【女子ラクロス】リーグ戦開幕!昨年度の王者に惜敗も見せた可能性 東海大戦

 

試合前、円陣を組む選手たち

昨季、FINAL4でサドンビクトリーの末に日本一の道が閉ざされた慶大女子ラクロス部。昨季は果たせなかった夢を実現されるべく、挑んだリーグ初戦の相手は奇しくも昨年の王者・東海大。試合は点の取り合いの末に9‐10で惜しくも敗れてしまったが、日本一に向けて好材料と課題の両方が見つかる意義のある試合となった。

関東学生女子ラクロスリーグAブロック

2010/08/15(日) 10:30FO @駒沢第二競技場

チーム 前半 後半 合計
慶應義塾大 4 5 9
東海大 5 5 10
 

突破を図る高橋

 気温32℃。体力が奪われる過酷な暑さの中、試合は前半から慶大はゲームプランである「点を取り合う」(石川HC)展開で始まる。まず、先制点を奪ったのは東海大。2分に慶大のゴールがファールで取り消された直後にカウンターを仕掛けて先制、さらに4分には追加点を奪われて0-2とされてしまう。開始直後からの劣勢ではあったが、慶大もスタートからAT木本副将(経4)、AT戸花副将(経3)、AT高橋(総4)らを中心とした攻撃で得点を感じさせる。そしてスコアを動かしたのはMF善野主将(文4)左45°辺りでフリースペーストゥゴール(FSG)から得たフリーシュート(FS)を決めて1点を返す。その後も得点を重ね、16分には4-2として主導権を握るが、前半ラスト10分に待っていたのは東海大の反撃だった。FSなどで同点にされると、慶大は前半を「残り3分でマイボールで終わりたいという消極的な気持ち」(石川HC)から敵陣でのボール回しを選択。しかし、東海大の激しいプレッシャーでボールを失い、速攻をうけるとたまらずFSGをしてしまい、FSから得点を許した。結局、前半は4-5と1点のビハインドで折り返すこととなった。

3得点を挙げた善野主将

 早い段階で追い付きたい慶大は善野主将が後半開始早々に東海大のディフェンディングで得たFSを決めて同点に追いつく。いきなり試合を振り出しに戻し、勢いに乗りたい慶大だったが、後半は王者の試合巧者ぶりと個人の力が一枚上をいく結果となった。追いつい直後に連続失点を喫するが、速攻からMF谷北(環3)、MF山崎(経4)が得点して再び同点。さらに1点を加えられた後にもMF谷山(経2)が得点して三度同点にする。再三に渡る逆転のチャンスを迎える慶大ではあったが、東海大の日本代表Gの前にシュートをことごとくファインセーブされて勝ち越し点を奪うことができない。そして試合はついに「勝負の残り10分」へと突入する。

 

パスをする谷山

残り10分、この時間帯でまず得点を奪ったのは東海大。FSを決められて8-9とビハインドになった慶大は速攻で谷山→高橋とつなぎチャンスを迎えるが決めきれずに同点のチャンスを逃す。何としてでも追いつきたいところだったが、焦ったのか自陣で痛恨のパスミスでボールは相手に渡ってしまう。東海大はこのチャンスから得たFSを確実に決めて8-10。慶大は痛恨の失点を喫してしまった。その後は必死にプレスをかけるものの、ゆっくりとしたボール回しで時間を使われて時間は刻一刻と過ぎて行ってしまう。勝利への望みが薄くなるが、慶大は「残り0.1秒」のところで意地のゴールを決めてスコアは9-10最後まで貫いた全員攻撃を最後に試合終了のホイッスルが鳴った

 敗れはしたが、昨年度王者に対する堂々とした戦いぶりは今年の慶大のラクロスの可能性を証明するには十分過ぎるものだった。試合終了間際で決めたゴールは「最後の1点は負けが1点差で終わって、今後に生きてくる」(石川HC)と語るように大変意味のあるものとなっただろう。強豪が揃い、例年にない厳しいAブロックではあるが、「今まで自分たちがやってきたラクロスを貫く」(石川HC)ことで日本一への道は開けてくるはずだ。次戦の相手は明大。力を伸ばしてきている相手ではあるが確実に白星を挙げたいところだ。

By Tomoki Kakizaki 

 

コメント

石川HC

(試合を振り返って)相手が昨年度王者の東海大学。しかも開幕戦ということで、この試合に精神的な無用な盛り上がりを極力無くして普段通りの戦いをしようということで臨みました。キーポイントは自分たちが2010年の慶應ラクロスが始まってからずっと取り組んできた「全員で“取備”をして全員で攻撃をする」。そういうプレーができるかどうか、それがポイントだったと思います。そういう面では、前半から全員攻撃という部分に関しては殆どの攻撃機会でシュートまでいっていたし、東海の日本代表ゴーリーの好セーブにも阻まれましたけど、攻撃面では自分たちの形というか積極性を持てていたので良かったと思います。(敗因は)敗因が何かというと、はっきり言って分からないです。勝負の綾という部分がすごく大きくて。点差を見てもそうなんですけど、何が敗因でこうなったというのは無いと思います。あえて挙げるなら、失点シーンを振り返ってみると弱気なプレー。マイナス方向のプレーからの失点。あとは相手の速い攻めの中で失点が重なったこと。そういう試合でしたが、それに対抗するだけの攻撃力をみせていたと思います。逆に言えばこれがちょっと転べば勝因にもなった部分だと思います。はっきり言うとそういう部分は言えないと思います。選手は気温32℃という暑くてウォーターブレイクが1試合3回も入るという中で、今つっている人が3人過呼吸が1人、そういった過酷な状況の中で選手自体のパフォーマンスは敗因を語るほどの何かがあるとは思っていません。(取りつ取られつという展開でしたが、どのようなことを考えていたか)今日の相手のパフォーマンス、技術力、やろうとしていること全部想定通りだったので、勝負は残り10分。選手にもずっと言っていたんですけど、勝負は残り10分、それまでは点を取り合いなさいと。残り10分の中で自分たちは本当に頭を働かせて走れるか。そこが勝負だと言ってきて、やはりそうなりましたが、本当に何人生きている、使える選手をフィールドに残すか。それがベンチワークとして考えていたことでしたが、最後は主力メンバーでさえ足がつるという状況だったのであの中ではベストを尽くせたのではないかと思います。(1点差でしたが、どこに1点の重みを感じましたか)例えば前半の残り3分からがずっとマイボールだったんですけど、怖いのは残り3分でマイボールで終わりたいという消極的な気持ちからの相手がプレッシャーを掛けてきてここで強く前を向いてプレーをすれば、点を与えずに逆にこっちのシュートチャンスがあったと思うんですけど、そこでマイナス方向の気持ちが出てしまってボールを奪われて相手のATにボールを押し込まれて最終的にはファールになって失点してしまったんですけど。結局、最後の1点はそういうところの1点1点の積み重ねが最後に出てくるので、選手には中からも言ったんですけど、そういったところの戦術的な修正。もっと徹底できれば良かったなというところがヘッドコーチ、ベンチワークをしていた者の至らなかった点でした。もっとはっきりと明白に、例えばもっとゴール前を固めて、ああいう1人突っ込んでくるような選手に対しても4人しっかり戻るような、そういうシステムを早めに言えれば良かったなというのはありますけど、そういったところで1点の重みを感じましたね。ただ、本当にこの1点の重みを感じるのは他のチームと勝利数や勝ち点で並んで、そこで今日はウチが1点差で負けましたけど、残り0.1秒で1点入れているんですよ。その1点の違い、いろんな1点がありますけど、そういう部分で重みじゃないですけど1点の持つ意味というのはこのリーグ戦の中では沢山感じると思います。10点勝負、10対9みたいな試合というのはあまりなくて、実は。ハイスコア系の試合というのはなかなかなくて、今日は点を取り合いなさい、1点を重く考えるな、1点を取られたくないがために自分たちの1点を取れないような消極さはなしとこの試合では言っていたので、1点1点というのはあまり考えませんでしたね。最後の1点は負けが1点差で終わって、今後に生きてくると考えています。(リーグ戦の展望は)最近の関東ラクロスリーグで特に女子はそうなんですけど、強いと一般的に思われているところが弱いと一般的に思われているところにポロっとやられたりする世界なんです。同じブロックに体育大2つ、早稲田、今日の昨年度王者・東海大と伸び盛りの明治というチームがいて、下手したら全勝チームなしで4勝1敗、3勝2敗、2勝3敗…のように拮抗した星取表になる可能性があって、今日負けてしまいましたけど、必ず混戦になってくると思います。次の明治というチームは去年1部に上がってきたいわゆる新興勢力で、慶應の方が上って見られているんですよ。自分たちも「次は明治だ」と思っているんですけど、この1戦はすごい重要でそういう精神的な緩みがあれば、明治の人に失礼で言い方は悪いですけど取りこぼしですね。そうなりかねない試合なのでこの1週間はすごい大事だと思いますね。明治戦の戦い方なんですけど、特失点差とかを考えると次の試合はベストゲームをしないと今年のリーグ戦非常に厳しくなると思いますね。(明治戦についてコメントを)東海とは全く違ったタイプのチームだとは思うんですけど、恐らく速さはあると思います。戦い方としては今まで自分たちがやってきたラクロスを貫くしかないです。大和魂の話ですけど、「ああすればよかった」という戦い方はしません。もっと引けばよかった、もっと大事にボールを回せばよかったとかそういう戦い方をしないように、常に自分たちが求めてきたラクロスを追求しながら1戦1戦悔いの残らない戦い方をしたいと思います。

  

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