スポーツの祭典、オリンピック。今年8月フランス・パリにて開催された2024年夏季大会に、日本からは400人を超える選手が参加し、そのプレーで多くの人々に感動と勇気を与えました。フルーレ女子団体で史上初の銅メダル獲得に貢献された宮脇花綸選手もその一人です。宮脇選手は慶應女子高校から慶大進学後、慶大フェンシング部に在籍し、在塾時から数々の国内外の大会にて活躍されてきました。今回ケイスポでは宮脇選手にインタビューを行い、慶大フェンシング部や早慶戦の魅力、そしてご自身の競技人生について伺いました。第1弾となる今回は、学生時代の部活動や早慶戦について取り上げます!
Q:宮脇選手が学生の頃、慶大フェンシング部はどんな雰囲気でしたか?
宮脇:私がいた当時は大きな部活というわけでもなかったんですけど、部としてちょうど強くなり始めた時期でもありました。塾高(慶應義塾高校)にもフェンシング部があって、そこで3年間プレーした強い子たちが入部してきていたので、チーム全体ですごく勢いがあったと思います。人数は多くなかったけど、一人一人の結束力が強い、そんな部活でした。
Q:大学4年間での一番の思い出は?
宮脇:女子フルーレのリーグ戦で1部に昇格した時ですね。当時男子部員は結構いたんですけど、逆に女子は全然部員が少なくて、ずっと2部リーグに属していました。そもそもフルーレでは団体戦のメンバー(4人)を揃えられてなくて、私以外は違う種目のメンバーに協力してもらう形で戦っていました。
そんな中、私が大学2年生の時にやっと2部で優勝することができて、1部昇格を懸けて臨んだ入れ替え戦の相手は奇遇にも早大でした。5点差あったのを試合終了残り1秒ぐらいで追いついて、1点先取のサドンデスを経ての決着でした。あの激闘に勝って昇格を決めたのは一番心に残る瞬間です。
Q:4年間の部活動で得た経験の中で、現役の部員たち、そして今後入部する未来の後輩たちに伝えたいことは?
宮脇:2つあって、1つは団体戦の楽しさを知ったことです。私は高校まで部活動をしたことがなくて、慶大フェンシング部に入って初めて団体戦というものを経験したんです。その時に「みんなでバトンをつないで戦うのってこんなに楽しいんだ」って思えたのが大学の部活でした。
もう一つは、慶大に入学して文武両道を実現するうえで、体育会では非常に大きな支えとなることです。中でもフェンシング部は、大学から競技を始めた人でも試合経験が積める部活なので、学業もこなす上では良い環境だと思います。そういう意味では実力関係なく多くの部員が充実できるいい部活だと思っています。
Q:学生時代の早慶戦で何か思い出はありますか?
宮脇:早慶戦はちょっと苦い思い出しかないというか、在学中は一度も勝った事がないんです。早大にはスポーツ推薦があるので、特に女子は中々勝てない状況だったんですけど、近年は早慶戦で2連覇(21・22年)したりと、着実に実力をつけてきていると感じるので、そういう後輩たちの活躍を本当に嬉しく思っています。
Q:早慶のフェンシング部に目を向けると、今夏のパリ五輪代表を輩出するなど両校の活躍が光ります。このように、部におけるオリンピアンの存在ついてどのように思われますか?
宮脇:慶大からは飯村一輝選手(3年)が、早大からは加納虹輝選手(20年卒)や松山恭助選手(19年卒)が活躍されたように、現役やOB/OGにオリンピアンがいることは部全体にとって刺激的なことだと思います。チームの士気を高める上で代表選手の存在は欠かせません。
ただ大事なことは、他の部員も彼らの姿を見て向上心を持つことだと思います。例えば、早慶戦の団体戦のような試合は一人スター選手がいても勝てるわけでは無く、彼らにバトンを繋いでいく他のメンバーの活躍こそが鍵となってきます。練習の段階から皆で頑張る意識を持てれば、強い選手もエースとしての自覚がより強くなると思うので、お互い影響を与え合うことが大切だと思います。
――宮脇選手自身はパリ五輪中に他の選手方から刺激を受けたんですか?
宮脇:そうですね。特に印象に残っていることがあって、私が個人戦にて1回戦負けしたのと同じ日に、男性エペの個人戦があり、そこで加納選手が日本フェンシング史上初めて個人の種目で金メダルを獲ったんです。その瞬間を目の当たりにして勇気をもらいましたし、フルーレ団体のメンバーの間でも「私たちもメダル獲りたいね」って話をしました。チームが一つにまとまったという意味で、加納選手のプレーは大きかったと思います。
Q:最後に、早慶戦を直前に控える現役部員の皆さんに向けてエールをお願いします
宮脇:早慶戦では一人一人が力を出し切れること、そして4年生が有終の美を飾れることを期待しています。特に今年のフェンシング部主将である貝島(有香)は女子で医学部出身という稀有な経歴を持っているんですけれど、それだけの大役を務め上げる頑張りを4年間してきたと思います。なので、彼女には悔いのないプレーをしてほしいと思っています。部員の皆さん、自分の力を信じて最後まで戦ってきてください!
最後までご覧いただきありがとうございました。次回は、パリオリンピックの振り返りとオリンピックに対する思いに迫ります。ぜひお楽しみに!
【お知らせ】
第77回フェンシング早慶戦が12月8日に早稲田大学・戸山キャンパス早稲田アリーナにて開催予定です。ぜひ皆さん会場で選手たちに声援を送りましょう!
(記事:竹腰環 写真提供:日本フェンシング協会)