日本一を目標に掲げる慶大野球部。そんな陸の王者の前に立ちはだかるのが、
浜田一志監督
――昨年を振り返って
昨年は勝ち点を取って、同率といっても5位になったということで、成果が出ました。勝つことを体感している選手が残っているという財産が1つできたかなと思います。
――春は10戦全敗でしたが、要因は
宮台(康平=H30法卒・現北海道日本ハム)がフォームを変えて、安定していなかったという不安がそのまま出てしまいました。やはり、チームのエースから波及して全体が不調になってしまったという流れでした。
――秋は宮台投手もよかったですが、特に打線が活発でした
そうですね。宮台の自体の防御率(5.57)で見るとそれほどいいというものではないです。やっぱり打線が東大の歴史で初めて完封負けゼロというシーズンだったので、そこは評価できると思います。
――打線の強化はいつから
クリーンアップの楠田(創=H30教育卒)、田口(耕蔵=H30教育卒)、山田(大成=H30教育卒)の3人は固定して、これを軸にやる形でした。後ろは調子がいい選手を選んでいきました。新戦力ではセンターの辻居が1番に定着してくれたのは大きかったです。
――新3年の選手が奮闘しました
彼らは今年も残るので、大きいことだと思っています。
――新チームの印象は
去年に比べて小粒になって長打力はないので、機動力等でカバーしていきます。スローガンにもあるように「一丸」となって攻める、守るチームにしていかないといけないと思っています。
――機動力を重視する戦い方になるということですか
わかりやすく言うと郡司君(裕也=環3・仙台育英)からいかに盗塁するかということですね(笑)
――オープン戦での状態は
宮本が投げている試合は試合になっているんですけど、それ以外は7、8点取られています。投手陣がしっかり2枚出てくるためには、勝ち点を取るというレベルを100点としたときに採点すると50点。打線は完封負けが多いので30点くらいですかね。例えば宮本が投げて勝てたとしても勝ち点には及ばないから、50点。打線はこのままでいくと10試合中3点以上取れる試合が2つか3つだというレベルなので30点です。
――宮本選手以外の投手も経験豊富な投手がそろっている印象ですが
彼らは経験があるけどその分相手も慣れている、というところでプラスマイナスゼロじゃないですかね。だからそれに続く別の投手が出てくるかどうかというのがポイントだと思います。
――主将の宇佐美選手はどんな人ですか
宇佐美は人格者です。彼はレギュラー固定ではないですけど、オープン戦でチームが窮地の時も彼が率先して声を出しているし、そのあと寮に帰ってみんなを集めて話をしています。周りから信頼されている人格者です。チームの中心としてよく動いてくれています。
――今年のキーマンは
ピッチャーは宮本ですね。バッターは岡(俊希=文Ⅰ2・小倉)と辻居の2人です。岡は中軸を担ってもらいたいなと思っています。オープン戦の結果は出ていませんが、ずっと使い続けています。辻居はオープン戦で勝った試合でよく出塁してくれています。
――スローガンの「一丸」は
部員が11月の新チーム発足の時にみんなで投票して決めていました。いいスローガンだと思います。突出したエース、4番がいない中でチーム一丸となって勝ちを取るために何をしたらいいか。試合以外にも分析だったり、マネジメントだったりいろんな面で一丸にならないといけないということだと思います。
――慶大の印象は
まず、選手層がすごく厚いです。投手も佐藤君(宏樹=環2・大館鳳鳴)を中心にして、他にも経験者が残っているし、層の厚いチームだなと思います。バッターは柳町君(商3・慶應)と郡司君ですね。郡司君は打たせると守備も調子よくなるし、チームの士気もあがるので、打たせないために敬遠するしかないかな(笑)。柳町君もいざとなったら敬遠しようかなと思っています。あの2人からは逃げるしかないかなと思いますね(笑)。他で勝負したほうがいいかなと思います。
――慶大が優勝できた要因は
それこそチーム一丸だと思います。岩見君(雅紀=H30総卒・現東北楽天)の活躍は目立ちますけれど、僕は打者一人の力で優勝はできないと思います。投手陣も粘って、苦しい中で佐藤君が出てきました。厚い選手層の中で選手起用を見極めた大久保監督の手腕が素晴らしいと思います。
あの試合はまだ佐藤君がフル回転する前で、両高橋君(佑樹=環3・川越東、亮吾=総3・慶應湘南藤沢)の調子も悪かったです。3点4点はとれるかなと思っていたら、おまけで5点取れました。宮台の調子もよかったので、先制すればいけるかなという印象はありました。
なかなか盛り上がりましたね(笑)打線が2桁得点したことで、シンプルにしっかり初球から振るということが点につながると選手が実感したことが一番大きかったと思います。
――慶大の対策は
やはり、郡司君と柳町君を警戒します。対ピッチャーだと、佐藤君はほぼ打てないと思うので、そこでメンタルを落とさずほかの投手から頑張ろうという作戦ですかね。じっと春を待つ土筆のように頑張ります(笑)
――開幕カードの向けて意気込みを
食らいつくだけです。選手全員を1対1で比べると、10対0で負けるチームです。でもそれが、うまく絡み合うのが野球です。どんな強いチームでもミスはあるので、慶應さんに勝つチャンスがあるとしたら、それがどこで出るか。そして出たときにそれに乗じて点数をとれるか。そんなところじゃないですかね。
宇佐美舜也主将
――昨年を振り返って
春に10連敗した中で、チームの雰囲気としてはあまり良くなかったですが、昨年は4年を中心に力のある選手が揃っていたので、一人一人がチームが勝つために貪欲にした結果、秋に15年ぶりの勝ち点を挙げて、チームとして一年間ですごく成長したなと感じました。
――春は全試合に出場していました
自分の経験として、1番など上位打線としてフルに出られたということは、一つ、プラスになったことです。チームの結果として勝ちに繋がらなかったので、そこでなぜ勝てなかったのかという部分を、今自分が主将をやっている中で経験として生かせているということは良かったと思います。
――秋は出場機会が少し減りました
秋は最初のカード(立大戦)は出たのですが、そこで怪我をしてしまって、それが原因で以降のカードで試合には出られませんでした。投げることができず、自分ではどうすることもできませんでした。それでも監督にベンチに入れてもらって、勝ち点の試合をベンチで経験できたということは自分の中ではプラスだったかなと思います。
――勝ち点の瞬間の気持ちは
自分たちが求めてきたものというか、自分が入った時に連敗が止まって、それでも勝ち点が遠くて、7回挑戦してようやく8回目で勝ち点を取ることができて、自分の中でも言葉では表せないというか、ただ純粋に嬉しいっていう気持ちでした。
――新チームの印象
僕が主将として感じているのは、明るいということはすごく感じていて、上級生下級生関わらず、コミュニケーションが多くなっているなという風に感じています。主将として、当初、自分がどのようなチームにしたいかと思った時に、上級生下級生がしっかりコミュニケーションをとって会話が多い、明るい雰囲気にしたいなとは思っていました。
――投打ともに柱が抜けました
もちろん能力の部分で落ちたということは、客観的に見ればそうなのですが、部員一人一人としてはその穴を自分が埋めるという、各自の中で自分が試合に出て貢献するという意識が非常に高くなったと思います。チームの底上げというか、誰にでもチャンスがあるという風な捉え方もできるので、そこの部分で、個人個人がこの冬、パワーアップして、例年に比べて自分が試合に出るという意識が強くなったと思います。マイナスには捉えずに、プラスとして全体では影響しているのかなと思います。
――どう戦っていきますか
もちろん打撃も大切ですが、僕らはずっと守備を基本としていて、守備が崩れて大量失点してしまうのは良くないと思います。自分たちのリズムとしてはやっぱり最少失点でロースコアで後半まで持っていって、しっかり4-3のようなゲームを目指しているので、1から守備の基礎を把握して、徹底的にやってきたつもりです。
――投手陣について
今の新3年を中心に昨年での経験を積んでいる選手が多いので、特に一番は宮本が昨年の秋も活躍して、投手の柱になればなと思っています。その中でも、宮台さんが投げていた部分というのを投手全員が埋めるというか、そこで自分が投げる、ということは投手一人一人が考えています。僕としては面白いというか、いろいろなタイプの投手が揃っているので、面白いのではないかなと感じています。
――打撃陣について
クリーンナップが抜けた、ということは一つ、軸というか核がなくなったということです。誰が打つのかっていうのは、まだ現段階ではオープン戦なので、決まってはないのですが、チーム全体としてトレーニングを中心に飛距離というか、パワーアップしていこうというのは、この冬に話してきました。その中で一番打つというか、オープン戦で結果を出した人が、中軸を打つっていうのが一つキーとなっています。どちらかというと重視しているのは打線の中で繋がりというか、上位から下位まで繋がりができると、点ではなく線に繋がって、得点力が上がるのかなと思っています。個人名として誰というのはないのですが、昨年出ている人もそうですけど、新しい、今年の春から出る選手でも全然活躍する可能性はあるので、全員で、打線の繋がりで点が取れるといいなと思います。
――スローガンは一丸です
決めた理由としては、チームの底上げというのが一つあります。昨年の勝ち点というのはもちろん、チームの中の雰囲気として1つになろうというのがあってこそようやく一つ勝ち点が取れました。しかし、最下位脱出ができなかったというのは一つ反省点で、確実に最下位を脱出するためには勝ち点2が必要になります。その中で、僕たち4年生が話し合って、チームスローガンとして、全員一人一人が役割を認識して、しっかり果たすことができれば、他の五大学と同等に戦えるのかなと思いました。個人の能力としては、他の五大学に劣るものが、力が及ばないところがあると思うのですが、自分が得意である分野とか、分析とか、しっかりそういったような所で埋めることができれば、チームとして一丸となって戦えれば、勝ち点というものは見えてくるのではないかと思います。
――主将に選ばれた経緯
4年の中での話し合いだったのですが、自分の中でも昨年の秋に怪我をしてしまって、自分がなるかどうかっていうのは結構悩みました。話し合いの中で僕の名前が出た時に、自分では怪我して焦りというか、来年出られるかっていう葛藤もありました。しかし、来年戦うとなった時に、自分のことだけではなくて、下級生から出させてもらっている立場として、僕から見た下級生が伸び伸びとプレーするというか、プレッシャーを楽しく感じられるような環境を主将として、チームとして、準備して提供させることができるのは下級生から出ていて一番勝ちを意識している、そういうものを一番身近にベンチで経験している自分が還元できるのかなと思いました。経緯としては、一応4年での話し合いと、自分の気持ちの中で勝ちたいというか、このチームで戦いたいという気持ちがありました。
――どんな主将を目指すか
今年代わってからのテーマとしては、とにかく風通しを良くというか、上級生下級生が全員勝つために意見を言えるような環境というか、そういうようなチームの雰囲気を重要視したいです。試合で戦っていく中で不利な状況、負けている状況もあると思うのですが、そういう時に僕が上を向かせるというか、下を向かないで、上を向かせて勝ちに向かっていけるようにしたいです。もちろんプレー面でも頑張りたいのですが、精神的な部分でも支えられるような存在になれればいいかなと思います。
――監督へのインタビューでは、「人格者」と称されていましたが
そんなことはないんですけれども、チームの中では真面目な方なのかなと思います。僕が東大野球部に入って思うのは、結構個が強いというか、個人個人がしっかり考えて意見持って動いている選手が非常に多いです。そんな中で自分はやや真面目というか、真面目に物事を取り組んでいる傾向にあるのかなとは思います。人格者かどうかは分からないのですが、いろいろな方向に行きそうな人たちを方向付けるというか、こっちに向かせよう、という声かけは怠らないようにしたいです。
――期待する選手は
2人いるんですけど、1人は、新3年の青山(海=教育3・広島学院)で、体格的に恵まれていて、代打だけでなくスタメンで出る可能性もあります。勝負強い打撃がやっぱり持ち味で、パンチ力も他大に劣らないような強さを持っているので、面白いというか、良い場面で彼が打つと、勝ちに繋がるのかなと思います。もう1人は新2年の岡で、僕から見ても、新入生であそこまで強く振れていました。昨年の秋も少し出ていて、今季スタメンで出る可能性が濃厚なんですが、新2年ながらいろいろ考えています。打撃に対する意識、自分が中軸を任されても大丈夫というような、そういう意識を持ちながら取り組んできて、そのような所が普段の練習から見られるので、この春、結果に繋がれば面白いのかなと思います
――憧れの人は
プレーヤーとしては、ありきたりではありますが、やはりイチロー選手です。小学生の頃から憧れのプレーヤーですし、目標といったら本当に恥ずかしいくらいなんですけど、やっぱり野球を始めたきっかけとしてもそうですし、今も現役を続けていますけど、あそこまで野球にストイックになれるという、日本人であそこまで大リーグでやれるっていう所はやはり、野球続けてきて、影響されている選手ではあります。
――慶大の印象は
長打、強い打撃が持ち味で、試合の流れを一発で変えるというか、そういう爆発力のあるチームだなというのは本当に今まで戦ってきて思います。そんな中でもやはり、まとまりがあるというか、打線の中で役割を自分でわかりながら戦っているというような、打線の繋がりというものを感じるような、打撃の方が強い印象があります。
――慶大の投手陣は
投手陣は下級生中心に揃っているというか、加藤投手(拓也=H29政卒・現広島東洋)が抜けた後に、どういう選手が出てくるのかなというのは感じていたのですが、昨年感じたのはやはり自分が出る、抑えてやろうという気概が出てくる選手出てくる選手に、ちょっと偉そうですけど、感じていました。それこそ加藤投手が抜けた状況っていうのは、宮台さんが抜けたうちの状況と似ているなと思います。そこで投手陣をしっかり埋めていって、昨年の秋に優勝したというのは、チーム力があるとすごく感じました。
――慶大が優勝できたポイントは
さっきと少しかぶるのですが、一つは打線の繋がりで、もちろん岩見選手があれだけ打ったというのはあると思うのですが、郡司選手や柳町選手あたり、それこそ照屋選手(塁=H30環卒・現Honda鈴鹿)とか1から9番まで繋がりある打線で、その中で投手陣がロースコアに抑えようという意識がありました。佐藤投手もそうですけど、誰が出てきても抑えるみたいな気力というか、一番勢いを感じたので、勢いというものをしっかり自分たちの中から生み出せて、乗りに乗ることができたっていうのがポイントではないかなと思います。
――勝利を収めた試合は
僕自身は怪我をしていてスタンドから見ていたのですが、印象としては、あの試合では宮台さんが好投して、慶大打線の火が点く前にこっちがうまく先制して点が取れて、流れとしては東大が理想とする流れに持ち込めました。慶大自体が秋の試合の中で初戦というのもあって、そういう意味では東大がやりたいような野球がやれたというか、こっちとしては2カード目だったので、本当にうまく戦えたという印象です。
――対慶大をどう戦っていきたいですか
このチームで勝てるかどうかっていうのは開幕戦の最初のカードにかかっていると思っています。恐らく佐藤投手、菊地投手(恭志郎=政4・慶應志木)あたりが投げてくると思うのですが、大量得点は見込めないと思うので、先制してとにかくロースコアで逃げ切るというのが一つの勝ちパターンなのかなと思っています。僕らとしては挑戦者なので、失うものはないという気持ちで、緊張なくというか、良い意味で緊張を楽しめて自分たちのやるべきことをやれれば良いかなと思います。
――入学されてから“勝つシーズン”が続いています
自分が感じるのは、勝つっていうことに対してより貪欲になってることです。僕が入部した1年の春に勝ったことで、勝つために自分がどういうことをすればいいんだろうっていうのが1回勝って結構見えたのかなと思っています。僕たちとしてはそんなに簡単に勝たせてもらえることはないので、僕たちの認識としては、僕たちがやれることを精一杯やって、とにかく他の五大学が普段通りのプレーができないような、精神面で向こうが少し慌ただしくなってくれれば勝ちには繋がると思っています。変に練習でやってないことをするんじゃなくて、今までやってきたことを淡々とやって自分たちの流れに持ち込むというようなスタイルで勝ってきていると感じてます。毎年毎年勝ちが続いていますし、それはある意味で主将としては少しプレッシャーではあるんですけど、もちろん昨年から戦力としては落ちたっていうのもあると思うのですが、僕としては、勢いに乗れば勝ち点2も遠くないチームだと思うので、そこはプレッシャーを感じつつも楽しみではあります。
――今年の目標は
チームの目標は最下位脱出っていうのを昨年秋から掲げて、そのために前提として勝ち点2、複数勝ち点を目標としています。昨年はやっぱり勝ち点を一つとって最下位脱出できなくて、リーグ戦である以上順位争いをしなければ六大学にいる意味は見えてこないと思うので、僕たちが一つ勝って勝ち点をとったっていうのはすごく意味のあることなんですけど、毎年毎年ステップアップしていく中で次こそ最下位脱出してやろうっていうのはチームの中で目標として掲げています。個人としては、下級生から出させてもらっていて、打撃の方で結果が数字として出ていないので、結果は後からついてくるのですが、そこで数字として表れるような、打撃で貢献できればなと思います。
――意気込みを
東大が勝つっていうことが、六大学で一番盛り上がることかなと思っていますし、自分たちも本当に勝利と勝ち点を目標にして、この冬乗り越えて練習してきたので、また昨年とは一味違った試合が見せられれば良いかなと思うので、ただ頑張ります。
宮本直輝投手
――昨年を振り返って
昨年の秋、初めて本格的に投げることができました。リーグ戦のレベルの高さを実感したとともに、自分の中で「腕を振って投げれば程度勝負できる」という手応えを感じました。そういった意味でも充実したシーズンだったかなと思います。また、チームとしても勝ち点を取ることができましたし、目標を達成することができました。
――勝ち点を取った瞬間のお気持ちはいかがでしたか
今まで野球をしていた中でも感じたことのない不思議な感覚といいますか(笑)やはりとても嬉しかったですね。2回表(東大4―2法大)の走者がいる場面から登板したのですが、「とりあえず出来るところまで腕を振って投げよう」と思いながらマウンドに上がりました。
――秋季リーグでは投手陣の主軸として活躍されましたが、その飛躍の要因は
春は登板機会があまりなく、夏のオープン戦を迎えるにあたって自分の役割について考えました。宮台さんもいて、同級生の投手たちも投げている中で、後ろで腕を強く振って投げることが自分の役割かなと思いました。いろいろなことをしっかりと考えてから夏のオープン戦に臨むことができたのが良かったのだと思います。
――濵﨑投手(貴介=医3・鶴丸)や小林投手(大雅=経3・横浜翠嵐)など、新3年の投手陣の台頭が目立っています
そうですね。やはり練習から常に意識をして、ライバルたちに負けないように頑張っています。
――新チームの印象はいかがですか
去年の中心選手が抜けてしまって、個々の能力という面では落ちてしまうのかもしれません。ですが、その分「全員で戦おう」という意識が強くなっているので、そういった意味ではいい雰囲気が出来ているなと感じます。一人一人が「自分が引っ張るんだ」という強い自覚を持って戦うことが大切だと思っています。
――背番号1が決まったのはいつ頃ですか
新チームが始まって約2週間後に、監督から伝えられました。決まった時は、宮台さんが付けていらっしゃった番号ということもあって「頑張らないといけないな」という覚悟が生まれました。宮台さんからは「頑張れよ」と声を掛けてもらいました(笑)
――なぜご自身に背番号1を任されたのだと思いますか
明確には自分でもわかりませんが、チームからの期待が込められているのかなと感じました。投手陣の中心として頑張っていきたいと思います。
――今年のスローガンは「一丸」ということですが
去年の中心選手が抜けた中で、チーム「一丸」となって戦うことが大事だと思っています。チームで束となって勝負していきます。
――慶大に対する印象は
走・攻・守のどれに関してもレベルが高いですし、良い投手もたくさんいるという印象です。その上チームでまとまって戦っていて、手ごわい相手だなと思います。
――宮本投手から見て、昨季のリーグ戦で慶大が優勝することができたポイントは何だと思いますか
岩見さんを中心とした打線と佐藤くん、関根(智輝=環2・城東)くんなどの投手陣を中心とした守備が高いレベル同士でかみ合った結果なのかなと思います。
――昨季の慶東1回戦で、東大は慶大に勝利しましたが
慶大にとっては開幕戦でしたが、僕たちはすでにその前の週に開幕戦を迎えていたので、「勢いを持って、負けないぞ」ということをチームでも話していました。その勢いのまま押すことができたかなと思います。
――慶大で警戒している打者・ライバル視する投手は
打者では、下級生の時から中軸で打っている柳町くん、郡司くんです。投手では、同級生の髙橋亮吾くん、髙橋佑樹くん、津留﨑(大成・商3=慶應)くんを意識しています。
――慶大打線にはどのような対策を
やはり甘い球は強く打ち返されてしまうと思うので、とにかく丁寧に投げていきたいと思います。
――今季は両チームともに慶東戦での開幕となります
お互いに初戦ということもあって緊張すると思います。慶大は昨季の覇者ですし、初戦から自分たちも勢いで負けないようにしっかりと準備していきたいと思います。
――新しい東大チームのビジョンは
辻居、新堀(千隼・教養3)などの去年から出場している野手もいますし、自分たち投手陣がしっかりと試合を作ってロースコアで勝つという感じかなと思います。
――チームとしての今年の目標をお聞かせください
勝ち点2を獲得することです。そのためには、やはり投打が上手くかみ合わないといけないので、自分たち投手陣がしっかりとロースコアで抑えていきたいです。
――投打それぞれのキーマンを挙げていただくと
「打」ではやはり、辻居と新堀ですね。「投」の方は自分になってくるかなと思います。
――では、個人としての目標を
防御率を低くしていきたいです。2点台を目標に頑張ります。
――最後に、今後に向けての意気込みを
新チームになり、また春から厳しい戦いが多くなるとは思いますが、自分たちらしい野球をできるよう、しっかりと準備して臨みたいと思います!
辻居新平選手
――昨シーズンを振り返ってみていかがですか、まずは春からお願いします
個人的には春はリーグ戦に初めて出て他大学の球やプレーを身に染みて体験して、自分の戦うべき相手と目指すべきところが分かったシーズンでした。その中でも綺麗ではなかったのですがヒットを打てたのは嬉しかったですし、自分が野球部の中で一歩前進できたかなと思いました。
――秋はいかがでしたか
慶大戦の初スタメンはいろんなアクシデントが絡んでの事ではあったのですが、意外と自分のやってきたことが発揮できた、意外と自分のプレーが六大学で通用し始めているという実感ができましたし、結果としていい形で終われたので良かったと思います。
――秋にレギュラーを掴んだ要因は
バッティングだと思います。中高は軟式をずっとやっていたので、球も早いし硬式球に慣れない、速い球をどう捉えるかというなかで、自分のスイングを変えたりはしたのですが、一番変えたのはタイミングの取り方で、速い球にも負けないバッティングをできるようになったのが良かったと思います。
――チームとして昨季を振り返るとどうでしたか
実力ある先輩が多く期待されていたにも関わらず、結果が出なかったのが春でした。原因はいろいろなアクシデントや不調、宮台さんが本調子では無かった事などがあると思いますが、チームが一つになれていなかった、まとまれていなかったなと思います。夏の練習試合も苦しい試合が続いてオープン戦もなかなか勝てない、一つになりきれていないというなかで、初めて慶大相手にシーズンで勝利できました。勝てない勝てないの負のスパイラルに追い込まれるなかで、慶大相手に勝利できたのは大きく、そこからようやく一つにまとまってそれ以降の法大相手にもいいチームで、一つにまとまって、実力ある選手たちも本来の実力を発揮して強いチームになったかなと思います。
――法大戦はストレートでの勝利。その時の気持ちは
うちのチームは戦力的に層が他大学よりも薄いので、勝つのは2連勝しかない。3戦目まで持ち込むと疲れも出ますし、投手も疲れてきますので、短期決戦のイメージで初戦勝ってそのままの勢いで2回勝たなくてはいけない。そういう話はしていましたので、ストレートで勝ち点を取った時は本当に嬉しかったですが、ある意味2戦目はここで勝つしかないという気持ちは強く持っていました。
――新チームの印象は
上級生、特に最上級生の4年がまとめようとしていてくれています。昨季の、春にまとまりがなくて秋にまとまりが出てきて勝てたという経験を生かせてますし、実力のある先輩方が抜けるなかで、より強くまとまらなくてはならないということは僕たちも認識していて、その役を最上級生が買って出てくれているのかなという気はします。そのおかげで、下級生はのびのびと実力を上げることに集中できてると思います。
――新チームになって宮台投手、田口選手、楠田選手、山田選手といった大きな柱が抜けましたが
投手は宮台さんの穴を何人かでまとまって埋めていくということが大事だと思います。一人の穴を一人で埋めるというのは、目指すべきところではあると思いますが、まだまだな部分もあると思うので、特に宮台さんに関しては何人かで集まって補ってみんなで勝つ。野手も同じ感じでやっていきたいと思います。
――新チームは勝つためにどう戦っていくイメージですか
勝つには攻撃力が無いと勝てないと思います。特に宮台さんのような絶対的なエースがいるわけでは無い状況で、投手が穴を埋めるといってもそれなりの得点力が無いと勝ち点を掴むのは難しいのですし、自分は野手なので攻撃力は何より重視して戦っていきたいです。かといってこのチームには田口さんや楠田さんのように、長打力があるわけでは無いので、やるべき事をしっかりやって、様々な戦術を絡めて上手く相手を切り崩していけたらなと思います。
――今年のチームのスローガンは“一丸”です
一丸で、まとまって勝ちに行こうという意識です。それでも勝たないと“一丸”とは言えませんし、みんなで仲良くまとまるというわけではないので、絶対勝つという高い意識を持った上で1つになるという意識を持ちたいです。
――外野手は去年のメンバーも残り、やりやすさもあるのでは
楠田さんが居なくなった穴は大きいですけど、外野手は身体能力の高い人も多いですし、連携も今まで出てた人たちが多い分、いい雰囲気でお互いを高めてやっていけているのでそういう意味ではやりやすさはあります。ただ、競争の激しさは熾烈なところではあります。
――慶大の印象は
投手は佐藤くん中心に優秀な投手が揃っていますし、野手も下の代から出ている柳町や郡司といった良い選手が揃っているチームだと思うので、怖い印象はあります。
――去年慶大が優勝した要因は
個人的には佐藤くんが突然ブレイクして、エース格の投手が出てきたというのが終盤戦勝ってきた要因だと思います。それと、勝負強い打線。どこからでも点を取れる打線の強さ、特に岩見さんやしみしょうさん(清水翔太=H30総卒)を中心に郡司や柳町とどこからでも点を取ることができる攻撃力の高さが優勝できたポイントだったと思います。
――秋の慶大一回戦では東大が勝利を収めました。振り返って
慶大にとっては開幕戦。僕らにとっては2回戦だったということで、慶大は開幕戦ということや東大に負けたく無いという独特の緊張感があるというのはこちらでも認識していたので、勝つために最初から勢いで押し込んでいくしかないと考えていて、それが結果としていい形で勝てたので大きかったです。
――辻居選手は慶大1回戦以降全試合でスタメン出場。掴んだものは
慶大の1回戦で2安打打つことができて、自分の打撃に自信を持てました。全く打てないことは無いんだという自信を持てたというのは大きかったですし、3回戦では本塁打に3安打と自分の思い切ったスイングが良い結果につながる事が多く、結果的にずっとスタメンで出してもらえました。自分としては1番打者があの代の鍵でしたので、自分がその役割を全うできているというのが自信になりました。
――慶大3回戦の本塁打を振り返って
点差も開いていたので長打を狙おうというのは頭にありましたし、三枝さん(遼太郎=商4・慶應)が捕手だったのでなんとか結果を出したいなという思いもありましたけど(笑)(注:辻居選手と慶大三枝副将は小学校時代同じ少年野球チーム)ボール先行になって甘くくるかな、思い切り振っていこうと思っていた結果が最高の形で出ました。
――今年の慶大の対策は
僕は野手なので、いかに投手を打ち崩すかですかね。特に佐藤くんやオープン戦で投げている色々な投手の動画を見たり、配球を振り返って、対策を練っています。
――今年は東大にとっても慶大戦が開幕戦になる
開幕戦は僕らも緊張しますけど、向こうも緊張します。その開幕戦に勝たないと上手く自分たちの流れに持っていけないので、難しいことではあるのですが、開幕の慶大戦で自分たちの野球をして勢いよく勝って、良いシーズンにつなげていきたいです。
――憧れの人は
楠田さんは秋の活躍を見て、あれくらい打てるようになりたいなとは思いましたし、自分があれくらい打たないとというつもりでやっています。
――高校までは軟式をやっていて、東大に入ったら硬式をやるというのは決めていたのですか
軟式はやり切ったかな、という気持ちはありましたし、とりあえず東大に現役で入ることができたら硬式に挑戦してみようかなと考えていたら、無事入ることができましたので、悔いないように挑戦してみようかなと思ってやりました。
――高校は投手をやっていましたが、大学でも投手には挑戦していたのですか
軟式の時に投手をやってはいたのですが、コントロールが悪くて。球は速いけれどコントロールは悪いというのは、打ちにくい軟式では押し込めるのですが、硬式だと難しいかなと思いました。あとは宮台さんというすごい投手がいましたし、自分も六大学に通用する選手になりたいという目標があったので、自分の活かせるポイントは足かなと思ったので、野手で行こうというのは最初から決めていました。
――硬式に入って苦労したのはやはりバッティングのタイミングですか
球が速くて。軟式だと120キロ程度ですけど、硬式だと130キロは絶対超えてきますし、早ければ140キロもバンバン投げてくるので、自分の思うタイミングでいい打球をいかにしたら出せるかというのは一番苦労しました。
――リードオフマンとして意識していることは
特に初回の一番最初は自分としてもこだわりを持っています。そこで相手に勢いをつけるような印象の悪い打席を送るとその後の打者もズルズルいってしまうという意識はあるので、初回の頭は絶対打つという思いは他の打席よりも強いですし、相手に勢いを与えない、こっちに勢いをつけることができるように積極的に振っていこうという意識はあります。
――チームとしての目標は
チームの目標は勝ち点2を掲げています。ただ勝ち点2と3でやることが変わるかと言われると、変わらない。ただ今回勝ち点1を手にして、1と2の違いというのは感じています。他大学はどこもレベルが高いですし、どこに勝ちたいとか戦略を建てられる立場ではないので、常に相手の大学を分析して、どうしたら勝てるのかを考えてやった結果、どこかで昨季の法大戦のように勢いのある結果が出て、それが勝ち点2以上の結果につながればいいなと思います。
――個人としての目標は
秋にしっかり結果を出せた分、マークがあると思うので、そのなかでいかに結果を残すかが大事だと思います。また、自分が中心となって攻撃を組み立てていかなくてはならないという自覚はあるので、3割もう一度打ちたいですし、チーム全体で今年は長打力が落ちているので、自分が長打も打っていけたらとも思います。そこに足も絡めて、チームの攻撃の要として結果を出せるようにしたいです。
――最後に意気込みを
まずはチームが勝つこと、それを最優先に考えつつ自分が中心として結果を残して、東大だからといってなめられるのではなく、東大の辻居はケアしたいと言われたいです。特に開幕戦はしっかり勝って、チーム全体として今年の東大は侮れないなと言われるようにやっていきたいと思います。
(取材・尾崎崚登、髙山実子、川下侑美、新池航平)
ご協力いただいた東京大学野球部の方々、ありがとうございました。
なお4名への取材は3月21日におこないました。