【ソッカー(男子)】「足し算ではなく掛け算」 磨き続けた先に見えた光/4年生卒業企画「光るとき」 No.11・永澤昂大

ソッカー男子

25年度に卒業を迎える4年生を特集する特別企画「光るとき」。第11回となる今回は、男子ソッカー部の・永澤昂大(政4・國學院久我山)。高校時代の悔しさを胸に大学で再出発し、ポジション変更や挫折をも経験しながら、自身の役割を模索し続けた4年間。派手な主役ではなくとも、周囲を生かし、組織を支える存在としてピッチに立ち続けたその歩みを振り返る。

 

幼稚園の頃、同じ幼稚園の友人に誘われたことがきっかけでサッカーを始めた永澤昂大(政4・國學院久我山)。國學院久我山高校へと進んだ彼は、1年時からトップチームで試合に絡むなど、周囲からの大きな期待を背負う存在となった 。

 

しかし、高校3年間の記憶は決して輝かしいものばかりではない。3年時には、部員が200名を超える組織で主将という重責を担いながら、チームを全国の舞台へ導くことは叶わず、最後は自らもチームを支えきれなかったという後悔が残った。「期待に応えられなかった3年間だった。自分が描いていた理想とは程遠かった」と当時を振り返る。

 

この「不完全燃焼」の思いこそが、一度は進路に迷った彼に大学サッカーへの道を選ばせる決定打となった。「サッカーを好きなまま終わりたい」「自分が満足するまでやりきりたい」。そんな思いを胸に、彼はソッカー部に4年間を捧げる決意をしたという。

 

「今まで自分が積み重ねてきたもので、1年間は勝負したい」と決めていた永澤は、ボランチとして入部。しかし同ポジションには、同期の田中雄大(商4・成城学園/三菱養和SCユース/横浜F・マリノス内定)や角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース/柏レイソル内定)と実力者が並んだ。「このままでは4年間試合に出られない」と感じながらも、自身のフィジカル強化や組織に対してどこか身が入らない日々を過ごしていた。

 

薄々感じていた焦燥感から転機が訪れたのは、2年目の春だった。ボランチを離れ、ディフェンダーへの転向を決意。同時に、パーソナルトレーニングでの体作りや、自身の弱点と徹底的に向き合う日々をスタートさせた。これまで持っていたプライドを払拭して等身大の自分と向き合ったことで、監督からも「自分にベクトルが向くようになった」と言われたという。その経験を通じて自身のプレースタイルを見つめ直した永澤は、「自分一人で何かを起こす選手ではない。足し算ではなく掛け算をするような、周りを生かす存在でありたい」と自身の役割を再定義した 。

 

ソッカー部での2年目も終盤になり、迎えた関東リーグ3部第21節・共栄大戦。永澤はスタメンに抜擢され、待望の初出場を果たす。この試合で見事(関東リーグ)初ゴールも決め、チームの快勝に大きく貢献した。この一撃は、これまでの地道な努力が形として現れた結実の瞬間であった。

 

3年生になると、永澤はピッチ内外での立ち位置をより意識するようになる。同期には試合に出続ける主力メンバーが多くいたため、サッカーに関しては「4年生よりも引っ張る」という気概で取り組んだ。一方で、後輩たちに対しては、「何でも言えるような柔らかい立ち回り」を意識。組織の潤滑油として、チームの空気を整えることも大切にしていたのだ。

 

激動の4年間を通じて永澤が得たものとして挙げたのは、「利他性」と「謙虚さ」。利他性に関しては、「それがないとやっていけない組織だった」と語る。慶應ソッカー部という、個ではなく組織の勝利のために全員が身を捧げる集団において、彼は「他者のために動くこと」の真意を学んだ。また、高校時代に主将を務め、「ここまでやったんだから」と抱えていたはずのプライドは、大学で突きつけられた圧倒的な現実によって「謙虚さ」へと変化した。一度はCチームまで落とされ、田中や角田といった存在を目の当たりにしたことで、自らの現在地を認識し直した。「雄大や惠風を見て、『俺って全然何にもないんだな』と気づけた。自分より頭が良くてサッカーも上手い人がたくさんいる。謙虚にならざるを得なかったし、誰に対しても上はいるということを痛感した」。 かつてのプライドを脱ぎ捨て、自分なりの役割を認識して行動に落とし込む。その謙虚な姿勢こそが、彼を関東1部の舞台で戦える選手へと押し上げた。

 

ラストイヤーの4年目、永澤はピッチ内外でその「利他性」を体現し続けた。表立ってチームをけん引するリーダーがいる中で、彼は試合に出られないメンバーや下級生が伸び伸びとプレーできる環境作りにも奔走。また、「トップチームに居心地の良さを求めるわけではないけど、サッカーをやっていて楽しくないと思う場所にはしたくなかった」と自身の意識的な立ち回りを語った。

 

永澤は、ソッカー部での4年間を「苦楽」という一言で表した。多くの困難を乗り越えた先に、関東リーグでの活躍や、4年目にして待望の早慶戦出場、そして早慶戦での勝利など、多くの喜びを仲間と共有した4年間だった。そんな永澤は後輩たちに対して、「もし今きつい状況にいても、自分だけは自分のことを信じてひたむきに頑張ってほしい。俺が1部で試合に出られたんだから、誰だってなれる」と期待を込めた。誰よりも謙虚に、そして誰よりも他者のために戦い抜いた永澤昂大。彼の「昂ぶる」強い志は、後輩たちが再び1部の舞台で光るための道標になるだろう。

 

(取材、記事:愛宕百華)

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