6月2日(日)東京六大学春季リーグ戦 早大2回戦 @明治神宮球場
圧巻の投球だった。慶大先発投手・木澤尚文(商3・慶應)が初回から自己最速となる154キロを記録し、その後は変化球も織り交ぜながらの投球で8回途中3安打10奪三振無失点の好投を晴れ舞台で披露した。打線も3回表に柳町達(商4・慶應)の適時二塁打と中村健人(環4・中京大中京)の3点本塁打で一挙5点を挙げ、そのまま逃げ切り。早大との最終節を1勝1敗とし勝ち点の行方は明日以降へ持ち越した。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
慶大 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 |
早大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
慶大バッテリー:○木澤、佐藤-郡司
早大バッテリー:●西垣、上條、藤井寛、田中星、柴田-小藤
慶大本塁打:中村2号2ラン(3回)
ポジション | 選手名(学部学年・出身高校) | |
---|---|---|
1 | [8]7 | 柳町達(商4・慶應) |
2 | [5] | 下山悠介(商1・慶應) |
3 | [9] | 中村健人(環4・中京大中京) |
4 | [2] | 郡司裕也(環4・仙台育英) |
5 | [7] | 正木智也(政2・慶應) |
R8 | 渡部遼人(環2・桐光学園) | |
6 | [3] | 福井章吾(環2・大阪桐蔭) |
H | 若林将平(環2・履正社) | |
H | 山本晃大(総1・浦和学院) | |
3 | 嶋田翔(環3・樹徳) | |
7 | [4] | 小原和樹(環4・盛岡三) |
8 | [6] | 瀬戸西純(政3・慶應) |
9 | [1] | 木澤尚文(商3・慶應) |
1 | 佐藤宏樹(環3・大館鳳鳴) |
昨日の1点差の敗北から一夜が明け、2回戦の先発投手を任されたのは木澤。「初回から全力で出し切ります」と試合前に宣言した通り、先頭打者・瀧澤を152キロの直球で見逃し三振に封じ込めると、続く金子に対しての初球。自己最速を更新する154キロの直球を投じると、最後は変化球で空振り三振に仕留めるなど、課題の立ち上がりを乗り越えた。
木澤の好投に応えたい慶大は3回表に早大先発投手・西垣をとらえ、先制に成功する。先頭打者・小原和樹(環4・盛岡三)が四球で出塁すると、瀬戸西純(政3・慶應)が内野安打となるプッシュバントを決め、出塁。木澤が犠打を決め1死二、三塁の好機の場面で迎えるは柳町。131キロ外角低めの変化球を左翼フェンスに直撃する二塁打を放ち、走者2人が帰還。2点の先制に成功した。
この回の猛攻はこれだけでは終わらない。3番・中村も「良いスイングができたと思います」(中村)とやや内角に入った137キロの直球を振り切り、左中間スタンドへ飛び込む3点本塁打となった。この回と一挙5点を挙げ、試合序盤から良い展開にした。
この日の木澤には5点の援護は十分すぎるものだった。試合中盤から走者を背負う場面もいくつかあった。5回裏、1死から小藤に二塁打等で2死三塁にするが鈴木萌を高めの直球で空振り三振に抑え、ピンチを切り抜けると、7回裏も先頭打者・加藤に右翼線への二塁打を許し、2死一、二塁の場面で代打・田口を迎えるも最後は見逃し三振に抑えるなど、要所を締め、決して得点を与えない闘志溢れる投球を見せた。8回裏、1死を奪ったところで木澤は降板。マウンドには佐藤宏樹(環3・大館鳳鳴)が上がったが、意外な形での失点を許すこととなる。2死二塁で迎えた福岡の打席。佐藤の暴投でボールが三塁方向へ逸れている間に瀧澤が二塁から一気に本塁へ突入し判定はセーフ。昨日に続いて瀧澤の足が絡んだ失点となった。しかし早大の得点はこの1点のみ。最終回は走者を得点圏にまで進めるも中川卓を併殺打に打ち取り試合終了。1勝1敗とし、勝ち点の行方は明日以降へ持ち越された。
「去年の悔しさを晴らす最高の舞台ができた」(郡司)。昨秋の早大3回戦の雪辱を胸にここまで戦ってきた慶大ナインが挑む春季リーグ最終戦。早慶両校の誇りを胸に熾烈な試合展開が予想される中、慶大が勝ち切れるか。一瞬たりとも見逃せない戦いが繰り広げられるに違いない。
(記事:小林歩、写真:左近美月、澤田夏美)
◆打撃成績
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | [8] | 柳町 | 遊ゴロ | 左2② | 二ゴロ | 四球 | 四球 | ||||
2 | [5] | 下山 | 一ゴロ | 死球 | 空三振 | 二ゴロ | 中安 | ||||
3 | [9] | 中村 | 遊ゴロ | 左中本③ | 空三振 | 空三振 | 遊ゴロ | ||||
4 | [2] | 郡司 | 二飛 | 中安 | 遊ゴロ | 三安 | |||||
5 | [7] | 正木 | 中飛 | 併殺打 | 四球 | ||||||
R8 | 渡部遼 | 投犠打 | |||||||||
6 | [3] | 福井 | 中飛 | 中飛 | |||||||
H | 若林 | ||||||||||
H | 山本晃 | 投ゴロ | |||||||||
3 | 嶋田 | 右直 | 三ゴロ | ||||||||
7 | [4] | 小原 | 四球 | 投ゴロ | 逃三振 | 遊ゴロ | |||||
8 | [6] | 瀬戸西 | 投安 | 中安 | 左安 | 三邪飛 | |||||
9 | [1] | 木澤 | 一犠打 | 空三振 | 空三振 | ||||||
1 | 佐藤 | 空三振 |
◆投手成績
投球回数 | 打者数 | 球数 | 安打 | 三振 | 四死球 | 失点 | 自責 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
木澤 | 7 1/ 3 | 27 | 112 | 3 | 10 | 2 | 0 | 0 |
佐藤 | 1 2/3 | 7 | 30 | 3 | 1 | 0 | 1 | 1 |
◆監督・選手コメント
大久保秀昭監督
ーー今日の試合を振り返って
今日は木澤がベストピッチングに近いものを出してくれたと思います。ナイスピッチングだったと思います。
ーー監督就任以来初の日曜日の勝利でした
昨日の早稲田を見て、闘志に火がついたと言いますか、吹っ切れた部分がありました。
ーー木澤選手には初回から全力で行けという旨を伝えましたか
立ち上がりが課題の試合が2試合続いていたので、そこを特に意識して入ったと思います。
ーー柳町選手の適時二塁打については
大きいです。西垣君はしっかりゲームメイクするピッチャーなので二巡目で捉えたのは大きかったと思います。2点と中村の3ランで5点取れて、2点と5回では全然違いますからね。
ーー3回以降の攻撃については
打線がつながりそうでつながらないというのが少しありました。今日はあと1本欲しいという時に柳町、中村が打ってくれて、やはり勝つときはそれがもう少し続きますからね。昨日も満塁の嶋田の場面もそうですし、明大戦の時もそうです。相手投手が成績通りのピッチングをしますから簡単ではないです。
ーー瀬戸西選手が猛打賞を記録しました
バントのヒットはラッキーなところがあって、最後に帳尻合わせて打率稼いできたところがあります。けれども一生懸命課題意識を持ってやっていますし、今日の守備もいいプレーをしてくれましたから、外せないようなところもあります。渡部遼や小原といった守備の人がもう少し頑張って2割5分以上打ってつなげられるようになったら、もっと強いのかなと思います
ーー明日に向けて
勝ち点4を取りたいです。やります。
竹内大助助監督
ーー今日の試合を振り返って
今日は木澤が良かったですね。
ーー木澤選手のどのようなところが良かったですか
先発何回か失敗していて本人も反省していて、今日は「初回から全力で出し切ります」という話をしてそういう風にミーティングもしていていい準備ができたので、それがうまく試合に入って良い結果につながったかなと思います。
ーー試合前に木澤選手とどのような話をされましたか
今日は早い回で変わってもいいから1イニング100パーセントを出し切って、あとに良い投手がいるのでつないでいこうという話をしました。
ーー試合後に佐藤選手とお話しされていましたが
今日の佐藤の調子とか、何を考えていたかとかそういう明日も試合があるので明日に向けての準備という意味での反省をしていました。
ーー今日に向けてどのような準備をされましたか
しっかり相手の打線の映像も見て、反省すべきところはしっかりしてできる準備はしっかり怠らずに、今日明日2日間あるのでしっかり勝ち切れるように抜かりなく準備していこうという話をしました。あとは選手たちがよくやってくれたと思います。
ーー明日に向けて意気込みを
最後勝って終わるのと負けて終わるのでは全然違うと思いますし、勝って終わって秋につなげるというのが大事だと思うので勝って終われるように「ピッチャーで勝った。」と言われる試合にできるように頑張ってもらいたいと思います。
郡司裕也主将(環4・仙台育英)
ーー今日の試合を振り返って
木澤が本当によく頑張ってくれたのと4年生中心に打ち崩すことが出来たので良かったと思います。
ーー先発の木澤選手が好投を見せました
今までにないくらいの出来で、文句のつけようがなかったです。
ーーどういった配球でしたか
1つの球種に的を絞られないようにいろんな球種を使いながら、カーブ、カットボール、スプリットなど織り交ぜるように意識しました。
ーー佐藤選手はいかがでしたか
明治戦で調子を落としてしまって、そこから立ち直ろうとしている最中で、ボールの勢いは若干戻ってきたので、僕のミスもあって失点してしまいましたけど、上り調子ではあると思います。
ーー昨日に引き続き瀧澤選手に得点を許しました
彼はすごくいい選手なので明日はきっちり抑えられるように一番警戒するくらいの気持ちでやりたいと思います。
ーー慶應の打線はいかがでしたか
今日は初回からどんどん失敗を恐れずに振っていこうということで、それが長打に結びついたりした結果だと思うので良かったです。
ーー明日への意気込みを
去年の悔しさを晴らす最高の場面ができたのでなんとか明日全員で勝ちに行きたいと思います。
柳町達(商4・慶應)
ーー今日の試合を振り返って
序盤に大きな援護点を取れて、良い流れで入れました。また、木澤が踏ん張って良く投げてくれたのが勝ちにつながったのかなと思います。
ーー木澤選手の投球は外野からどのように見えましたか
球自体も良かったですし、ストライクもポンポン取れていたので、それが良かったのかなと思います。
ーー今日の打撃を振り返って
今日も悪くはなかったので、それでチャンスで良い安打が打てて良かったと思います。
ーー首位打者争いについては
もちろん獲りたいんですけど、まずは早慶戦に勝つということを第一に考えて、その結果首位打者が獲れたら良いなと思います。
ーー現在のチームの雰囲気は
最近負けていて、やっと勝てたので「勝ちっていいな」と感じて良い雰囲気になっていると思います。
ーー明日に向けて
第1戦打ち崩せなかった早川投手が投げてくると思うので、しっかり打ち崩して早慶戦での勝ち点を取りたいと思います。
中村健人(環4・中京大中京)
ーー試合を振り返って率直な感想を
今日は同部屋の木澤がとても頑張ってくれていたので、助けたいなと思っていました。全体としても緊張感をずっと保つことのできた試合だったと思います。
ーー初戦を落としてしまった中で今日を迎えましたが、チームの雰囲気はいかがでしたか
昨日、ロッカールームで岡部長から「ただ1回負けただけだ」と喝を入れていただきました。全員が”勝ち点を取る”ということに集中することができました。束になって戦えたと思います。
ーー第2打席での本塁打を振り返って
下山が死球でつないでくれて、「ここを逃したら次のチャンスはないかもしれない」という気持ちで振った結果が良かったのかなと思います。
ーーコースと球種は
インコース寄りのストレートです。良いスイングができたと思います(笑)。
ーー守備について、3回のダイビングキャッチは
9番の投手のところで代打が出て、その後には瀧澤選手に回るという場面でした。「ここは3人で切らないといけない」と思っていた中で僕のところに打球が飛んできたので、思い切って飛び込めて良かったです。
ーー明日に向けての意気込みを
3回戦で勝利することができれば来季の優勝にもつながると思うので、全力で勝ちにいきたいです。
瀬戸西純(政3・慶應)
ーー今日の試合を振り返って
とりあえず早稲田から1勝できて、勝ち点をかけた3戦目の挑戦権を得られたのは素直にとても嬉しいです。
ーー初戦落とした中での今日の試合でした
負けたことがとにかく悔しくて、その負け方もこっちの不注意のホームスチールとホームラン2本で負けたんですけど負けた感じがしない、そういう負け方をしてしまったのがとても悔しくて。とにかく勝ちたかったんで先発が木澤ということもあって、3年でなんとかしようと思って代表としてとにかく勝ってやろうと思って初回から集中していきました。勝因は木澤のナイスピッチングです。
ーーご自身のプレー振り返って
木澤の立ち上がり見て球がとても走っていたんで、初回良い形で終えたら波に乗ってこのまま行ってくれるんじゃないかなって思っていました。その中で福岡さんのセンターに抜けそうな打球を一発目アウトにできたっていうのは今日のプレーの中で一番良かったと思います。
ーー2回にはバントヒットもありました
あれは初球バントファールして、それで焦りとかは特になかったんですけど、きっちりやってから走ろうっていう気持ちだった結果良い所に転がってくれたんで結果オーライです。一発目で決められなかったのは反省ポイントです。
ーー今季初の猛打賞でした。何を意識して打席に立っていましたか。
強い打球を打つことをいつも通り意識していたんですけど、ヘッドを立てた状態でバットにボール当てるっていう所を変えて、意識して立っていたのが良い結果を産んでくれたんで良かったかなと思います。
ーー打撃の調子は上向きでしょうか
それはまあ分からないですけど、まだ長打とかではないですけど、良いヒットで良い攻めの中の一人として貢献できているので続けていきたいと思います。
ーー守備機会も多かったです
そうですね、久しぶりに良い守備ができたのかなあという風に思います。一発目でアウトにできたのが木澤もですけど僕も良い波に乗れたんじゃないかなと思います。
ーー明日に向けて
今日勝っても明日負けたら意味ないので、なんとしてでも試合に勝って勝ち点取って春リーグを良い形で終えたいと思います。
木澤尚文(商3・慶應)
ーー今日の試合を振り返って
昨日ホームスチールとホームランで本当に悔しい負け方して、監督が珍しく本当に今日勝ちたいから頼むって言ってくださったので、理屈とか抜きに本当に勝ちたいと思って投げました。
ーー昨日敗戦して今日を迎えました。どのような気持ちで臨みましたか
明治戦先発外されて本当に悔しかったんで、個人的な気持ちになっちゃいますけど、本当に先発で結果出してやろうって思って投げました。
ーー初回から飛ばしていたように思います。調子はいかがでしたか
飛ばしていましたね。もう調子は出来過ぎで、あれぐらいスピード出てくれれば多少甘くてもと思っていましたが、まあ長打も浴びてなかなか簡単に行かなかったんですけど、郡司さんとも試合中から色々と話し合いながら投げられて良かったです。
ーー金子選手の打席では自己最速となる154キロを記録しました
昨年の秋も金子には打たれていてそれもちょっと悔しかったんですけど、(その前の)瀧澤選手の時に152出て、今日(球速が)出るんじゃない?って思っていました。
ーー154キロという球速について率直にいかがですか
いやもう今後出ないんじゃないかって思っていて本当今日出来過ぎだったので、次の登板では今日のイメージ持ちすぎず良い所だけ拾って投げたいですね。
ーー三振も10個奪いました
そうですねランナー出してから三振奪えたので、それは低めのワンバン止めていただいたりしたのですごい郡司さんに感謝です。
ーー変化球はいかがでしたか
まっすぐもスピード出ていたんですけど、まっすぐに頼らないで投げられたのが今日の結果につながったのかなと思っています。
ーーカットボール中心でしょうか
そうですねカットとカーブも多めに今日使いましたね。
ーー明日に向けて
明日もしかしたら登板あると思うので、それこそ
明日出し切って良い形で春のリーグ戦締めて秋につなげたいです。