【テニス】王座前特集 第4弾・監督インタビュー 坂井利彰監督

庭球男子

10月8日から始まる全日本大学対抗テニス王座決定試合(通称:王座)。慶應スポーツでは、「男女アベック優勝」を目標に掲げる慶大の選手、監督にお話を伺った。第4弾は、慶大庭球部を率いる坂井利彰監督です!

男女庭球部を率いる坂井監督

――リーグ戦を振り返って

男女ともに予想通り厳しい戦いでした。王座進出のために上位2校に入ることは簡単なことではないのでギリギリの戦いが多く、疲れたなというところが正直ありましたね(笑)。やっぱり追い込まれたときに選手、選手以外も丸裸にされて逃げたくなる気持ちもどこかしらあったと思うんですけど逃げずに戦ったことで得たものがとてつもなく大きかったですね。疲れと自信と、といったところです。踏ん張らないと自信もつかないのでね、大きなものを得られたリーグ戦でした。

 

――男女ともに接戦が多かった印象です。

応援、サポートしてくれた人もそうですし私も監督という立場で自分はプレーできないのでハラハラしながら見ていた部分もありました。特に女子の初戦、亜細亜大戦はカギだと思っていましたし、そこをうまく切り抜けたことは大きかったです。ダブルスもマッチポイントから挽回したり、永田(杏里/総4・南山)もタイブレーク、7―7でしたかね、結局10―8というギリギリの戦いを勝てたので、そこから生き残る生命力がチームに宿ったなという感じがありましたね。男子は逆にリーグ後半にかけて厳しくなっていくというのはわかっていたので序盤から気を引き締めてやっていくというのがコンセプトとしてあったのでどちらにしても大会前から学生中心にプランを立ててくれていたのでそれを実行できたという感じですね。

 

――早慶戦は男女ともに印象的でした。女子は見事勝利しました。

 早慶戦で早稲田に勝つことはもちろん慶應にとって重要なんですけど、女子の場合あの早慶戦を勝っておくと最終戦の筑波大戦で思い切ってできるというところがあったのであの早稲田との試合に勝てるか、がリーグで生き残るうえで重要でした。そういった意味でダブルスでは厳しいところがありましたけどそこから巻き返したところが、チームに生き残る力がついていたことが大きかったです。永田の試合は、はたから見ているとリードしていて最後決めきれないというところだったんですけど、初戦の亜細亜大戦の永田も早慶戦の永田もそれぞれ接戦をものにしたんですけど明らかに早稲田戦の永田のほうが成長していたので、改めてチームとして力がついて早慶戦に勝てたなと感じましたね。

――女子は早大が王座行きを逃すなど混戦でした。

どこが勝ってもおかしくなかったですね。それを受け入れていたというのが大きかったと思います。初戦の亜細亜大に4―3で勝ったところで、初戦で苦戦してリーグ戦前の予想より慶應は危ないんじゃないかという雰囲気が身近でもありました。ただ僕たちの中では亜細亜さんも結構強い、と思っていたのでね。とにかくリーグで生き残ることが大事だと思っていました。王座争いが三つ巴になってしまうとポイント数のところで苦しくなりそうだったので、あの早稲田戦に勝ったことは大きかったです。

 

―女子チームは4年生を中心に、1年生も多く出場するなどバランスの取れた布陣です。

とにかくこのチームは競争力が高いんですよね。ですから出れない選手、悔しい思いをしている選手もいるし核になる選手も頑張ってくれています。そのバランスがとても大事だと思っていて。出れない選手はやはり複雑ですよね。ただその選手たちも腐らずにやり続けてくれているので、そこの力は目に見えにくいんですけどその選手たちの踏ん張りがチーム作りの上で大切なのでそこは大きいかなと思います。4年生と1年生の活躍も目立ちますが、3年生の大川(美佐/環3・法政第二)や堤(華蓮/環3・四日市商業)がダブルスで踏ん張ってくれたり、シングルスで序盤勝てなかったけれど一戦明けて次に勝ってくれたり、心の波もあったと思うんですけど踏ん張ってくれたことは大きかったですね。

 

――王座のキーマンを挙げるとすれば

 今田(穂/環4・啓明学院)かなと思っています。今田はシングルスで3年生までやってきた選手で、3年春の早慶戦でダブルスに出たんですが勝てなくて、そこからダブルスをしっかり戦えるようになって。今回のリーグ戦でも筑波大戦のダブルスで大川と組んで戦って、正直シングルスだけでも苦しそうだったんですけどダブルスでは成長を見せてくれました。王座でもシングルスとダブルスも、まだどうなるかわかりませんけどその存在は大きいなと思います。

女子副将・今田

――関東選手権でも優勝しました。

リーグ戦終わってホッとして、4年生で夏関は出なくていいじゃないかという思いもあっておかしくないんですよ。ただ今田のように人知れず頑張ってくれる存在は相手にとって一番嫌なんですよね、手を抜いてくれないので。相手としてはどこで相手の隙を突くか考えているときに今田は手を抜いてくれないので、相手はなかなか流れを変えようとしても変えにくい。タフなメンタリティをもっているのは大きいと思いますね。

 

――男子は早慶戦、どの試合も大接戦を勝ち切れずに敗れてしまいました。

明大戦のヒーローに挙げた今鷹

男子はものすごく層が厚いわけではないんですけど相当部員含めみんなが工夫してやってくれました。例えば明大戦は結構苦しい試合でしたがそこでのヒーローが今鷹(洸太/商3・慶應)だったんですね。春はダブルスで出ていた今鷹がけいれんしながらシングルスで戦ってくれて、あの試合落としていたら苦しくなる可能性がある中頑張ってくれて。林(航平/理3・名古屋)にしても正直リーグ戦、インカレの前までは悩んだりしていたんですけど、頑張っていた成果がインカレで出て、リーグ戦の早慶戦でも結果的に高畑君に負けてはしまったんですけど今までだったらもう少し簡単に負けていたはずなんですよね。それをあれだけの接戦で、王座でやっても勝てる力はあると思っているので、逆に言うと女子と同様インカレ、リーグでの成長は菅谷(優作/法1・慶應)もそうですし有本(響/総1・慶應)、高木(翼/総2・関西)のダブルス、今まで核となっていた藤原(智也/環3・東山)、白藤(成/環4・西宮甲英)、下村(亮太朗/法2・慶應)以外の選手が成長していることが男子にとっては追い風です。今までなかなかここまでの成長はなかったので、女子ほど層は厚くはないけれど置かれたところで咲くというか、みんなが考えてやってくれている、王座に向けて大きな成果だったと思います。

1年生・有本

――男子は若い布陣です

意外と2、3年生がムードメーカーであり下支えしているところがありますね。藤原、今鷹、林という3年生、2年生の下村、高木、そこにリーグ戦はあまり出番はありませんでしたが脇坂(留衣/環2・興國)がいて。2、3年生が王座で爆発すると来年にもつながるし、カギかなと思いますね。

成長を見せる林

高木翼

――王座のキープレーヤーは

下村かなと思います。下村はインカレでも優勝候補の近大の田口(涼太郎/経営4・大分舞鶴)君に勝つように力がある選手です。ただ田口君に勝った後に負けてしまう。やっぱり波があるんですね、そこには理由があって彼とも話はしているんですけれど。彼も継続的に勝てるように葛藤しながらやっているところで、そういったメンタル面での葛藤を乗り越えてくれればダブルスでも安定感が出るはずだし、勝ち負け以上に彼が変化しているところがチームとしてもいい方向に向かっていると思います。女子の今田とはまた違ったキーマンだと思います。

 

――連戦、暑さなど厳しいコンディションの中の試合でした。

間違いなくこのタフな試合を勝ち抜いたのは大きな自信になります。学生はあんまり口には出さないですけど2位以内に入らなければ(4年生は)引退だったわけですね、それはプレッシャーにもなっていたので、ここで勝って王座へ行くことは大きな自信につながりました。一方これまで王座に行って安心するというところがありました。2019年の王座では伊藤竹秋(R4法卒・慶應)がマッチポイントを握りここをとれば王座優勝というところがありました。偶然の勝ちはなくて、やっぱちゃんとした準備をしないとマッチポイントまで来たときに勝てるかもしれないと浮ついた気持ちになってしまいます。テニスはポイント間で一回止まるので、そこで力んでしまう、メンタルの揺れが大きいスポーツなので、マッチポイント取ると緊張してしまいます。去年女子が55年ぶりに王座優勝したあと1ポイント、エースの佐藤(南帆/環4・日出)でさえテニス人生で初めて足が震えたと言っていたので、そこをいかにシミュレーションして、その対策はしてきたよねと選手が感じることが、チャンピオンになるために重要かなと思います。チーム全体として応援している選手もスタッフも浮足立たないように、準備をして実践できるかがカギですね。

 

――王座への準備は順調ですか?

愛媛は寒いので防寒、コロナに感染しないこと、気を入れていくことですね。約70人の部員全員が気を張るって結構難しいことです。当事者意識を持たないと人間は完璧じゃないので自分はいいんじゃないかと思ってしまい隙も出やすいと思います。みんなが当事者意識をもって気を入れていけるか、プレッシャーに対峙していけるかここが大事ですね。僕らも完璧な最高の準備という話をしているんですが、当然リーグ戦の会場と愛媛の会場は違うわけで、景色が違うんですよ。男子が試合する場所はフェンスが青い膜で覆われていないので外の景色、山などが見えるんですよ。そうすると法政さんのコートに似ていて距離感がつかみにくいんですよね。打っても打っても決まりにくい感覚を持ちやすいです。あまりない環境、サーフェスで去年早稲田さんのほうが上手く対応できていたのがあったので、今年は去年よりも1日早く入って会場のコートで練習しています。見える景色が自分の中にインプットされるので、そのあたりの準備はできています。

 

――対戦相手の分析なども進んでいますか?

選手の特徴はもちろんなんですがお互いにプレッシャーがかかった時にどういうプレーをするか、というところです。仕掛けてくる選手なのか、我慢強い選手なのか、性格まで分析することが 読みにつながり迷わずにいくつかあるオプションを選ぶことにつながると思います。今回例年より早くドローイングが行われました。2回戦、準決勝、決勝どういう相手をやるか、どういうオーダーで行くか、状況により変更もありえますがシミュレーションはできています。

 

――王座への意気込みをお願いします。

厳しいリーグ戦を勝ち抜いた自信、これはどんな苦境に陥っても我々に刻み込まれたものです。口だけでなくて実現しなければいけません。苦しいときは多いと思うし、連戦でタフだろうし、そういう中で目の前の一球に部員が気持ちを重ねて臨めるかだと思います。監督の仕事はそこを信じて邪魔をしないことだと思うので部員の一人も欠けることなく自分の仕事を全うしていくことだと思います。ケイスポさんにこうやって取材していただいていることも、僕らに期待してくれている面もあると思うので、部員全体でそういう思いも背負っていきたいです。ワクワクしている思いもあります。もちろん勝ちに行きますけど、このチームの一員でよかったと共有できるように頑張っていきたいと思います。

(取材:松田 英人)

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