【野球】痛恨の1敗 春秋連覇の夢途絶える 早大①

11月2日(日) 早大1回戦

敗戦後重い足取りで応援席にあいさつに行く慶大ナイン

敗戦後重い足取りで応援席にあいさつに行く慶大ナイン

優勝の可能性を懸けて行われた伝統の一戦。初回、慶大・横尾(総3)と早大・小野田の適時打で1点を取り合うと、中盤にも互いに1点追加し、両校がっぷり四つの試合展開となる。しかし6回、慶大先発の加藤拓(政2)が代打・山口に適時打を浴び、勝ち越しを許してしまうと、7回には打ち取った投ゴロを一塁へ悪送球。重い2点を失う。7回から登板した有原に対しては、齋藤(商2)がソロ本塁打を放つなど反撃のムードを作るも、あと一歩及ばず。3‐4の悔しい敗戦となり、慶大の連覇とはならなかった。

   
慶大
早大 ×
 慶大:●加藤拓、三宮─小笠原  

 早大:大竹、竹内、○有原—土屋

◆慶大出場選手

ポジション 選手名(学部学年・出身高校)
[7] 佐藤旭(商4・慶應)
[6] 山本泰寛(環3・慶應)
[9] 谷田成吾(商3・慶應)
[5] 横尾俊建(総3・日大三)
[8] 藤本知輝(環4・慶應)
[4] 竹内惇(商4・慶應)
  三宮舜(商3・慶應)
[3] 齋藤大輝(商2・慶應)
[2] 小笠原知弘(環3・智弁和歌山)
  梅野魁土(環3・福岡大大濠)
[1] 加藤拓也(政2・慶應)
  北村祐樹(商3・丸亀)
  照屋塁(環1・沖縄尚学)

苦心の投球が続いた慶大バッテリー

苦心の投球が続いた慶大バッテリー

前日の雨天中止から一夜明け、雲間から時折日が射す中で行われた早慶1回戦。「共に連勝すれば優勝」という大一番を前に、約26000人の大観衆が詰めかけた。慶大はこの負けられない一戦の先発をエース・加藤拓に託す。

 

試合は初回から動き出す。2死から谷田(商3)が鮮やかなクリーンヒットを中前へ運ぶと、迎える打者は主砲・横尾。初球の暴投で走者が二塁に進んだ後、早大先発・大竹の2球目を逃さず逆方向へ振り抜いた。打球は一塁手の横を僅かにすり抜け、右前へ転がった。小野田がそれを掴み本塁へ送球する。タイミング的にはアウトも、谷田が捕手のタッチを見事にかい潜りホームイン。チームの頼れる中核の活躍で慶大が幸先よく先制した。

だが、この日の加藤拓は本調子とは言えなかった。大舞台の力みからか、直球の制球が定まらず、安打と四球からリーグ首位打者・小野田に簡単に適時打を打たれてしまう。

2回は両校無得点に終わり、試合が落ち着いてきたかのように思われた。ところが3回、思わぬアクシデントが発生する。安打と暴投で2死二塁の場面、5番・藤本知(環4)のスイングしたバットが捕手・土屋の頭部に直撃。土屋は担架で運ばれ、試合が一時中断する。10分近くの治療の末、ベンチから早大不動の捕手が元気に姿を見せると、スタンドからは大きな拍手が起こった。そしてこの打席を藤本知が三振に倒れると、流れが徐々に早大へと傾き始めていく。

 

この日2打点の横尾。抜群の勝負強さで打点リーグトップに

この日2打点の横尾。抜群の勝負強さで打点リーグトップに

4回、先頭の小野田が左方向へ鋭い二塁打などでピンチを作ると、7番中澤にきれいに右前へ運ばれ、勝ち越しを許してしまう。対する慶大打線は2回以降、好機での併殺や走塁ミスなどの拙攻が目立ち、もどかしい時間が過ぎていく。

5回、チームを救ったのは、またもやこの男のバットであった。2番・山本泰(環3)が2番手・竹内から死球で出塁すると、横尾がカウント3ボール0ストライクから置きにきた球を思い切り叩き、左中間を破る適時二塁打を放つ。「特に意識はしていない」と控えめに語る4番の同点打で、試合は再び振り出しに戻った。

しかし、試合中盤を迎えても、鉄人右腕の投球がピリッとせず、6回に茂木の二塁打、土屋の内野安打で2死一,三塁のピンチを迎え、代打・山口。その4球目を左前に運ばれ、再び勝ち越しを許してしまう。一塁側に何度もガッツポーズをする山口。さらに負の連鎖は止まらない。7回、先頭の河原を歩かせ、続く中村のバントで1死二塁とされると、武藤の左安で1死一,三塁。小野田を遊飛で抑えた後、茂木はボテボテの投ゴロ。この回は何とか凌いだ—。球場の誰もが、そう確信した瞬間だった。加藤拓の送球は、無情にも一塁手・齋藤の構えたグラブから大きく逸れた。一瞬時が止まったかのような出来事とは裏腹に、スコアボードには重い、重い1点が刻まれた。

 

驚異の粘りも、あと一歩届かなかった

驚異の粘りも、あと一歩届かなかった

打線も7回に登板したドラフト1位右腕・有原を前に、反撃の糸口を掴めずにいたが9回、陸の王者が必死の意地を見せる。先頭の齋藤は、序盤での走塁ミス、失点に繋がる後逸を冒した後の打席。「絶対にどんなことをしても出ようと思っていた」と0ボール2ストライクからの変化球に食らいつくと、打球はぐんぐんと伸び早大応援団のいる右翼席へと突き刺さった。反対側の慶大スタンドのボルテージは最高潮に。

さらに冷静さを発揮したのが下位打線の2人だった。ここまで2安打の小笠原(環3)は、際どいコースを見極め四球を選ぶ。続く北村(商3)も8球粘った末、四球を誘いチャンスを拡大。そして、代走にはそれぞれ快足の梅野(環3)、照屋(環1)が起用され、梅野は北村の打席で盗塁も成功させた。無死一,二塁。まだ何かが起こる。高揚感にも似た押せ押せムードがグラウンドに流れた。それでも、有原の落ち着きぶりはやはり大物そのものであった。佐藤旭(商4)はレフトライナー、最後は山本泰が三塁併殺打。必死のヘッドスライディングも叶わず、慶大の手から優勝旗がスルリと抜け落ちた。

 

あと一歩のところで連覇を逃してしまった慶大。「采配ミスをした私の責任」(髙多助監督)、「ミスが出たのと勝負所で決めきれなかったから」(谷田)など、敗因はそれぞれの立場でそれぞれの分析がなされていた。ただ、「1年間勝つことにこだわってやってきた」(佐藤旭主将)ように、リーグ戦はまだ終わりを迎えたわけではない。勝つために何ができるか——。「How to play , how to win」のモットーを貫き通すために。4年生に「勝ち」のプレゼントを届けるために。慶大ナインの躍動は、まだまだ留まるところを知らない。

 

【Keispo pick up】未来の中軸候補 開花目前 齋藤大輝

有原から放った一発。その喜びを表した

有原から放った一発。その喜びを表した

恵まれた体格から放たれる大きな打球。次世代のクリーンナップ候補に待望の一発が生まれた。髙多助監督も「見事だった」と絶賛する、追い込まれてからの本塁打は、スラッガーとしての才能を秘めている。今季終盤、2試合スタメン落ちも経験した男の、4球団競合ドライチ投手から放った待望の一発。これを自信として、「慶大の主軸」として活躍する日も近いだろう。

 

 

(記事 米田亘)

 

 

 

◆打撃成績
[7] 佐藤旭 中飛 遊併打 三飛 空三振 左飛
[6] 山本泰 投ゴ 遊ゴ 死球 二飛 三併打
[9] 谷田 中安   右安 空三振 空三振
[5] 横尾 右安① 見三振 左中2① 死球
[8] 藤本知 死球 見三振 四球 遊併打
[4] 竹内惇 二ゴ 一ゴ 二飛 空三振
1 三宮
[3] 齋藤 一ゴ 右安 中飛 右本①
[2] 小笠原 中安 中安 二ゴ 四球
R 梅野
[1] 加藤拓 四球 左飛 三ゴ 四球
4 北村  
R 照屋  
◆投手成績
投球回数 球数 打者数 安打 三振 四死球 失点 自責
加藤拓 122 33
三宮
◆監督、選手コメント

髙多倫正助監督

(今日を振り返って)采配ミスですね。それ以外の何物でもないと思います。(先発の加藤拓について)悪いなりに一生懸命頑張っていた。代えてやるタイミングを間違えてしまいました。(横尾の2打点)勝ちたいという気持ちがそのままバッティングに乗り移っていたと思います。そういう意味では心技体一致しての結果だと思います。(齋藤の本塁打)良く打ちましたね。あの場面で、しかも追い込まれていたので。そこで良く思いきりバットが振れたと思います。(本日の敗因は)監督の采配ミス、それ以外の何物でもないです。(明日以降どのように戦っていくか)対抗戦ですので、負けるわけにはいきません。精一杯やります。

 

佐藤旭主将(商4)

(今日の試合を振り返って)ここまでやってくることができたのも皆が粘り強く戦ってきたからこそだと思いますし、今日の試合も誰も諦めていなくて。本当に粘り強く試合ができたと思います。(明日以降の試合に向けて)1年間勝つことにこだわってやってきたので、ここで負けたら今までやってきたことの意味がないとは言わないですけど、ここまで積み重ねてきたものがあるので。明日明後日勝って、このチームは勝って終わったと言うことができるようにやっていきます。

 

竹内惇(商4)

(優勝の可能性を残し今週を迎えた)何がなんでも2連勝するという気持ちでいたんですけど、まあ今日は、後輩たちが頑張ってくれたんですけど、僕がチャンスで繋げられなかったので、本当に申し訳ないです。(今日の試合振り返って)9回2点差あったんですけど最後まで諦めずに、齋藤がホームラン打ったり、後輩が繋いでくれたんですけど、まあ、しょうがないです。(明日以降に向けて)優勝がなくなって精神的には結構きついんですけど、早稲田に優勝はさせないという気持ちで、明日からまた頑張っていきたいと思います。

 

小笠原 知弘(環3)

(今日の試合を振り返って)4点を取られてしまって、大事なところでミスをしてしまった点が敗因だったかなと思います。(打撃の調子はどうだったか)地元からも応援に来てくれる方がいらっしゃったので、打てないとだめだなと思ってやりきりました。(加藤拓のピッチングについて)いつも通り強気なピッチングで投げてもらったんですけど、その中で点を許してしまったので僕のリードがだめだったのかなと思います。(9回、 チャンスで出塁してガッツポーズが見られたが)とにかく出塁したいなという気持ちでした。2点差だったら厳しかったんですけど、逆転が見えた ので塁に出たら勝負できるなと思いました。嬉しかったです。(明日に向けて一言)優勝はなくなってしまったんですけど、4年生の引退に花を添 えられるように最後まで頑張ります。

 

梅野魁土(環3)

(今日の試合を振り返って)残念でした。(どのようなことを意識していたか)あの場面だったら同点にするしかないんで、とにかくホームに帰ること、一つでも先の塁を狙っていくことを意識してました。(盗塁は自分で判断したのか)サインでした。(セーフになる自信はあったか)ありました。(明日に向けて)まだリーグ戦終わったわけじゃないですし、最後まで勝ちにこだわってやってきたんで、最後までそれを貫くために勝ちにいきたいと思います。

 

三宮舜(商3)

(今日の試合を振り返って)負けてしまったのでもう優勝がなくなって、でも僕の中ではあまり受け入れられてないというのがあります。(昨日はどんな意気込みだったか)2連勝するつもりでいたので、いきなり初戦を落としてしまって、切り替えろというほうが難しいですけれど、何とか切り替えられたらなと思います。(本日は投げる予定はあったのか)なくはなかったです。1戦目を取らないと終わりなので、投げる可能性は十分にあると言われていました。(1回を三者凡退に抑えた)先々週の明治戦と同じでいつも通りのピッチングが出来たかなと思います。(明日への意気込み)目の前で胴上げをされないように、早稲田の優勝だけは阻止したいです。

 

谷田成吾(商3)

(今日の試合を振り返って)ミスも出ましたし、勝負所で決め切れなかったところがやはり勝てなかった要因だと思います。(2安打を放ったことについて)調子は悪くなかったので、3,4打席目に1本打っておけば、最後自分まで回ったのかなと思うとちょっと悔しいです。(今日は早慶戦ということで、たくさんの観客がいたが、チームの雰囲気は)すごいいい雰囲気でやらせていただいて、すごく嬉しかったです。(明日に向けて)優勝は無くなってしまったのですが、これが現実なので受け止めて、勝利で4年生を送り出したいので、明日明後日頑張って返したいと思います。

 

山本泰寛(環3)

(今の気持ちは)優勝の可能性が無くなってしまって本当に悔しいです。(最終回の第5打席を振り返って)自分の出せる力をすべて出す気持ちで打席に入ったんですけど、結果が出なくて非常に残念です。(打席に入る前、髙多助監督からはどんな言葉をかけられたのか)やっぱりもう打つしかなかったので、「打て」ということだけを伝えてもらいました。(この試合を終えてチームとしての反省点は)今日は自分たちの野球はできたと思うので、反省する点というのはそんなに無いです。(明日以降勝ち点獲得に向けて)今日負けたことを切り替えて、明日に向けてしっかりやっていこうと思います。

 

横尾俊建 (総3)

(あと一歩届かず敗戦)本当に悔しいです。(2度のチャンスをものにした素晴らしいバッティングだったが)塁にランナーがいたので、自分のスイングをすることを心掛けました。その結果が点につながったので特に意識はしていないです。(チームメイトに積極的に声をかけていたが)勝ちたい気持ちが行動に出たということです。(明日に向けて)全力でプレーしたいです。

 

加藤拓也(政2)

(本日の試合を振り返って)大事な試合だったのですが、最後粘れず負けてしまい悔しいです。(制球に苦しんだが、最小失点で切り抜けるなど粘りをみせた)フォアボールを出すのは仕方ないというかあまり自分の中で気にしていないし、0点で抑えればいいと思って投げていて、うまく0点で抑える回もありましたし、打たれてしまう回もあったのでもう少し粘りを見せられれば良かったです。(1点差での敗戦。早大との差はどこにあると感じたか)こういう大事な試合はミスした方が負けてしまうので、今回自分達がミスをしてしまったので、1点差での敗戦ということになったのだと思います。(優勝の可能性は消えたが、早慶戦はまだ続く。明日以降の意気込みを)最後勝って4年生を送り出せればいいと思うので、自分が出来る最大の準備をして4年生に勝ちをプレゼント出来るよう頑張りたいです。

 

齋藤大輝(商2)

(試合結果は残念だったが、自身にとっては手応えのある試合だったのでは)そうですね。プロに行く有原投手からホームランを打てたのは、自分にとってすごくいい経験になったかなと思います。(今季は不調で明大戦ではスタメン落ち。今日への意気込みは)スタメンを外れた時は本当に悔しくて、この早慶戦まで練習からしっかりアピールしていこうとやってきました。(第2打席の安打では塁上でガッツポーズが飛び出した)すごく久しぶりのヒットだったので嬉しかったです。(7回裏、エラーに絡んでしまった)ボール自体は取れたボールでした。言い訳になってしまうんですが、観客と被ってしまいました。(9回表、先頭として考えたこと)本当に大事な場面だったので、絶対にどんなことをしても出ようと思っていました。(2回空振りをしたあと、狙いを変えたのか)いや、ボールは結構見えていたので、追い込まれて絶対三振だけはしないように当てにいきました。(打った感触は)自分でも当たると思っていなかったので、びっくりしました。打ったのは変化球です。(リーグ戦初本塁打です) みんなからも早く打てよとせかされていたので、打ててよかったです。(明日へ向けて)今日は自分のミスでチームの流れが悪くなって負けてしまったので、明日、明後日と絶対に勝ちたいです。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました