【フィギュアスケート】ハイレベルな戦いに2選手が出場!この経験を武器にいざ東インカレへ/東京選手権大会

東日本選手権大会につながる東京選手権大会が行われ、慶大からは久保田美佳(経3・クリスチャンアカデミーインジャパン)(写真右)と大谷理麗花(薬2・広島女学院)が出場した。全日本の舞台に挑戦する選手が集まるハイレベルな戦いが繰り広げられる中、2選手も刺激を受けながら演技を披露。惜しくも東日本選手権大会出場には届かなかったが、注目度も高い試合での滑走は今後に生かせる大きな経験となった。

 

2023年東京選手権大会

9月21日(木)~24日(日)@ダイドードリンコアイスアリーナ

 

♢結果♢

26位 久保田美佳(経3・クリスチャンアカデミーインジャパン)

35位 大谷理麗花(薬2・広島女学院)

 

東京選手権大会は、7級を所有している選手に出場権が与えられ、東日本選手権大会、その先の全日本選手権大会につながるハイレベルな戦いだ。慶大からは久保田と大谷が出場した。

今大会はシーズンの初戦ということもあり、非常に大事な試合だったと久保田。夏の部活での合宿では普段はできないような練習や、部員とアドバイスをし合うなど今大会に向けて練習に取り組んできた。さらに以前に比べてメンタル面での成長も実感して臨んだ今大会。結果は26位と、東日本選手権大会に出場できる21位には惜しくも届かなかった。ジャンプでの転倒もなくまとまった演技ができたものの、スピンなど細かい要素での取りこぼしが響いたと振り返る。

大谷も、夏休みは毎日練習していたといい、今大会の懸ける思いは大きかった。しかし、大会直前にまさかの怪我をしてしまった。当日朝の公式練習でもジャンプを降りることができずに焦りを感じていた。それでも夏休みの猛練習を思い出し楽しく滑ることを意識して本番に臨んだ。31位と悔しい結果に終わったが、集中力などのメンタル面では成長を感じたと手ごたえも口にした。

氷上に立てばスポットライトを浴び、誰からもアドバイスを受けることできない。途中で何回失敗しても音楽は流れ続け、視線を集め続ける。一見孤独な戦いにも映る。しかし、スケートは1人での戦いではない。久保田は「個人スポーツなのに一人ではない」を大切にしている。同じ部に所属する部員はライバルでもあるが、それ以上に日々の練習や合宿でもお互いの演技を見てアドバイスをし合う仲間だ。試合でも応援に来てくれる。「がんばって」の5文字にはその人の魅力を120%発揮させる力がある。また、大谷は「見て下さっている観客の方に、見て良かったなとか、少しでもパワーになれたら、それ以上のことはない」と話す。自分の努力の成果を発揮したいという気持ちはもちろん、「誰かのために」という思いは、選手から最大限素敵な表情を引き出すのだろう。

次戦は今週末の東インカレ。選手一人一人の演技、表情、選手が作り出す世界観にも注目だ。

 

♢インタビュー全文♢

久保田美佳選手

――今回の試合を振り返って

今回の試合はシニアの選手にとっては結構大事な試合でした。スケートのシーズンが秋から冬がメインなので、シーズンに入ってからの一番大きな試合で、みんな意識している試合です。今回の試合に向けて夏に合宿に行ったり部員みんなで練習をしたり頑張ってきたので、自分にとっても大事な試合でした。年々レベルが上がってきている中で、追いついていかないといけないと痛感しました。学びがたくさんあり、今回の経験を次回に活かせたらと反省会を開いています。

 

――ご自身の結果を見て

転倒なくまとめられたのは良かったのですが、細かいところの取りこぼしが多かったので、取りこぼしが足を引っ張ることになるなと思いました。例えばスピンのレベルやステップの踏みが甘かったり、ぱっと見では分からないですが実際にちゃんと見てみると減点対象になるようなものが結構多かったので、それに引きずられてしまった試合だったと思います。

 

――具体的に良かったと悪かったところはどこですか

良かったところは転倒がなかったことが大きいです。またあまり気負いせず、慶應のOB・OGの方々や部員も来てくれて応援もあったので、自分の力になったのはすごく感じました。悪かった点としてはそういう取りこぼしの点が自分の演技を引っ張ることになってしまったことです。2週間後(10月13日~15日)にまた大きな試合があるので、そこまでに見直して修正をかけていきたいと思っています。

 

――合宿について教えていただきたいです

部活合宿は3泊4日で、最初からトレーニングや部員同士の話し合いをし、氷の上では普段はあまりできない練習、いつも曲かけをしているのですが、合宿だと時間があるのでステップだけの練習やお互い教え合う時間を設けたり、普段の部練ではできないことにたくさん取り組むことができました。4日間過ごしていく中で、お互いに対してフィードバックを出し合い、互いの演技を見合っていつもよりじっくり話し合いをすることができたので、いろいろな意見を取り入れながらの練習でした。

 

――夏の期間で成長できたと感じるポイントはありますか

今まで自分の中で課題だったことが、ジャンプのミスをすると後半に響いてしまったり気持ちに響いてしまったりすることでした。今シーズンに向けての練習ではメンタル面に関して部員と話すことが多く、例えば前半のジャンプでミスが連続してしまっても後半では気持ちを切り替えてということが最近は練習でもできていると思います。

 

――以前、新しいジャンプに挑戦したいとおっしゃっていました

そうですね。引退は2025年の春ですが、こういった予選大会になるものは来年の秋の試合で終わってしまうので、そう考えると本当に私の競技生活は残り1年あるかないかとなっています。コーチとも話してこれまで練習してこなかったものに挑戦していますが、練習に支障が出るようなけがをしてしまって、新しいジャンプを控える期間が長かったので、様子を見ながら今後1年間何でもトライしてみようかなと思います。

 

――昨年の同じ時期と比べて気持ちの変化は

結構ありますね。今までは引退はすぐそこにあるということは分かってはいましたがそこまで考えることはなく、とりあえず試合に臨むという形でした。3年生になると「もう1年しかない」「次のプログラムは引退曲だ」と思うと、自分がこなしていく試合の数はすごい少ないなということはいつも念頭にあります。それがプレッシャーになることもあるのですが、逆に試合一つ一つを大事にさせてくれているのだと思います。

 

――学校が再開しましたが、勉強との両立で意識していることはありますか

ちょうど昨日スケジュールを組んでいて(笑)、ジャグリングしている気分ではありますが、すきま時間でできることをやったり、パソコンを持ち歩いて移動している時に何かやったりして、スケートしている時は勉強のことを考えないで、勉強している時は課題に取り組むという気持ちの切り替えを大事にしてやってきたので、それは引き続きやりたいと思っています。

 

――2週間後の大会について教えていただきたいです。

10月13日から15日で、アルソック群馬アイスアリーナで東インカレというものが開催され、それもまたハイレベルな戦いになっていて、年々1月にあるインカレに進めるアンダーラインが上がってきています。東京選手権大会などはショートからフリーに進んで、フリーから東日本ということですが、今回の東インカレはフリープログラムしかないので、4分間の中でどれくらいスコアを引き出せるかという戦いになっています。

 

――ショートとフリーがある場合と、フリーしかない時とでは全然違いますか

結構違います。フリープログラムはジャンプの本数が多いので、1つミスをしてしまってもカバーできるかもしれませんが、ショートプログラムは3本しかジャンプが入っていないので、1つでもミスをするとフリーに進めないという認識があります。ショートの方がミスしづらいので、プレッシャーに感じる選手は多いのかなと思います。でもフリープログラムは4分間でとても長いので、それもそれでつらいということもあります。

 

――4分間だとすごく体力使いますよね

そうですね。すごく長いので、フリープログラムを久々にかけると大変だったりするので、スタミナは大事だなと痛感しています。

 

――現在は次の大会に向けての調整期間でしょうか。

今は調整の時期です。構成も変えることなく、出てきたジャッジスコアを分析して、どこを2週間で修正できるのか、何ができて何ができていないかを見極めて、毎回の曲かけ(の練習)を大事にしていきたいと思っています。

 

――レベルが高い試合、周囲から刺激を受けることは多いですか

すごい選手が多く、オリンピックに出た選手も出ていたくらいの試合なので(笑)。そういった選手がどうやって本番前にトレーニングやアップをしているのか、どういった雰囲気で支度をしているのか、細かいところまで自分の刺激になっています。今回の試合では久々の有観客の試合だったのですが、国際試合に出ている選手の時はすごく人数が多いので、たくさんの人に見られている中で演技をするというのは刺激を受けますし、気が引き締まります。

 

――そのような試合の時は緊張しますか

結構緊張するので(笑)。有観客だといつもの緊張の上に緊張が重なってしまいますが、緊張が必ずしも悪いとは思わないので、そういった緊張の中で気を引き締めていろいろな人に演技を見てもらえる、応援してもらえるという環境に感謝しながら滑るようにしています。

 

――スケートをやっていて一番楽しいと感じるときは

部員と一緒に練習できるということが楽しくて、「個人スポーツなのに一人じゃない」をスローガンのように掲げているのですが、部活での練習やホームリンクでの練習でもみんなで話し合いながら練習することが好きなので、こういった瞬間というよりも日々の繰り返しがすごく楽しく感じています。そういった中でお互い「今のジャンプ良かったよね!」「こうしたらいいと思うよ」と話し合ってお互い高め合っていくという環境が大好きなので。そうやって振り返ってみると、スケートは自分にとって大事だな、楽しいなと思います。

 

――今回の試合の時も部員からの声掛けはありましたか

連絡もくれたり、直接見に来てくれた部員もいたり、送り出してくれる時の「がんばって!」の一言に救われたりするので、みんなの応援はいつもすぐそこにあるなと思って、みんなには感謝しています。

 

――東インカレで注目してほしいポイントは

ショートプログラムはエネルギッシュなプログラムなのですが、フリープログラムは壮大で割とゆっくりとしたプログラムなので、ショートプログラムとは雰囲気が違うものとなっています。ショートプログラムを見てくださった方が想定しない、違う雰囲気に感じると思うので、その世界観を出せるように頑張りたいです。

 

――世界観をどのようにうまく表現するのでしょうか

私のフリープログラムはネットフリックスの映画シリーズの曲なので、ここはどういうシーンなのか、主人公はどういう心境なのか、意識しながら演技をするようにしています。

 

――テーマとなる曲の映画をしっかり見てという感じでしょうか

そうですね。見ないで演技したら何を伝えていいのか分からなくなるので(笑)、ちゃんと見て、何のシーンなのか、映画の中のどういうシーンを表しているのかを意識して、それに合わせて表情やムーブメントを変えるようにしています。

――そうやって皆さん作られているんですね!ありがとうございます

 

――最後になりますが、意気込みをお願いします

今シーズンの中の大きな試合の一つとなっているので、次の2週間でなるべく多くの分析と修正をかけていきたいと思っています。ハイレベルな戦いとなっているので、上手な選手からなるべく多くのことを吸収できるように、それを自分の演技に反映できるように、勉強しながらも自分の今までの練習の成果を出せたらなと思っています。

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大谷理麗花選手

ーー今回出場された東京選手権大会の試合を振り返って

東京選手権大会の2週間前に股関節を怪我してしまって、そこまでは順調だったのですが、怪我をしたことによって1週間弱、練習ができなくて、氷の上に乗れなくて。
歩くのもままならない状態になってしまって、試合まであと残り1週間というときに、練習できるようになって、練習を始めたのですが、痛みは全く引いていなかったので、練習の最後が、今までの身体の使い方とは違う身体の使い方になってしまっていて、なかなかジャンプを飛んだりできず、そのまま本番を迎えてしまって、すごく不安な気持ちとか、夏休みすごく頑張って練習してきたことが一気にできなくなってしまったこともあり、正直なところ、気持ちはとても落ちてしまっていました。
そのまま本番の日を迎えたのですが、本番の日の朝の公式練習で、何も(ジャンプを)飛ぶことができず、どうしよう、という思いで、とても焦っていてやるせない気持ちでした。ただ、このまま本番に向かってしまったら、後悔するだろうなと思いました。公式練習が朝の8時、本番が夕方の6時前で、間にかなり時間があったので、その間で気持ちを切り替えました。夏休みに沢山練習できて、先生やコーチ、周りの人にも、上手になったね、と言われるくらい、上達できていたので、あまり気にしすぎず、本番でできるかもしれないと前向きに考え、楽しく滑ることを目標に頑張ろうと心に決め、本番に行きました。
結果的には、ジャンプは3本とも上手くいかず、不甲斐ない結果ではありましたが、怪我をしている状態でのコンディションを考慮すれば、よく頑張って飛べた方だと思っています。メンタル面で諦めずに頑張ることができました。

 

ーー普段から、メンタルのトレーニングなど、意識して行っていることはありますか

練習では、日によって調子が違うのですが、飛べる日よりも飛べない日の方が大事だと思っていて。(ジャンプが)飛べない状態になるのは、大きな理由としてメンタルがあり、「絶対に飛ぶ」という強い気持ちを持ってやるようにしています。その結果、飛べなくても、そういう時こそ「今は飛べなかったけど、次は飛べる」「ここを直せば、次はできる」と考えるなど、何事もポジティブに捉えながら練習するようにしています。

 

ーーこの試合で成長を感じたことは

結果だけ見ると、あまり良くはありませんでした。私はスピンが得意で、自分のプログラムには3種類スピンが入っていたのですが、3種類ともレベル4設定(最も高いレベル)で設定していました。しかし、今回は全てをレベルで揃えることができず、ステップも、レベルの取りこぼしがあり、かなり点を取りこぼしてしまいました。正直、ジャンプもスピンもステップも、練習通りにはできませんでした。
ただ、今までの大会では集中力が切れたり、力みすぎたりして、パンク(ジャンプの回転の途中で終わってしまうこと)してしまうこともありましたが、今回、ジャンプは全て、しっかりと締める(回転の途中で終わらずに、最後まで飛ぶ)ことができました。それは、やはりメンタルが大きく関わっていたと思っています。試合で固くなっている状態で、いつもより繊細に色々なことを考えながら飛ばなければ飛べないという状況の中、しっかりと集中してできたことが、一番大きな成長だったのではないかと思っています。

 

ーー東京選手権大会に向けて、どのような努力をしてきたか

まず、7月からの夏休みに2つの合宿に参加しました。1つは、今教えていただいているコーチとの合宿で、盛岡で1週間、泊まり込みで一日漬けの練習をやりました。もう一つは、部活で3泊4日の野辺山合宿に行きました。合宿の日以外も、スケートをしない日はなく、朝から夜まで毎日5〜6時間、一日も遊びに行くことなく、練習に打ち込みました。それだけの努力をしていたので、怪我をしてしまった時は、とても遣る瀬無い思いでした。足が痛くて、動かなくて。とても落ち込みました。

 

ーー大谷さんにとってスケートとは

私は、小学校1年生の時にスケートを始めました。スケートはシーズンスポーツなので、冬にしかリンクが無い場所もあります。関東には一年中沢山のスケートリンクがあるのですが、私は元々広島にいて、広島のスケートリンクは冬しか開いていませんでした。そこで毎日、小学校や中学校の授業が終わった後に、夜6時ごろから車で岡山まで練習しに行き、広島に帰ってくるのは夜中の1時、という生活をしていました。1年中広島で練習できないという制限がある中、両親からスケートを続けることを反対されたこともありました。しかし、私はどうしてもやりたかったので、両親に「やらせてください」と頼み込みました。私は当時のことを覚えていなかったのですが、親からその話をされました(笑)。
きっと、スケートに何かを感じたのだと思います。それがあったので、小学校1年生から、高校1年生までずっと続けましたが、大学受験で一度休むことになりました。大学に入って絶対にスケートをやりたいという強い気持ちがあり、広島から一年中リンクのある関東へ行こう、と決めて、受験に臨みました。
一度離れても、やりたいなと思えるくらい、スケートが好きなのだと思います。実はこれまで、あまりいい成績は残したことがなくて。7級という級は取得できたのですが、試合で練習通りの演技ができたことがなくて、それもあって、とても燃えています。(笑)
スケートは、上手くいかなかったとしても、次また頑張りたいと思える、そんな競技です。いつか、いい成績を残して、見て下さっている観客の方に、見て良かったなとか、少しでもパワーになれたら、それ以上のことは無いと思っています。その演技をすることを目標に、毎日練習しています。スケートに出会えて本当に良かったと思っています。

 

ーー卒業までに達成したい目標は。

やはり、この年に一回の東京選手権は、全日本選手権に繋がる第一歩目の試合なので、そこを通過することがまず目標です。そして、東京選手権で20位以内に入り、その次の東日本選手権に行くということが来年の目標で、最終的には、東日本選手権でショートプログラムで通過して、フリースケーティングを滑りたいです。何段階もありどんどん絞られていくので、頑張って練習して、その一つ一つを通過していくこと、それが目標です。
また、2週間後に東インカレがあるのですが、それも通過してインカレに出場し、自分が納得する演技をして、良い成績を収めたいという思いがあります。

 

ーー東京選手権大会の出場経験は、今後にどのように活きると思うか

東京選手権大会は、全日本を狙う人が集まっており、本気でスケートに打ち込んでいる人たちが集まっています。そこでいかに動揺せずに、自分の力を発揮できるかが問われていると思っています。
今回は怪我をして、なおかつ試合の雰囲気もプレッシャーを感じるものだったのですが、想像よりも冷静にできたのではないかと思うので、そのメンタルの持ち方、コントロールの仕方を学べたことはこれからにずっと繋がっていくと思っています。
本当に小さな一歩なのですが、これを積み重ねていくことで、大学4年生の時に、大きな試合で納得のいく演技ができるという結果につながれば良いなと思っています。

 

ーー応援してくださる方にメッセージ

こうやって、私がスケートに打ち込めているのは、コーチ、監督、OBOGの方、怪我をした時に治療してくださる先生、そして家族と友達、本当に色々な人の支えがあっての事です。私に今できることは、練習にひたむきに励むことです。そして、練習の成果を試合で発揮し、見てくださる方に少しでもパワーを与えたいです。応援していて良かったと思ってもらえるような演技ができる選手になれるよう、精一杯頑張りたいと思っています。
上手くいかないことも沢山ありますが、どうやったら良い方向にいくかを考えて、一日一日の練習を大切に、頑張っていきたいと思っています!
これからも応援よろしくお願いします!!

[関連記事]以前のインタビューはこちら→シーズン本格化前に自身の成長と課題を見つけた一戦に/関東学生有志大会

 

(取材:中西絵理奈、長沢美伸)

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