【アメフト】恩返しの舞台・全国大会で絶対王者相手に奮闘もベスト8で敗戦 甲子園の夢は来年に託される/アメフト全日本選手権大会準々決勝 vs関西学院大

アメフト

全国大会準々決勝、慶大UNICORNSは関西学院大学と対戦。関学大は前回の全国王者であり、2018年以来甲子園ボウル6連覇中の”絶対王者”。慶大は関東3位からの大金星を狙った。前半からノーハドルでの攻撃を駆使し猛攻をかける関学大に押され先制のタッチダウンを被弾するも、オフェンス陣も負けじと得意のパスなどで応戦する。しかし王者はオフェンス・ディフェンスともに強力で、第3Q終了時点で20-0と苦戦を強いられる。なんとか一矢報いたい慶大は第4Qで松本和樹(経4・慶應)から藤崎志恩(商4・慶應)へのロングパスを見事に通すと、TFPは佐々木雄大(経4・慶應)の完璧なキックで7点を返す。ただ反撃もここまでで、このまま20-7で試合終了。慶大は関東3位・全国ベスト8で2024年シーズンの戦いを終えた。

11月23日(土・祝)@神戸総合運動公園 ユニバー記念競技場 全国大学選手権大会 準々決勝

 

 

慶應義塾大学 UNICORNS

関西学院大学 FIGHTERS   

第1Q

0

7

第2Q

0

6

第3Q

0

7

第4Q

7

0

7

20

 

※おしらせ※

アメフト初心者の方向けのルール・用語・豆知識を簡単にまとめたページを作成しました。適宜リンクがついていますので、記事と合わせてご覧ください。

https://keispo.org/wordpress/unicorns_beginner/

 

関東3位として全国大会の切符を手に入れた慶大。相手は関西学院大学と決まった。関学大は関西2位枠での出場ながら、今年の関西は関学大と立命館大学の同率優勝。実質的には関西王者との対戦に等しい。選手たちは前日の午前中に日吉で練習をこなしてから午後に神戸入り。夕食までは元気があった選手たちも、試合当日朝の食事では会場が静まり返っていたという。選手たちにとっても初めての全国大会、その緊張はひとしおだっただろう。開催場所も神戸ということで、アウェーでの戦いも予想される中で選手は会場に現れた。とはいえ慶大側も應援指導部をはじめ関西の塾員が多数応援に駆けつけたことや、会場が広いこともあって、選手にとってもそこまでの劣勢を感じることはなかっただろう。午後1時、いよいよ戦いの幕が開ける。

風に鳴る旗の下、関西の塾員をはじめ多くの観客が応援に訪れた

 

第1クォーター(以下第1Q、他Qも同様)、関学大の攻撃から試合が始まる。関学大は得意のプレー・ノーハドルでの攻撃を早速披露。関西リーグ最終節、既に優勝が決まっていた立命大戦ではあまり使わなかったプレーだが、全国の舞台ともなると相手も本気。慶大ディフェンスを翻弄していく。関学大はブラストで慶大ディフェンスの穴を掻い潜って侵攻を続け、先制のタッチダウンを許す。7-0とされ、ここから慶大の反撃が始まる。藤崎や生川太一(商2・慶應)へのパスを決めてファーストダウンを決める。さらにRB・山内啓耀(経3・慶應)がランプレーで陣地を稼いでいくも、ここは反則で元の位置へ。このシリーズで20ヤードの進行を余儀なくされるも、水野覚太(政4・慶應藤沢)が2連続でパスを成功させ、ファーストダウンを取り切り、いい流れを作った。しかし後が続かず、慶大最初の攻撃はここまで。

松本のパスは厳しいマークに遭うも、なんとか進み続ける

続く関学大の攻撃、変わらずランで中央突破を狙われるも、倉田直(理3・南山)と赤木龍士朗(政3・鎌倉学園)が決死のブロック。得点させず攻撃権を奪取する。続く攻撃、慶大お得意のパス攻勢はさらに勢いを増す。松本から水野へのパスが決まったかと思えば、今度は水嶋から藤崎への24ヤードのパスが成功。さらにはRBの山内にもパスを通す、まさに総動員体制でフィールド中央付近までボールを進めた。とはいえ王者の壁は厚く、ここから先へ進むことは不可能に。攻撃権を返上したところで1Qを終える。

関学大のブラストに必死で食らいつくディフェンス陣

 

関学大の攻撃から続く第2Q、ここを確実に抑えると、続く攻撃では久保宙(経3・慶應)がパスを決めるなど一定の成果は見せる。しかし松本の投じたパスがインターセプトを受け、貴重な攻撃権を喪失してしまう。倉田のロスタックルなどで必死に食らいつくも追加点となるタッチダウンを献上し、13-0となる。予想外の天気雨の中、慶大は今までの試合で4Qのみの出場だった山岡葵竜(政3・佼成学園)を前半から起用し、関学大の撹乱を狙う。得意のスクランブルや黒木哲平(経3・大宮開成)へのパスなどで攻撃を行うも、優位性は確保できない苦しい時間が続く。一方のディフェンスも、パントリターンのゲイン阻止、さらには相手の反則などにも助けられて得点は許さず。最後に関学はキックによる得点を狙うもこれが外れ、結局前半は13-0のまま終了。王者相手に劣勢ながらも必死に食らいつき、後半に望みを繋ぐ。

来年のUNICORNSを背負う山岡

 

久保のリターンで後半が開始。松本から田村遼(法4・慶應)へのパスでつなぎ9ヤードを進むも、あと1ヤードが遠く、攻撃を継続できない苦しい展開。一方の守備では関学大のブラストが止まらない。最後は中央を飛び込まれて3本目のタッチダウンを被弾。今度はTFPも決められ、20-0とされる。もう後がない慶大はパス攻撃を連発。メンバーも総動員だ。まず松本から久保に12ヤードのパスで繋ぐと、水野、久保と矢継ぎ早につなぎ、ファーストダウンを連続して獲得。パスユニットが本格的に息を吹き返したところで3Qが終わる。

久保はパスキャッチ後のタックルにもしぶとく耐えた

4Q、相手の反則によってファーストダウンは得るも、とにかく時間が無い。慶大はフィールド端にボールを集めるが、やはり勝負所からの決め手に欠いている印象は否めず。このシリーズも得点とはいかず攻撃権を明け渡した。時間を考慮するとこれ以上の失点は即敗北を意味するため、なんとしても抑えたい慶大。ここで輝いたのが横川昂永(商4・慶應)だった。突撃してきたRBのファンブルを誘うと、そのままボールを奪って攻守交代。ラストイヤーに相応しい、素晴らしいプレーを見せた。ここから流れに乗りたい慶大は松本から久保、藤崎、山内、久保と的を絞らせず、次々とパスを投げ込んでいく。しかし続いた水嶋のパスがインターセプトされ、再び自陣エンドゾーン直前へと持っていかれてしまった。このミスはかなりの痛手だったといえるが、せめてもの救いだったのはこの後の関学大の攻撃。逃げ切りを狙いキックを選択するもこれが決まらず、スコアは20-0のまま。とはいえ逆転はかなりのハードモードとなってきた中、無得点では帰れない。せめてもとUNICORNSは最後の意地を見せにかかる。

松本はここまでの試合でほとんどパスに徹してきたが、ここにきてスクランブルを連発。さらに黒澤世吾(商4・慶應)や山内、水野へと次々とロングパスを放ち、ついにここまで侵入を許されなかった関学大陣レッドゾーンに突入する。途中でギャンブルも挟みながらの侵攻は、全員が試合を諦めていなかったという証左だろう。そしてレッドゾーン内の3rdダウン、松本はフィールドのど真ん中へ運命のロングパス。「何百回も練習してきた」と語るそのパスコース、落下点には藤崎が待っていた。藤崎は指先でボールに触れるとそのままボールを抱きかかえてスライディング。見事なタッチダウンを決めた。この点差ゆえに盛大に喜ぶ姿こそ見られなかったが、ベンチ・慶大応援席はこの日1番の盛り上がりを見せた。TFPは佐々木がキックを正確に決め、20-7。神戸の地に「若き血」をこだまさせた。

4年間の思いが詰まった藤崎のタッチダウン!

 

無得点こそ回避したものの、ここから慶大が逆転するにはオンサイドキック以外の選択肢はもはやない。運命のキックが蹴り込まれるが、数バウンドののち関学大の手中にボールは収まってしまった。これで残りの時間を関学大が使えることがほぼ確実となり、万事休す。このまま進展はなく試合終了。最終スコア20-7で、慶大は全国の舞台をベスト8で去ることとなった。

應援指導部も最後まで自らの役割を全うした

 

 

この試合、関西の同率1位と関東3位との戦いとあって、下馬評は関学有利の声が大きかった。さらに関学というネームバリュー、土地柄、移動の疲れなど、慶大に不利な要素は挙げればキリがないほどあったであろう。その中で慶大UNICORNSは誰一人弱音を吐くことなく、2時間7分を戦い抜いた。そして何より、お墨付きの実力派集団を相手にして、春より遥かに成長した姿を、スコアでもプレーでも見せてくれた。

同じ鎌倉学園出身の赤木(3年)、関学大・川﨑耀太郎(3年)、天野甲明(2年)。再戦なるか、彼らの来年に期待だ

 

慶大は2022年シーズンにTOP8に戻ってきたチーム。そもそもBIG8降格の理由が活動停止だったとはいえ、そこからTOP8へ舞い戻り、わずか3年で全国の舞台で王者相手に戦い抜くまでの躍進を遂げた。その飛躍を支えてきた4年生は、これで引退となる。涙する者、フィールドで思いを馳せる者、後輩たちに笑顔でリベンジを頼む者。その姿も色々だった。

 

2年生からQBで試合に出続けた水嶋。一人フィールドに残る姿が印象的だった

 

これで2024年シーズン、石塚世代のUNICORNSは活動終了となる。今年の実績から、もう慶大はダークホースではなく、れっきとした関東屈指の強豪だ。マークも今年以上に厳しくなるだろう。その中で、次の世代には、まず全国の舞台に必ず戻ってきてほしい。そして、今年達成できなかったベスト4、さらにその先の甲子園ボウルに駒を進めてほしい。

”可能性の獣”たちの戦いは、ここからが正念場だ。

最後の集合写真。来年はさらに上を目指す

※続く準決勝では、慶大を倒した関学大とTOP8王者・法政大が激突。タイブレークの末、法大が関学大を撃破し、甲子園ボウルへの出場権を得た。関東でしのぎを削ってきた法大による、慶大の仇討ちという形になった。

(記事:東 九龍)

インタビュー

横川昂永(商4・慶應)

ーー試合の感想

 勝てなかったことへの悔しい気持ちが一番です。日本一の壁は高かったと感じています。こだわってきたファンダメンタルの部分がもう一段階レベルアップしないといけないことを痛感しました。後輩達はこの経験をいかして、来年日本一を目指してほしいです。

ーー最後の試合でスーパープレーを連発。どのような気持ちでこの日を迎えていたか、その手応えは

 特別な思いはなく、普段通りを意識していました。負けたら終わりという状況だったので今までの練習で培ったこと、準備してきたことを120%出し切れるようにはしていました。また、リーグ戦とは違い、チームメイトと宿泊先のホテルで過ごしたので、緊張はほぐれていたかもしれないです。

 試合に関しては、あまり手応えは感じていなかったです。ラッキーな部分もあったので。チームの勝利に少しでも力になれたらと、とにかく必死でやってました。

ーー4年間を振り返って。満足いくアメフト生活だったか

 苦しい4年間だったと思います。チームとしては様々な困難がありました。個人としてもなかなか結果が出ず苦しい日々が続いた中で、とにかく無我夢中でした。その中でも、支えてくれたチームメイト、チーム関係者の方々、両親、友人にはとても感謝しています。彼らのおかげでこの大舞台に立ち、成長することができました。素晴らしい財産を得ることができ、大変満足しています。

 

山岡葵竜(政3・佼成学園)

ーー試合の感想

関西の壁を感じました。圧倒的アウェー感など、今まで味わったことがない空気感だったのですが、来年につながる良い経験だったと思っています。

ーー関西に向け準備したこと。また、それはどの程度発揮できたか

関学戦に向けて、QBは各々の強みを活かして分業を更に徹底した印象です。チームとして、パスを1番の武器とすると決め、実際に関学を相手に十分通用するパスオフェンスを展開できたという点は良かったと思います。ただ、個人としては満足しておらず、ドライブを止めてしまった悔しさがあります。

ーーQB三本柱で唯一の下級生。先輩QBの水嶋と松本から何を学んだか

学んだこととしては、水嶋さんからはパッションとリーダーシップ、松本さんからはロジックと冷静さだと思います。2人からはアメフト面に加えて、特にQBとしてのメンタリティや人間性の面でたくさん学ばせてもらいました。最高の先輩、そして最高のライバルとして過ごした3年間だったと思っています。来シーズンは絶対にリベンジします!

 

工藤未来(商2・慶應)

ーー個人として、この試合に臨む上で目標などは立てていたか

関学に向けての練習では、front全体として、スタートで3歩を出し続けることを意識してきました。自分の中ではそれを試合でも関学のOL相手にこだわり続けることが目標でした。アメフトの基礎であるゲットオフ(スタート)の部分を目標にすることで関学相手にも自信を持って戦えたと思います。

ーー今年の経験を、どう来年以降に生かしていくか

秋シーズンを通して、自分含めてディフェンスで多くの2年生が出ることができました。TOP8上位校や関学のレベル感を下級生のうちに体感できたのは自分たちの代としてもとても大きいことだと思っています。来年度のディフェンスは自分たちの代が中心となって、日本一のディフェンスを作りたいです。

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