―家族ぐらいの一体感を出さないといけない―
2017年秋、7季ぶりの優勝を果たした慶大野球部。”六の王者”が次に掲げる目標は18年ぶりの日本一だ。頂点へ走り始めた2018年・TEAM河合の注目選手に開幕前特集としてお話を伺った。
春季開幕前特集の最終回となる第8回は大久保秀昭監督のインタビューをお届けする。昨季は就任3年目で初めての優勝を果たした大久保監督。選手それぞれに正面から向き合い、慕われている指揮官にお話を伺った。
――昨年を振り返って
年間を通して考えたら、メンバー的に他校と比較した場合に単純に10の力をほぼ出し切ったか、もしかしたらプラスアルファくらいのものを出せたのかなと思います。年間で8勝9勝で17勝したということは、トータルで見ても一番勝ち数が多かったですし、勝率も一番良かったです。よく頑張ったシーズンだったと思います。
――優勝できた要因は
チームが一丸になっていましたし、それぞれができることをしっかりやってくれました。選手たちが試合の中で自信を得ながらプレーできていたことがこの結果につながったんじゃないかなと思っています。
――神宮大会は悔しい結果となりました
もちろん僕も悔しかったです。監督として勝たせてあげたかったですが、残念でした。
――キャンプで取り組んだことは
キャンプの意味として、違う環境に身を置いて野球に没頭することと、少ない選手だけでみっちり練習することだと思っています。その中で、もう一度1つになるということを目指しました。
―粘り強く接戦をものにしていく―
――大阪でオープン戦を行った意図は
オープン戦を多く組みたかった中で、色々な方面とうまく話が進んだ結果ですね。
――オープン戦は例年に増して多かった印象です
チームとしてまだまだなので、選手たちにしっかりした経験を積ませたいという面が大きいです。投手もブルペンより試合で投げた方が得るものが多いと思いますし、野手も試合の中で得るものもあると思って多く組ませてもらいました。
――今年のチームは投手が強力です
昨年は投手で言えば4年は川端(康司=H30政卒)くらいで、3年2年1年の投手陣でした。今年はバッテリーを中心に粘り強く接戦をものにしていくチームカラーになるかなと思います。
――逆に野手陣はいかがですか
野手は、郡司(裕也=環3・仙台育英)、柳町(達=商3・慶應)以外レギュラーだった選手がいなくなりますし、今までホームラン数はトップだったと思いますが、大砲が減るかなと思います。個人的には見てて楽しい野球がいいなと思いますが(笑)
――その中で嶋田翔選手(環2・樹徳)に注目が集まっています
彼の打力と肩は魅力があります。もともとキャッチャーですし、最初は岩見(雅紀=H30総卒・現東北楽天)のレフトくらい心もとないかもしれませんが、岩見も一生懸命成長して、最後は普通に守れていましたので、失敗もすると思いますが、寛大にいくつもりです。でも、彼はそれに応えるだけ頑張れる選手だと思います。
――同じ2年生では瀬戸西純選手(政2・慶應)もいます
彼の守備は非常に良いです。照屋(塁=H30環卒・現Honda鈴鹿)と同じくらいの期待を持っています。打撃はあまり得意ではないですが、彼が打てばチームも強くなると思います。そういう意味でバッティングで期待しているのは嶋田より逆に瀬戸西かもしれないですね(笑)
―4年の力には期待したい―
――一方で4年の選手はいかがでしょう
なかなか出番を作るのは難しいかもしれませんね。彼らは人数が少なくて、1年の時から関わっている子たちだから、僕のこともわかっているし、僕も彼らのことをよくわかっています。彼らはいい子たちで、まとまりはありますが、まだ足りないところもあると言ってきました。例えば気持ちをもっと出していけばいいんじゃないかなと思いますね。僕の時も4年はバッテリーともう一人くらいで、後輩を中心の野手陣でした。でも、連覇したということもあるので、4年が試合にいないというのは関係ないと思いますね。いずれにしろ4年の力には期待したいです。
――投手陣の調子はいかがですか
佐藤(宏樹=環2・大館鳳鳴)と関根(智輝=環2・城東)については、昨季のように彼らに頼って無理をさせないように、林助監督と話し合いながら開幕に向けてゆっくり調整をさせています。その間に大西(健斗=環2・北海)に投げてもらいたいね(笑)他の投手では、今年は菊地(恭志郎=政4・慶應志木)がラストシーズンだからか、充実してやれているなとは感じますね。投手陣は豊富ですけど、ベンチに入れる人数は限られているので、競争は激しいと思います。彼らがみんな頑張れないと、優勝争いに加われないと思うので、頑張って欲しいです。
――ルーキーは、若林選手(翔平=環1・履正社)、福井選手(章吾=環1・大阪桐蔭)らの入学が話題になりました
彼らを最初からレギュラーとして使うということは今のところ考えていませんが、持っているものを発揮していけば、レギュラーを勝ち取れるだけの能力を持っていると思います。そういう意味でも楽しみですね。
――スローガンの意図をそれぞれ教えてください
「超越」は読んで字のごとく2つの違う「こえる」を使いました。昨年の秋は「春を超えるぞ」と言って発破かけましたけど、さらにそれを超えたいのもあります。日本一になれなかったという意味で昨年のチームを超えることもそうですが、一人一人が今日より明日、明日より明後日、一日一日少しでも成長できるような意識でいてほしいと思っています。
「独創」は独立自尊の精神を持って想像力を豊かにということです。伝統に縛られすぎないで新しいことにもトライしていく、慶應義塾や福澤先生の理念につながるようなところも含めています。
「敬意」は先輩方が築いてくれたこの野球部や、野球ができる環境に感謝することや、相手をリスペクトするという面です。
この3本を大切にしつつ、「I GOT “FAMILY”」は「俺たちは家族!」ということです。これまでは200人いて、あいつが何やってるかも知らない、休んでもわからないというところから、昨年は仲間になるところまで来ました。仲間よりもっと強いとなると家族だろうと。家族はいいことばっかり言わないし、間違ってることは指摘して怒るし、怒られる。でも、信頼関係として家族だからできることもあるだろうし。「超越」するには家族ぐらいの一体感を出さないといけないと思います。それも大ファミリーで(笑)これらが達成できたら、結果もついて来るかなと思います。これまで掲げてきた「Everything is practice」はもう当たり前だよねと。その段階はクリアしてるし、その上をいかないとダメだよねという意味で変えました。
――最後に開幕に向けて意気込みを
道は険しいかもしれないですが、最終的にみんなが笑顔になれるような結果を出したいなと思います。期待してください。
――ありがとうございました!
このインタビューは3月26日におこないました。
(取材・尾崎崚登)