本大会、慶大女子クルーの躍進が目立つ結果となった。女子舵手付きクォドルプルと女子シングルスカルの2艇が出場し、両クルー共に準決勝進出。結果を残した。
第43回全日本大学選手権大会
9月22日(木)〜25日(日)
@戸田漕艇場
【W4×+】使用艇:Polaris
C:池田可南子(文4)
S:渥美優(環2)
3:野方千裕(政3)
2:萩原沙柚子(政2)
B:流石揚子(総4)
| 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 着順 | 結果 |
予選D組 | 1:50.14 | 3:43.59 | 5:39.11 | 7:39.11 | 1着 | 準決へ |
準決C組 | 1:50.47 | 3:44.21 | 5:38.34 | 7:36.32 | 4着 | 敗退 |
予選ではスタートから出られてしまう苦しい立ち上がりだった女子舵手付きクォドルプル。しかし、強いメンタルで諦めなかった。すぐにレースを立て直し、1000m地点で追い抜いた。1500m地点では2秒あった差が2000mでは0.4秒差と追い上げられたが、粘り強さでなんとか持ちこたえ、1着でフィニッシュ。準決勝進出を決めた。女子クルーを率いる流石揚子主将(総4)は、敗者復活戦を経ずに準決勝に進出したことに対して「私も初めてで嬉しかったし、丸一日準決勝に向けてレースプランを練ることができ、とても良かった」とコメント。女子クルーの成長を感じた。
準決勝の舞台は一気に雰囲気が変わる。結果は4着。ここで敗退となった。準決勝からは高校時代から全国にその名を轟かせてきた猛者達と戦っていかなければならない。一方、慶大女子クルーには未経験者が2人乗っている。経験者であるほど、自分の漕ぎにプライドを持っている。長年続け結果も出してきた分、漕ぎを一から見直すことは困難だ。しかし慶大女子クルーは違う。未経験だからこそ、様々な漕ぎ方を試し、試行錯誤を繰り返すことができた。 女子クルー成長のきっかけとして、8月25日から30日の6日間、新潟県にて行われた奥只見合宿の存在は大きい。「本当に奥只見合宿がターニングポイントで、そこで本当にクルーが固まった」(野方千裕・政3)。この夏から男子クルーと共に開始したこの合宿で、粘り強さが身についた。その結果が準決勝進出。予選では「抜かれてたまるか」(野方)と思って最後のスパートをかけた。最後の最後で順位を決めるのは集中力や執念といった、勝ちたいという気持ち。負けたくないと思うだけの練習量を夏合宿で積んできた。それが女子クルーの成長に繋がった。 「私達の目標は繊細になって漕ぐこと」(流石)。全日本選手権は社会人も出場し、本大会よりも厳しい戦いとなる。クルー全体の漕ぎ方、技術は固まってきた。しかし、それだけでは通用しない。勝ち抜くためには細部までこだわって練習することが不可欠。これは女子クルーも分かっている。2000m漕ぎ続けた最後の一漕ぎまで繊細に、そして丁寧に漕ぐことが更なる高みへと上がるきっかけとなっていくだろう。
(記事・高橋廉太朗)
【W1×】使用艇:Le Ciel
芝崎佐和子(経2)
| 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 着順 | 結果 |
予選B組 | 2:01.20 | 4:06.81 | 6:15.08 | 8:23.24 | 4着 | 敗復へ |
敗復B組 | 2:07.51 | 4:21.12 | 6:34.27 | 8:46.02 | 1着 | 準決へ |
準決B組 | 2:03.10 | 4:15.54 | 6:29.15 | 8:38.71 | 3着 | 敗退 |
芝崎佐和子(経2)はシングルスカルとして挑む初めての大会だった。予選に向け、試合前は「とりあえず頑張って2000m漕ごう」と思っていた。大会直前の練習でもあまり手ごたえをつかむことができず、レースへの不安の気持ちが大きかった。しかし、22日午前8時40分発艇の予選B組、いざ始まってみるとその心配は杞憂に終わった。今までの練習とは全く違う感覚で漕ぐことができたという芝崎、予選の組のレベルが高かったこともあり、順位こそ4位となるが、8分23秒24という好タイムを残した。この結果に芝崎は「自分が本番に強いタイプなんじゃないかと思った」と笑顔で振り返った。
翌日の8時50分に発艇した敗者復活戦において、前日の勢いそのままに芝崎は凄まじいレース展開を見せる。「あまり調子が良くなかった」という中で1000m地点ではトップに5秒差をつけられ、3位。しかし、予選を経て後半の伸びが自分の強さだと気付いた芝崎。粘って漕いだ結果、ラスト500mで自分の前にいた艇に5秒差をつけ鮮やかに逆転。1位で準決勝進出を決めた。翌日の準決勝に進めたことに驚きつつも、準決勝に向け、目標はできれば2位で順位決定戦に進出、少なくとも4位には絶対にならないことを誓った。
24日9時44分に発艇したレースは、前2艇に出られ、北海道大学と3位争いをする展開に。1500mまで横で並んでいたが、前日に引き続き、もはや芝崎の武器ともいえるラスト500mで北大を引き離し3着でフィニッシュ。この結果に対し、「最悪ではないけど、満足していない」と振り返った。それでもこの大会全体で「成長できた」。不安から始まったこの大会が終わってみれば、自らの武器を見つけ、勝負をかけることができるまでに急激に成長した。まだ2年生だという彼女のこれから続く漕手生活に期待が膨らむばかりである。
(記事・辻慈生)
以下、選手コメント
流石揚子主将
(試合を振り返って)全体的にクルーのレベルが上がっていると感じた。それは練習に真摯に向き合う強いメンタルがついてきたからだと思う。特に1、2年が練習でへこたれずにこなすことが出来るようになってきた。予選は1位で通過し、敗者復活戦に回ることなく準決勝に進出できた。これは私も初めてで嬉しかったし、丸一日準決勝に向けてレースプランを練ることができ、とても良かった。しかし、予選ではもう少し他校と差をつけることが出来たかなとは思う。準決勝では、私達は他校と比べて身体が小さいので、クルー全体で同じ動きをすることでより大きな力を出すことを考えていた。その点でスタートは上手くいったが、他に先を行かれて焦ってしまった。
(夏の練習は)新潟県の奥只見でみっちり漕ぎ込んだ。今年から女子も参加し、本当きつい練習だったが、粘り強さが身についたと思う。例年は選手1人ひとりが良くなるためにどうすればいいかを考えて練習していたが、今年は船の上でみんなで前から全力で押すというように、全員が同じ課題に取り組むような練習をしてきた。これは早慶レガッタがクォードからエイトになったことで1人ひとりの技術よりもクルー全体の漕ぎを変える必要があるから。
(4年生になっての変化)やっぱり2000mの試合は何度漕いでもきつい。でも、続けることでだんだん2000mを考えて漕げるようになってきたから、途中はリラックスしながら、そして、最後までしっかり丁寧に漕げるようになってきた。
(全日本に向けて)クルーのレベルは上がっているが、やはり厳しい戦いになる。私達は大学からボートを始める選手が多い。しかし、だからこそ伸びしろが大きく、様々なことを吸収できることが強み。私達の目標は「繊細になって漕ぐ」こと。例えばラスト疲れた時でも、オールのエントリーのタイミングのズレを無くすといったこと。そこに拘って練習していきたいと思う。
野方千裕
(予選と準決勝を振り返って)準決は最初から出られて、みんなもすごく焦った。だから失敗だったかなと。予選は最初出られたが差すことができて、抜かすというレース展開ができたので、それは本当に次に生きてくると思う。予選から一日空いて準決だったが、その中でもすごい艇の感じは良くなっていた。そのことにもっと早く練習の段階から気付けていたらもっともっとよくできていたのに、という反省点だったので、本当にこのインカレ期間は本当に全日本選手権につながるというか、クルー全体が成長できた感じがする。
(予選を一位で通過して準決勝だったが、敗者復活戦を漕がずに準決勝に進むのは今まであまりなかったと思う。その一試合なかったという点でよかったところ、もしくは悪かったところは)今回はすごくよかったなと思っていて、まずは体の疲れがしっかりとれたこととあとはその一日で艇の動きが変わったのが良かった。一日だけで2乗艇分くらいするが、心に余裕が生まれて、よくしていこう、よくしていこうという気持ちがあって、どんどん変わっていけた点ではよかった。
(準決勝最初に出られて焦ったという話だが、レース中コックスから声はかけられたのか)コックスは声をかけてくれた。今日の反省点は本当にコックスのコールにみんなで反応できなかったっていうところ。予選では反応してみんなでペースをあげられたが、準決は水も空いた分、みんなも焦った。スタートはそんなに悪くなかったのにやっぱり焦ってしまって、伸ばせるところで伸ばせなかったところが今日の敗因だったかなと思う。
(他の大学との違い)他の大学はほとんど経験者で、スポーツ推薦を取っている。やはり未経験が二人乗っている慶大はその点でフレッシュな感じだった。経験者だと高校の時から漕ぎができていて個性が強くなるし、自分の漕ぎにこだわりとか持ってしまうことがある。でも未経験者がいると人の意見をちゃんと聞いて、こう変えていこうとかを四人でできたというのが良かった。
(夏の合宿で奥只見に行って結構漕ぎこんだと聞いたが、具体的にはどのような練習)奥只見はコースではなくてダム湖。モーターボートが付いて、何キロというくくりではなくて何分というくくりで漕いでいて、例えば30分間UTとか気の遠くなるようなメニューだった。しかもモーターボートが付いて、コーチとか声をかけてくれるので落とせないみたいな。もう早く終われみたいな(笑)。それが辛かった。でもご飯がすごく美味しくて、それが本当に救いだった。
(それでクルーの一体感はあがったか)はい。もともと一人一人の漕ぎがバラバラで、結構エルゴタイムにも上下でばらつきがあって、そういうばらばらだったクルーが奥只見合宿では5人全員で何をやっていくか、それはうちのクルーは前から体重を使って漕ぐということだったが、それが確立した。それをずっとこのインカレまでやってきたので、本当に奥只見合宿はターニングポイントで、そこで本当にクルーが固まったなと思う。
(その合宿の成果、今回の大会で出たと思いますか?)はい。そうだと思います。 (個人的に印象に残っているレースは)結構どちらも残っている。でも予選はかなりせっていたので、見ているほうも気が気でなかったと思う。漕いでいる方も必死なので、抜かれてたまるか、みたいな。
(2000m漕いで最後あれだけの差というのは)2000ⅿ、8分弱漕いでいるのに0,2秒とか0,3秒しか違わないというのは、本当に集中力とか執念の違いだと思っている。技術だとかエルゴの違いでなくて、予選が始める前にみんなで話していたのは本当に勝つのと負けるのでは天と地ほどに差があるから0,1秒でいいから早くゴールしようってみんなで決めて出た。結果的にそれを実現できたレースだったので、それは本当に自信になった。
(全日本選手権へ向けて)女子部全体としては今本当にレベルが上がっていると思っている。今回の大会もみんな準決勝に残っていて、シングルスカルの芝崎も昨日一着でゴールしていたし、私たちも、女子クォードはどの大学も一番上の四人を乗せてくる。そこでも準決勝まで残れたのは自信になった。エイトで出るという話もあるが、もしエイトなら本当にチーム力で戦っていきたいし、小艇ならもう自分たち一人一人の力をあげてって、まぁどちらにしても勝ちたい。
芝崎佐和子
(大会を振り返って)初めてのスカルの試合で準決勝まで行けると思っていなかったので、心の準備ができていなかった。一回戦目も他の選手と違ってとにかく2000m漕ごうという心意気だったので予想外だった。でも、そこからのスタートで準決勝まで行って、ここまで結果を出すというところまで来たので、成長できた大会だったと思う。
(敗者復活戦の終盤で大きく順位を上げました)あまり周りを気にしないで漕いでいたので、特に考えていなかった。周りとタイムを比べた感じ、1位になれるタイムだと思っていたが意外と最初出遅れて、でも、予選を経て自分は後半に強いと感じたので、後半はあきらめずに粘って漕いでいたら追いついた。
(準決勝の雰囲気は特別なもの)あんまり違いはわからなかったです。ただ、敗復よりも周りの選手のレベルは高いので緊張はしていた。
(準決勝はやりたいレースはできたか)やりたかったことは2位に入って決勝に行くこと。その中でも絶対に4位は嫌だと思っていて、中でも北海道大学にはタイム的に勝てると思っていた。最悪ではなかったけど満足できる結果ではなかった。
(夏の練習で意識したこと)水中をスカスカ漕いでいたので一本で艇を進めることを意識した。
(印象に残っているレースは)予選。個人的には予選が一番うまく漕げて、2000m漕ぎ切れるのかと、すごく不安な気持ちだった。でも漕いでみたら練習とは全然違う感じで漕げた。うまくサイクルにはまったようにスムーズ漕げたので。それで、明日もそう漕ぎたいなと思っていた。敗復で結果は出たが個人的にはうまく漕げなかったと思っている。
(今後に向けて目標は)一番近い大会が全日本なので、全日本でメダルを取ること。