受験を乗り越え、慶應義塾体育会で活躍する塾生にインタビューを行う受験生応援企画。第8弾となる今回はソッカー部の田中斗湧(政1・専大松戸)にインタビュー。強豪・専大松戸高サッカー部に所属していた田中は、現役で明大の政治経済学部に進学。大学進学を機に、一度はサッカー人生にピリオドを打ったが、明大1年の秋に慶大受験を決断し、法学部政治学科合格に至った。異色の経歴をもつルーキーの受験期に迫る。
2024年11月。明大政治経済学部1年生だった田中は、慶大受験を決意した。現役の頃は慶大受験をしなかった中でその決断に至ったのは、一度はやめたサッカーへの熱い想いが湧き上がってきたからだ。
高校時代は、強豪ひしめく千葉県の中でも上位につける専大松戸高校サッカー部に所属していた田中。夢中でボールを追いかける日々を送っていた。受験に向けても、往復2時間の登下校の時間で単語を学習し、高3になってからは塾に通い始め、練習後の疲れた状態でも塾で自習するなど、時間を一切無駄にしない生活を続けた。
それでも、高3の11月、選手権千葉大会で敗れた際には、悔しさでしばらく立ち直れなかった。
「負けてから1週間くらいは引っ張って、勉強を全然できなかった」と話すように、切り替えが難しい時間もあったが、「やるしかない」とメンタルを立て直し、サッカーで培った体力を活かして再び勉学に励んだ。11月の時点では良い判定は出ていなかったが、「自分は下剋上の立場だったので、辛いという感情はなかった。上がっていくだけだったので、楽しんでいた。」と置かれた状況をポジティブに捉えて努力を続け、そこから偏差値を10以上も向上させた。特に重宝したのは、『HISTORIA』と『世界史用語集』の世界史の参考書2冊。世界史対策が功を奏し、明大政経学部に現役合格を果たし、進学を決めた。
2024年春、晴れて明大の門をたたいた田中。競技としてのサッカーには、ここで区切りをつける。そう考えていた。しかし、関東大学リーグや早慶定期戦を観戦し、「本気のサッカーをしたい」という熱い想いが湧き上がってきた。明大サッカー部への入部は叶わなかったため、サッカーをするにはまた大学受験をする必要がある。選んだのは、ソッカー部のサッカーが魅力的に映った慶大だった。
慶大受験に向けては、『東大の世界史25ヵ年』で世界史の記述対策に取り組んだ。慶大の過去問と類似する問題も多く、この一冊は大いに役立った。受験期は、2時間勉強し、息抜きとして15分散歩に行くサイクルで生活した。また、SNSは断ち切り、1日のスクリーンタイムはおよそ25分に制限した。
受験直前に明大の定期テストの勉強をしなければならず、仮面浪人ならではの苦悩もあったが、受験勉強を経て成長したメンタルを武器に、慶大法学部政治学科合格を果たした。
田中は「慶應に来て良かったと思うこと」について、「他人のために、チームのためにプレーするチームに出会えたこと」だと話した。予定していなかった2度目の受験が田中にもたらしたのは、仮面浪人時代に憧れをもった姿と比べても、より魅力的だったソッカー部との出会いだった。
2025年シーズンは、Iリーグ(※1)でアシストを記録するなど、アピールを見せたが、まだまだ関東大学リーグや早慶定期戦の出場には遠い。今度はピッチで、田中斗湧の下剋上物語が始まる。
※1 Iリーグとは…トップチームの選⼿以外(セカンドチーム以下の選⼿)に、公式戦の出場機会を提供することを⽬的とした⼤会。
(記事:柄澤晃希、写真:ソッカー部提供)

