【野球】秋季開幕前特集 Keep On GOING! ⑤林卓史助監督

秋春連覇を達成し、全日本大学野球選手権でもベスト4まで駒を進めた慶大野球部。慶大史上2度目の3連覇をかけた秋のシーズンに向けて、注目選手に話を伺った。あと一歩に迫った日本一へ、陸の王者の進化は止まらない。

慶大躍進の立役者の一人だ

―特徴のあるピッチャーが揃ってきてくれた―

秋季開幕前特集・第5回にお話を伺ったのは主に投手陣の管理を行う林卓史助監督だ。一昨年に慶大野球部の助監督に就任して以降、長年課題と言われてきた投手陣を見事に再建し、六大学トップの防御率を誇るまでに成長させた。投手陣へのだけでなく、野手へのアドバイスも独特のフレーズを駆使して選手たちを導いてきた。そんな慶大野球部の躍進を支えた林助監督に投手陣への指導や考え方についてお話を伺った。

――春を振り返って

まだ弱いなと思って始まりましたけど、本当に一生懸命学生がやってくれました。1試合やるごとに手応えがすごくあって、チームになっていたという感じで、リーグ戦に関しては良いシーズンだったなと思います。

 

――弱いと思っていた原因はなんでしょうか。

野手はいないし、中心になる投手が分からない状況でした。毎年毎年我が大学は選手が誰もいないと言いますが、本当にいないなという感じでした。

 

――逆に強みはなんでしたか

ピッチャーはよく頑張ったと思います。打線も必要不可欠な点は取ってくれたし、よく粘ってチームとして戦ったと思います。

 

――春のリーグの中で投手陣は活躍していた試合を挙げると

立教の2戦目、3戦目だったり、明治の3試合は全部頑張ったと思います。

 

――そのなかで見つかった課題はどんなものがありましたか?

シーズンを乗り切る投手層はまだないので、欲しいなと思いましたね。

 

――チームのシーズン防御率も六大学の中でダントツの一位でした

防御率2を切りたくてU2、U2(アンダー2=2失点以下の意味。イギリスの同名有名バンドから名づけられた)と言っていましたが、最終的には2を下回れませんでした。まだ宿題があるんだなと思いましたね。

 

――髙橋亮吾投手(総3・慶應湘南藤沢)は防御率1.23と好成績を残していました

よく投げてくれました。ちゃんと課題に向き合ってくれたなと思います。ちゃんと投球で工夫をしましたし、ボールもちゃんと磨いてくれたし、そういう意味では良くやったと思います。頭も良くて、身体も自分が思った通りに動くので、決めた方向性さえずれなかったら、亮吾はいいピッチャーだなとは思います。

 

――髙橋佑樹投手(環3・川越東)も10試合に登板し自責点0でした

すごいですよね。めちゃくちゃありがたかったですし、我々の起用に彼が応えてくれました。マウンドで強いし、ちゃんと鍛えてからマウンドに上がればあれくらいの力は出してくれんだなというのは思いましたね。去年の春も良かったですが秋はあまり良くなかったので、秋はだめにならないようにしっかりやってほしいです。

 

――石井雄也投手(商3・慶應志木)もストッパーとして活躍していました

石井の場合は去年成り行きはあるけど優勝投手になったというのが大きかったと思います。オープン戦もちゃんと抑えるし、球もいいです。1イニングでちゃんと実力出せばあれくらいやってくれるなというのはありました。

 

―フレーズは印象に残したい―

 

インタビューに答える林助監督

――おととしに加藤拓也投手(H29政卒・現広島東洋)が卒業してからゼロからの投手陣構築でしたが、現在投手王国と言われるまでの道のりを教えてください。

加藤がいなくなる前から投手陣はやばいなとは思っていました。まず力のあるボール、140㌔投げられる人を探しました。その中で菊地(恭志郎=政4・慶應志木)と髙橋亮吾が出てきました。加藤がいた最後のシーズンもチーム防御率は2.04くらいなんですよ。2016年の秋のシーズンに関しては菊地は11イニングを抑えて、髙橋佑樹もちょっと抑えてたりはしてました。去年の春は打線に助けられたり、郡司がよく工夫してやってくれたりっていうのがありました。その中でも佐藤がずば抜けていい球を投げていました。その佐藤くらいの球を投げるか、あるいはそれ以外の長所を持って欲しいと取り組んでもらって、それなりに特徴のあるピッチャーが揃ってきてくれたのかなっていうのが今年の春です。正直佐藤と関根(智輝=環2・城東)が本調子だったら大学選手権は優勝出来たのかなと思います。そういう意味では、素質がずば抜けるものじゃなくても、ある程度特徴のあるピッチャー陣を形成できればいいかなと思います。そしてずば抜けた人間以外も全体が頑張る集団、良くなろうという集団だったら誰か出てくるだろうと思います。去年の場合は内村(僚佑=H30政卒)もすごいピッチャーリーダーでしたし、今年の田中(裕貴=環4・芝)もすごいリーダーシップにいいところがあります。そういう意味では出てくるピッチャーが仕事をしてくれたり、特徴をなんとか作ってくれるような感じになり、特徴のあるやつから、それなりに良くなってきてものやつから選べるチャンスがありました。

 

――数字を意識されているということですか?

ブルペンで来てるボールが「なかなかいいぞー」とかではなくてちゃんと「お前の球打てねえよ」とか「100%打たれるよ」っていうのをエビデンスを持って言ってやりたいと思います。逆にみんな自己評価高いので大したことないぞという時もあります。「大したことあったら慶應義塾高校その前に甲子園行ってるぞ」と言ったりします(笑)

 

――林助監督はよく戦略立てをされていると思うんですけれども戦略を作る上で大事にしていることは何かありますか

僕はふざけたり遊んでるだけですよ(笑)言っていることは「防御率2点以内」や「センター返し」など基本的な事です。けれどもそんな事ってみんなよくわかってるんですよね。きっとそれは何とか頭に残したい、勝ちたいからそれが頭に残ってくれさえいれば「そういえばセンター返しって言ってたな」という風に思い出してくれればいいと思います。いいスローガン、良い戦略だとしたらそれが学生たちの頭に残ってくれた方がいいなと思って。あとおじさんになったらわかると思いますけどダジャレが言いたくなります(笑)なんでかわからないですけどくだらないダジャレが言いたくなるんですよね(笑)フレーズについては好印象に残したいっていうのはひとつあると思います。

 

――標語にするというのは大きい意味があるということですね

そうですね、上手なキャッチコピーできたらいいですけれどもあまりできないからなんかみんなが覚えるような言葉ができたらいいなと思います。

 

――投手を評価するポイントを改めて教えてください

ピンチで頑張れるかどうかというところですね。ある程度のボールが投げられれば、頑張れると思います。

 

―勝って卒業してほしい―

 

試合中はブルペンとベンチを行き往きして投手運用を行う

――夏に取り組んだことを教えてください

あまりないですね。うちは日本一オフが長いんじゃないかなと思うので、練習は自主的になってしまいます。だからやる気があってそこまで作ってきてくれたやつには、「こうしたら」とアドバイスをしているだけでピッチャー全体の防御率2点以内とかっていうのは現時点では特に気にしてはいないです。とにかくいい球を投げてほしいんです。これはもう絶対の条件です。半分くらいは僕の趣味もありますけど、いい球を投げれば抑えられるので。あと、もう少し加えるのであれば、まず前提としてうちのピッチャーはほとんどが甲子園出ていないです。でも「慶應はピッチャー無名だけどいい球投げられるじゃん」と思われるようになって欲しいんですよね。けれども、「無名だけれども技術的に上手いピッチングするじゃん」とはならないと思うんですよね。経験があるわけでもないし、どこか大舞台で投げ切ったという経験があるわけでもないので、もう持っているボール勝負でいった方がいいのではないかと思います。

 

――投球術というのもいい球であるということに含んでいますか

それも大事ですが、経験がいるなと思います。うちのピッチャーはさっき言ったようそこまで経験もないけれどもすぐ勝たなきゃいけない状況だったので、投球術を磨くというのは優先順位が高くないです。髙橋佑樹とか亮吾とか菊地とかはそれなりにリーグ戦を投げていくうちになんとなく感じを掴んできてるというのはあります。けれどもでもそっちには逃げないでほしいなと思います。

 

――秋に期待する投手はいますか

教科書通りに言えば全員期待してますけれども、太田(力=経4・桐朋)とか津留﨑(大成=商3・慶應義塾)はやってほしいなっていうのはあります。誰か出てこないとなかなか勝てないと思いますし、出てきた方が面白いです。こっちも選択の余地があるほうが面白いですし。あとやはり、木澤(尚文=商2・慶應義塾)や森田(晃介=商1・慶應義塾)もいいピッチャーですね。

 

――秋のリーグが始まるにあたって、気をつけていることはありますか

このチームは本当に毎日毎日一生懸命やって毎日毎日成長していきますからこの成長を邪魔しちゃいけないなというのが一番です。勝つ、負けるは監督や僕の責任です。けれども一生懸命にやっていったら特に悪いことは起こらないかなと思います。何か問題が起きたり、課題が出てきたりしてたら対応する能力はこのチームにはあるので。

 

――最後に意気込みをお願いします

3連覇もあるけれどもピッチャーにはいい球を投げてほしいですし、勝って卒業してほしいです。日本一になりたいというのは自分の願望ですけれども、ちゃんとやったら手の届くところに来てるというリアルさを持って各選手がやってるというのを感じます。本当に一生懸命やってますからそれにふさわしい結果が出ればいいなと思います。

 

――ありがとうございました!

この取材は8月29日におこないました。

(取材・小林歩)

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