春季関東大学リーグ戦8位、東日本インカレ(東日本大学選手権)ベスト8という結果を収めた慶大バレー部。彼らは今、さらなる高みを目指して夏の練習に取り組んでいる。そんなチームの「司令塔」、セッターを務めるのが吉田祝太郎(政2・慶應)だ。強豪・サレジオ中で主将を務めて全国優勝も果たし、慶應高を初の春高(全日本高校選手権)に導くなど、実力でチームを引っ張ってきた。そんな彼を支える「セッターらしくないメンタリティ」とその奥にある思いに迫った。
2人の兄もバレーボールに打ち込んでいたバレー一家。小さいころからバレーに親しんだ吉田がセッターを始めたのは中学生の頃だった。高校生だった2人の兄は身長175センチ程度、当時の自身も高くなかったため「この身長でバレーボールを大学まで続けるならセッター」と中学生にして先を見据えた選択をした吉田。しかし小学生からセッターを務めてきた選手たちと向き合う中で、ボールを追う感覚の部分で苦戦を強いられた。そして一番悩まされたのが『考え方』だ。セッターは司令塔として常に冷静なことが求められる。しかし、攻撃がつながらない場面が続くと心が乱れてしまうことが多かった。その原因を「自分が決めたくなってしまう、スパイカー寄りの思考」と吉田は分析し、最近では“セッターらしく”落ち着けるようになってきたという。
1年半前、まだ2部でもがいていた慶大にやってきた新セッター吉田。開幕試合の後、緊張もない様子で冷静に内容を振り返り、その度胸はただものではないと示してくれた。その後1部で戦うチームの正セッターを今まで務めあげている。彼が攻撃を託すスパイカー陣について「最初は弱い方に心が流れてしまっていた」と話す。大事な場面で自分が決めるという自信が持てていなかったのだ。そんなスパイカー陣に対して、もっとボールを呼ぶように話して意識づけた。今では厳しい場面でもボールを呼んでくることが増えてきたという。先輩を相手にも意見を出し、正しい方向へ引っ張っていく。スパイカーの経験、そしてスパイカーのメンタリティがもたらした結果だろう。
ブロックシステムなど守備面は伊藤祥樹主将(総4・清風)が決める一方で、攻めの部分では吉田が決めることが多いという。彼は主将を務めた慶應高でも自分たちで練習のメニューを決めて取り組んできた。高校生でプレーしながら作戦も練習メニューも考える、という負担は予想もできないものだが、「全てを考えられるのは楽しかった」と振り返る。そしてその経験ゆえに「少しでも伊藤主将の負担を減らせたら」と攻撃面は自ら主導して作戦を立てている。
どれだけ負担が大きくても楽しんで自ら作戦を決めてきた。その理由について吉田は「やっぱりバレーボールが好きなんですよね」と無邪気な笑顔を見せる。大好きなバレーボールを楽しむために、勝つために、自らチームを引っ張り、これまで幾度も栄冠を勝ち取ってきた。次に目指すは大学日本一。胸に秘めた熱い思い、そして今手に入れつつある冷静さ。その2つを持ち前のセンスで操れるとき、その頂への道はより鮮明になるだろう。
(記事:尾崎崚登)
◇連載企画◇ リレーインタビュー
先月取材した加藤靖丈(商1・慶應)選手からの質問です。
――今ハマっているゲームは何ですか?
クラロワ(クラッシュ・ロワイヤル)です。中学生の頃からずっとやっていて、部活内でも結構やってる人いますね。たくさんカードがあるんですけど、どれもそれぞれの強さがあって、その良さを生かせると勝てます。その点セッターの役割に似ているから楽しいし、少しはバレーに役立っていると思います(笑)
◇プロフィール◇
吉田祝太郎(よしだ・しゅうたろう)
1998年9月24日生まれ/法学部政治学科2年/慶應義塾高/184センチ/セッター
◇バックナンバー◇
コメント