【ラグビー】劇的勝利を収めるも、ディフェンスの甘さが露呈/拓大戦

試合後、両校の選手が健闘を称え合った

今春から始まる公式戦、関東大学春季大会。その記念すべき開幕戦に慶大の新チームがタイガージャージをその身にまとい挑んだ。試合は序盤から拓大がボールをキープし続け、陣取り合戦を制していく。後半に入ると慶大が意地を見せ、粘り強いラグビーでラスト10分から2トライを決め、逆転に成功。31-27で今年度公式戦初戦を白星で飾った。しかし攻守共に課題の残る試合となった。

 

関東大学春季大会B VS拓殖大      

4月28日(日)14:00K.O.@拓殖大八王子G

得点
慶大 チーム 拓大
前半 後半 VS 前半 後半
1 4 T 2 2
0 3 G 2 0
0 0 PG 1 0
0 0 DG 0 0
5 26 小計 17 10
31 合計 27
得点者(慶大のみ)

T=瀧口、新甫拡、渡辺祐、青木、山田

G=高田3

出場選手
ポジション 名前(学部学年、出身高) 交代選手
1.PR 青木 周大(商2・慶應)
2.HO 神谷 哲平(総2・桐蔭学園) →16渡辺 祐吉(経4・慶應)
3.PR 平野 裕馬(環4・国学院久我山) →17山田 亮介(環4・国学院久我山)
4.LO 小山田 潤平(経2・慶應) →18野田 一宇(商2・修猷館)
5.LO 遠藤 洋介(環4・国学院久我山)
6.FL 小田村 淳平(政4・慶應) →19麻生 彬正(商4・慶應)
7.FL 伊藤 豪(総4・福岡)
8.NO8 森川 翼(環2・桐蔭学園)
9.SH 鈴木 雅貴(環4・慶應) →20宮澤 尚人(法2・慶應)
10.SO 木村 亮平(商3・明善)
11.WTB 白子 雄太郎(商2・慶應) →22風間 雄太郎(経4・慶應)
12.CTB 清水 周大(法2・慶應) →21高田 英(経4・慶應志木)
13.CTB 名頭薗 泰輝(商2・慶應)
14.WTB 新甫 拡(法2・慶應)
15.FB 瀧口 晃太郎(文4・桐光学園)
 

タイガージャージを着て臨む公式戦の初戦。試合前から選手たちの意識も高まっていた。だが勝負はいきなり拓大優位の展開に。前半4分、拓大の屈強なFwd陣にセットプレーで競り負け、自陣に簡単に攻め込まれてしまう。相手のハンドリングミスに助けられ難を逃れるが、その後も拓大の勢いは止まらない。敵陣に攻め込めずにいた慶大は14分、キックを絡めやっと敵陣深くに攻め込むと、相手ペナルティからマイボールスクラムの権利を得る。依然セットプレーで劣勢に立たされたものの、マイボールで出たボールをNo.8森川(環2)からSH鈴木雅(環4)へと繋ぎ、最後はFB瀧口(文4)が右サイドに切り込みトライ。5-0と先制する。その後「個々のフィットネスの不足でタックルに入れない」(田中監督)状況が続き、依然自陣での戦いを強いられる。そして25分に素早いパス回しからトライを奪われ逆転されると、32分には慶大のホールディングから悪い流れを作り出しモールトライを奪われてしまう。慶大も何度かチャンスをつくるも、ペナルティを犯し攻めきれない。そして前半終了間際にはPGも決められ5-17でハーフタイムを迎えた。

後半戦、コンバージョンキックで6得点を挙げた高田(経4)

「後半の入り10分をまず意識して、ゲームの流れを取り返そう」(SH宮澤・法2)と意気込み臨んだ後半戦。開始早々、キック、ラン、パスを使った激しい陣地争いが繰り広げられる。その流れを最初に掴み取った拓大は9分、両サイドを広く使ったパスでトライを奪う。一方の慶大もBks陣が調子を上げていき、直後にWTB新甫拡(法2)がトライを決める。しかし拓大Bksも手強い。ランを止められずビッグゲインを許してしまうシーンもあった。だがこのままでは終われない慶大は、相手の要所でのミスから流れを持っていく。「後半はボールを動かすという点では良くなっていた」(PR山田・環4)というように、オフェンスでは長い距離のパスを用いるなど、攻撃の幅を広げていく。28分にもトライを決め、17-27で残り10分、終盤へ。途中出場した選手らの活躍もあり、ここにきて流れに乗る慶大。35分、ここまで不調に陥っていたFwd陣がセットプレーでチャンスを作り出すと、クイックリスタートから最後はPR青木(商2)がトライを決め24-27と追い上げる。さらにロスタイム、拓大のパスミスから敵陣に攻め込むとFwd陣が躍動する。しかし相手Fwdも個々の強さが光り、ゴールライン目前で苦戦を強いられる。なんとしても勝利をつかみたい慶大は決してあきらめずにフェーズを重ねた。最後はPR山田(環4)が抜け出しトライ。途中出場のCTB高田(経4)のゴールも成功し、31-27で劇的な逆転勝利を収めた。

劇的な勝利といえども大きな課題を残した。「最小失点に抑えて最後に競り勝つのが慶應のラグビー」(田中監督)。だからこそ5トライを奪われたディフェンスの甘さは今後の修正ポイントだ。慶大らしいラグビーを体現できない限り、完全な勝利というものは得られないであろう。次戦は京都での同大戦。相手にスピードのあるアタックを仕掛けられることが予想される。さらに磨きをかけたプレーで勝利を目指す。

7ヶ月ぶりの公式戦出場で躍動した瀧口

【ケイスポ的MOM】優れたフィジカルでチャンスをつくりだす FB瀧口

不調のFwd陣が前線で苦しむ中、FB瀧口晃太郎は冷静だった。この日はディフェンスの穴をかいくぐり、チーム一本目となる先制のトライを奪うことに成功。その後も拓大Fwdをよせつけないランで幾度となく相手を脅かした。またキックでアタックの起点も作り、チームを引っ張った。昨年度は春からAチーム戦に出場するも、対抗戦の初戦成蹊大戦でけがで離脱。悔しい思いをした。その雪辱を晴らすべく、今瀧口が目を覚ます。

                            (文・宮本 大)  

コメント

田中監督

(今日の試合を振り返って)今年から春の公式戦というのが始まって、また招待試合も加わって毎週のように試合があるということで、春からファーストジャージを着て緊張感のあるゲームができるという点では秋の本番に向けていい経験ができるなと思いました。で、今日の試合は最後残り10分集中して競り勝つことができたということは非常に何よりの経験を出来たことだと思います。やはり慶應のラグビーというのは、勝って折り返して逆転されて負けるというのではなくて、負けて折り返しても最後の最後まですがりついて勝利を収めるのが慶應のラグビーだと思うし、今日はそういうひたむきなラグビーをして勝利できたと思います。ただ今日冷静に見ると5つのトライを奪われてしまった、これは大きな反省だと思います。慶應のラグビーというのはトライの取り合いをして競り勝つのではなくて、最小失点に抑えて最後競り勝つということだと思うと、5つのトライを奪われたということは大きな反省だったと思います。取られてはいけない失点、トライがあった、そこは修正すべきところ。やはり今年はタックル、ディフェンスというものをひとつの軸にしてチームづくりをしているのでそこは反省点です。そこはひとりひとりのタックルのスキルであったり、チームとしてのディフェンスのシステムであったり、またフィットネスの不足によってタックルに入れなかったりという反省があるので、そこは修正をして次の試合につなげていきたいです。春の段階でこういったことを経験できるというのはとてもいいことだと思います。また今日はBチームCチームの試合もあってどちらも勝利することができました。でもBチームの試合に至っては50対43でしたけど、43点取られたということは問題であるので、選手たちひとりひとりが問題意識を持ってやって欲しいなと思います。Cチームは少ない失点で勝つことができましたけどやはり取られてはいけないトライもあったと思うのでディフェンスという意味でもっとこだわったラグビーをしていきたいと思います。(今後の課題としてはやはりディフェンスか)そうですね。アタックでいかに点を取るかという点よりも、ディフェンスでいかに最小失点に抑えるかというのが課題だとおもいます。(今日最初の公式戦ということでチームの若さが出てしまったが)若さというよりもなにより経験が大事だと思っています。それにファーストジャージを着てプレーする経験と、練習試合のジャージを着てやる経験では全く違うと思います。今日彼らはファーストジャージを着てタックルミスなどをしてしまった。しかし彼らはファーストジャージを着てベストなパフォーマンスをしようとしてできなかった。やはり経験としての重みが違うと思います。また今日は若い選手、2年生が最初の15人の中で8人ほど出ていましたけど、本当に財産となる経験ができたのではないかと思います。そのすべての場面を経験に変えて欲しいです。(次週の同大戦に向けて)同志社さんはここ数年でまた力を付けてきているチーム、コンタクトも強い、パスワークも早く強いチームだと思うので、お互いの目指しているラグビーをガチンコでぶつけ合うことだと思う。同志社さんもうちも伝統校ということでお互いのプライドをかけて戦う、関西、関東、両雄がお互いのプライドをかけて戦うということで勝利を収めたいと思います。

LO遠藤

(試合を振り返って)最後に勝てて良かったです。(フォーカスした点は)セットプレーと運動量に重点を置いていました。(戦ったことのない相手だったが)そうですね、外国人選手や個として強い選手がたくさんいました。それに対して慶應はチームとして勝とうと最初から言っていました。(ラインアウトの出来は)基本的には良かったんですけれども、チャンスで1つか2つミスをしてしまったのが反省点です。(今日見つかった課題と収穫)前半ペナルティが多く、自陣に釘着けにされてしまいました。ああいった大きい相手に対しては、なるべく敵陣でプレーしたいので、ペナルティを減らすことが課題だと思いました。(同大戦に向けて)同大はスピードがある選手が多いかと思います。慶應らしいタックルをして、僕としても運動量とセットプレーにこだわっていきたいと思います。(今年度の抱負)もちろん4番で試合に出ることもですが、チームにどれだけ貢献できるかという点もつきつめていきたいです。

FB瀧口

(試合を振り返って)オフェンスの時に、相手が流れているほうにこちらも流れてしまいました。全然ゲインできずにプレッシャーをかけられてしまったので、もっと縦のアタックをしても良かったのかな、という感じです。あとはFwdがなかなか広がらずに外側が余られてしまったり、Bksのディフェンスの時にドリフトがうまくいかずに、同じ相手を見てしまっていたりということがありました。そのあたりを修正していかないといけないと感じました。(拓大の印象)個人的には外側の選手のスピードがあったと思いました。そこを僕も対応しきれず抜かれたところもあったので気をつけたいです。(けがを挟み、久々の対外試合だったが)7ヶ月ぶりでした。いきなりAチームだったのでプレッシャーも感じました。それなりにプレッシャーを感じつつ、やるべきことはできたかな、という感じです。でもミスもあったので、修正したいです。(自身のトライについては)うれしかったです。ディフェンスがそんなに出てこなかったので、縦に入っていけばトライが取れるかな、という感じがありました。(キックの出来は)キックはいいところもありましたが、ダイレクトになってしまったり、チャージをされてしまったりしたものもあったので、もっとしっかりやっていこうと思いました。精度を上げて、あとはSHから近いところで蹴ってしまったので、プレッシャー下でもきちんと蹴られるようにしたいです。(同大戦に向けて)出場できるかはわかりませんが、メンバーに食い込みたいです。

PR山田

(試合を振り返って)まだ15人制の試合は2試合目だったので、2月から始めた2分間ボールを動かし続ける練習を積み重ねてきて、それを出していこうという試合でした。前半は自分達のミスやペナルティで敵陣に行けなくて、自分達の形が出来なかったんですけど、後半はディフェンスはまだまだですが、ボールを動かすという点では良くなっていたので、最終的には逆転勝利という形になったと思います。(途中出場でしたが、どのような気持ちで試合に入ったか)スタメンの平野はスクラムが非常に強い選手なので、それに対して僕はフィールドプレーで引っ張っていこうという気持ちで入りました。(最後のトライのシーンを振り返って)たまたまFWDが全員で攻めていた前が空いただけだったので、FWD全員で取ったトライだと思います。(モールなどFWD戦の手応えは)モールも春から少しづつ練習してきているんですが、まだ僕たちが少し高かったりとか、相手の大きい外国人選手に絡まれてしまったりとかしていて、まだまだ武器とまではいかないと思うので、練習してきつい状況でも低く組めるようにしたいです。(次戦に向けて)春はとにかく課題を克服して夏に繋げる形になると思うので、今日出た課題を分析して、練習で克服して次に生かしたいです。

SH宮澤

(試合を振り返って)前半が良い流れでできなかったので、後半の入り10分をまず意識して、ゲームの流れを取り返そうというプランでやりました。(開幕戦だったが)一番の目標は勝つことなんですけど、春シーズンということもあるので、色々な形を試したりだとか、色々なプレーをチャレンジしたいという気持ちがありました。(リーグ戦の拓殖大相手だったが)個々で強いプレーヤーが何人かいるので、そこでちょっと崩されてしまったかなという感じはあります。(負けている状況で出場したが)意識したのは、アタックのテンポをどんどん上げていこうということで、最後の10分くらいは良い流れでアタックができたので良かったと思います。でも、ちょっと要所でミスがあるので、そこは集中力をもってやっていかなきゃいけないなと思いました。(球さばきについて)もっと磨かなきゃいけないなと思います。(自身の課題と収穫は)収穫は、苦しい状況で出て、ゲームのテンポを上げられて、多少ですけど良い流れが作れたかなということです。課題は、まだ僕とSOの木村さんのところで、アタックもですけど、ディフェンスのコントロールができていないので、そこをしっかりコールしたり、組み立てていかなきゃいけないと思います。(チームとしては)まずディフェンスで5トライされてしまったのが一番良くなくて、そこが慶應の生命線でもあるので、ディフェンスでもっとしっかり入って守るっていうのと、アタックでは組み立てていくところができていないので、そこを日吉に帰ってやり直さなきゃいけないと思います。(次に向けて)次は1週間でまた同志社戦があって、そのあとも釜石、早稲田と遠征も増えるので、一試合一試合大事に戦っていきたいです。

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