ついにこの日開幕の東京六大学野球秋季リーグ戦。2季連続5位という悔しい結果に終わった慶大野球部が目指すのは、2年ぶりの「日本一」奪還。また東京六大学野球連盟結成100周年という節目の年に、宿敵・ワセダの4連覇は絶対に阻みたい。今季も堀井哲也監督に、春季リーグ戦の総括や今夏の取り組み、そして開幕カードで戦う法大の印象や秋季の展望を語っていただきました。(取材は8月27日に対面で実施しました)
――まず春季を振り返って、率直にどのようなシーズンだったと感じていますか。
順位は5位なので、非常に悔しいですし残念でしたけど、内容的には勝ち点2でなおかつその1点差負けという接戦を落としているというところで、秋に向けて何とかなるという部分もあるんじゃないかなという振り返りはしました。率直な感想といえば、残念だし悔しいの一言ですけど、逆にそれをどう秋につなげるかという視点で見ると、色んな糸口が見えてきたシーズンでもあったかなと思います。
――リーグ戦の中で印象に残った試合や場面があれば教えていただきたいです。
これはいくつもあるんですけど、立教さんから勝ち点を取った後の明治2回戦かな。リードしていた展開を追いつかれて。で12回表に2点取って取り返されたという結果としては引き分けだったんですけれども、勝つチャンスもあったしよく追いついたともいえるし、勝ちきれなかったともいえるような試合だったんですね。そういう意味では1戦目も9回2死までリードしていたけど、榊原くん(榊原七斗=情コミュ3・報徳学園)、田上くん(田上夏衣=商2・広陵)に打たれて。明治戦を振り返っても1回戦、2回戦がそんなゲームだったのでそれが実力なんですけど、野球っていうのは1点、2点が、あるいは終盤の攻防が物凄くチーム力に現れるスポーツなので、弱いと言えば弱いんですけど、なんとか春季から秋季に向け、できることもあるんじゃないかと思わせる内容であったと。それから法政の3回戦、4回戦、そして早稲田の2回戦は悔しさと「秋に向けてこういうことをやるぞ」という材料が詰まったゲームが何試合かありました。
――リーグ戦を戦う中で得られた収穫と課題は何でしたか。
収穫は1、2番ですかね。今津(=今津慶介、総3・旭川東)と小原(=小原大和、環3・花巻東)の1、2番が非常にシーズン通して安定したバッティングをしてくれました。彼らは初めてレギュラーを取ったメンバーで、レギュラーを取ったシーズンにこういう結果が出たっていうのは非常に色んな選手に対して励みになると思いますし、これが1つの大きな成果だと思います。一方で課題という面でいうと、これは数字ではっきりと物語っているんですけど、三振数の多さとエラーですかね。やっぱりこの2つが接戦をモノに出来なかった原因じゃないかなと思っています。
――春季にも開幕前に取材させていただいたとき、投打のキーマンは「外丸選手と今泉選手」とおっしゃっていましたが、春季の両選手の活躍についてはいかがですか。
外丸は良かったり悪かったりっていうのが続いて、今泉も立教戦や法政戦でよく打ってくれた試合もある。でもキーマンとしての役割を果たしたかというと、2人とも頑張ったけど十分ではなかったかなと言えますね。
――春季リーグ戦が終わって約3か月が経過しようとしていますがオープン戦や北海道キャンプを通してチームとして取り組んできたテーマはなんでしょうか。
ピッチャーの底上げ、それから守備陣のディフェンスの強さを一番の柱としてやってきましたんで、そこはある程度一定の成果は出つつあると思っています。
――春季正捕手の渡辺憩選手をサードにコンバート。この起用に至った経緯は
そうですね、非常にいい選手なんですけれどもキャッチャーとして正直壁に当たった部分もあったんですね。それで春季最後の早稲田2回戦で吉開に先発マスクを被らせて、初スタメンだったんですけれども非常に良いパフォーマンスをしてくれたと。秋季はこの2人の競争になるのかなと思ったところに、今度加藤(=加藤右悟、環1・慶應)が出てきたと。そうするとこの3人で争った時に、加藤と渡辺憩の2人のバッティングがラインアップに2人とも生かされない可能性がある。それはチームとして凄くもったいないと思ったので、キャッチャーの順番を決めた時に吉開と加藤をワンツーで争わせて、渡辺憩はどこか他のポジションにということを考えたんですね。そこでサードが最初から意外と上手くいったので、春季が終わってからすぐずっとサードで試合も出て、練習でも鍛え上げてということを今やっています。
――渡辺憩選手のシーズン中の捕手再転向は
怪我人が続出したり、私の見る目が狂っていたり、そういうよっぽどなことがない限りは多分このままで行くと思います。
――今夏のオープン戦では今津選手も内外野問わず守っているが、シーズン中も複数ポジションでの起用を
そうですね。彼は攻撃面では外せないので、他の選手との組み合わせを考えたときにまあ両方やってもらうというのが今の私の考え方です。ファーストかセンター。だから2年前の吉川(=吉川海斗、令6法卒・現日立製作所)と同じですね。
――監督から見てこの夏で特に成長を感じた選手はいらっしゃいますか。
ピッチャーでいうと水野(=水野敬太、経2・札幌南)で、野手でいうと林(=林純司、環2・報徳学園)かな。水野は先発の一角を争うくらいの感じになってきましたね。で、林はセカンドからショートにコンバートして非常に守備が安定してきたのと、攻撃力もしぶとい、持ち味が出せるようなバッターになってきて。攻守とも林は充実していますね。水野はもうさっき言った通り、先発の一角、外丸、渡辺(渡辺和大、商3・高松商業)に並ぶようなピッチャーになりつつあります。
――秋季リーグ戦開幕まで残り約2週間(取材は8月27日に実施)ですが、現在のチームの完成度は
9割。残りの1割はコンディションを上げることにつきますね。かなり今ハードな日程、練習試合を重ねていますので、本当に疲労のピークだというのは承知の上で。ただ怪我をさせてはいけないというギリギリのところで今チームを上げて取り組んでいますので、ここからは本当にコンディションをどれだけ上げていくかというところだと思っています。
――秋季リーグ戦の開幕カードが2023年春季以来の法政戦。ここ2季は勝ち星を逃していますが、改めて法大の投打の特徴・強みなど印象は
まず投打に分けると攻撃力は六大学トップクラスだと思っています。ピッチャーでいうと枚数がいますので、確固たるエースが野崎くん(=野崎慎裕、営4・県岐阜商)なのか山床くん(=山床志郎、文2・高鍋)なのか、早大・伊藤樹(スポ4・仙台育英)や明大・毛利(=毛利海大、情コミュ4・福岡大大濠)のような存在はまだいないですけど。でもしっかり投げられるピッチャーの数が何人もいますから、そこの物量戦で春はやられたと思っていますので。そういう意味で投打ともに強力で、充実しているチームだと思っています。
――その中でも具体的に法大で警戒している選手は
バッターはやっぱり松下(=松下歩叶、営4・桐蔭学園)。あと境(=境亮陽、営1・大阪桐蔭)です。1番の境、4番の松下、この2人が軸ですよね。それからピッチャーは野崎くんでしょうね。4年生で精神的にも困った時には先発にもリリーフにも両方絡んでくると思いますので。
――その上で慶大として意識したい戦い方やポイントはどこでしょうか。
そうですね、我々はもう相手がどこということよりも、自分たちの作り上げてきたチームの野球をやることに尽きると思っていますので、しっかりディフェンスを固めて攻撃につなげていくというシンプルな野球をやり続けていきたいと思います。
――まだ流動的かとは思いますが、現時点で考えておられる開幕の野手布陣は
1(中)今津
2(左)小原
3(三)渡辺憩
4(右)中塚遥翔(環2・智辯和歌山)
5(捕)加藤
6(二)吉野太陽(法3・慶應)
7(一)今泉
8(遊)林純
ショートとかセンターラインはある程度しっかり守らないといけないし、両翼は守りも大事ですけど、やっぱり打てるメンバーをそろえないといけないので。そういうメンバーの上で、明日開幕だったらこのメンバーでいくと思います。先発は外丸、渡辺和に水野が食い込む形で、リリーフも今日投げた田上(=田上遼平、商3・慶應湘南藤沢)、松井(=松井喜一、経2・慶應)、鷹尾(=鷹尾充千雄、総1・慶應)とか法政の物量戦ではないけど、ピッチャーの枚数も揃ってきました。
――秋季の投打のキーマン
ピッチャーは渡辺和、野手は中塚かな。渡辺和にはエースの外丸に並ぶというか、ある意味外丸を抜くくらいのエースの活躍をしてもらいたいと。それから中塚にはやっぱり4番としてこのシーズンはフルに。過去の廣瀬(=廣瀬隆太、令6商卒・現福岡ソフトバンクホークス)、萩尾(=萩尾正也、令5環卒・現読売ジャイアンツ)、正木(=正木智也、令4政卒・現福岡ソフトバンクホークス)とかに並ぶ活躍をしてほしいと。中塚は(4番で)固定でしょうね。
――最後に秋季リーグ戦の意気込みであったり、ケイスポの読者に向け一言お願いします!
意気込みとしては「天皇杯」の1点に尽きます。またケイスポの読者の皆様には、本当に悔しい結果、シーズンにも関わらず応援してくださる方が読者だと思いますので、秋には皆様の期待に応えたいその一心です。
(取材、記事:加藤由衣)