穏やかな天候の下、春季リーグ戦中大との一戦が水戸の地で行われた。東海大戦での勝利から一週間、この流れを止めずにこの試合も快勝と行きたい慶大だったが、前半から相手のペースに乗せられ、点は奪うもののなかなか流れに乗りきれない。しかし12-7とリードで後半を迎えると慶大らしさが随所に見られ始める。テンポの速いパスを軸にプレーを組み立てていく慶大と、ブレイクダウンで圧力をかけてくる中大。両校によるシーソーゲームは結局、後半終了間際の木原のトライで慶大が勝利したが、慶大が負けてもおかしくない満足とは言えない試合だった。
交流戦VS中大
5月26日(日)12:00K.O. @水戸ケーズデンキスタジアム
得点 | ||||
慶大 | チーム | 中大 | ||
前半 | 後半 | 前半 | 後半 | |
2 | 4 | T | 1 | 4 |
1 | 2 | G | 1 | 2 |
0 | 0 | PG | 0 | 1 |
0 | 0 | DG | 0 | 0 |
12 | 24 | 小計 | 7 | 27 |
36 | 合計 | 34 |
得点者(慶大のみ)
T 徳永、服部3、浦野、木原
G 矢川3
慶大メンバー表 |
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眞鍋泰明(経3・慶應) |
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2.HO |
神谷哲平(総3・桐蔭学園) |
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3.PR |
秋田智樹(総4・川越) |
→17吉田貴宏(総3・本郷) |
4.LO |
本行拓実(商4・慶應) |
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5.LO |
野田一宇(商3・修猷館) |
→18木原健裕(総3・本郷) |
6.FL |
定兼輝尚(経4・慶應) |
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7.FL |
山田康介(法2・流経大柏) |
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8.No8 |
徳永将(商2・慶應) |
→19鈴木達哉(1・茗渓学園) |
9.SH |
南篤志(総2・清真学園) |
→20宮澤尚人(法3・慶應) |
10.SO |
矢川智基(環2・清真学園) |
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11.WTB |
服部祐一郎(総3・国学院久我山) |
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12.CTB |
佐藤龍羽(環4・茗溪学園) |
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13.CTB |
大石陽介(環4・修猷館) |
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14.WTB |
浦野龍基(政3・慶應志木) |
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15.FB |
武谷泰(総4・国学院久我山) |
ほぼ無風の中、試合が始まった。中大はキックから陣地を獲得しようと慶大を巻き込んだ空中戦を展開する。その流れに乗りたくない慶大は10分、得意のパスラグビーで形を作ると、SH南(総2)が中央を抜け出し一気に敵陣へ。その後、マイボールスクラムの権利を得ると、左サイドに展開し、No.8徳永(商2)が倒れこみながらもトライ。素早い攻撃で7-0と先制する。しかしすぐに中大はFwdで力勝負に持ち込み、陣地を挽回。メンバーの大胆な入れ替えを図った慶大のFwdがうまく機能しない中で、中大が間髪入れずアタックを展開してくる。ついにその力に屈しトライを奪われてしまい7-7の同点。その後、試合はしばらく停滞する。しかしこの時間、慶大は次第に中大のペースに乗せられていく。「相手のキックを使ったスローテンポのラグビーに付き合ってしまった」(浦野・政3)結果、FwdとBksにまとまりが生まれず自分たちのラグビーができない。そのせいか、ブレイクダウンでターンオーバーを許したり、反則を取られてしまう。そんな中でも39分、SO矢川(環2)が相手の頭上を越える山なりのパスを放ると、左サイドを走りこんでいたWTB服部(総3)がしっかりとつかみグラウンディング。“攻めているのに攻めきれない”そんな状況の打破が期待される服部のトライ。12-7と復調の兆しを見せたところで前半を終えた。
しかしそう簡単に流れを渡してくれるほど中大は甘くなかった。後半開始早々、モールで自陣に押し込まれると絶好の位置からPGを決められてしまう。さらに中大はその勢いのまま畳みかける。慶大のキックオフ後、いきなり中央を突破。次々にタックルをかわされ、あっという間にインゴール。12-15と逆転を許してしまう。何とかしたい慶大が目覚めたのは後半10分を超えてからだった。前半の「キックキックの単調な試合」(FB武谷・総4)から一転、後半はBksが足を使って攻めたてる。13分、WTB浦野が俊足を生かし自陣22mラインからビッグゲインすると相手は速攻についていけない。そのまま勢い止めず服部につなぎトライ成功。両WTBの働きで17-15と再び逆転した。その後もランを主体にしたプレーに切り替え、スピード感のあるラグビーを展開。慶大らしさが見え始める。意地を見せたい中大もすぐさまトライを決め、ここからは両者譲らぬさらに緊迫した試合に。26分には服部がこの日3本目のトライを決めると、その直後、スクラムから出たボールを武谷が持ち込み敵陣に侵入する。そしてパスを受けた浦野が軽やかに二人を抜き去りトライ。残り10分で31-27と勝ち越した。逃げ切れるかと思った38分、今度はフェイントを絡めたうまい速攻でハーフウェイラインから中大SHに独走トライを奪われてしまう。残り時間わずか、万事休すかと思われたが、ここからドラマが待っていた。後半終了間際、時間稼ぎに来ている中大の一瞬の気のゆるみだった。蹴りだしたボールを飛び込んだ木原が体で前にはじく。このボールを木原が冷静に拾い劇的な逆転トライを決めた。結果36-34で直後ノーサイド。まさに最後の最後で勝利の女神が慶大に微笑んだ。
いつもと違うメンバー構成に戸惑う部分があったのかもしれない。この試合では「コミュニケーションとタックルのスキルが課題」(HO神谷・総3)として浮き彫りになった。コミュニケーション不足からインサイドブレイクを許したり、一発で仕留めるタックルが実践できていなかったのは事実だ。しかし大事なのは「メンバーがだれであろうと、相手がだれであろうと、慶應の試合ができる」(浦野)ことだ。メンバーが変わったことを言い訳にしているようでは上を向けないだろう。次なる試合はまさに因縁の相手早大。チャレンジャーとして臨む大事な試合だ。早大に勝つため、秋シーズンの勝利のため、慶大は心も体も成長していく必要がある。
【ケイスポ的MOM】期待の俊足ランナー 浦野龍基
今季、服部とともに不動のWTBの地位を確立させているのが浦野龍基だ。「服部、浦野がいい形でボールをもらう回数をもっと増やしていきたい」(和田監督)と指揮官の期待も厚い。アタックの中心にはいつも彼がいるといっても過言ではないのだ。この試合では、積極的な走りで相手のディフェンスを崩しトライも挙げた。慶大の片翼を担う浦野。慶大高速ラグビーの体現には彼の存在が欠かせない。
(記事・宮本 大)
以下コメント
和田監督
(試合を振り返って)メンバーとしては現時点でのベストメンバーというよりは経験を積ませたい選手にチャンスを与えるという試合だったので、結果としては勝つことができてそういった選手達は自信になったかなと思います。ただ、だいぶ苦戦してしまったので反省すべき点も多い試合でした。反省点も収穫もあり、ちょうどいい試合だったとポジティブに捉えたいと思います。(選手達の出来は)何人かは主力の選手と比べるとまだまだ実力不足なところはあると思いますが、それはわかった上での起用なので、今日の試合を経験して成長してくれればなと。大学生は一試合ごとに成長が見られる年代なので、経験を与えられてよかったと思っています。(課題、収穫は)課題は相手の突破を許した回数が多かった、特に9番の1年生の選手にかなり自由に走られてしまったことです。また、密集の近いところで相手が縦に来るところを止められなかったことが反省点です。収穫としてはマイボールをアタックで敵陣深くで継続するとそれがトライに結びついたと思うので、エリアを取って自分たちの強みである運動量を生かして攻めれば得点を取れるということは自信になったところです。特に服部、浦野が最後にいい形でボールをもらう回数をもっと増やしていきたいというふうに思います。(次は早慶戦)去年の結果からしても今年はチャレンジャーという立場ですから来週は現時点でのベストメンバーを起用する予定なので、自分たちの今の力を試すいい機会だと思いますし、内容のあるゲームができればなと思います。あくまでも対抗戦や大学選手権で勝つことが目的なので、今は勝ち負けには一喜一憂せず、内容ある試合でチームが成長するようにやっていきたいと思います。HO神谷哲平
(今日の試合を振り返って)春やってきたことが出せたシーンもあったんですけど、Fwdがブレイクダウンで圧力をかけられたりしたので課題も残った試合だったと思います。(Fwdはメンバーが大幅に入れ替わっていましたが)あんまり普段一緒にやるメンバーではないので会っていなかったんですけど、いままでやってきた基礎スキルというのをチャレンジするという一つの目標に向かってみんながやっていたので違和感なくやれました。(全体的なセットプレーの出来)安定はしていたんですけど、100%に近づけることが大事なのでまたミスしたところを修正してやっていきたいと思います。(中大のFwdの印象)ブレイクダウンで圧力かけてきてポイントサイドでくるチームだったのでこちらは逆にそれを利用して前に出られました。(抜かれることが多々あったが課題は)各自のコミュニケーションとタックルのスキルというのが課題だと思います。(来週の早慶戦に向けて)今日出た課題を修正して、セットプレーの安定を目指して頑張りたいと思います。
CTB大石陽介
(今日の試合を振り返って)今日は中央大学さんのブレイクダウンに圧力があってうちのテンポで攻めることができなかったので、自分たちの流れに乗っていけなかったかなと思います。(ゲームプランは)ノーペナルティというのと順目順目にテンポよく攻めるという2つを掲げていました。(収穫と課題)良かったことは最後に勝ち切ったこと。課題はブレイクダウンが悪かったので、ボールキャリアーの動きや2人目、3人目のサポートの動きを改善していかなきゃいけないと思いました。(タックルがよく決まっていたが)タックル自体は負けていなかったんですけど、近くのモールサイドやラックサイドを抜かれていたのでもっとコミュニケーションが必要だったなと思います。(次の早慶戦に向けて)早慶戦では悪かったことをしっかり改善して、今回勝ち切ったことは収穫となったので、来週も自分たちの流れを持って行って勝ちきれればいいかなと思います。WTB浦野龍基
(今日の試合を振り返って)Fwdが基本的にAチームではなかったというのはあるんですけど、Fwdがブレイクダウンで苦戦して思うように進められなかったと思います。(試合前はどういったことを心掛けていたか)メンバーがだれであろうと、相手がだれであろうと慶應の試合ができるようにということが焦点でした。(前半の出来はどうだったか)慶應のラグビーができなくて、相手のキックを使ったスローテンポのラグビーに付き合ってしまったというのがありました。(ハーフタイムはどういったことを確認したか)ブレイクダウンでプレッシャーを受けているのでそこを改善しようということと、相手に付き合わないで自分たちのアタッキングラグビーをしようということを話しました。(後半はBksが機能していたと思うが出来としては)バックスリーは、前半はボールが来たら蹴り返していたんですけど、後半はしっかり勝負していこうということを話していて、それが実現されて、しかもそれがいい方向につながったのでそれは収穫でした。(Bksの課題)ハーフ団が違うことでFwdの活かしきれていなくて、Fwdを疲れさせてしまったというのがあります。(早慶戦に向けて)東海大戦と中央大戦と今までになかった勝つ流れが来ているのでこのまま流れに乗って早稲田に勝てたら秋シーズンに向けていい準備期間になると思うので頑張りたいと思います。
FB武谷泰
(試合を振り返って)前半は中央のリズムに付き合ってしまってキックキックの単調な試合だったのでリズムを変えなきゃいけなくて、後半からカウンターを入れていって慶應のリズムにできました。ハーフに走られてしまったところもあったんですけど、修正することができて逆転勝利ができたと思います。(競った展開となったがどのような思いだったか)Fwdのラックサイドのディフェンスが前に立っているディフェンスを見てしまっていたので、SHが持ち出して走ってくるのをFwdがしっかり見るようにという指示があってそこを徹底していたつもりだったんですけど、できていなかったかなと思います。(試合前のプランは)ノーペナルティで継続して慶應のアタックをしようというのがあったんですけど、相手のラックでの二人目の寄りがすごく早くて慶應のボールキャリアーがしっかりボールを出せなかったために、ペナルティが多くなってしまってこういうもつれた試合になってしまいました。(自身の出来は)今日はリズムを変えようと思ってカウンターに行ったんですけど、雑なカウンターになってしまってリズムにうまく乗れませんでした。(久しぶりのAチームでの試合だったが)児玉健太郎君が復帰してAチームにいるので彼が万全の状態だったらたぶん僕は出れていないんですけど、こういう児玉君がいないときに慶應のFBとして役目を果たせるように頑張りました。(次戦に向けて)次は春の大一番の試合なので、1週間早稲田対策をして自分たちらしい攻撃ができるように準備していきたいです。
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