降りしきる雨の中で開催された、令和元年ラグビー早慶戦。慶大が対抗戦ここまで全勝の早大をこの秋最も少ない3トライに封じる、ロースコアでの接戦となった。結果は及ばなかったが、「慶應のプライド」を見せつけた。試合後の栗原徹ヘッドコーチと栗原由太主将(環4・桐蔭学園)の共同記者会見からの抜粋と、出場した選手たちにケイスポが独自に行った個別インタビューの内容をお届けする。
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ここまで全勝の宿敵に肉薄 見せつけた“慶應ラグビー”
◇共同記者会見より抜粋
――今日の試合について一言
栗原徹HC:すばらしい環境の中で早慶戦ができてありがたく思います。明大、日体大、筑波大に負け、苦しい中での早慶戦でしたが、学生と集まって1週間準備してきました。1週間準備してきたことはしっかり出せたと思います。その結果、7点差の敗戦だと思います。選手は一生懸命頑張ってくれました。また、この7点というのを考えて次の帝京大戦、今後に生かしていきたいです。本日は本当にありがとうございました。
CTB栗原由太主将:本日は天気が悪い中すばらしい環境の中で試合ができたことに感謝します。早稲田大学さんにフォーカスするより、自分たちにフォーカスしました。今シーズンうまくいっていない中で、慶應らしさとは何なのかというのを突き詰めようと思って2週間やってきました。その結果として、選手自身はプレーをしていて手応えというのを感じていた中で7点差という結果で、この1年間積み重ねてきた僕たちと早稲田さんの差だと思います。大きな後悔もなく今シーズン一番やりきった試合だと思います。
――栗原主将をベンチスタートにした理由と、前半からPG(ペナルティゴール)の機会が多かった点に関しては
栗原HC:キャプテンの栗原は脳震盪明けということで2週間のうち全ての練習に取り組めていませんでした。その2週間の間に(立教大との)定期戦を1つ挟みましたが、そこでの三木(亮弥=総3・京都成章)とイサコ・エノサ(環1・King’s College)のパフォーマンスが良かったです。以前から彼(栗原)をブースターにということで、後半に使うということを彼と相談して決めました。前半は川合(秀和=総4・國學院久我山)の方にゲームメイクを任せました。上からの指示を含めてうまくいったと思います。こちらの指示と違う場面もありましたが、彼らの選択というのは今日に関して問題なかったと思います。またレビューをして、反省すべきところは修正したいと思います。現時点においては問題なかったと思います。上からショット(PG)という指示は出していません。前半の最後はショットという指示を出しましたが、出す前にショットになっていました。
――明らかに今日の内容はイーブンでした。2週間の間、どこにフォーカスしてどこがうまく改善されましたか
栗原HC:タックルです。慶應の現在地と早稲田の現在地を見たときに、タックルで抵抗するしかないと思いました。かなりのタックル数をやってきました。それに慶應の選手たちにある元々のDNAみたいなところに合致したと思います。栗原主将も話しましたが、慶應らしさを突き詰めた上でタックルは欠かせないと思います。タックルにはいろんなスキルもありますし、タックルにいきたいという意欲もあります。何よりもタックルにいくという意欲の部分をしっかりやってきました。スキルの部分は春からやってきました。早稲田に勝ちたい、自分たちの存在価値を示したいなど、この試合では最も重要な部分だと思いました。あとは選手たち本人に聞いてもらいたいです。かなりきついタックルや、タックルを含めたトレーニングをやってきました。
――どういうゲームプランで今日の試合に臨みましたか
栗原HC:状況を見ながらスペースを攻めましょうというプランでした。早い段階でキックを使うようにという指示を出していました。反省としては自陣でのゲームメイクが少し伸びすぎたかなと思います。
――7点差という点差については
CTB栗原主将:僕たちがやってきたディフェンスを崩せる早稲田さんの力が7点差につながったと思います。この1年間いろいろ積み重ねていた中、早稲田さんはアタックに自信を持っていて、僕たちはディフェンスアタックにすごく自信を持っていました。そこをうまくぶつけましたけど、それ以上のアタック力があり、早稲田さんの方が一枚上手であったと思います。
――ラインアウトからのアタックをいろいろ準備していたと思います。トライを1本しか取れなかったことに関して
栗原HC:全ての起点のラインアウトでクリーンなキャッチができませんでした。絵に描いた餅になったので、しっかりラインアウトを取るというところから見直さないといけないと思います。先週と今週でラインアウトの精度が良くてある程度取れるという計算をしていました。スクラムとラインアウト両方ですね。特に今日はラインアウトの方で手こずりました。しっかりそこのラインアウトを取った後のデザインも大切ですけど、まずしっかりラインアウトを取るというところをもう一度立ち直って強化しないといけないと思います。
――早大のディフェンスについて
CTB栗原主将:早稲田さんは一人一人強かったです。そういう一人一人のフィジカルの差というのがあったと思います。僕たちは一人一人大きいわけでもなく小さいです。高くいって絡まれてしまった、など、こういう体の大きさによる一対一の局面で僕たちのタックルが甘くなったところを早稲田さんが見逃さないで来るというのを場面場面であるなと思いました。特にブレイクダウンのところで姿勢が高いとプレッシャーをかけられて球出しが遅れるなど、そういうところの一個一個の隙を見逃さないことに関してもディフェンスも含めて早稲田さんの方が僕たちより一枚上手だったと思います。
◇試合後個別インタビュー
CTB栗原
──試合を振り返って率直な感想を
やり切れたなという気持ちです。今シーズンに入って一番「自分たちらしさ」を出せた試合だったと思います。7点というのは僕たちが1年間積み上げてきたものの差なのではと思います。
──前半ご覧になっていていかがでしたか
早く出たいという気持ちでした(笑)。みんな身体を張ってくれていて、やっとそういう慶應を見られているな…という、第三者的な目線を持っていました。自分も早くそこにまじって戦いたいという思いが強かったです。
──後半から出場されましたが
ずっと出たくてわくわくしていました。楽しかったです。自分のもともと持っている部分も、新たな部分も出すことができましたし、よかったです。最後の一期からのパスは取りたかったですが…後悔はそれくらいです。
──雨の中での試合でした
エリアのマネジメントをもう少し早くとろうという話をチームでしていました。あとは、パスをもう少し身体に投げてあげようという点について話していました。
──帝京大戦に向けて
今週やっと「慶應らしさ」を出すことができたので、そこをもう一度追求してその上で結果を出していきたいです。そして、それを見た後輩たちがなにかを感じ取ってくれればいいなと思います。いい流れで後輩たちにバトンタッチできるように頑張ります。
HO安田裕貴(政4・慶應)
——まずは率直な感想を
結果は悔しいのですが、慶應らしさを出し切れた試合だったと思っています。そういった面では満足しています。
——ブースターとしての出場でした。自身のパフォーマンスを振り返って
自分自身今日の試合にブースターとして出場したらとにかく愚直にひたむきにプレーしたいと思っていました。ボールを持ったら低く前へ出て、そういった愚直さを体現できたのではないかなと思います。
——最後の早慶戦という意味でなにか感じるところは
(自分が入学してから)大学4年間、慶應は早稲田に勝てていなくて、自分自身は2年生から出させてもらっていて、2・3・4年とどれも僅差で負けてしまいました。もう自分自身でリベンジできる機会はないので、来年以降後輩たちにがんばってもらいたいと思います。
――今日はスタンドの応援の声がいつも以上に大きかったように感じましたが、グラウンドからは聞こえましたか
もちろん聞こえました。自分が入る時もすごく歓声をもらいました。メンバーじゃない部員のみんなが力をくれたなと思っています。
——次週、対抗戦最終戦です。それに向けて一言お願いします
今日のような、低い、前に出て突き刺さるタックルを慶應がして、接戦に持ち込んでその中で勝つというのが慶應のスタイルだと思うので、1週間しっかり準備して、来週もひたむきに泥臭い慶應らしい良いプレーをして、勝利につなげたいです。
LO相部開哉(政3・慶應)
――今日の試合を振り返って
今までの試合で出せていなかった、慶應らしさというものは出せたかなと思います。
――大舞台・早慶戦ということですが
意識しすぎないようにしようとは思っていましたが、伝統の一戦ということもあり、やはりみんなモチベーションが高まっていました。
――次の帝京戦に向けて
大学選手権に出られないということが確定しましたが、残り一戦、とにかく慶應らしさというものを追求して、その結果勝利というものが先にあればいいなと思います。
LO今野勇久(総1・桐蔭学園)
――初めての早慶戦でしたが、今日の試合に向けて意識したことはありますか
すごい憧れの舞台ではあったのですが、そういう意識をするとパフォーマンスも下がってしまうので、いつもの練習通りのことをやろうと思いました。
――今日の試合の率直な感想を
やれたことはとても多かったです。今までの試合に比べたら全員がひたむきにやるという慶應ラグビーを体現していたと思いますが、結果的に7点差離れてしまったというのがとても悔しいです。
――セットプレーの出来については
スクラムは色々なチームと合同練習をして改善できて良かったのですが、雨ということもあり、ラインアウトのところでプレッシャーを受けてしまったので、それを次の試合で改善したいです。
――次は対抗戦最終戦です。意気込みを
慶應は本当にもうやるしかないので、がむしゃらに全員で勝ちにいきたいと思います
SH上村龍舞(環4・國學院栃木)
――今日の試合を振り返って
早慶戦まで2週間あったんですけど、慶應として準備できたことが出せたのかなと思います。結果は伴いませんでしたが、しっかり切り替えて来週の帝京戦に全力を出したいと今は思っています。
――今日のゲームプランは
(対抗戦の前半戦は)気持ちの面でチームが一つになっていなかったので、「慶應のラグビーとは何か」というところをチーム全員で考えた結果、泥臭さとかが慶應らしさとして一つになれたので、ディフェンスの面で低く速く泥臭いプレーをしようと掲げて臨みました。
――早慶戦の舞台はいかがでしたか
伝統の一戦に立てるのが楽しみだったのと、特に気負いはせずに2週間やってきたことを出すという意識で臨みました。
――帝京戦に向けて
もう一回チームが一つになって、慶應らしさをしっかり出せば結果はついてくると思うので、慶應プライドを見せたいと思います。
SO中楠一期(総1・國學院久我山)
――今日の試合を振り返って
前半の最初のところで、エリアを取るところがうまくいかなくて難しく考える部分がありました。そこを修正したところから慶應ラグビーができたと思います。
――天候が悪い中での試合でしたが、どういうゲームプランで臨みましたか
相手のターゲットを決めて、そこに対して蹴りこみました。相手の(SOの)岸岡選手は長いキックを蹴ってくる選手です。岸岡選手に長いキックを返されないように注意しながら蹴っていました。
――ご自身のパフォーマンスを振り返って
最初のマネジメントがうまくいかなかったところで2本トライを許しました。そこで自陣で戦っていなければ勝つチャンスがあっと思うので、そこに関してしっかり反省したいです。
――次週の帝京大戦に向けての意気込み
大学選手権を考えると結果ではなく、慶應ラグビーを見せないといけないと思います。意地を見せないといけないと思うので、1週間しっかり準備をしていい試合ができるように頑張りたいです。
CTB三木亮弥(総3・京都成章)
――早慶戦に向けてどのような準備をしてきましたか
相手が早稲田ということもありますが、これまでの試合で慶應が慶應らしさを出せていなかったので、まずは自分たちにフォーカスして、自分たちの慶應ラグビーをしようと思って試合に臨みました。
――試合を終えての率直な感想を
何度か(トライを)取れるチャンスはあったので、そこで取り切れていれば流れも変わっていたと思いますし、そこで取り切れないのが今の僕たちの力だと思います。でも、やれることはやったので、まずは帝京戦に向けてしっかり修正していきたいと思います。
――前半を同点で折り返しました。良かったプレーなどはありますか
全体的にみんなディフェンスで我慢して、しっかり早稲田のアタックを抑えれていたのは良かったのですが、キックの使い方は良くなかったので後半に向けて修正しようと思っていました。
――後半は栗原主将と一緒にプレーしました。フィールド上で会話などはしましたか
特にこれといって会話はしませんでしたが、栗さんが入ってきたことで安心もしましたし、より勝ちたいと思いました。
――来週は最終戦の帝京戦です
本当に慶應ラグビーをするだけだと思うので、しっかりその準備をあと1週間して、勝ちという結果をつかめるように準備していきたいです。
WTB宮本恭右(環3・慶應)
──試合を振り返って
「相手フォーカスではなく、今日は自分たちのラグビーをして全部出し切る」という目的を持っていたのですが、それができてよかったです。でも負けてしまいました。7点というのが本当の実力差なのかはわかりませんが、早稲田との差を埋めるためにこれからも頑張っていこうと思いました。
──前半を同点で終えました。
今日は雨だったということもあり、早稲田のアタックの調子が良くありませんでした。慶應はディフェンスのチームなので、雨でうれしかったです。10ー10という展開については、手応えを感じていました。
──ご自身もディフェンスで身体を張っていた印象があります
やるしかない、という気持ちだけでタックルしていました。
──帝京大戦に向けて
まだ「チーム全員で喜ぶ」ということだけができていないので、慶應らしいラグビーをして、チームみんなで喜びたいです。
WTB鬼木崇(法1・修猷館)
――今日の試合を振り返って
出場時間はそんなに長くなかったですが、ボールをもらってゲインするところはしっかりできました。まずは試合に出ないといけないという感じですけど、自信にはなりました。
――早慶戦という舞台に立った思いは?
色々因縁の相手もいますし、結構気合も入りました。来年も出たいです。
――次週の帝京大戦に向けて
まずはメンバーに入ることが一番ですけど、試合に出たら、課題であるディフェンスをしっかりして、自分の持ち味であるボールキャリーができたらいいと思います。
FB沖洸成(総3・尾道)
――今日の試合を振り返って
7点差で負けましたが、全て出し切れたかなという感じです。
――早慶戦の舞台はいかがでしたか
対戦相手が早大ということで、今までの試合とは異なり、ロッカールームから緊張感が凄かったです。
――パスを多くつないでいました。攻撃ではどのように攻めていこうと話し合いましたか
早大のWTBの選手がかなり内側に立っていたので、外側に空いているスペースを狙っていこうとしました。うまく攻められたのかなと思います。
――前半は同点で折り返しましたが、ハーフタイムではどのような話し合いがありましたか
ディフェンスが良い感じで機能していたので、後半は風下になりますが、しっかりエリアを取って、そこで慶大のディフェンスをしようと話し合いました。
――帝京大戦に向けて
自分たちのラグビーをしっかりして、慶大らしさを帝京戦でも出せたら良いなと思います。
対抗戦最終戦となる帝京大戦は、11月30日(土)、秩父宮ラグビー場にて11時30分キックオフ。慶大蹴球部120代の、最後の勇姿を見届けよう。