今季からプロ野球出身者である江藤省三監督を迎え11季ぶりの王座奪還を目指す慶大野球部。六大学野球初のプロ野球経験者監督となった江藤監督にインタビューを行いました。
― 開幕まで残り2週間となって、チームの状態や雰囲気はどうですか
まだまだだけど、雰囲気か。雰囲気は今のところいいかな。いいかなって言うのも今日試合が終わって、勝てば雰囲気良くなるし、負ければ悪くなるし、当たり前のことなんだけどね。ここんとこ金曜に二つ勝っているから雰囲気はいい方だね。
― まだスタメンが決まっていないポジションでの競争意識どうですか
まだ決まってないとこがたくさんあるからね。でた人ががんばらないと落ちてゆくという形をとっているけどね。まだ、ちょっと固まらないかな。
― キャンプのメンバーはどういった基準で選ばれたのですか
いいもの順。それは毎日いろんな練習やってるし、それから紅白戦もやってるし。いい状態の者しか連れてってない。
― これまで練習だったりオープン戦を通してきて監督の理想のチームはできてきていますか
理想の方向に向かっていることには向かっているね。いろんな意味で選手は頭いいからね。プロの選手みたいに頑固じゃないから。言ったこと素直に守ってくれるから。そういう意味では理想の方向に向かっている。
― これからシーズン始まるまでに学校も始まって、練習ばっかりという訳にもいかなりますが、そこの兼ね合いはどう考えていますか
うちだけだったら色々考えるけど他の学校もそうだしね。だからその中でやっていくのが学生野球で、プロ野球みたいに開幕まで朝から晩まで野球ができる状態全然違うわけでしょ。だからそれは覚悟してやるし、学校が始まってからどうやってコンディションを整えるかっていうのは指導者の責任かな。おれの責任だと思っているから選手はそのまんま授業と野球と両方やってくれればいいですよ。
― この前インタビューさせて頂いたときに練習後の素振りなどの基礎を徹底してゆくとおっしゃっていましたが、そういった練習の成果は目に見えてでてきていますか
少しはでてきているんじゃないかな。今日、一昨日の神宮での社会人を相手にしての試合、社会人も驚くような打球が飛んでるし、今日も10点取ってるし。そういう意味では周りから見て、本人たちは気がついててるかどうか分からないけどね、相手から見たらそういう感じがあるんじゃないかな。
― 今年のチームのストロングポイントはどこですか
守りよ、守り。ミスのない守り。守りの野球ということを全面的にだしていって、点取らないと勝てないと言う人もいるが、守りで確実に、100%の守りを作ってそれから点を取る野球をやっていくというのが理想かな。
― この前の対抗戦を見せて頂いて下級生が多く投げていたと思うのですが、そういった下級生には神宮での経験がないという部分ではどうですか
下級生しかいないんだよね。だから1年、2年が主力になるかな。経験って、それは経験あったほうがいいだろうけどプロとは違うから。プロの新人の経験の無さで140から150試合をやるのと違って、大学野球は2試合で終わるじゃん。だから自分が持ってる力を出せるか出せないかだけじゃないですか。1年だろうが2年だろうが勝つやつは勝つ。まぁ試合に出たら違いはないと思えばいいし、そう思ってる。じゃないとやってられない。1勝もしていない人ばっかりなんだし。よく言うでしょ、マスコミの人とか周りは。でも0勝の人が必ず勝つときがあるんだからな、うれしいよ。
― 投手担当として助監督を呼ばれましたが、助監督の影響はどうですか
それは竹内(助監督)も社会人で監督もやってるし、そういった経験を今の若い人に伝えてくれたら。まぁおれだと歳がおじいちゃんくらい離れたちゃうけど竹内はおれより一回り下だし親父くらいの感覚でいけるかな。そういう意味では良く分かっているんじゃない。
― 今見えているチームの課題はなんですか
課題、課題ね。いっぱいありすぎるけど、まぁいっぱいあるね。ピッチャーを完璧にしなくちゃだし、打つのも完璧にしなくてはだし、守るのも完璧にしなくてはだし、まだまだ70%にもいってないからね。だからそういう意味では課題は全部ですよ。自分の理想としているとこには半分にもいってないけどチーム力としては70くらいはいってるかな。そういう感じかな。
― 春季リーグでキーマンとして挙げられる選手は誰ですか
キーマンね。キーマンなんて簡単に言うと調子がいい者と悪い者がいるから、誰が活躍したら勝てるとかはないけど、ただ打線ではね、青山と高尾がね調子を上げてくれて活躍してくれれば勝てるよ。それからピッチャーで言うと竹内と福谷が柱になってくれれば勝てるよ。そこらへんのところがキーマンかな。経験豊富なやつはキーマンとは言えないでしょ。山口とか伊藤は働いて当たり前でしょ。キーマンというのは未知の遭遇じゃないけど、予期してないやつがガンガン活躍して初めて言うものであって、だから打線に青山と高尾が入ったときにこいつらが活躍すれば打線がつながるんですよ。
― 投手ではキーマンとして竹内と福谷の二人を挙げていましたが、二人が先発となるのですか
そうだね。そうゆう感じだよね。今のところはだよ。だけどピッチャーは仲井がいるし、只野もいるし、それから山形がいるし、4年生は田中がいるしね。たくさんいるけども竹内と福谷ががんばれば勝てるよ。まぁ今日の竹内のピッチングだったら勝てるよね。今日試合を見ればこんなこと聞かなくてよかったのにね。
― 打線のキーマンとして挙げられた高尾選手、青山選手は右打者ですが、去年もそうですが、慶大の打線は左打者が多いイメージがあるのですが
日本中、左が多いの。作られた左が多いんですよ。だから右打者のスーパースターがプロでも少なくなってきている。それはなんでかっていうとね、30年前くらいまではアンダースローがものすごく多かったんだよね。日本のプロ野球から高校野球まで全部ね。だからいいピッチャーのイメージといったらアンダースローのピッチャーだったの。それの対策として左打者が作られたてきたわけ。だから今度はアンダースローが少なくなって、左投手が重宝されるようになったわけ。今は時代の流れがそうなっているんだよね。今度は右打者がどんどん出てくると左投手が減ってアンダースローが増えてくる。そうするとまた左打者が増えてくる。そういうことだよね。
― 野球の流れということですね
そう。相手のピッチャーに対して打者が作られていくわけね。これから左打者として作られた子供っていうのはチャンスが減ってくるだろうね。だからこれから子供を打者として育てるなら右打者だろうね。そうすればちょうど成長したときにプロが目をつけるだろうしね。サイクルなんだよね。
― やっぱりアンダースローやサイドスローには左打者が有効なのですか
そういうことだよね。ボールが見える長さが違う。逆に右打者は左投手の球が長く見える。球の軌道がよく見えるんだよね。
― 対戦相手となる5つの大学、特に斎藤投手や大石投手がいる早大についてどのような印象をお持ちですか
それは選手に聞いたほうがいいね。おれは5つの大学知らないから、見ていないから。自分の目で見たものしか信用しないから、全然分からない。大石君がダルビッシュくらいの投手なら信用するけどね。そしたらちょっと対策たてないとなぁと思うけどね。だからその点ではどうこうってことはないけどね。自分たちがしっかりしてればいいんだよ。
― 相手に合わせて戦術を変えるのではなく、自分たちの野球をやっていくことに集中するということですか
自分たちの野球をやっていけば勝てるよ。どんなところにも。社会人チームにも勝ってるわけだから。だって、社会人チームは大学よりも上のはずでしょ。社会人チームのピッチャーのデータは全然ないんだから。自分たちの野球をやってるからどんな相手がきても打てるわけだし。去年までのエース中林(商卒)が投げたって遅いと選手は言っているわけだからさ。去年まで自分たちのエースだったから、めちゃくちゃ速いと思っていたと思うんだよね。でも社会人相手にずっとやってきたら遅いっていうわけでしょ。そいう風にしてみんな自信がつくんじゃないの。でも選手は大石とか明治の野村とかを恐がってるよ。でもおれは新聞社とかよく聞くんだけど見たことないっていうの。ダルビッシュよりよかったらおれに言ってくれって感じだね。おれはそういう考えだから。プロでやってきた人に聞けば絶対そう言うよ。おれはスカウトやっていたからどれくらいならプロでやっていけるか分かるんだよ。偉そうでしょ。そのくらい強気じゃなきゃ学生はついてこないよ。
― 監督としてはやっぱりどっしりと
どっしりと、というかそのまんまだからね。怒ったりするけど、その人やれないことは絶対要求しないし、やってないことは要求しない。練習でやったことをミスしたら怒る。練習でやってないことをミスしても怒らない。それが基本ですよ、基本。それはおれの哲学の中で徹底している。プロのコーチしていてもそれは同じ。同じエラーでも仕方のないエラーとやってはいけないエラー、同じ四球にもだしてはいけない四球とだしてもいい四球がある。そういうのを全部教えていく。新聞を見てると四球いくつとかでるけどその中にもだしていいのと悪いのがあるんだからね。
― しっかり練習でやったことを選手にやってもらいたいのですね。
そう。できなかったら練習が足らない。偉そう?
だいたいプロの新聞記者が負けて終わって、色々聞いてくるじゃない。野村さんはああやってテレビでるからさ、「なんじゃ~」なんて言い方するけどさ、私はもうかりかりしてるから、でも新聞各社は聞かないと記事にならないから怒っているのを分かっていてもなんでも聞いてくるじゃん。そうするとおれも「なんでそんなこと聞くんや!」って言うんだよ。でも自分たちは書かないと記事にならないから懸命に書いてたよ。昔は自分たちのとこだけでやってたけど、今は聞きもらしたとこがあるとお互いに聞くからみんな同じ原稿になってることもよくあるじゃん。昔は一人ずつ聞きにきたけどね。自分たちだけの特ダネがほしいから。だからおれたちは言われてるよ。今度あんな偉そうなこと言ったらめちゃくちゃな記事書いてやるってね。
― もう1年生が練習に参加していますが、実際に1年生の練習を見てどのような印象をお持ちですか。
1年生は1年生。1年生になったら~、その程度。ただその中に光るものがあるから自分のいいところを出せる場合には使っている。欠点は直さない。いまさら直したって絶対間に合わないもん。そうでしょ。
― では長所を出せる選手は1年生でも春から使っていくことはありますか
ありうる。なんか質問が白村にいってないかい。白村はねじっくり育ててあげたい。今、勢いだけでいったら自信をなくす。だからゆっくり、じっくり育てていったらいいと思うよ。
― じっくり育てて完成したらプロにもいける素質があるということですか
それは早すぎる。みんなそう。1.5流くらいのやつが企業さがしてくれとか、大リーグいきたいとかいうのが多いんだよ。超1流とかだったらやってみるかとか言えるけど、プロというのはあんまりこの子たちとはかなりの差があるんだよね。どんなにいい素質を持っていても。プロとの壁はかなり厚いものがあるんだよ。おれは2軍の監督やってたから分かるけどアマチュアで超1流だった人がいっぱい2軍にくるよ。だから大石くんや斎藤くんがどんなにすごいと言われても現時点ではプロの2軍より下なんだから。そのへんは
考え方だよね。この前ある大学と試合したとき聞いたんだけど、大石は絶対打てない、大学生では絶対打てないっていうコメントをね。そうかなぁと思って、1回見たいなぁと思ってね。でも147キロでましたっていったってなんだぁって感じ。なんとも思いませんでした。その程度だからなぁ。偉そうなこと言うでしょ。これで早慶戦負けたらボロクソ書いていいからね。自分だけが突っ走っててるから選手がついてこないとでも書いときな。
― お話を聞いていると期待がふくらみます
おれはあちこちの激励会でそう言ってるんだもん。この前の三田クラブの総会でも言ったし。どこの三田会でも言ってる。見に来てくださいね、必ず勝ってるからって偉そうに言ってる。だってそれ言わないと選手が盛り上がらないじゃない。面白くないでしょ。こういうことばっかり言ってるから選手もその気になってるけど、やることはやってるよ。自信の裏づけというか、手ごたえ感じてるからね。なんとかいい戦いをできるかなぁと思っている。
― 実際にキャンプやオープン戦をやってみて、大学野球の監督として面白かったり、難しかったりしたところはありますか
面白いとこは、もう選手が本当に素直。自分さえ間違わなかったら思い通りの野球ができる。プロだとやっぱり言ったことを素直に聞かないやつもいるしね。だから自分が方向さえ間違えなかったらいいなと感じるね。
― 逆にプロと違って難しいと感じるところはありますか
まだ技術が伴っていないとこだけ。極端にいえばヒットエンドランが成功するなっていう状況で空振りとかして三振ゲッツーとかになっちゃうじゃん。だから難しいとこはそういうとこ。作戦上のことよ。あとは大学で難しいことは野球ではないね。180人が一つのグランドってこと以外はね。慶應スポーツがなにかキャンペーンしてグランド一つ買ってくださいよ。
― 最後に先ほどから春は勝つとおっしゃっているのですが、春季リーグの目標を聞かせてくだい。
勝ち点5。でいい?まぁ本当は優勝だからね目標は。1個1個戦っていって気が付いたら振り返ったら勝ってたってしたいなぁ。だから手前の試合から1個ずつ。じゃないと足元すくわれる。野球はやってみないと分からないからね。最初の東大戦も慎重に戦って、それでから次の法政戦を考える。
― 1つずつ積み重ねていって最終的に優勝ということですか
そうだね。少なくとも、早慶戦にお互いの優勝のかかっている試合になればそれでよしにしようとは思っているけどね。
最後に春季リーグの目標を書いてもらうと、江藤監督は「日本一」と力強く書いてくれました。インタビュー中も力強く「勝つ」とおっしゃっていた江藤監督。春季リーグへの強い自信がうかがえました。11季ぶりの王座奪還へ―。慶大野球部の初戦は4月17日の第一試合対東大戦です。
By Kento Yamada, Ryo Hayashi
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