第83回を迎えた早慶バスケットボール定期戦。今年も「バスケの聖地」代々木第二体育館には多くの観客が詰めかけ、熱気に包まれた。観客席から降り注ぐ歓声に後押しされ伝統の一戦に挑んだ慶大は、序盤から先手を許す苦しい展開ながら、学年の垣根を越えて奮闘し、幾度も追撃を見せた。特に最終Qには4年生全員がコートに立ち、最後まで戦い抜いたものの、最終的には67-89で早大に敗北。主将・廣政遼馬(経4・福大大濠)は「勝利の景色を後輩に見せたかった」と語り、悔しさを胸に秋のリーグ戦への決意がにじむ一戦となった。
2025/5/31(土) @国立代々木競技場第二体育館 | |||||
第83回 早慶バスケットボール定期戦 | |||||
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
慶大 | 17 | 16 | 15 | 19 | 67 |
早大 | 22 | 28 | 23 | 16 | 89 |
◆慶大スターティングメンバー◆ | |||||
SF | #4 廣政遼馬(経4・福大大濠) | ||||
PF | #9 久保田和空(政2・慶應) | ||||
SF | #14 服部怜恩(商2・大垣北) | ||||
SG | #15 栁本晴暖(理2・延岡) | ||||
SF | #16 桑原佑尚(総1・濟々黌) |
第1Q、先制点は早大。慶大は廣政遼馬(経4・福大大濠)のインサイドやカットプレーなどで応戦し、シュートを積極的に狙うも、シュートがリングに嫌われ、得点が伸び悩む時間が続く。そこで、残り6分台に安田彪吾(経4・岐阜)と中田大智(理2・都立小山台)が投入される。オフェンスに変化が生まれ、服部怜恩(商2・大垣北)が豪快なペネトレイトで今試合初得点。その後は安田の3ポイントシュートが決まり、会場が一気に沸き立つ。その後も安田の連続得点で慶大の流れを呼び込んでいき、さらに中田の3ポイントシュートも決まる。その後は桑原佑尚(総1・済々黌)がリバウンドをとってゴールを決め、一時2点差にまで詰め寄った。残り0.3秒には廣政がフリースローを2本沈める粘りも見せたが、序盤の停滞が響き、慶大は17ー22と5点のビハインドで第1Qを終えた。

攻撃の火蓋を切った服部怜恩(商2・大垣北)
第1Q終盤に追い上げを見せた慶大は、その勢いのまま流れをつかみたい第2Qに突入。しかし、先に得点したのは早大だった。出鼻をくじかれる形となったが、その直後、桑原がバスケットカウントを獲得しすぐさま反撃に転じる。さらに柳本晴暖(理2・延岡)がエンドライン付近からのレイアップを沈め、以降は互いに点を取り合う展開に。中盤には廣政がディープスリーを決めるなど、慶大も着実に得点を重ねていく。しかし終盤に差し掛かると、慶大のパスミスを突かれる場面が目立ち、早大に7連続得点を許してしまうなど、リードを広げられる苦しい展開に。それでも残り2分には久保田和空(政2・慶應)がポストプレーから得点し、慶大もついに30点台に乗る。しかし、早大にバスケットカウントを奪われ、ダンクを叩き込まれるなど、個の力で突き放されるシーンが増えていった。それでも諦めず、残り50秒には柳本がオープンスリーを決めるが、第2Q終了時点でスコアは33ー50。早大に17点のリードを許して前半を折り返した。

積極果敢なプレーでチームを牽引した廣政遼馬(経4・福大大濠)
ハーフタイム明け、会場の応援にはより一層力が入る。巻き返しを見せたい慶大は、開始約1分、相手選手にフィジカルで戦い隙を生んだ久保田がパスを受け、そのままジャンプシュート。その後の連続得点は叶わずとも、約1分間ディフェンスで早大の得点の機会を防いだ粘り強さが功を奏し、残り7分から、桑原・柳本・桑原と連続得点。43ー54と追い上げを見せる。その後は早大に複数得点を許してしまうが、相手のノールックパスからのシュートを華麗に防ぐなど、多彩なディフェンスで早大に食らいつく。残り3分には、ディフェンスを交わしながらパスを受けた久保田が体格を活かした広い歩幅でレイアップシュートを決める。さらに約1分後、またも久保田がパスカットを見せ、そこからゴール下に戻りパスを受けると、相手選手を軸とするように回転しながらシュート。久保田の連続的な躍動により48ー65とする。残り時間は早大相手に攻撃時間いっぱいを使わせるプレッシャーディフェンスが目立った。しかし、思うような慶大優位の攻撃展開に繋げられず、48−73と点差が広がったクォーターとなり、悔しくも残り1Qに望みをかけた。

攻守ともに躍動した久保田和空(政2・慶應)
早慶戦のラストを飾る最終第4Qは、48ー73の25点ビハインドからスタート。開始わずか10秒で安田が3ポイントシュートを沈め、51ー73。さらに、安田は相手選手をうまく剥がして2本の3ポイントシュートを決め、慶大を勢いづける。このまま一気に点差を縮めたい慶大は、栁本を軸に相手ゴールへと迫るが、59ー78から得点が伸び悩む。そこで残り4分44秒、慶大のタイムアウト。試合が再開すると、1年生にして早慶戦出場を果たしたチーム1の長身・桑原(193㌢)がゴール下で粘りを見せ、立て続けに得点。65ー87とする。しかし残り1分半でパスミスが生じると、慶大は最後のタイムアウトを使い切る。タイムアウト明けには、1年生の桑原のほか、最後の早慶戦となる廣政、椎橋遼生(政4・國學院久我山)、安田、島本海丸(総4・正智深谷)ら4年生全員がコート上へ。試合終了が迫る中、相手のシュートミスから廣政がロングリバウンドを拾うと、コート中央を駆け上がる島本へパス。そのまま島本がシュートを沈めると、4年生同士で繋いだシュートに代々木第二体育館は歓喜で包まれる。その後も、4年生全員で果敢にゴールへ迫るが、無情にも試合終了のブザー。第83回早慶バスケットボール定期戦は、67ー89で早大に軍配が上がった。悔しさを滲ませる慶大選手たちだが、試合終了後には早大選手と健闘を称え合った。

3ポイントシュートで会場を沸かせた安田彪吾(経4・岐阜)
▼以下、選手インタビュー
主将・廣政遼馬選手(経4・福大大濠)

フリースロー前の廣政遼馬(経4・福大大濠)
ーー今日の試合全体を振り返って
入りが受け身になってしまい、10ー0のランを許してしまったのですが、そこから自分たちが今まで練習してきたことをしっかり出そうという話になりました。1クォーターの終わりは流れを掴むことができましたが、その後はそれを徹底しきれなくなった時に点差が開いたので、40分間を通して徹底する必要があると思いました。
ーー最後の早慶戦でしたがどのような思いで臨みましたか
「勝利」という目標一心でやっていたし、自分が入部してから一度も勝ったことがなかったので、その思いを自分だけでなくチーム全体で意識し、勝利の景色を後輩にも見せてあげたいという思いがありました。ただ、なかなか自分がうまくまとめきれず、最後こうした点差になったのかなという思いがあるので、悔しいです。
ーーどのような展開を想定し、どんな作戦を用意していましたか
慶應はハードなディフェンスが特徴なので、40分間のハードなディフェンスを通して点差を競ったまま終盤に持ち込み、最後は粘り勝つという思いでいました。
ーー実際戦ってみてどのように感じましたか
早稲田は個々の能力が揃っているチームなので、その早稲田のスタンダードに自分たちの練習がアジャストできていなかったのかなと感じています。逆に今日この悔しさを経験したからこそ、秋シーズンではこの強度を忘れずに取り組むことで目標達成に近づけるのではないかと思います。
ーーリーグ戦に向けてどう調整されますか
春シーズンは早稲田という相手を意識して、主語が何もかも「早稲田」になっていました。リーグ戦は長丁場で対戦相手も変わっていき、「誰が相手か」ではなく「自分たちがどうあるか」になっていくので、今日の試合を踏まえて早稲田を基準に捉えた練習を継続できればよりチーム力を高めていけると感じています。秋に向けて、そこを意識して取り組んでいきたいです。
安田彪吾選手(経4・岐阜)

試合後インタビューで涙を見せた安田彪吾(経4・岐阜)
ーー最後の早慶戦、熱い思いを持って挑まれたと思います。今振り返ってみて
本当に一瞬だったな、と。極力「大舞台だ」とイメージせずに試合に入りたいと思っていました。
ーー個人のプレーを振り返って
3ポイントシュートが自分の武器だと思っていたので、そこをうまく発揮できて良かったです。
ーーどこに早大との差を感じましたか
スポーツ推薦で入ってきた選手たちで、全体的に身体能力などが僕らより上だとすごく感じました。
ーー逆に通用したと感じた点は
ずっとコーチが仰っている「当たり前のことを当たり前にやる」という部分です。チームルールをずっと遂行したことで、(この日も早大相手に)途中で競っていた部分もありました。自分たちがやるべきことを常にやっていけば、強いチームでも穴があったりするので、そういうところを突けると思っていました。ただやはり40分間やるべきことをできない時間もあったというところで、負けてしまいました。
ーーリーグ戦への意気込み
春が早慶戦優勝・秋がリーグ戦2部昇格という目標で1年生の時から毎年やってきましたが、まだ一度も叶っていません。毎年4年生が口にすることですが、最後こそは目標達成するという強い気持ちでやっていきたいです。
柳本晴暖選手(理2・延岡)

力強くレイアップへ持ち込む柳本晴暖(理2・延岡)
ーー今回の試合全体を振り返って
ディフェンスの中心になることを意識していたのですが、それをブロックや前からのプレッシャーで体現できたのではないかと思います。チームとしては「走り負けない」というテーマがありましたが、後半になるにつれて綻びが生じてしまったので、詰めの甘さが課題として残っています。
ーーこれまでの取材で廣政選手が「早慶戦の注目選手は柳本晴暖。勢いのあるディフェンスとハートを見てほしい」と何度も仰っていました。個人のプレーとしてはいかがでしたか
実はそれを知ったのが2日前で、非常に気が引き締まっていました。試合開始直後から早大の岩屋頼選手(スポ4・洛南)にファンブルを誘発させたプレーや、その流れでブロックにもいけたので、今日のディフェンスは100点だったと思います。
ーーどこに早大との差を感じましたか
走り続ける体力、オフェンスの動きのシステム化、ディフェンスのローテーションなど、細かい部分です。今日は安田選手のシュートなどオフェンスでの良さもありましたが、ディフェンス面で崩されてしまったところで大きな差を感じました。
ーー逆に通用したと感じた点は
春の六大学リーグではスイッチに苦しんでいたのですが、今回はボールを早く回してドライブコースを作ることで、何度もレイアップに持ち込めました。そこはしっかり通用したと思います。
ーーリーグ戦に向けてどう調整されますか
自分は「ディフェンスの選手」として、相手チームを含めた周囲の人に『15番の柳本が1番ディフェンスが上手かった』『1番迫力があった』と言われるようなディフェンスを目指します。また、ガードとして、ゲームコントロールの部分も磨いていきたいです。
桑原佑尚選手(総1・済々黌)

1年生にして大活躍の桑原佑尚(総1・済々黌)
ーー今日の試合全体を振り返って
今日の試合は初めての早慶戦ということで緊張や不安、期待を抱えての挑戦でしたが、ディフェンス、リバウンドといった役割を全うすることを終始意識して臨んでいました。しかし、やはりうまくいかないところもあって、結果的に自分も含めチームの力不足で負けてしまったことは本当に悔しい気持ちでいっぱいですし、これからそれをバネにチームとしてやっていこうと思います。
ーー初めての早慶戦は、実際に想像していた舞台とは違いましたか?
話は聞いていたのですが、想像した以上に観客の歓声は凄かったですし、コートの中で声が通らないといったこともあり、色々戸惑いもありながらのゲームだったと思います。
ーーリバウンドを押し込むシュートなどセカンドチャンスを活かしたプレーが印象的でしたが、試合中は何を意識していましたか?
前半にスリーポイントがなかなか入らなくて、そういった時にコンスタントに自分には何が出来るかというのを考えたところ、やはりリバウンド、ルーズボールだったので、そこは一貫してやり続けました。その結果、そういったプレーに繋がったのかなと思います。
ーーリーグ戦に向けてどう調整されますか
秋に向けては、2部昇格というチームの目標をぶらさずに、シューティングなど自分にできることをオフ期間から徹底してやっていきたいです。

試合終了後には早大選手と健闘を称え合う
(取材:長掛真依、本橋未奈望、大泉洋渡、島森沙奈美、野村康介、新妻千里、土屋乃々佳)