24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last Message~4年間の軌跡~」。「Extra Edition」の第2弾では、應援指導部前代表・土橋祐太(経4・慶應)とケイスポ元編集長の長沢美伸(政4・慶應)の対談をお届けする。両者が各団体で行ってきた取り組みや関係性、同じく慶應義塾体育会を支える組織として連携で生まれるシナジーについて話してもらった。
――まず、他己紹介をお願いします。
長沢:最初に知り合ったのは高1の時ですね。出席番号が近かったですが当時は時々話す程度でした。その後大学に入って、ケイスポと應援指導部で連携していこうとする時に考え方が一致し、現在の協力体制に至っています。非常に仕事熱心な人で、先輩からも「土橋がいないと回らない」という話を聞いたりしました。慶應体育会のために頑張っている人だなという印象です。
土橋:大学で意気投合する前にコロナ禍があって、活動を十分にできないもどかしさがあったと思います。それがコロナ明けの時にちょうど一致したのではないかなと。
長沢は應援指導部という特殊な部活をスッと理解してくれました。歴史的経緯も、存在意義も単純じゃない。掲げている目標も「応援を通じて、若き血を滾らせます」であり、抽象的になりがちなのがこの部活です。それをスッと理解できる、溶け込む力がすごいなと思います。カメレオンみたいに、その色に入っていける人だなと思います。

代表としての責任を全うした土橋
――お二人とも新たな取り組みを行いました。どのような取り組みを行ったのか、教えてください。
土橋:一つは3年次、コロナ明けのタイミングで野球担当になり応援席を復活させたことです。2023年春、「応援席が復活するかも」という連絡が開幕直前に来ました。2022年秋も慶早戦では内野席で応援していましたが、応援団エリアは隔離されていて、お客様に発声を促すことはできませんでした。そのため、オープンな応援席を一から作る必要がありました。
それ以前のコロナ禍では外野で応援していました。3mほどの大きなボードを掲げて選手名を書いて応援していましたが、「私たちがやる意義とは何だろう」と思っていました。だからコロナ後、「人がやるからこそ出せる応援席」を蘇らせないといけないと思いました。そして最後は、神宮大会で優勝という最高の結果となりました。

コロナ禍では選手名の書かれたボードを掲げて応援していた=應援指導部提供

コロナ後には満員の応援席を作り上げた
もう一つは、「体育会加盟」です。ただ、世間的にはあんまり違和感はないみたいで。むしろ「体育会じゃなかったの?」と言われました。慶應の應援指導部は、慶早戦で人が集まると歌が揃わないからそこを指揮しようというきっかけで生まれています。加えて応援席を作るために必要な誘導と会場整理も行うこととなりました。「指揮」と「誘導整理」が元祖のため、体育会加盟への違和感もありました。
しかしコロナ禍以降、体育会の集客が落ちていき、応援も知られていない状況になってしまいました。さらに今は他のエンタテインメントも充実しており、応援に来ることがすべてではない時代です。脱却するために何か踏み込んでやらないと衰退する一方だと思いました。そこで、体育会とより強固なタッグを組むべきだと考えるようになり、体育会加盟を実現させました。
――ケイスポではどうですか。
長沢:取り組んだことは、HPのリニューアル、新規部活の開拓、他団体との協力の3つです。
HPは10年以上リニューアルされていない状況で、変えたいと思っていました。そこで、慶應普通部時代の友人に聞いてみたら手伝ってくれると言ってくれました。その時は私は2年だったため、当時の編集長(3年)に「データ破損などのリスクもありますがやるべきだと思います」と相談したところ「いいよ、任せるよ。僕が責任取るよ」と言ってくれたのが大きかったですね。
リニューアルする際には、新しくサイトを作るという案もありました。しかし、現在「慶應 スポーツ」でGoogle検索すると、ケイスポがトップで表示されます。これは非常に価値のあることだと思います。サイトを作り直すと当然しばらくは検索上位には出てこなくなりますし、過去に何千と積み重ねてきた記事、いわばケイスポの「財産」を別サイトに飛ばないと読み込めないのも勿体無いと思いました。そのため、友人の力を借りつつ自分でも勉強をして試行錯誤しながら、リンクを変えない形でのリニューアルを模索しました。現在もまだまだ改善の余地はありますが、以前に比べて少しはUI・UXが向上したのではないかと思います。
新規部活の開拓は、コロナ禍で人数が減ってしまって本当に限られた部しか取り上げられていなかったところを、もっと広げていこうというものです。一つ上の代から「突撃!慶應体育会」という企画を引き継ぎ、これまで取材できていなかった部も取り上げるようになりました(まだまだ不十分ですが…)。その流れは現在も「What is ○○部?」という形で引き継がれているのではないかと思います。
他団体との協力では、應援指導部や朝日新聞社が運営している「4years.」への寄稿、早稲田スポーツ新聞会と協力して行う早慶対談などで、関係する団体との関係性を深めていきました。
――應援指導部とケイスポが関係性を深めたのはどのような背景があったのでしょうか。
長沢:両団体とも、やり方は違いますが体育会を支えていく団体として協力できるのではないかと薄々思っている中で、当時の應援指導部の三将からケイスポで取り上げてほしいという依頼がありました。その後應援指導部の活動を取り上げていく中で、「同じ体育会を支える組織だ」とその方が言ってくれて、共通認識を持つことができました。協力することでシナジーを生み出せるのではないかと考えました。

対談中、土橋に話を振る長沢
土橋:應援指導部としても不祥事とコロナで組織がブラックボックスになっていました。応援席に来た時に不信感があったらお客様と良い応援を作ることができません。そこでこちらからも積極的に発信していきたいという背景がありました。
その後ケイスポと関係を構築していくにつれ、体育会を支援する側がどう周囲を巻き込んでいくかという話をするようになりました。それぞれが持っているのは、応援をするという手段、新聞・WEBメディアという手段にすぎません。自分たちだけで抱えるのではなく、つなげていくからこそできることが多くあると思いました。
――どちらも結果が数値で見えない組織だと思います。活動の原動力ややりがいについて教えてください。
長沢:他大学の記事や新聞を見て、「この案浮かばなかったな」というのを目の当たりすると、やはり悔しいですね。それを原動力に、次はもっとケイスポでしかできない企画やアイデアを取り入れようと思いながら活動していました。
土橋:スコアは出ませんが、自分たちが作り上げた応援に対する満足感や反省、他大学の取り組みを見て「そのアイデアは自分たちの眼中になかったな」という悔しさが原動力になりました。
また、本当に応援の力で動かせたなと思える瞬間はやはりうれしいですね。そういう時は、普段は同級生だからお世辞は言わない選手たちもインタビューで「応援が力になりました」と言ってくれます。
各大学の應援指導部/応援部ができることは、それぞれのホーム側を温かくして応援できる空間をつくることです。答えはありませんが、それを実現するために部員も編曲、声掛けやワードチョイスからマニアックなところまで、アイデアを世の中のあらゆるところから自分のアンテナで拾ってきます。そして大事なのは、「渦を作る」こと。拾ってきたアイデアを慶應のやり方や課題に合わせて生み出す。部員一人一人がその起点になることです。自分たちが導入した何かでお客様が増えたり声を出してもらえた時はやりがいを感じます。

「渦」を作ることができるか、今年度の枝廣代表にも期待がかかる
長沢:ケイスポだと読んでくれる学生が増えた時はやりがいを感じますね。
土橋:ケイスポを読んだ後に見るスポーツは楽しいなと思います。ケイスポの記事を見た人同士で同じ情報を持っているので、応援席でも「あの選手こういうこと言っていたよね」などと会話が生まれ、劣勢でも応援したいと思えるようになったりします。他にも、今まで野球の応援しか行ったことがない人がたまたまケイスポの記事を読んで別のスポーツの応援に行き、そこで應援指導部が盛り上げるなど、タッグを組むことでシナジーを発揮しているのではないかと思っています。
長沢:それが理想の形だよね。
土橋:お客様からしたら見えないものを応援しているような感じになってしまう。そんな中でケイスポの記事があったり、應援指導部の部員が選手のエピソードを交えて声掛けしたりすると盛り上がるよね。
長沢:それが大学スポーツの良さでもあると思う。
土橋:選手とお客様をつなげられるのは應援指導部やケイスポができることだよね。
――4年間体育会に関わってきた中で感じる、慶應義塾体育会の良さとは何でしょうか。
土橋:「若き血」の力はすごいなと思います。体育会各部で活動場所も異なり組織としても独立していますが、自分たちの練習がOFFの日には他の部の応援に行く人が多いです。「若き血」一つあるだけで、体育会同士でつながることができます。一般的に学生スポーツの観客は保護者が多くなるのですが、慶應はそのスポーツをあまり知らない友人も見に来たりします。OB・OGになっても同じで、出身の部以外の慶早戦に行くこともあるのではないかと思います。
また実際に應援指導部が体育会に入った後は、部活としての立場がフェアだと感じました。みんなが真摯に向き合って、他のスポーツをリスペクトしています。それが部を超えた連携を可能にしていると思います。

野球の早慶戦で応援する蹴球部員
長沢:スポーツ推薦がないことは一つ良さでもあると思います。印象的だったのは競走部の長距離の選手です。駅伝の超強豪高校出身の選手ですが、取材した時に「スポーツ推薦がない環境で自分の手で箱根駅伝に出たい」と言っていました。
スポーツでの経験を武器に入学した人はいてもスポーツの実力だけで入学した学生はいません。だからこそ慶應では体育会に対して疎外感がなく、同じ土俵にいる仲間という意識があり、応援したくなるのではないかと思います。
――後輩へLast Messageをお願いします。
長沢:ケイスポは、組織的には体育会から完全に独立して存在するメディアとして、読者や体育会のために、その時にできるベストを尽くしていく組織だと思います。ベストを尽くすために取り組む現在の挑戦が、将来の伝統になります。これまでの伝統を大切にしつつも、新しい挑戦や改革を進めてほしいなと思います。
土橋:上手くいっている時はその人自身のおかげじゃないことも多いです。部が勝ってくれた、先輩のおかげ、昔から来てくれているお客様が多いなど…。そこで満足してしまうと、結局何も生み出せずに終わってしまいます。謙虚さを持ち視野を広げ、上手くいっている要素を踏まえて次のアクションを起こしていかないといけません。
これまでは応援の手段を復活させたにすぎません。未来の慶應スポーツと応援席像を高く掲げ、今ないものを生み出し、自分たちだけでなく塾生・塾員・慶應スポーツファンの皆さんが誇れる應援指導部になってほしいと思います。
(取材:東九龍)