【バレーボール】コートを離れた仲間の分まで… 強豪相手に善戦するも無念の敗北で引退を迎える/第77回全日本バレーボール大学男子選手権大会2回戦vs早大

バレー戦評

4年生の引退を控え、負ければ一緒にコートに立つのは最後となる今試合。第一セット、序盤から中盤にかけては同点の展開が続き、サービスエースを皮切りに一歩リードするも再び追いつかれ初セットから会場を大いに盛り上げる試合となった。そうした最中起きた主将・渡邊大昭(商4・慶應)の負傷という悲劇がもたらす衝撃はあまりにも大きく、大黒柱不在の中接戦を繰り広げるも最後にあと一歩及ばず19―25で第1セットを落とす。第二セットは序盤からリードを許すも1年生の活躍が大きな刺激となりダブルスコアから2点差にまで点差を詰める。後を追う展開で迎えたセット後半は今季強化した守備力を見せつけつつ的確なスパイクも見られ終盤で同点にまで詰め寄るもここからの1点が遠く23―25で第2セットも相手に譲る。追い込まれた第3セットは、連続失点により序盤で2回のタイムアウトを使い切りその後なかなかスパイクで決め切ることができない展開が続くも4年生の安定した実力がチームを支え、終盤も4年生の引退を惜しむ下級生が積極的にスパイクを放ち続けたが連続得点にはつなげられず、惜しくも13―25で涙を呑んだ。

 

2024年11月27日(水)

第77回全日本バレーボール大学男子選手権大会2回戦

慶大×早大 @東京体育館

※掲載が遅くなり大変申し訳ありません。

ページ下部にギャラリー(写真)選手コメント引退した4年生一覧がございます。

 

得点

慶大

セット

早大

19

25

23

25

13

25

 

出場選手

ポジション

背番号

名前(学部学年・出身校)

MB

22

稲井正太郎(法1・慶應)

OH

12

内田克弥(環4・松江高専)

OH

渡邊大昭(商4・慶應)

S

山口快人(経2・慶應)

OH

11

入来晃徳(環3・佐世保南)

MB

芳賀祐介(環4・札幌北)

L

今田匠海(政1・慶應)

途中出場

 

 

L

緒方哲平(環1・日向学院)

OH

清水悠斗(総1・習志野)

S

15

久保田健介(商3・慶應湘南)

MB

松山鼓太郎(商2・慶應)

 

張り詰めた空気のなか幕を開けた第一セット、山口快人(経2・慶應)のトスから芳賀祐介(環4・札幌北)の速攻が決まり幸先のいいスタートを切り、その後3連続得点を許すも内田克弥(環4・松江高専)の軟打で2―3とする。さらに相手スパイクの打点を正確に見抜きアウトボールを見送り同点に並ぶと山口は渡邊大昭(商4・慶應)にボールをたくし、ここはスパイクが決まり主将の貫禄を見せつける。セット中盤にかけて両者競り合う展開が続くも、9ー10の場面で渡邊のサービスエースが決まり一時は2点差を作り出す場面も見られ試合の主導権を握りつつあるように感じられた。相手の粘りが一歩上回り連続得点を許したなか迎えた12―14の場面、このセット一番のロングラリーとなり託されたボールを渡邊がネット際にて相手のブロック上を通すアタックを放った際に悲劇は起きた。渡邊のひざの負傷である。コートにうずくまる渡邊はすぐさま運び出され、その後試合は再開されたものの、仲間の負傷という事態に出くわし選手の表情からは動揺がうかがえる。主将不在の中でも入来を中心としたスパイクで得点を積み重ね16―18とするも、同時に普段は見られないようなミスが増えてきて徐々に点差を離されてしまう。内田のスパイクが決まり18―20、稲山がテンポの早い攻撃で19―22としたがここから得点できず19―25で第1セットを落とした。

セット前半は一段と力強いプレーを見せていた主将・渡邊

 

第二セット、序盤からリードを許した慶大だったが、清水悠斗(総1・習志野)がスパイクで点を挙げ3―5とするとコートを走り回り、1年生の活躍にチームも奮い立つ。2連続得点を許した8ー4の場面で1回目の慶大のタイムアウトを挟んだ後には稲井正太郎(法1・慶應)が1枚ブロックで見事に相手スパイクをアウトに導き、入来晃徳(環3・佐世保南)の鋭いスパイクやネット際で繊細なボールさばきも見られ、3連続得点の末に8―10とした、このまま相手との点差をじりじりと詰め逆転を果たしたいところだったが、10―13と相手優位でセットを折り返すとその後も攻守逆転の糸口が見えない。しかし負けたら4年生がコートに立つのは最後となるこの試合、このまま相手の流れに飲み込まれる慶大ではない。今田匠海(政1・慶應)のサーブレシーブを入来がつなぎ、3枚ブロックがつくなかで清水がその合間を通したスパイクを決めて12―15とし、コート内外の仲間を大いに盛り上げる。今田はツーアタックを抜群のポジショニングと反射神経で拾うなど慶大の守備に大いに貢献し、セット後半は徐々に点差を詰めることに成功。入来が相手ブロックを見抜いた正確なスパイクを放ち20―21とし、さらに直後には逆にブロックを利用した巧みなスパイクで得点し21点で並び相手のタイムアウト挟む。しかしここは力が入り過ぎた面もあったか、22―22から連続失点となりスパイクがブロックに阻まれ23―25でこのセットを落とした。

主将と4年生の思いを胸に下級生が活躍を見せた

 

あとがない第3セット、稲井がブロックに成功し先制するとその後5連続得点を許したところで1回目のタイムアウトを挟む。入来にトスが集まり力強いスパイクを放つも慶大に引けを取らない相手の守備がボールを紡ぎ決め切ることができない。渾身の一打がようやく決まり2―6とした場面では芳賀が高身長を生かしたブロックで追加点を挙げ、相手主導の試合展開の中でくらいつく。それでも4―11と点差を引き離されここで2回目のタイムアウトを使い、アナリストの熱烈かつ的確な助言を受け再びコートに立つ。セット中盤にかけても連続得点が見られず6―13と厳しい展開が続くなかで気迫あるプレーを見せるも相手スパイクがコートに刺さる場面が増え、8―16の場面ではピンチサーバーとして久保田健介(商3・慶應湘南藤沢)が入るも打開点とはならなかった。セット後半はナイスディグが多く見られるもそれを点をつなぐことができない展開がつづいたが、芳賀の速攻で10―18、内田のスパイクで12―21など4年生の安定した実力がチームを支える。清水のサーブレシーブからさらに今田が体を張ったディグでボールをつなぎ、最後はまたも内田が決め切り13―22とする。緊迫した終盤も正確なスパイクを放ち続けるも最後は攻守ともに一方上回る相手を前に追加点を挙げられず、惜しくも13―25で幕を閉じた。すなわち本試合が4年生とともにコートに立てる最後の試合となった。

安定感あるプレーを見せ、要所で点を取った芳賀

 

(記事:五関優太、撮影:長掛真依)

 

◇ギャラリー◇ 

★第1セット

 

★第2セット

 

★第3セット

 

◇選手コメント◇

星谷健太郎監督

――本日の試合を振り返って

秋リーグ関東1部で優勝している早稲田を相手に戦えるというので、もう2回戦で当たってしまうんだという悔しさはありつつも、やはり日本一と言ってもいいチームとこの舞台で戦えるのはありがたいことだと思って、この舞台に来れたことを感謝したいなと思ってます。でも、途中大きなアクシデントがあって、なぜこのタイミングでという悔しさはあるんですが、その中でチームがまた一段と結束して、そういった相手に立ち向かえたのだろと非常に誇りに思えるそんなそんな試合だったと思います。

 

――4年生の活躍ももちろんですが、アクシデントが起きた中で下級生の活躍にフォーカスするといかがですか
パフォーマンスを発揮できていた部分もありますが、私の期待の中ではもっとできると思ってますので、その期待には達してしていなかったなと思いますので、そこはまた練習して、こういった場面だからこそ力が発揮できるような準備をしていく必要があるなと思いました。

 

――4年間監督が現4年生の代を見ていてチームに与えた良い影響など具体的に思うことはありますか
そこは私がどうこういう話ではなく、学生のみんながどういうふうに思って受け止めてくれたかということだけかなと思います。もちろん私の中でも大学生という社会人の 1つ前のカテゴリーで、これから社会人として大きく育っていく人たちに対して、どういう関わり合いをして送り出していけばいいかということは常に考え、考えもアップデートさせながらコミュニケーションしてきたつもりではあるので、何かそこが1つでも2つでも心に残って、さらに大きく社会で活躍して後輩たちにもまたそのいい影響を与える卒業生としてやってもらえたと思います。

 

副将・芳賀祐介選手(環4・札幌北)

――今日の試合を振り返って

1セット目の中盤で大昭(=主将/OH・渡邊大昭)のアクシデントがあってイレギュラーな感じにはなってしまったのですけれど、要所要所で自分たちのやろうとしていた「ブロックでしっかり引っ掛けてラリーに持ち込んで決めきる」というところだったり、「サーブでしっかり攻めて、ブロックで楽にして良い形でラリーに持ち込む」というところはできていたと思うので、そこは良かったかなと思います。あとは大昭が抜けた後でも、清水(=OH・清水悠斗)や途中で出場したメンバーもある程度存在感を出せていたと思うので、来年もやれることを証明できたというか…僕たちは今年でもう(慶應バレー部として、バレーは)できないので。良くも悪くも世代交代ができたのかなとは思っています。

 

――最後まで、誰よりも仲間に声をかけ続ける姿が印象的でした。副将として、4年生としてどんな思いでコートに立っていましたか
もしかしたら今日が最後になるかもしれないということで、本当に悔いが残らないように自分ができることを最後までやろうと思ってずっとコートに立っていたので…。この1年間やりきれたなと思いますし、この試合でもやりきれたのかなと思います。

 

――今ここにはいないですが…1年間チームを引っ張ってきてくれた大昭さんにどんな言葉をかけてあげたいですか
本当にかける言葉がないというか…この1年はみんな、大昭のリーダーシップとかプレーに引っ張ってもらっていて…同期もそうですし後輩も。彼のおかげでやってこれたチームだったのでここにいないのはすごく残念ですけれど、バレーは終わってしまいますがこれからも関係は続きますし、社会人になっても一緒にいられる関係でありたいなと思います。

 

――すぐには気持ちを切り替えられないかもしれませんが、4年間を振り返っていかがですか
勝敗で言うともしかしたら負けの方が多い、というか絶対に負けの方が多い大学のバレーボール人生で本当に苦しいことの方が多かったかもしれないですけれど、やりきれたというか。本当にここまで大きな怪我なくずっと試合に出てこられて、成長させてもらったので、慶應バレー部の関係者、同期、後輩、先輩、関わった全ての人に感謝したいと思います。

 

――最後に後輩へのメッセージをお願いします!
今日の試合でも後輩たちだけでしっかりやれるということは証明できたと思いますし、3年生なら1年間、残された時間を逆算して「自分のなりたい姿」に向かって頑張って欲しいなと思います。

 

副将・田鹿陽大アナリスト(法4・慶應)

――今日の試合を振り返って
1セット目、ああいう不慮の出来事があった中で、いつも出ないメンバーだったり流動的な部分もあり噛み合わないようなメンバーでの試合だったんですけども、そういった中でも大昭のためにやってやろうという気持ちがあったのか分からないけれども、できることを今この1球のためにみたいなところをすごくチームとして発揮できたのかなと思います。形としては最後あまりやり切れないところはあったかもしれないけれども、そういうプルの出来事に対してがあったとしても、しっかり最後までめげずにやりきることができたのでと思うので、僕としては次の代につながるいい試合だったし、自分たちの最後の試合だとしても、別に悔いはないのかなと。

 

――試合中に同期を見て込み上げてくる思いなどはありましたか
特に内田はいつもはのほほんとしてるやつで、自然にいるみたいな。でもいざ試合になると、そういうやつが一番声出したり、自白出したり、感情を出していた。そういうプレーを見ると、やっぱり今まで練習とか練習中の葛藤とか、そういうのが脳裏によぎったりして感極まるものはあったりしますし、あとは大昭が抜けた後のみんなのプレーとか見てても、あいつのためにというのが あったのかなと思って。言葉にできないですけど、そういうものはありました。

 

――引退を前にして最後に一言お願いします
一言では言い表せないほど、ちょっと今複雑な感情で引退した後の生活とか想像できないですし、これからバレーを取ったら何が残るんだろうとか考えながらほんとに複雑なんですけど、俺たちの代はバレーは抜群だったかもしれないけど組織としてはまだ二流だったかなって、副将として振り返っても思います。次の代もバレーは抜群だと思うのでまた組織として一丸となって、この一年後、またこの舞台に戻ってきてほしいなって思います。

 

山口快人選手(経2・慶應)
――今日の試合を振り返っていかがですか
1セット目に大きなアクシデントがあったのですけれども、大昭さん(=主将/OH・渡邊大昭)の分もということで自分としてはよりパワーをもらったというか、いつも以上に力が発揮できたかなと思います。

 

――第2セットは少し離されたところから追い上げをみせて、20点台まで白熱した展開となりました。チームではどんなことを話されていましたか
(慶大の)サーブが弱くなっているということで「サーブで攻めてブロックでワンタッチを取って、もう一回切り替えして決めたい」とサーブアンドブロックの部分を強化しようと話していました。

 

――第2セットではご自身も2連続サービスエースを決められましたが、振り返っていかがですか
早稲田さんに2連続でサービスエースを取ったのは初めてだったので…不思議な力が発揮されました!

 

――その他の面で、ご自身のプレーはいかがでしたか
いつもと違うメンバーだったのでトスを上げるところに少し迷いはありましたが、「信じて託す」というところを意識してプレーしていました。

 

――1年生の頃から一緒に戦ってきた4年生へメッセージをお願いします!
4年生にとっては最後のセッターが自分だったと思うので、どうだろうな…良かったのかは分からないですけれど。悪いトスだったけれど、自分のトスを精一杯打ってくれて嬉しかったです!

 

◇今試合をもって引退した4年生◇

主将・渡邊大昭選手:商学部部4年、慶應高出身。
コート内外で絶大なる信頼を集める一方、対談企画の空き時間にジェンガを勧めてくれた優しき主将。

 

副将・芳賀祐介選手:環境情報学部4年、札幌北高出身。
U20日本代表にも選出された経歴も持つ。毎回柔らかな話し方で試合の振り返りを詳細にしていただいた。

 

副将・田鹿陽大アナリスト:法学部法律学科4年、慶應高出身。

築き上げたデータと知識でチーム慶大を支え、異例の副将就任。データを武器に戦う一方で選手とのコミュニケーション・意識のすり合わせにも力を入れた。

 

主務・細野一真選手:経済学部4年、慶應高出身。
選手との兼任で主務を務める。多忙なチームマネジメントをこなす一方で試合当日はユニフォームに身を包み二刀流を果たした。

 

内田克弥選手:環境情報学部4年、松江高専出身。
「目の前の1点を取るだけ」と繰り返し語る彼だったが、その裏では誰にも負けない量の練習を自身に課していた屈指の努力家であった。

 

山本昌岳 学連委員長:文学部4年、慶應高出身。

リーグ戦をはじめとした大会運営に関わり、チームの降格・昇進を見守ってきた。試合時にはいつもケイスポに声を掛けてくださった。

 

バレーボール部の皆さま、いつも快く取材を受けて下さりありがとうございました!✿

 

 

 

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