【ソッカー女子】確実に捉えた女王の背中 早慶戦

小雨が降りしきる中、行われた第11回女子サッカー早慶定期戦。ここまで1分9敗と圧倒的な差を見せつられている慶大だったが、今年は違う。地力に勝る早大に押し込まれても、ボールを奪い前に攻める姿勢を失わない。すると後半開始直後、右サイドからクロスを須藤(商3)がうまく合わせて先制。後半終了間際に不運な形で失点し、1-1の引き分けとなったが、早大相手に初めてリードするという歴史的試合となった。

 

6月16日(土)15:00k.o @慶大日吉陸上競技場

 

慶大 早大
前半
後半
慶大得点者 53分 #4須藤なぎさ(#18赤羽紗里)

♦慶大出場選手♦

第11回早慶戦スタメン 

GK 佐々木 優(商2・ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18) 
DF 宮原 うらら(政4・成蹊高)
DF 川崎 栞(政4・慶應湘南藤沢高)
DF 平田 諒子(文1・福岡女学院高)
  →山下 千尋(経4・川崎ウィングス)
DF 遠藤 未来(環1・村田女子高)
MF 山本 瑶子(政4・慶應湘南藤沢高)
MF 梅原 那奈(環1・常葉学園橘高)
MF 中山 茜(環4・横須賀シ―ガルズ)
MF 赤羽 紗里(総1・スフィーダ世田谷)
MF 須藤 なぎさ(商3・大和シルフィード)
  →二宮 早紀(環1・常葉木学園高)
  →白石 舞由華(経1・慶應湘南藤沢高)
FW 石原 愛海(環3・JFAアカデミー福島)
  →渡邊 紗絵(環2・大和シルフィード)
早大が圧倒的なボール支配率を誇り、慶大が防戦一方という展開だったこれまでの早慶戦。しかし今年は違う。試合開始直後から中盤での激しい攻防が続く。徐々に早大に押し込まれるシーンが目立ち始めるが、大きくクリアすることは少なく、ボールを前につなぎ攻めるという姿勢が多く見られた。引いて守るのではなく、前線からプレッシャーをかけてボールを奪いにいく。今年の早慶戦のテーマ「前へ、貪欲に」を体現する慶大イレブンに大きな期待がかかる。

 

攻撃の原動力・中山主将は今年も健在

慶大は中山主将(環4)のいる右サイドから攻撃するもシュートには至らず。するとカウンターから慶大左サイドを突破され、キーパーと1対1の場面に。ここでGK佐々木(商2)が好セーブし、先制点を許さない。徐々に早大ペースとなるが、川崎(政4)、平田(文1)のCBコンビを中心に何とかしのぎ切る。

すると慶大にとってこの試合最初のチャンスが訪れる。中盤で奪ったボールを中央の石原(環3)につなぐとドリブルで相手をひきつけて、右サイドの中山へ。そのままシュートに持ち込み、枠を捉えることは出来なかったものの、多くの観客が詰めかけた慶大応援席を沸かせる。早大にも個人技からピンチを作られるも粘り強く守り抜いた。慶大は前半途中から中山をワントップ、石原をトップ下という去年まで攻撃陣を牽引していた布陣に変更して先制点を狙うも決定機は作れず。スコアレスのまま、前半が終了する。

今まで苦汁をなめてきた早慶戦だが、過去2回はともに前半はスコアレスで折り返していた。そのため「後半開始からの10分が勝負―」。その言葉通り、後半開始直後は一気に慶大ペースに。まずは石原が自ら倒され獲得したFKからミドルシュートにつなげる。すると直後の後半8分、ついに慶大ソッカー部女子がまた大きな歴史的な一歩を踏み出す。中盤でインターセプトした山本(政4)が中山に絶妙のスルーパス。これは相手ディフェンスの好守に防がれるも、こぼれ球を右サイドで拾った赤羽(総1)が巧みなボールタッチでディフェンスを振り切り、センタリングを上げる。キーパーの逆を突いたクロスに飛び込んだ須藤(商3)がうまく合わせてゴールに押し込み、見事先制する。「本当に理想的な形で、全員で取った素晴らしいゴール」(岩崎監督)、「自分の中で一番得意な得点の形」(須藤)で、早慶定期戦史上初めてリードを奪うことに成功した。

先制ゴールをあげた須藤を中心に歓喜の輪

慶大の勢いは止まらない。右から中山の上げたクロスに遠藤(環1)が合わせてダイレクトボレー。枠を捉えることは出来なかったが、先制しても攻める姿勢は決して変えない。中盤では1年生ながらフル出場した梅原(環1)が献身的な守備とパスワークでチームに貢献。右SB宮原(政4)も効果的なインターセプト、クリアを見せるなど、全員サッカーで早大に立ち向かう。

後半の苦しい時間帯になると平田が負傷退場、石原も足をつらせて交代。他の選手も運動量が低下する厳しい展開になる。ついに早慶戦念願の初勝利はもうすぐ目の前。しかし、残り8分というところでセットプレーから不運なオウンゴールで同点とされてしまう。肩を落とす選手には無情にも強くなる雨が降りつける。結局、試合はこのまま終了し、1-1の引き分け。それでも25分ハーフで行われた2009年の早慶戦を除けば、早慶戦初めての引き分けという快挙を達成した。

 

1年生・赤羽は貴重なアシストを記録

だが、監督・選手の表情は晴れ晴れとはせず。岩崎監督が「これが現状の力、勝ち切れなかった」と話せば、石原も「まだまだもっとやっていかないと相手を圧倒することは出来ない」と満足していない。「引き分けに終わってどれだけ悔しい思いをしているか、悔しい思いをしているならそれをどうやって果たすか」(岩崎監督)。目標に定めたインカレベスト4へ向けて。やはりひと味もふた味も違う慶大なでしこから目が離せない。

(記事 並松 康弘)

 

 

 

コメント

 岩崎 陸監督

 (1-1という結果について)これが現状の力かなと思います。1-1という結果ですけど、早稲田も当然勝つと思っていてちょっと焦りを誘った部分もありますけど、後半残り20分余裕があって、あそこで1点を取ってくる力がありました。自分たちはそこで勝ち切れなかったというのは何が原因なのかをこの試合から考えて次の試合に進んでいかないといけないかなと思いました。(早慶戦への意気込みは)早慶戦は、多くの方々に見に来ていただいたり、初めての陸上競技場でUstreamでの中継をやったりとピッチに出る選手、出ない選手関わらずお客さんを集めてやる、自分たちで作り上げる大会なので、自分たちで作り上げた舞台を90分しっかり戦いきろうという話をしました。(ボールを持って前へ攻める姿勢が印象的だった)選手たちが決めてきたテーマが「前に 貪欲に」でした。今までの早慶戦というのは守って善戦するけども、なかなか点を取れない、点を取れるチャンスがないという状況で戦っていたので、前に出るのは怖いかもしれないけど「前に貪欲に」出て点を取りに行こうという話をしました。(前半途中から中山選手のワントップに変えた意図は)右サイドでも相手に脅威を与えていたんですけど、より真ん中でプレーすることによってより相手のCBにプレッシャーかけられると思いました。かつ、ボールを奪ったあとのターゲットとして中山が前にいることによって、自分たちの目標が明確になるんじゃないかなと思ったので、思い切って変えました。(先制点の場面は)その前に山本瑶子が中盤で奪って、中山へのスルーパスが非常に素晴らしかったですね。そこで中山がつぶれた後に赤羽紗里が右サイドからクロスを上げてそれが須藤が押し込むっていう本当に理想的な形で、全員で取った素晴らしいゴールだったと思います。この運営も(副務の)須藤と(主務の)川崎栞がリーダーになってやってきたので、あそこで須藤が決めたっていうのはそういう気持ちが前面に出たのかなと思います。(赤羽選手や梅原選手ら1年生の活躍も目立った)彼女たちはもちろん高校までにしっかり実績を残している選手ですけど、この中でできたとか出来ないではなくて、もっと上を目指してほしいと思います。まだ4年生に力を引き出されている部分があると思うのでしっかりチームを背負って、チームの勝利に貢献できる選手になって欲しいですね。今日、赤羽はいいクロス上げましたけど、その前の4年生のおぜん立てがあるからこそだったので、早く慶應の選手になって大学リーグまでにひと伸びふた伸びしてほしいと思います。(この結果が今後にどう生かせるか)これで早稲田も慶應には簡単に勝てないなと改めて分かったと思うので、ここからは自分たちが一つハードルを上げたと思っています。2009年の早慶戦では国立競技場で引き分けたんですけど、その後の大学リーグでは5-0で完敗しているので、自分たちでハードルを引き上げて自分たちもそれを越えていかないと大学リーグでは勝てないと思います。次も早稲田はこんな戦い方はしてこないと思うので、それに対して自分たちはどう出来るかっていうところで自分たちが高いハードルを設置したのかなと思います。(今後への意気込みは)前期はフルの勝負ではないんですけど、(1部リーグ所属の)武蔵が丘短期大学と早稲田に真剣勝負をやらせて頂いて、引き分けという勝ちきれない結果はまだまだ自分たちの力のなさを表していると思います。大学リーグはどのチームも差がなくて、本当にちょっとしたことが勝負を決める試合だと思うので、それに向けて今日引き分けに終わってどれだけ悔しい思いをしているか、悔しい思いをしているならそれをどうやって果たすんだっていうのをしっかり考えて、明日からの練習につなげていって欲しいなと思います。

 中山茜主将

(今日の試合を振り返って)前半を0-0に抑えたのは去年もおととしもそうだったので、後半開始からの10分が勝負だよと言われて、その10分で1点を取ることが出来たのは慶應として新たな一歩を踏み出せたかなと思います。(意識したことは)これまで1回も勝ったことがなくて、今までは守備の時間が長かったので、今年は前へ前へ貪欲にいこうということをチーム全体のテーマとしてやっていました。(自身最後の早慶戦だったが)入学する前から早慶戦に憧れていて、4年間で1度でいいから勝ちたいというふうに思っていたので、本当にこの早慶戦に懸けていました。(そういう意味では、4年間で1番勝利に近づいた早慶戦だったが、手応えは)あります。1点取ったこともそうなんですけど、これまで早稲田の厚いディフェンスを崩すことが出来なかったんですけど、パスで崩せたということは本当に一歩前進したなと思います。(これからの戦いに向けて)7月から全日本選手権の予選が始まるんですけど、まずそこで東京都で1位になって、また夏から始まる大学リーグに弾みをつけて、インカレには絶対に出場したいと思います。

 石原 愛海 

 
(今日の試合を振り返って) 今日は雨だったので、相手もすごくミスが多かったしそういう部分で、普段だったら点を取れなかったかもしれないところで取れました。雨に助けられた部分が多く、晴れた日に試合をやっていたらどうなっていたか分からないです。そういう中で勝てなければ意味がないと思います。引き分けっていう結果は今までの早慶戦の中では良かったと思うんですけど、でもまだまだもっとやっていかないと相手を圧倒することは出来ないと思いました。 (ドリブル突破が目立ったが個人のプレーとしては) そんなに良くなかったです。シュートまで持っていけてないし、もっとゴール前とかチャンスになるところでシュートまで持ち込みたかったです。ドリブルすることが目的じゃないのでシュートを打つところまでもっと磨いていかないといけないと思いました。 (リーグ戦も好調だが、これから抱負は) 今年は、すごい良いチームだと思うので上を目指して来年にもつなげられるように全力で努力して頑張って行きたいと思います。

須藤 なぎさ

 (今日の試合を振り返って)私は途中入部だったので、去年の八月に入部して、初戦が早稲田大学との大学リーグの試合で、その時は圧倒的に力が及ばないという感じがありましたが、今日の試合では、押される時間もありましたが、自分たちの時間もかけられたので、そこから上がってきたかなという印象があります。(今日は雨で、足元も悪かったと思うが)雨なので、かなりボールが滑りやすくなっていたので、普段裏に蹴るボールなどは足元に来るボールでというのを共通認識としてやっていました。(その中で点を決めたが、気持ちは)自分は左サイドハーフというポジションをやらせていただいていて、得点パターンとして右サイドから抜いて合わせるというのが自分の中で一番得意な得点の形で、今回も、得点のチャンスがあるとしたらこの形だと思って、この一週間練習してきたので、それが結果に結びついて良かったと思います。(次のリーグ戦に向けての意気込みを)正直自分の中では、今東京都リーグが始まっていて、その一試合一試合向き合っていて、まだ先の大学リーグまで考えられていないので、まだ具体的にはないのですが、4年生が掲げたインカレベスト4という目標を、本当に達成するうえで自分も貢献したいと思っているので、これまで以上に頑張っていきたいと思います。

 

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