【庭球(男子)】模索し、仲間と戦い抜いた日々 学んだ「紳士のスポーツ」/4年生卒業企画「光るとき」 No.44・菅谷優作

庭球男子

25年度に卒業を迎える4年生を特集する特別企画「光るとき」。第44回となる今回は、1年時から大きな存在感で活躍し続けた菅谷優作(法4・慶應)。その活躍の裏にある葛藤と努力。引退した今だからこそ語れるその思いに迫る。

 

幼い頃からテニスに打ち込んできた菅谷。幼少期から多彩で変化のあるプレースタイルを武器としており、コーチからプレーを褒められることが大きなモチベーションだったという。相手の意表を突くショットや変化のある展開を得意とし、一つ一つのプレーで観ている人を楽しませるようなテニスをしていた。しかし全国大会では思うような結果を残すことができず、高校に進学してからは勝利につながる再現性の高いプレーを意識するようになった。安定したラリーやミスの少ないプレーを重視するようになった一方で、自分の個性が薄れ、周囲の選手との差別化が難しくなっていたと振り返る。大学に進学してからは、基礎を土台にしながら、改めて多彩さや攻撃的なプレーを取り戻すことを意識するようになった。これまで積み上げてきた基礎に加え、自分の強みである変化や攻撃性を組み合わせることで、自分らしいプレースタイルを再び模索していったという。

「大学で体育会以外に入る選択肢はなかった」と語る菅谷。しかし入部当初の1年時は、団体戦に出場する機会を得ながらも思うように勝てない時期が続いた。出場してもチームの勝利に貢献できない状況に悩み、自信を失うことも多かったという。周囲には実力のある先輩がいる中で、自分が試合に出場しても結果を残せないことに葛藤を感じることもあったと振り返る。

 その中で菅谷は、試合に対する向き合い方を見直すようになった。相手の得意・不得意を分析し、自分の強みをどこで発揮するかを考えるようになったという。試合前には相手の映像を確認し、弱点を見極めた上で試合に臨む準備を徹底した。試合では自分がやるべきプレーに集中することを意識し、状況に応じた戦い方を選択するようになった。その積み重ねによって、次第に試合で勝てるようになっていったと語る。

2年時には、男子団体戦で46年ぶりとなる日本一を達成した。日本一を決める試合で自身が勝利を収めたことは、4年間の中でも特に印象に残る経験だったという。試合後、OBやOG、部員たちが涙を流して喜ぶ姿を見て、チームの勝利に貢献できたことを実感したと振り返る。普段は感情を表に出さない人たちまでが喜んでいる姿を見たことで、自分がチームの中で役割を果たせたことを強く感じたという。

 この栄光の背景には、周囲の厚い支えがあった。家族は幼い頃からテニスに取り組む自分を支え続け、試合の結果をともに喜び、悔しがってくれた。「両親が同じ熱量でテニスに向き合ってくれたことは、振り返ってみて本当に心強かった」。また、OBやOGをはじめとする多くの関係者が、日本一を目指す環境を整えてくれていたことへの感謝も忘れない。整ったコートや設備の中で、目標に向かって全力で努力できる環境は、決して当たり前のものではないのだ。

4年時には主将を務め、チームをまとめる立場となった菅谷。部員それぞれが異なる考えを持つ中で、どのように同じ目標に向かわせるかを考え続ける日々。自分が正しいと思って進めてきたことでも、結果が伴わなければ「別の選択肢があったのではないか」と思い悩むこともあった。

 4年間を振り返る中で、「もっとチーム内で多くの意見を引き出せたのではないか」という後悔もあると菅谷は話す。テニスの団体戦は出場できるメンバーが限られるため、コートに立つ選手だけでなく、サポートに回る部員の存在や応援の力がチーム全体の雰囲気に大きく影響する。「縦のつながりを強め、より多くの意見を取り入れることができれば、さらに良いチームづくりができたのではないか」。結果が出ない状況でも判断を重ねながらチームを導いた経験は、彼に組織のために動く難しさと大切さを教えた。

それでも、先輩・後輩・同期と長い時間をともに過ごし、一つの目標に向かって泥臭く努力した経験は、彼にとってかけがえのないものだ。

テニスは紳士のスポーツである。ネットを挟んで相手と1対1で向き合う孤独な競技だからこそ、相手への敬意や周囲への感謝、そしてコートに立つ者としての誠実さが問われる。彼が大学生活で得たのは、技術や勝利の喜びだけでなく、他者を尊重し、仲間と共に支え合う強さだった。練習や試合だけでなく、日常の時間を共有した仲間との関係は、菅谷にとってその人生を象徴するものなのだ。

個性と勝利の間で葛藤し、主将として組織のあり方に悩み、それでも前を向いてラケットを振り続けた日々。彼が「紳士のスポーツ」を通して築き上げた仲間との絆と誇りは、これからも色褪せることなく輝き続ける。

(取材・記事:岡澤侑祐)

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