【ソッカー(女子)】大学リーグ第5節 死闘の末に得た、大きな価値を“持ちうる”勝ち点1 東洋大戦

ソッカー

6月には勝ち点1を分け合ったこのカード。同じくポゼッションサッカーを志向する両者であるが、前回対戦同様に、“ある程度相手を前進させてからボールの回収を試みる慶大”、“極端なハイプレスを敷く東洋大”という違いが試合を通して終始色濃く見られ、「本当に大学リーグの中でもかなりレベルの高い」(伊藤洋平監督)好ゲームとなった。前半、なかなかボールを保持できない慶大は、劣勢に立たされながらも前半をスコアレスで折り返すと、59分にセットプレーからエース山本華乃(理2・横須賀シーガルズ)のゴールで先制。しかし、昨季インカレベスト4の東洋大も底力を見せすぐに同点とされる。その後はお互い譲らぬ展開となり、1-1のドローという結果に。慶大は死闘の末、インカレに向け大きな価値を“持ちうる”勝ち点1を手にした。

 

第32回関東大学女子サッカーリーグ 第5節 vs東洋大学

2018/10/6(土)13:00KO @東洋大学板倉キャンパスグラウンド

【スコア】

慶應義塾大学1-1東洋大学

【得点者】

1-0 59分 山本華乃(慶應大学)

1-1 66分 斎藤麻由(東洋大学)

 

◇慶大出場選手

GK 志鎌奈津美(環4・常盤木学園)

DF 加藤楓琳(総3・常盤木学園)

DF 佐藤幸恵(総2・十文字)

DF 足立智佳(環2・大阪桐蔭)→84分 中井里衣子(総1・作陽)

DF 工藤真子(総3・日テレ・メニーナ)

MF 松木里緒(環3・常盤木学園)

MF 勝木日南子(総3・大和)→73分 高月彩香(環1・村田女子)

MF 中島菜々子(総4・十文字)Ⓒ

MF 平田朋(環1・日ノ本学園)

FW 鈴木紗理(総2・十文字)

FW 山本華乃(理2・横須賀シーガルズ)

皇后杯予選を経てチームが成長した姿を見せたいところ

第4節終了時点で上位4チームと下位6チームに分かれる構図となってきた大学リーグ。10月にも関わらず30度近い暑さに見舞われる厳しいコンディションの下、慶大はアウェイの群馬の地で4位の東洋大と対戦した。数名のけが人を抱える中、いつもと同じく4-2-3-1のフォーメーション。CBには工藤真子(総3・日テレ・メニーナ)が、ボランチには平田朋(環1・日ノ本学園)が入った。

 

立ち上がりは主導権を握られる展開に

立ち上がり、GK志鎌奈津美(環4・常盤木学園)からのパスコースを限定され、相手の執拗なハイプレスの前になかなかボールを保持できない慶大は、9分にPA内から強烈なボレーシュートを浴びる。しかし、これはGK志鎌が後ろに仰け反りながら、クロスバーの上へ弾くスーパーセーブ。続くCKも決定機を作られるが、今度はシュートがそのままクロスバーに当たり事なきを得る。すると18分、中盤でプレッシャーを受けながらもパスをつなぎ、ようやく山本華乃(理2・横須賀シーガルズ)にチャンスが訪れるも、シュートは枠を捉えられず。更に4分後にも加藤楓琳(総3・常盤木学園)のロングフィードから中島菜々子(総4・十文字)が絡み、最後は山本がPA内に侵入。シュートモーションの間に相手DFのスライディングを受け倒されたが、笛は吹かれなかった。ここからしばらくセカンドボールを奪えず、一方的に攻められる時間が続いたが、39分に久しぶりの決定機が訪れる。右サイドを松木里緒(環3・常盤木学園)がドリブルで駆け上がると、逆サイドを上がってきた勝木日南子(総3・大和)にピンポイントのパスがつながる。相手DFの戻りが遅れ、得点を感じさせる場面であったが勝木のシュートは相手GKの両手に阻まれてしまう。45分には、足立智佳(環2・大阪桐蔭)、山本、松木の3人の掛け合いから松木が右に持ち出してシュートチャンスを迎える。しかし、またも22分と同様に相手DFの激しいスライディングを受けて倒され、前半のうちに得点を奪うことはできなかった。

 

5試合で4発と好調の山本がこの日もゴールを挙げた

前半の終わりには後方から各々が少しずつリスクを分担することで、高い位置で前を向く回数を増やした慶大。中島、平田のテンポの良いパス交換も相まって、後半開始直後も良い時間が続く。55分には、左サイドでスペースを得たSB佐藤幸恵(総2・十文字)が、ファーサイドで待つSB足立の足元にクロスを上げ、足立はそのまま強烈なシュートを放つ。枠内には飛ばなかったが、両SBが高い位置を取る慶大らしい攻撃となった。そして迎えた59分、両軍一歩も引かない好ゲームの均衡がついに破られる。ドリブルで相手をはがした鈴木紗理(総2・十文字)が引っ張られFKのチャンスを獲得。鈴木のふわりとした軌道のキックはゴール前に飛び込んだ山本の頭に吸い付くように届いた。ドンピシャのボールをゴール左隅に流し込み、リーグ戦4点目を挙げた山本。得点後に両腕を突き上げるお馴染みのポーズが今節も飛び出した。勢いに乗りたい慶大だったが、平田も「自分たちが良いペースだった時に」と振り返るように66分、前半から瀬戸際でよく耐えていた中央の守備がついに決壊し失点。歓喜の先制弾も束の間、すぐに追いつかれてしまう。72分にはロングフィードを山本が収め右サイドに展開。ここからクロスが上がり、最後は勝木がヘディングシュートを放つもゴールとはならず。75分を過ぎると厳しいコンディションもあり、全体的に疲労感が漂い始める。しかし、ここを勝負どころと見た伊藤監督はベンチから何度も大声でチームを鼓舞する。更に前半からハイプレスを敷き続けた東洋大の選手も足が止まり始め、試合終盤は慶大が押し込む形となる。85分には後方から大きな声を張り上げる中井里衣子(総1・作陽)が投入され俄然勢いを増す慶大は、何本もクロスを上げ続け東洋大ゴールに襲い掛かる。90+3分には自らボールを奪った中島が中央をドリブルで突破し、1人で決定機を作るもネットを揺らすことはできず。試合終了のホイッスルが吹かれると慶大の選手たちは悔しさを滲ませた。

連敗を止めた慶大は5位と、依然インカレ出場圏内に踏みとどまった

伊藤監督も「まさに死闘」と振り返ったが、見ている人の気持ちも高ぶらせる気迫のこもった試合となった。関東リーグ・皇后杯・大学リーグと着実に成長し自信を深める中、昨季インカレベスト4相手に自らのサッカーをやり通せたことは更に自信となっただろう。勝ち点1という結果をポジティブに捉えるコメントが多かったのも納得がいく。第5節を終え、勝ち点2差に下位6チームがひしめく大混戦の大学リーグ。この勝ち点1を無駄にしないよう、残り後半4試合もインカレ出場権獲得へ向けて突き進んでいってほしい。

(記事:柴田航太郎 写真:岩見拓哉)

 

 

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以下、試合後コメント

伊藤洋平監督

――皇后杯を経ての今節となりました

いろいろな選手が経験を詰めたし、最後は負けてしまったんですけど、ああやってギリギリの生きるか死ぬかの戦いを3試合も最後までできたのがすごく成長につながったんじゃないかなと思います。

――激闘となりました

そうですね、まさに死闘でしたね。相手も同じスタイルで、お互いに相手のいいところを潰し合おうと、そして良いところを出そうと本当に大学リーグの中でもかなりレベルの高い試合だったと思います。

――連敗を止める形になった

去年インカレベスト4の東洋さん相手なのでかなりポジティブに捉えています。

――この勝ち点1をポジティブに捉えているということか

そうですね。

 

中島菜々子(総4・十文字)主将

――試合を振り返って

本当に勝ち切りたかった試合だったというのがある中で、勝ち点1はこの先に繋がるものなのかなとも思うので、ここからまた頑張っていきたいと思います。

――約1か月ぶりのリーグ戦でした

そうですね、リーグ戦は1か月空いていたんですけど、皇后杯の関東予選をずっと戦うことができていて、そこもあと一歩で全国というところで勝ち切れないという状況だったので、本当にみんな勝ちに飢えているというか、でもその中断期間は上手く調整できたのかなと思います。

――皇后杯予選を戦った中で成長した部分はあるか

そうですね、中断期間に結構ケガ人が多かったり、皇后杯予選も連戦で試合があったりという部分が多くてなかなか大学リーグでは出場機会のない選手が試合に出ることとかがあったので、そういう部分で総力的に上げることはできたのかなと思います。

――今日の引き分けで連敗はストップできた

本当にもう負けられない状況だと思うので、勝ち切りたかったというのは本当にあるんですけど、負けていないという部分はポジティブに捉えて次の試合もやっていきたいと思います。

――次節に向けて

さっきも言ったんですけど、本当に勝ちに飢えているしもう負けられない状況なので、何が何でも勝ち点を積み重ねて必ずインカレに行けるように全員で頑張っていきたいと思います。

 

山本華乃(理2・横須賀シーガルズ)

――試合を振り返って

今日勝てばインカレに近づくし、負ければ下位争いっていう大事な試合だったので勝ち点3を取りたかったんですけど引き分けに終わってしまって、この勝ち点1を「1あったからインカレ出られた」って言えるように繋げられるように残りの4試合を戦っていきたいと思います。

――貴重な先制点を挙げた

いつもいつも紗理(鈴木)から本当に良いボールが来るので、練習でもすごいぴったりのボールが来て。いつもどおり走って自分の長身を生かしてジャンプ出来て、入って本当に良かったです。

――好調の要因はご自身でどこだと思いますか

皇后杯でも3試合中1回勝てば全国っていう中でその3試合で一点も決められなかったのが自分でも悔しくて、それをこの大学リーグに活かそうと思って今日はいろいろイメージして入ってそれで点が入ったので良かったです。

――次節に向けて

次は絶対に負けられないので、全員で一丸となって戦っていきたいと思います。

 

平田朋(環1・日ノ本学園)

――試合を振り返って

インカレを目指すためには今日はどうしても勝ち点3が欲しかったなかで、立ち上がりは自分たちのリズムが作れなかったものの先に点が取れたことは良かったんですけど、その後の戦い方が悪く簡単に失点してしまったので、そこを課題にして次の試合は絶対に勝てるようにしたいです。

――今日はボランチでの先発起用となった

いつもはサイドハーフをやらせてもらっていて攻撃はしているんですけど、今日は自分が真ん中を守っているということなので、絶対に失点したくないという気持ちとチームのために最後まで走り切るという覚悟を持って最後まで走れたので良かったなと思います。

――特別意識していたことは

前前になって点が取りたいという気持ちがすごく出てきてしまって自分の性格的にも前に行ってしまうんですけど、その時に自分がやりたいことじゃなくてチームに何が求められているかというのを凄く意識してポジションを取るようにしています。

――失点後の戦い方は

それほどやられた感じで失点したわけではなくて自分たちが良いペースだった時に失点してしまったので、やられたという思いではなくてこのまま自分たちのサッカーをやり続ければ点は入るかなと思っていたので、最後まで自分たちのサッカーをやり続けようという思いでやっていました。

――次節に向けて

1年生として試合に出させてもらっていて、3年生とか4年生でベンチの人とかがたくさんいる中でも自分が試合に出ているということは当たり前じゃないと思うし、上手くできないことに対して上手くできないって思うんじゃなくて、感謝の気持ちとかを本当に持って自分にできることを精一杯やりたいなと思います。

 

*記事の公開が遅れてしまい、申し訳ございません。

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