慶大の体育会を深掘りしていく連載企画、「What is ○○部?」。21個目の体育会は馬術部!!創部105年を迎えた歴史ある慶應馬術部。馬術は動物と共に競技をするという他の競技にはない大きな特性を持っている。今回ケイスポは、馬術部の練習場である日吉馬場に向かい練習の様子を取材した。前編では魅力の詰まった慶應馬術部と日吉馬場の紹介、後編では主将の藤川奈緒(法4・慶應女子)に馬術の魅力や慶應馬術部の特色などについて伺ったインタビューをお届けする。
日吉駅から徒歩約9分。閑静な住宅街を抜けると、突如として馬場が現れる。ここが慶應義塾体育会馬術部の拠点、「日吉馬場」だ。18頭の馬と共に、部員達は日々鍛錬に励んでいる。
馬術部の朝は早い。活動の第一歩は、自分の担当馬の部屋の掃除と餌の準備から始まる。馬たちが健康に過ごせるよう、厩舎(きゅうしゃ)の環境を整えることは基本だという。

朝早くから担当馬の健康に気を配る
練習の流れは、朝7時から日吉の授業開始15分前まで。週に一度は当番制で、授業後にも作業がある。時には朝5時や夜9時に餌やりをすることもあるという。動物を扱う競技だからこそ、部員たちは乗馬以外の時間でも馬がストレスを感じないよう細心の注意を払っている。平日の練習は、各自が自分と馬の課題を考え、それを克服するメニューを組む。単に乗るだけではなく、馬と一体になるための技術を磨くことが目的だ。一方、土日はコーチの指導のもと、実戦的なトレーニングが行われる。

1つ1つの動きを慎重に確かめる様子が印象的だった
年間のスケジュールは、6月の関東学生馬術三大大会、11月の全日本学生馬術大会、そして12月に行われる早慶戦が主な公式戦となる。この3つの大会で結果を残すため、部員たちは日々練習に励んでいる。大会では、動物虐待に繋がらないよう厳しいチェックが入る。競技は3日間にわたることもあり、競技後の夜遅くまで馬のケアに追われることもあるという。公式戦となると、競技中だけでなく、その後のケアも重要な仕事となる。
厩舎の通路には、それぞれの馬の体調や状態を細かく記したホワイトボードが置かれている。馬の健康管理は欠かせず、運動量と餌の量を考慮し、適切な食事を与える。運動量が少ない馬には餌を控えめにし、逆に元気がない馬には多めにするなど、細かな調整が必要だ。穀物、小麦、大豆といった栄養バランスの取れた食事が、馬の体調を維持する鍵となる。担当外の馬の状況も部員全員で共有し、慎重に対応している。

全18頭の状態が書かれたホワイトボードから徹底ぶりが伺える
慶應馬術部には、東京オリンピックにも出場した「キャレ」など、実力のある馬が多数在籍
している。馬は寄贈されることもあれば、競走馬を引き取りに競馬場まで行くこともある。元競走馬が新たな舞台で活躍する姿は、競技の魅力をさらに引き立てる。
馬術は、男女の筋力差や体力差が競技結果に影響しにくいスポーツの一つだ。そのため、男女問わず平等に競い合える点も大きな魅力となっている。また、部員の約半数は大学から馬術を始めた初心者で、経験者と初心者が互いに学び合いながら成長していく環境が慶應馬術部には整っている。

東京オリンピックに出場した「キャレ」
慶應馬術部の活動は、ただ競技に出場するだけではない。日々の世話やトレーニングを通じて、馬と心を通わせる時間こそが、部員たちにとって何よりの財産となるのだ。
(取材、記事:鈴木啓護)