10月3日(水)東京六大学秋季リーグ戦 法大3回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 計 |
法大 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 8 |
慶大 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1x | 9x |
4時間45分にも及ぶ大熱戦が繰り広げられた法政3回戦。総力戦となったこの試合でひと際まばゆい輝きを見せたのは控えの植田清太(総4・慶應義塾)・大平亮(環4・鎌倉学園)・長谷川晴哉(法4・八代)の4年生トリオだった。
秋のリーグ戦が開幕する8月に偶然にもこの3選手を取材させていただいた。お話を伺っていく中でひしひしと感じたことはチームに対する想いの強さであった。春、秋のリーグ戦はともに自らの役割を考え、チームの勝利のためになら自己犠牲もいとわない姿が非常に印象的である。例えば、攻守交替の時には試合に出場している後輩にコップ一杯の水を与え、守備から選手が戻ってくるときには笑顔で選手たちを迎える。もちろん、彼らだけがやっているわけではない。しかし、4年が率先してやっている姿にグラウンドで出場している選手たちにも良い影響を与えているはずだ。非常に些細なことではあるが、これが今の慶大の強さに繋がっているのだろう。
そして、三連覇を果たす上で絶対に負けられない試合。ついに、“FAMILY”を縁の下から支え続けてきた男たちがついにグラウンドで躍動してみせた。延長11回裏、2点ビハインドで迎えた攻撃。スタンドにも嫌な雰囲気が漂う中、まず、そのムードを払拭したのは植田清だった。「4年の意地を見せる」と臨んだ結果、三塁手のグラブの横をしぶとく抜ける安打を放つ。2死満塁となって打席に立ったのは大平。一塁スタンドからの期待を一身に背負って振りぬいた打球は投手の足元を抜けるセンター前ヒットとなる。「清太が僕につないでくれてうれしかった」と4年の意地が生み出した同点劇だった。
しかし、このドラマはここでは終わらなかった。同点で迎えた12回の攻撃。安打と四球で1死満塁とサヨナラのチャンスを作ると、大久保監督が打席に送ったのは長谷川晴。ここまで自らが本職としている声出しを4時間以上やり遂げた男への最後のご褒美と言わんばかりに、この日最大の見せ場をプレゼントされた。追い込まれてからファールで粘り、最後は態勢を崩されながらも低めの球を振りぬいた。長谷川らしいしぶとい打球が遊撃手の左に転がる。飛び込んでかろうじて捕球するも、本塁への送球は間に合わず、サヨナラ内野安打となった。「ここまでやってきてよかったなって思って感極まりました」と長谷川は一塁コーチャーの泉名翔大郎(商4・慶應志木)学生スタッフと涙を流しながら熱い抱擁を交わした。
まさに4年の意地がつかんだ勝利であった。しかし、試合後、彼らはすでに次を見据えていた。そう、彼らには4年間で唯一やり残していることがある。それは「日本一」だ。それを達成するために、彼らは前に進み続ける。三連覇、そしてその先にある日本一の景色を見るために。彼らは大学野球のラストスパートを今日の勢いそのままに駆け抜けていく。
(記事・菊池輝)
☆インタビュー
植田清太(総4・慶應義塾)
――打席にはどのような気持ちで立ちましたか
4年の意地を見せて、どんな形でも良いのでつないでいこうという気持ちでした。
――全体的に4年生の活躍が目立ちました
大平とか長谷川とかが意地を見せてくれて、自分の実力以上のものを出せた結果、奇跡が起きました。
――ベンチの雰囲気はどうでしたか
2点勝ち越しされてしまった時も、「まだ終わってない」「まだ裏がある」という意識で全員挑んでいました。
――最後に次戦に向けて一言お願いします
今日は良い試合して勝ったんですけど、まだ優勝は決まっていないので気を抜かずにしっかり準備して、立教戦勝てるように頑張ります。
長谷川晴哉(法4・八代)・大平亮(環4・鎌倉学園)
――今の率直な感想をお願いします
長谷川:嬉しいです。
大平:勝てて良かったと思います。
――長谷川選手の涙が印象的でした
長谷川:ここまでやってきてよかったなと思って感極まりました。
――打席にはどのような気持ちで立ちましたか
長谷川:みんながつないでくれたので何とかしてバットに当てないとなというのが率直なイメージでした。あとはもう考えていないです。
大平:常々監督から「一発でかい仕事やってから卒業しようや」と言われていたので、今日がその時かなと思って打席に立ちました。
――同じ4年の植田清太選手が先に安打を放ちました
長谷川:正直、追い込まれた時ダメかなと思いました(笑)。それでも、今までにないような意地を見せたバッティングでかっこよかったです。
大平:集中していたのであまり覚えていないんですけど、清太が僕につないでくれて嬉しかったです。
――最後に次戦に向けて一言お願いします
長谷川:頑張って声出していきます。
大平:目の前のことだけを考えて、チームが勝てるように全力でやるべきことをやりたいと思います。