰がQBとして試合に出るのかまだ分からないですけれど、良いQBはいっぱいいるので。後輩たちの活躍を楽しみにしながら、来年はスタンドから見守りたいと思います。

ーーアメフト生活10年間を振り返って

苦しいことの方が多かったのかなと思っていて、本当にアメフトを軸に、アメフトを中心に進路選択もしてきましたし、とにかく感謝。人間的にも成長することができましたし、何よりも中高大で出会えた仲間。本当にたくさんの仲間と週6で一緒に汗を流して絆を深められたということが1番の財産なのかなと思います。

SB・猪ノ原浩臣(経4・慶應)

ーー今日の試合を振り返って

今日の試合は思ったより序盤点数が取れずに厳しい展開になってしまったので、後半からチーム一丸となって今までやってきたことを信じてやろうと思ったので、それが結果となってうまく結びつけられたのが良かったと思います。

ーー最初のタッチダウンについて

タッチダウンをとった時は葵竜くん(山岡葵竜=政4・佼成学園)が良いボールを投げてくれたので、そこで落とさないかどうか少しヒヤヒヤしましたが、無事取れてタッチダウンできたので安心しました。

ーー立大戦では怪我への言及がありました、そこからの1ヶ月はどのように準備されてきましたか

まずは怪我をしていたので、スクワットを中心に自分のもとの体に戻せるように筋トレで体をつくっていきました。そこからはいろんな人と練習終わりに合わせとかしていって、そこで連携をつかめたので。そこを試合でうまく活かせたことが良かったと思います。

ーーUNICORNSでの4年間を振り返って

最初の3年間はあまり試合に絡むことができなかったですけど、4年生のラストシーズンで、最後の試合でこのような形で勝利に導けるような存在になれたので悔いなく終わることができたのでとても良かったと思います。

DL・篠原晴(経2・慶應湘南藤沢)

ーー今日はTD阻止のビッグプレーがあった

自分の強みを信じてそれをやるしかないっていう思いで、自分の力を信じてがむしゃらに行けたところが結果として出たと思います。

ーー来年に向けての意気込み

ありがたいことに今年はたくさん試合出させていただいて、1試合やるごとに成長を自分でも実感できたので、それを後輩に還元したり、同期とも高め合っていきたいと考えています。まだまだ自分のことに集中し過ぎてしまうこともあるので、周りを見るっていう面でもうちょっと成長したいなと思ってます。

慶應スポーツ新聞会アメリカンフットボール班チーフ・神戸佑貴

苦しいシーズンとなりながらも最後の最後で目にした逆転勝利には、取材陣一同言葉にできないほど深く心動かされました。2025年も取材の際に多大なるご協力を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。来季のさらなる飛躍を楽しみにしております。ありがとうございました。

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