12月4日、第57回少林寺拳法早慶定期戦が行われた。新型コロナウイルスの影響により新人戦がなくなり本戦のみとなったものの、4年生にとって、そしてこのチームとしては最後の試合とあり、両者譲れぬ熱い戦いが繰り広げられた。先鋒の佐藤生一(文3・日大豊山)、中堅の山内嶺央(経4・西大和学園)が不戦勝に終わり、不本意ながらかなり優位な状況での試合運びとなった慶大。しかし次鋒の庄司百伽(法3・山形東)は引き分け、田川千鶴(政3・清泉女学院)が敗れ、拮抗した試合となる。しかし副将戦では、西山航生(文4・厚木)が実力で相手を圧倒、勝利を収め今大会の勝利を決定付ける。大将戦では、早大主将・籾美吹(社4・大阪産業大付属)の前に高澤理沙(文4・洗足学園)が敗北を喫するも、見事全体として勝利を勝ち取り、早慶戦での3連覇を達成した。
<対戦表 本戦の部>
慶應 早稲田
先鋒 佐藤生一(文3・初段) ◯
次鋒 庄司百伽(法3・初段) △1ー1 関音葉(文構3・初段)
中堅 山内嶺央(経4・三段) ◯
三将 田川千鶴(政3・初段) ●3ー4 氏平鷹子(政経4・二段)
副将 西山航生(文4・二段) ◯7ー2 藤井陸(社3・二段)
大将 高澤理沙(文4・二段) ●0ー10 籾美吹(社4・四段)
3勝2敗1引き分けで慶大の勝利。
試合前、勝利に向けて円陣を組む慶大の選手たち
新型コロナウイルスの影響により、中止も懸念された中で開催された今回の早慶定期戦。2年生以下が出場できる「新人戦」は中止、「本戦」のみの戦いとなった。下級生にとって4年生と共に戦える最後の機会、また4年生にとっては大学生活最後の早慶戦という大切な舞台だ。試合直前、主将の高鹿綾華(文4・淑徳与野)を中心に全員で組んだ慶大の円陣から轟いた声は、意地でも勝利を掴み取りたいという全員の強い気持ちを象徴し、会場を満たした。
先鋒の佐藤
先鋒の佐藤、中堅の山内は不戦勝でまず2勝。次鋒の庄司は、積極的に仕掛けるも決定的な得点を奪えず1−1と引き分けた。三将の田川も、最後まで粘るもあと1歩届かず、3−4と悔しい負けを喫する。続く副将戦、西山は今までに築き上げた実力で7−2と快勝。この時点で3勝1敗1引き分けと、この早慶戦での勝利を決めた。
実力を見せつけた西山
大将戦では高澤が満を持して挑むも、籾の貫禄のある立合に対して1点を奪うことも叶わず、悔しい試合となった。試合の合間に取られる休憩の間でもチームメイトが高澤を鼓舞し、また試合が終わり次第すぐに高澤に選手たちが駆け寄る様子は、涙を誘う非常に感動深い1シーンであった。
高澤に声をかける選手たち
優勝トロフィーを受け取る高澤
試合後、早稲田と慶應の選手同士が、握手し合ったり抱擁し合ったりする姿が見られた。少林寺拳法というスポーツを愛する仲間として、互いに高め合えるかけがえのない存在であること、そして大学を超えた強いつながりがあることを証明しているようだ。引退する4年生を讃える一方で、来年以降の更なる高みに向けて、下級生の選手たちは新たな道を歩み出す。この冬を超えて、新チームで一回りも二回りも大きく成長した姿を見られることに期待したい。
♦︎選手コメント
高鹿綾華
ーー色々なハプニングもあった早慶戦でしたが、どのように最後までチームを引っ張るよう心がけましたか?
『総力戦』を意識しました。今回、新人戦が無くなってしまったことで、新人選手はモチベーションが下がってしまうのではないかと危惧していました。また、この1年間、部の2大目標の1つとして掲げていた「早慶戦完全優勝(=新人・本戦共に勝利)」を物理的に達成することができなくなってしまいます。開催自体危ぶまれ、どのような形が正解なのか、悩みながら関係各所との協議進めていた中、後輩達にも不安な思いをさせてしまい、申し訳なかったです。新人選手にも、選手以外の人にも、皆にとっての「早慶戦」にするためにはどうすれば良いかということを考えていました。私自身、早慶戦では結局4年間常にサポート側だった者として、これは譲れないと思っておりました。慌ただしくなってしまい、具体的に何か施策ができた訳では無かったですが、声かけは意識的に行っておりました。声かけに関しては、私よりも、次期幹部の後輩達も積極的にしてくれていたと思います。当日の応援や運営、準備はもちろん大切で、とても貴重な力でした。加えて、選手が決まった後の練習でも、選手以外のメンバーも練習に打ち込むことで士気も上がります。また、練習相手としても、大きく貢献してくれました。
ーーこれで引退となりますが、後輩へメッセージをお願いします。
この1年間、不甲斐ない自分を「主将」にしてくれたのは皆です。楽しかったこと、悔しかったこと、嬉しかったこと、沢山ありましたが、一緒に走り続けてくれた後輩達には感謝しかありません。本当にありがとう。皆なら、これからもっと良い景色を見れると思います。来年以降の皆の活躍を心より応援しております!
山内嶺央
副将としてチームを支えた
ーーご自身は戦うことはなかったですが、
他の選手にどのようなお言葉をかけられましたか?
選手たちには伸び伸びとプレーして欲しかったので、試合前試合中ともに、自信になるような言葉をかけました。
ーー今回の早慶戦で、最も印象に残っている場面はどこですか?
同期である西山の試合です。彼は早慶戦にかける想いが人一倍強く、彼が試合を決めた瞬間は、こみ上げるものがありました。
高澤理沙
大将戦を堂々と戦い抜いた
ーー大将戦を戦われました。率直な感想をお願いします。
綺麗に負けてしまったな、という感じです。ですが、自分の練習してきたことは出し切れたと思います。
ーーこの試合に向けて、特にどのような部分を意識して練習に取り組まれましたか?
右前の相手が想定されたので、開構(構え方が左右で異なる者同士の布陣)の練習を中心的に行っていました。一般的には左前の拳士が多いので、開構の経験値が少なく、そこの弱点は克服をするべく日頃から練習をしていました。
西山航生
ーー7−2と圧倒的勝利を収められました。率直な感想をお願いします。
非常に嬉しかったです。チームの早慶戦三連覇に貢献できたこと、また個人として納得のいく内容で引退試合を戦えたことに満足しています。そもそも今年度の早慶戦開催自体が非常に困難を極めた中で、この舞台を用意してくださった全ての関係者の方・チームメイトに感謝しています。
ーーこの試合に向けて、特にどのような部分を意識して練習に取り組まれましたか?
戦い方、「自分から攻めるスタイル」です。それも、本当に自分が信頼できる技で仕掛ける、余計なことはしない、と練習から試合までずっと意識していました。自分の得意とするスタイルで、一切の迷いなく最速で攻撃できるよう意識して練習に取り組んでいました。私が本当に自信をもっている技は、「直蹴り(真っ直ぐ出す蹴り)」と「上段突き(上段=頭部へ真っ直ぐ出す突き)」の2つでした。この2つの技は、先生方・先輩方にアドバイスを求めながらずっと自主練習をして磨いてきたもので、試合前日の練習まで精度・速さを高め続けてきました。実際、試合本番で得点した7点は、いずれも直蹴りと上段突きによるものでした。今まで磨いてきたものが、最後の引退試合でとても心強かったです。
ーーこれで引退となりますが、後輩へのメッセージをお願いします。
部活動で選手として活動していく上では、嬉しさも悔しさも味わうと思います。私も、早慶戦1ヶ月前の全日本学生大会では、立会評価法で自分が望んでいた結果とは程遠い順位で終わりました。悔しかったですし、かっこ悪くて、自信を失いました。しかし、1ヶ月後の早慶戦では試合に勝利し、最後に笑うことができました。私はその結果と同じくらいに、全日本から早慶戦までの一ヶ月間は尊いものだったと感じています。全日本敗戦後に気持ちの折合いをつけて、そこから早慶戦勝利のために自分ができることを最大限行った経験は、今後の私の人生を支えてくれると思います。大事なことは、悔しい思いをしたとき、そこから頑張れるかどうか、そこからの取り組み方にあると私は思います。勝ち負けを決める以上、今後悔しい思いをする後輩もいると思いますが、そこで挫けずに充実した部活人生を送って欲しいです。応援しています。
田川千鶴
チャレンジャー精神を持ち続けた田川
ーーこの試合に向けて、
特にどのような部分を意識して練習に取り組まれましたか?
自分の極め技である上段突きに、今まで以上に磨きをかけることです。今年に入って私が公式大会で得点した計25本の極め技うち、実に20本が上段突きでした。慢性的な膝の怪我の影響により、今回の早慶戦では蹴りを最小限に抑える戦法を立てていたので、自分の得意技である上段突きを徹底的に練習しました。全日本の女子団体優勝メンバーとしてのプライドを一切捨て、振り出しに戻って、常にチャレンジャーの姿勢であり続けることを心掛けていました。
ーー先輩方やチームメイトの方にはどんな言葉をかけてもらいまし
たか?
早慶戦前日に、「千鶴が出た方が皆が納得する」「出場を決意してくれてありがとう」という山内副将から掛けられた言葉が印象に残っています。前日まで開催自体が危ぶまれ、私自身も十分な練習ができていなかったので、事態の展開にメンタルセットが追い付かず、こんな中途半端な自分が出場してもよいのか、激しく葛藤していました。そんな心境を先輩たちに明かした時に、真っ先に返ってきた山内先輩の言葉に心底救われました。他にも、来年度から主将主務として二人三脚を組み、前大会のペアでもあった先鋒の佐藤から、前日に唐突に渡された手紙がとても嬉しかったです。
庄司百伽
惜しくも引き分けに終わった庄司
ーー
結果は引き分けに終わりましたが、今回の早慶戦を振り返ってみての率直な感想を教えて下さい。本選メンバーが本当に私で良いのかという、心の葛藤がずっとありましたが、「私の試合の結果がどうであれ、慶應が負けることは絶対にない。」そう思える絶対的な安心感が今年のチームにはありました。一番最初の試合を任された者として慶應に勢いを持たせられるよう、全力を尽くそうという気持ちで挑みました。技術的な反省点はたくさんあるので、この経験を糧に来年の4連覇に確実に貢献します。
(記事・取材:佐藤光)