第38回全日本軽量級選手権大会でスタートした今シーズン。重量級の選手にとっては、今大会が初戦となった。国体予選の影響からクルーを組むのが試合直前となった。しかし、「日本最速」を目指す慶大端艇部。少しの妥協もせず、本気のレースをした。各艇初に課題が見つかったものの、それぞれが課題をうまく乗り切り、今大会を通じて成長を遂げることができた。
第66回東日本選手権大会 2016年6月25-27日
@戸田ボートコース
クルー紹介
【M8+ 】使用艇:FCXXV
C: 小原孝明(政4) S: 田中将賢(法4) 7: 高田直人(総3) 6: 北原敬梧(法3) 5: 高林拓海(理4) 4:小坂哲生(商3) 3: 新井勇大(経1) 2:内田優志(政3) B:寺坂僚太(経3)
【M4+】使用艇:AKIRA
C:米澤一也(政4) S:廣橋光希(政4) 3:細田外嗣(法3) 2:笹岡裕之(政3) B:高橋航平(経3)
【M4-】使用艇:gifu
S:磯貝悠(商2) 3:長石治徒(総3) 2:大津匠(政4) B:小豆澤遼(政4)
【M4+】使用艇:Indiana
C:今村匠(商3) S:吉田高寅(経2) 3:朝比奈寛(文2) 2:宮本星太(政4) B:岸本光平(法2)
【M2×】使用艇:independence
S:辻井将仁(総2) B:辻雄基(理2)
【M1×】使用艇:JIRO
S:須田祐介(経2)
【W2×A】使用艇:Sirius
S:野方千裕(政3) B:流石揚子(総4)
【W2×B】使用艇:superior
S:萩原沙柚子(政2) B:渥美優(環2)
レース結果
男子舵手付きフォア
東日本選手権に向けて、直前にクルーを組んだという舵手付きフォアの5人。準備期間も短かったが、日々成長を実感しながら練習に励み、レース本番に臨んだ。 1日目の11時過ぎの予選A組では、「最後流すレースだった」と廣橋、心身ともに余裕をもって準決勝進出を決めた。 同日の17時頃に行われた準決勝には「体力を温存」(米沢)して臨んだ慶應クルー。しかし、結果としては1位に9秒差をつけられ、5位。1000メートル通過は3位と食らいついて行ったが徐々に他の艇に追い越される苦しい展開に。準決勝はスタートから出るゲームプランでいたが、前に出ようという気持ちが前面にでてしまい、「(水を)押す時間が短くなってレートだけが高くなった(廣橋)」。その結果スタートでリードを奪えず、さらに体力の余裕を失くした。そして、体力に余裕がなくなったことによって後半に思うように艇を伸ばせなくなってしまった。悔しさと課題を残して初日を終えた。 翌日、決勝Bに臨む慶應クルー。前日の準決勝の反省を生かし、コンスタントのレートを二枚落として、しっかりと水を長い時間漕いで行こうとクルーで決め、レースに挑んでいった。前半1000メートルは4位と出遅れるも、コンスタントレートを二枚落としたことにより、艇として余裕をもったペースで漕げていた。そのため、「ラスト上がると思っていた」と米沢が話していたとおり、体力に余裕を残した状態でラストスパートに入ることができた。残り600メートルから徐々にペースを上げてゆき、結果的に前にいた3艇を差し切り見事1位でゴール。前日の反省を生かせたこと、そして自分たちの思い通りのレース展開にできたことに手応えを感じていた慶應クルーだったが、決してこの結果満足していない。夏に向けて、レートを2枚落とさずに1000メートルを漕ぎ、さらにラストスパートも余裕をもって漕ぎ切れる事を米沢選手は課題として挙げた。このことを目指し、「チームとしてベースの体力や技術を上げる事」などの必要性を廣橋は口にした。 今回の大会を通して、準備期間が短いながらも、レースの中でも進化し続け、手応えをある結果を得る事ができた慶應クルー。慶應端艇部としての選手層の厚さを体感し、夏本番に向けての希望を感じるレースだった。
(記事・辻慈生)
男子エイト
予選を6:01,43で1位通過した慶大。全体2位のタイムを出してはいたが、そこに満足はなかった。NTT東日本に7.78差をつけられたということはもちろんだが、自分達自身の漕ぎについても「甘いところがあった」(田中将賢・法4)や「もっと、ガンガン攻めるべき」(小原孝明・政4)と、反省は多いレースとなった。これを挽回し、決勝の場で見返すためにすぐにクルーミーティングをおこなった彼らは、方向性を固め翌日に備えた。そして迎えた決勝当日。慶大の他クルーは3時間前にはすべてレースを終え、多くの観客がコース沿いに集まる中、15時53分にレースは開始した。「ついていこうとした」(小原)というスタートだったが、NTT東日本に力を見せられることになった。開始直後から前に出られると、前半のうちに差をつけられてしまう。慶大も攻めて我慢する漕ぎで粘りを見せ、少しずつ差を詰めていくが、なかなか射程圏内にとらえられない。安定した漕ぎを見せるNTT東日本に最後まで追いつくことがかなわず、2着でフィニッシュ。銀メダルを獲得した。
結果としては2位に終わった慶大エイトだったが、予選からは1位との差を大きく縮めている。レースの中ですら成長していく慶大の限界はまだまだ底が見えない。ここから夏の本番までは期間が大きく空く。これからの成長に大いに期待し、夏を待ちわびたい。
(記事・岩本弘之)
以下、選手コメント
廣橋光希(政4)
(大会を振り返って)組んでから練習する時間があまりなくて、準備期間が短かったので、不安もあった。けど、レース中も成長し続けるクルーだと思う。(軽量級からクルーを組み直した)はい、2週間くらいしか練習する時間が無かった。(短期間の練習の中での工夫)取り組む事が限られてくるので、ポイントを絞って練習した。例えば、4人でどうやって合わせるのかというところを集中してこなしていく。いろんな事に手を出すのではなく、限られたことを1個でも2個でも多くやって、試合に臨んだ。(1試合目は)当たりが良くて、艇差も付いたので、最後は流すレースだった。(2試合目は)予選のタイムで見ても結構厳しいレースだったが、短い期間で作った改善できなかった部分というのが2試合目のレースは出てしまった。具体的にいうと、押す時間が短くなってレートだけが高くなってしまう艇になってしまったので、もう少し時間があればそこも埋められたのかなと思う。(今回のクルーで良かった部分)短い期間で成長できたというのは大きい。組んだ当初はクルーも重いので艇を運ぶのが大変だったけれども、最後はスパートも上がるようになったし、高いレートを2000m維持して漕げるようにもなったので、そこが良かったところだと思う。 (FINALBの試合を振り返って)準決勝でレートだけが高くなって、中身のない漕ぎになってしまったという反省が出たので、最後の試合はレートを少し下げて、中身重視で強く漕ぐということを意識した。それが、良い意味で最後まで余裕を持って漕げるリズムを刻む事につながって、スパートも上げることが出来たのかなと。全体を通して、昨日よりも良いレースができたと思う。 (1000m地点では4位でしたが)僕らの中で体力的にも精神的にも余裕があり、ここから詰めていけるという感覚があったので、コックスのコールに落ち着いて反応して、艇を伸ばして、最後のスパートで勝負をかけたという感じ。 (ここでは自分達の漕ぎが出来た)最後の試合は今までの予選、準決とは違うリズムで漕いだので、失敗する心配もあったが、4人で上手くすり合わせることが出来たことが、最後に勝てた理由だと思う。 (また、試合までの期間が空くがやっていきたいこと)今回、2000m漕いで、ベースの体力や技術の実力不足を感じた部分があった。なので、僕個人はもちろんチームとして、ベースと技術を上げて、レース中の心の余裕や体力の余裕をもっと作れれば、勝負所でもっと強く漕いで、きつい試合もモノに出来ると思う。
米澤一也(政4)
(今大会振り返って)クルーを直前で組んだので、実質練習が出来た期間は短かった。そのクルーで初めて組んだ時に比べると、良くなった点の方が多かったと思う。毎回の練習で見つけた課題を克服できて、昨日のレースで見つかった課題を今日のレースで克服出来たことも良かった。しかし、ベースの部分を上げていかなければならない事を痛感した。(昨日は1レース目に比べて2レース目が悪かった印象だが)1レース目は当たりが良かったので、2レース目に向けて体力を温存しておこうと考えていた。しかし、2レース目は最初に出ていこうとする気持ちが前に出過ぎて、バタバタしてしまう動きに繋がったと思う。スタートでも出られてしまったが、その後差を詰められずに、バタバタしてしまった。そこはやはり自分達のベースのなさ、レース経験の無さがあると思います。今日のレースではその点を克服出来たのが良かった。(FINAL Bの試合では、1000m地点では4位だったが、終盤ペースを上げて1位でゴールした。この展開は想定していたものだったのか)昨日のレースからコンスタントのレートを2枚程落としたので、ラストは上がると思っていた。2枚落とした事で勝負どころで落ち着いてペースを上げられた。しかし、このようなレースをしていたら、夏は勝てないだろうと思う。今日はレートを落としても相手が近いところにいたので、追いつく事が出来たが、夏はスタートで出られて、そのまま追いつけずにレースは終わっていくのだと思う。だから、先ほども言ったようにベースを上げていく事が必要。(どこでスパートを入れたのか)1400m位から勝負のコールをいれて、そこからレートを上げていった。漕手の疲れ具合や艇差、残りの距離を考えると、ここだなと思った。クルーとしても、「行ける」という雰囲気があったので、早めに2枚あげた。(今大会の舵手つきフォアでは、コックスはクルーとは向き合うポジションにいないが、その点でクルーとコミュニケーションを取る上で苦労はしなかったのか)1番は、本当にやりづらい。普段は漕手の顔を前から見て、そこから感じる雰囲気とかもあるが、今回の位置だと前から選手も見えないし、選手の声も聞き取りにくいという事で苦労した。コミュニケーションの面では、遠い位置にいるクルーの声は近くのクルーが中継して届ける事で解消した。僕の声はマイクで届くし、それに対してクルーも反応してくれた。普段僕が乗っているエイトに比べるとやはりやりにくかったが、大きく苦労したという事は無かった。(今後の目標)自分達のベースを上げるという部分は確実に上がっている気がしている。今日のレースではスタートで出られたが、そこまでのリードは許さない展開だった。それは今まで冬からやってきたウェイトトレーニングなどの取り組みの成果だと思うし、これからもやらなければならない事の継続。例えばウェイト、エルゴといった陸上での体力をつけるトレーニングをする。漕ぎの面では落ち着いて漕ぐ事のできるレートをもっと上げていく事。今より2枚上がっても、全員が落ち着いているからしっかり漕げ事。そういうところが逆に今まで出来なかった事が1000m勝負で慶應が勝てない理由だと思うので、まだ時間もあるしそういう所を変えていきたいと思う。確実にできる事は出来るようになってきているので、課題が明確になった分、やりやすくなったのかなと思う。
(大会を振り返って)
田中将賢)優勝しようと大きく目標は出していて、5分39秒で勝とうと決めて今回の大会に挑んだ。そういう面で見ると、まだまだ壁は高かったという感じ。ただ、練習期間が2週間という中でやったことを考えると、その中ではすごく上達出来た。
小原孝明)一番感じたことはボートIQというか、監督も良くおっしゃっている、考えて漕ぐということがすごく出来ているクルーだと感じた。限られた時間の中の1回の練習の中で、上達しているということはすごい実感しながら練習できた。試合でも、予選では8秒あった差を4秒まで縮めることが出来たのは良かったことなのかなと。
(クルーは軽量級から)
田中)国体とかの都合上、なかなか組めなかったので。最初はフォアとかのいわゆる中艇で練習していた。2週間で組むということは以前から決まっていたらしくて、そこから(エイトで)練習した。
(練習の中で意識したこと)
田中)先ほど、小原も言っていたが、考えて漕ぐということが重要だと僕自身も思っていた。一回の練習に対して高い集中力、高い質で挑むことが大事。上級生は僕と小原と高林しか乗っていなかったので、下級生の声を吸収して、形にする。それも考えて漕ぐということの一つで、とにかくそれを意識した。
小原)クルーに自分が乗っていなくても、試合のビデオや練習のビデオを取っているので、それをしっかり確認して、自分が乗っている艇でなくても相談しながら出来ていた。それが小艇から集まった時に漕ぎが出来ているかなどをしっかり確認できたことは良かった。
(今回の2位という結果について)
田中)正直満足はできていない。今年は全日本で優勝すると目標を決めているので、そのステップとして今回の大会でNTT東日本に勝ちたかったというのが正直なところ。昔のことを考えれば4秒差まで詰められたことは良いことではあるが、2位で終わってしまったことについては反省したい。
(予選は)
田中)僕たちのクルーは重量級のメンバーが多かったので、今シーズンはほとんどの人がこの大会が初めての2000mという状態だった。予選は、勿論タイムも出しにいったが、様子を見てしまったという面は今から振り返るとある。組み合わせに恵まれて勝てたというのもあった。リズムも悪くはないが、艇を進めるという面にフォーカスしてみれば、甘いところがあったと特に予選は思う。
小原)スタートで出ることが出来たので、(他クルーの)背中を見て漕げた分少し余裕はあったのかなと。もっと、ガンガン攻めるべき予選だった。
(それに対してのコールは)
小原)目標タイムは5分39秒。このタイムを出せれば、日本ではおそらく負けることはないだろうというタイムなので、このタイムに向けて夜遅くまで練習してきた。だからしっかりこのタイムを出さなければと思っていた。なので、攻めるコールというか、後半にも足蹴り(スパート)のようなコールを入れて、タイムを重視していた。
田中)最近のうちのボート部はスタートで勝てないというのが課題として上がることが多い。僕も最終学年になりますし、そこを打破したくて、最初の1000mを取るということを意識した。
(決勝を振り返って)
田中)たとえ相手が社会人のNTT東日本であっても、僕達自身は全然怯むことは無く、絶対に勝ってやろうという気概を持って行った。でもやはり、スタートで艇を動かす、スパートでしっかり伸ばすといったところで、現段階では力量の差を感じたというか、まだまだ足りていないということを漕いでいて実感した。
小原)予選は8秒差で、なかなか厳しいかなと思ってはいた。しっかりスタートはついていこうと思ったが、そこで離されてしまった分が結果的に最後の差になってしまったので、まだまだスタートには改善の余地があると思う。
(予選から決勝で秒差が縮まった要因は)
小原)気持ち的にもクルーに余裕があって、レース前に固くなってしまうこともなく、決勝という舞台で自分達の本来の力を出せたということが1つ大きい。
田中)昨日試合が終わった後に、6分1秒というタイムを見て、目標にほど遠いなということを再確認したので、すぐにクルーで話し合いをした。そこで、どこが甘かったのかという話になった時に、中途半端なある程度のところで纏まってしまって試合を終えてしまったということがあった。だから、第1クォーター、第2クォーターで攻めて、我慢してやっていこうというこという話をした。試合でもしっかり小原のコールで艇速を伸ばして我慢するというところを意識したことで昨日よりも4秒縮められたんだと僕は思っている。
(ストロークとして意識したこと)
田中)昨日のレースでは、リズム自体はいいものが出たなと思っていて、それは引き続きやりつつ、今度は落ち着いてしまうことなく上げ続けるということを僕自身はやっていた。
(次に向けてやっていきたいこと)
田中)先ほどコーチとも話したが、2個あると思っていて、まずは艇を進める技術を定着させること。体力は練習量でどの大学にも引けを取らないと思っているし、自信はあるが、艇を動かすという技術をどんなシチュエーションでも出来るというところまでいっていないのでそこをしっかりやりたい。もう1つは、スタートのところで必ず500m、1000mを取る、というスタートの爆発力をもっと上げられたらと思っている。
小原)コックスとして、1艇身差というのはコックスがどうにか出来る差だと思っているので、どういうコールを入れれば漕いでいる8人が気持ちよく漕げるのか、もっと頑張って漕げるのかというところに磨きをかけて夏に向けて頑張っていきたい。