新体制企画第3弾は、就任14年目を迎える坂井利彰監督。今季の慶大庭球部や学生主体で運営している国際大会、慶應チャレンジャーについて、庭球部の監督、そして教育者として様々な視点からのお話しを伺った。
【取材日 2月25日(日)】
「大きく前進した1年」
――昨季を振り返っていかがでしたか
男女ともに目標である王座(団体戦の全国大会)優勝はかないませんでしたが、部員全員が自立をテーマに積極的に動いてくれて、大きく前進した一年となりました。個人戦では、上杉がユニバーシアードで金メダルを取ったり、天皇杯の全日本選手権で優勝したり、個人戦としては素晴らしい結果を残してくれました。充実した1年になりました。
――引退した4年の影響ですか
4年生の影響力はとても大きかったです。彼らが先頭に立ってやってくれて、チームをまとめてくれました。いろいろな葛藤も多かったと思いますが、オンとオフの切り替えがうまく、それぞれの役割を全うしてくれて、チームプレーの意識の高い4年生が多かったと思います。感謝の気持ちしかありません。
――男子は早大に惜しくも敗れた王座が印象的です
王座の決勝戦は雨天により結果的に有明から早稲田のホームコートに会場が変更となり、不利な部分もありましたが、部員たちはベストを尽くしてくれたと思います。最後まで戦い抜いてくれた部員一同を誇りに感じています。
――男女ともに団体戦のメンバーが多く残っている印象です
そうですね、多くのメンバーが残ってくれていますし、今年は新1年生に期待をしています。彼らの存在がチームの目線を上げてくれると思いますし、競争力も高めてくれるはずです。
――下級生の頃からエースとしてチームを引っ張ってきた上杉海斗(環4・清風)が引退しましたが、その影響はありますか
当然、エースとしてチームを引っ張ってくれた男子の上杉、女子の江代が抜けることは大きいですが、逆に新たなエースとして誰が名乗りでてくるのかを楽しみにしています。
――そういった空気を出している選手は今のところいますか
男子では、今季から副将の逸崎(凱人=新環4・大阪産業大付属)、今回の慶應チャレンジャーでも頑張っている今村(昌倫=新環2・清風)、それから新1年の羽澤(慎治=新1・西宮甲英)が候補だと思います。女子では、押野(紗穂=新環4・つくば国際大東風)、それから新1年の平田(歩=新環1・岡山学芸館)、末野(聡子=新1総・芦屋学園)、黒須(万里奈=新環1・山村学園)が候補ですね。
――中村進之介(新商4・慶應湘南藤沢)、押野の両名を主将に選ばれた理由は何ですか
中村進之介は湘南藤沢高等部時代に初のインターハイ出場に導いた伝説の選手で、『持っている男』です。彼ならこのチームを今までにない領域に引っ張ってくれると信じています。押野は誰からも応援される人間性を持っていて、彼女なら、今年のチームをいろいろと方面から応援されるチームに導いてくれると確信しています。
――ここまでの二人はどうですか
昨年末からスタートしていい形で進めてくれています。4月から公式戦も多くなってきますので、これからが本番です。
「大会が終わってからも続いている」
――慶應チャレンジャーは監督が2007年から始めましたよね
選手時代にアメリカ遠征した時にケンタッキー大学やUCLAやイエール大学などが試合会場で試合をする機会が多くありました。その時に、国際大会を慶應に持ってきたら、日本のプロ選手や学生選手の育成の場になるし、運営する学生にとっては教育の場になると考えていました。大学側に相談をしたら、2008年の塾150周年記念事業とからめて作るのが良いとの話になりスタートしました。
――監督が主導で運営しているのですか
私は塾の教員であり監督でありますが、基本的には学生が主体的に運営をしています。
――今年の慶應チャレンジャーはどうですか
今年で9回目の大会になりますが、昨年から始まった女子大会のレベルが一気に上がりました。男子大会は慶應チャレンジャーに出場していた選手がグランドスラム大会で活躍してくれているので世界的に認知度が高まっています。今年の全豪オープンで3年前に出場していた韓国のチャンヒョンがジョコビッチに勝って準決勝進出した時は運営している学生たちは興奮していました。今大会を経由してグランドスラムのトップに進む選手が出てくると、大会が終わってからも慶應チャレンジャーが続いているなということを感じますし、部員たちの大会に対するワクワク感が年々高まっているように思います。ただやるだけじゃなくて、自分たちがワクワクしていないと、大会をやっても色んな方にいい影響を与えられないという気持ちでやっています。部員みんなで運営していくというのは、新入部員にとっても一つの魅力になっていると思います。
「今年は化学反応が起こりそう」
――今季はどういったチーム作りをしていきたいですか
チャレンジ精神のある失敗を恐れないチームを作りたいです。新1年生の活躍は刺激になるはずですし、競争力も高めたいです。これまで慶應庭球部として進めてきた改革が完成形に近づいていると感じています。部員には様々な角度から部を運営してほしいと考えています。「鳥の目」、「虫の目」、「魚の目」、「地球の目」を持ってほしいと話しています。鳥の目は全体を俯瞰する目、虫の目は細かいディテールにも目が行き届く目、魚の目は潮の流れを見極められる勝負勘を持ち合わせた目、地球の目は社会に貢献する目になります。
――昨季と比較して今季のチームカラーは
新1年がたくさん入ってきてくれたし、人数も増えてきているので、いい意味でチームに刺激があると思います。今年は化学反応が起こりそうな予感があります。「失敗を恐れずにやってほしい」と常々言っているので、目指しているチャレンジ精神のあるチームになってくれるかなと思います。
――全部員に期待していると思いますが、その中でも特に期待している選手はいますか
うーん、みんなですね(笑)
――最後に今季の短期的な目標と長期的な目標を教えてください
長期的には、王座優勝をなんとしてもみんなの力で成し遂げたいです。短期的には、関東学生の個人戦が控えているので、そこで結果を出した選手が春の早慶戦やリーグ戦でつながっていくと思うので、関東学生の結果は注目していきたいですね。
――お忙しい中ありがとうございました!
(取材:内田貴啓、写真:堀口綾乃)