24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last message~4年間の軌跡~」。第11回となる今回は、ソッカー部男子グラウンドマネージャーの柳町一葉(法4・慶應志木)。ラストシーズンでは念願の「2部優勝、1部昇格」を成し遂げ、有終の美を飾った慶大ソッカー部。GM(グラウンドマネージャー)として陰でチームを支えてきた柳町。「誰かのために」働いた彼が最後の最後に得たものとはなんだったのか。
兄の影響で幼稚園の年中からサッカーを続けていたという柳町。慶應義塾志木高時代は同期の香山達明(経4・慶應志木)らとともに日々練習に励み、大学入学後も迷うことなくソッカー部に入部した。1、2年時にはBチームで練習に取り組んでいた柳町だったが、3年時にはCチームに降格。その後も思うような結果が出ず。自分自身の気持ちの整理もきちんとつかぬまま、菊田凌万(商4・桐朋 / 東京武蔵野シティFC U-18)とともに、GMとしてチームのためにプレイヤーを引退する決断をした。選手としてフィールドに立つことに未練のあったという柳町。「自分がGMをせずに選手をやっていたら今頃どのぐらいやっていけてたんだろうなって考えることはいまだにありますね」と語った。

思い出を振り返る柳町
当初はGMという役割に入り込めずにいた柳町。しかし、同じくGMとして働く4年生の姿を見て、「誰かのために」尽くすことの意義に気づかされた。そんな柳町はGMの仕事を行う上で「押しつけないこと」を大切にしていたという。「どうしてもコーチという上の立場になってしまうと、チームの方針だから従ってくれって感じで、自分の考えとかを押し付けてしまう方が、コーチとかGMという仕事を行っていく上では楽だし、スムーズに業務を行っていけるなと思うんですけど、でもそれは“逃げ”だと思っていて。必ず一人ひとりと向き合って、その選手が本当にこの組織にモチベーション持って、日々の活動に取り組めているかどうか。本当に自分たちが掲げて思ったことに芯からちゃんと賛同してくれてるかどうかっていうところを大切にしていて。もし賛同してくれないんだったら、じゃあなぜ賛同してくれないのか。賛同してもらうためにそいつの意見を少しでも取り入れなきゃいけないんじゃないかとか、そういうことを意識してやっていました」と話した。

部員一人ひとりに真剣に向き合った
時に選手たちと衝突しながらも、逃げずに向き合う姿勢を貫いた柳町。辛い日々が続きながらもその努力が報われたと感じたのは、「2部優勝、1部昇格」という結果を手にした瞬間だった。その時を振り返って「GMの仕事は辛いことの方がやっぱり多くて。正直辛いことがほとんどだったんですけど、その中でも優勝を決めた瞬間は、こんなに自分って喜べるんだっていうぐらい喜んでいて。やっぱり試合に出ている11人のうちの1人じゃない分、自分が成し遂げた感覚、“手触り感”みたいなところは今まであんまり感じてこれなかったんですけど、それでもやっぱり優勝の瞬間だけは自分がやってきたことは間違ってなかったとか、自分でやってきたことが少しでも肯定されたなと感じることが出来ましたね」と語った。

別々の形でチームに貢献した志木高出身の二人
選手として活躍することへの未練を抱えながらも、GMとしてチームに尽くした柳町。その選択に迷いはあったが、最後には確かな手応えを得ることができた。「誰かのために」働くことの価値は、「誰かのために」行動した者にしか分からない。その信念を胸に、柳町はチームとともに戦い抜いた。

「誰かのために」を全うした
(記事:塩田隆貴)