春とはいえ、まだ風の冷たさを感じる4月下旬。10連休中ということもあり今年の駒沢には大勢の観客が詰めかけた。慶大は、直近の早慶アメリカンフットボール対校戦で4連敗中。今回は是が非でも勝ちたい戦いだった。試合前半は、相手のファンブルをリカバーしてタッチダウンに結びつけたものの、終始、早大のパスとランを組み合わせた攻撃に苦戦し17点ビハインドで折り返す。後半は4Qにスペシャルプレーの成功でタッチダウンを決め大いに観客を沸かせた。その一方で、オフェンスの要所でのミスがつづき平成最後の伝統の一戦は13-37で完敗に終わり、春の早慶戦5連敗となった。
第67回 早慶アメリカンフットボール対校戦
4月29日(月・祝)@駒沢陸上競技場 14:00KO
慶大 |
| 早大 |
0 | 1Q | 7 |
7 | 2Q | 17 |
0 | 3Q | 3 |
6 | 4Q | 10 |
13 | TOTAL | 37 |
試合は慶大のキックから始まった。だが、開始早々、早大に出鼻をくじかれる。パスとランを織り交ぜた攻撃に苦戦しフレッシュを獲得され続ける。最後は、主将のDL並木琢朗(政4・慶應義塾)が開幕前インタビューで警戒していた、QB柴崎からWRブレナンへのパスが通り、最初の相手の攻撃シリーズで先制を許した。すぐに反撃に出たい慶大は、自分たちに攻撃のリズムを与えるため、パスを軸にオフェンスを開始した。その立ち上がり、QB西澤巧馬(理4・慶應義塾)からSB吉田直輝(法4・慶應義塾)やWRミラー飛雄(商4・慶應NY)へのパスが決まり次々とファーストダウンを更新する。ここまでは狙い通りだった。しかし、敵陣に入るとパスミスや反則を犯し、エンドラインを脅かすまでには至らず。結局、無得点のまま1Qを終えることとなった。
早めに追いつきたい2Q。慶大がディフェンスから流れを作る。敵陣での相手の3rdダウン、DL並木のサックが決まると相手QBがたまらずボールをファンブルした。これを見逃さなかったLB橋本拓哉(経2・慶應義塾)がすぐさまリカバーし敵陣27ヤードでの攻撃権獲得に成功。このチャンスの場面で、QB西澤からのパスをWR工藤眞輝(商2・慶應義塾)がキャッチしタッチダウンを奪った。続くトライフォーポイントのキックを、今シーズンからキッカーも務めるCB山本小次郎(総3・青山学院)が落ち着いて決め7-7の同点となり慶大側の観客席では大歓声が沸き起こった。だが、ここから、昨年の関東大学リーグ王者の猛攻に遭う。2本のランプレーにより大きく前進を許すと、決死の守備も虚しく最後はQBスクランブルでタッチダウンを奪われる。巻き返しを図りたい慶大だったが、自陣28ヤードからの攻撃でまさかのインターセプト。これを機に追加点を献上すると、その後は攻守両方でリズムを取り戻せず、前半を7-24と大きくリードされる展開で終えた。
後半の立ち上がり、勝利に向かってこれ以上の失点を防ぎたい慶大はディフェンスでプレッシャーをかける。前半途中から早大のランプレーに翻弄されてきたディフェンス陣は、3Qに入ると、LB田中瑛(経4・慶應義塾)とDL並木がともにこの試合2回目のロスタックルを決めるなど、チーム一丸となって気迫のこもったプレーを見せた。新チームのテーマの一つでもある「フィジカルで勝つ」を実践し、3Qでは1度もフレッシュ獲得をさせなかった。一方のオフェンスは攻め手を欠きなかなか敵陣に侵入することが出来ないでいたが、最後の攻撃シリーズで2回ファーストダウンを更新。攻守ともにいい流れで4Qに突入した。
そして4Q最初の攻撃で今試合最大のビッグプレーが生まれる。QB西澤がわざとワンバウンドで真横より少し後方にいたWR工藤にパス。それが失敗したかのような素振りを見せて相手を油断させたWR工藤は、敵陣深くを走っていたWR佐藤凱輝(経4・慶應義塾)に難なくパスを通しタッチダウンを決めた。このトリックプレーに会場は今日一の盛り上がりを見せる。さらに、直後の早大の攻撃をパントに追い込んだことで慶大に流れが完全に傾くかと思われた。だが、次の慶大の攻撃でまさかのターンオーバー。残り時間を考えるとあまりに手痛いミスだった。結局、これを機にタッチダウンを許した慶大はその後の攻撃でフレッシュを獲得できないまま試合終了となった。
13-37と結果だけを見れば完敗だ。しかし、WR工藤が「早稲田との個の力の差があったとは思わなかった」と言っていたように、内容でみれば数字ほどの差はなかったように感じた。ディフェンスは試合を通して修正が効き、フィジカルで勝って、早大の強みの一つであるランを防げていた。オフェンスもパスやランを織り交ぜながら攻められていた。しかし、CB山本が「チームとしてもったいない試合をしてしまった」と言っていたように、要所でのパスミスや反則が目立った印象があった。「フィジカルとファンダメンタルで勝つ」という新チームのテーマのうち、ファンダメンタルな部分をこれからの春のオープン戦を通して修正することが急務である。そうすれば、令和時代の慶大UNICORNSが秋のリーグ戦での躍進そして甲子園ボウルで躍動することは間違いないだろう。
(記事:増田将大 写真:左近美月、五十右瑛士)
以下選手インタビュー
山本小次郎(総3・青山学院)
_ _ 今日の試合を振り返って
ディフェンスとして普段こだわっている部分が出来なかったことが今日の反省だと思っていてます。また、チームとしても、もったいない試合をしたと思います。
_ _ キッカーとしては初出場となりましたが
ディフェンスと兼任のためキックに集中しづらい状況ではあるんですけど、そういう場面になったときにしっかりと集中することを意識して臨みました。ただ、試合ではミスをしてしまったのでそこは反省するところです。
_ _ CBとしてはタッチダウンを阻止するいいプレーが見られました
その前に失点に絡むミスをしてしまったので集中していました。あのプレーは良かったので、そういうプレーを今後増やしていければと思います。
_ _ 早慶戦で出た課題と秋のリーグ戦に向けて
普段の練習で出来ないことは試合でも出来ないと思っていて、今日の試合を通してチームとしてもそのことを痛感したので、技術的な練習にこだわりを持ってやっていきたいです。
工藤眞輝(商2・慶應義塾)
_ _ 今日の試合を振り返って
早稲田との個の力の差があったというよりかは、自分たちが要所でミスをしてしまったことが敗戦につながったと思います。
_ _ 早慶戦に臨む上で意識したことは
特に気負いすることなく、平常心で挑もうと意識して臨みました。
_ _ 2つのタッチダウン両方に絡む活躍をみせましたが
2個目のタッチダウンの方が個人的に嬉しいです。いつもはボールを受け取る立場なんですけど、ボールを投げた上で得点に絡めたということ。また、チームの中で準備をしてきたスペシャルプレーでもあったので決められて良かったと思っています。
_ _ この試合での反省点と今後について
早稲田はミスがなかった一方で、自分たちは、チームとして意識していこうとした部分が試合で出来ていなかったり、大事なところでボールを落としてしまうミスがあったりしたのでそういうところを修正していきたいと思います。