【野球】 4年特集 Force≒4th ②野手対談

秋春連覇を成し遂げた慶大野球部。他大学と比べて明らかに戦力が優れているわけではない中での連覇は4年を中心としたチーム力による野球の勝利でもある。特に今年はレギュラー野手に4年は2人、4年の投手もメンバーには2人だけと出場選手が少ない中でそれぞれがチームを支えるために動き、栄冠を勝ちとってみせた。今季は各週末に4年を特集したインタビューを掲載。”ラストシーズン”となる秋への意気込みを語ってもらった。

勝負どころのカギを握る”ジョーカー”たち

第2回はベンチ入りしている3人の4年野手による対談をお届けする。大平亮(環4・鎌倉学園)(以下大平)、長谷川晴哉(政4・八代)(以下長谷川)、植田清太(総4・慶應)(以下植田)らは代打や代走、そしてベンチからの声掛けなど様々な役割を全うし、チームに貢献した。4年である彼らからお話を伺うと、今の慶大にある“FAMILY”のような関係性が垣間見えた。

――まずは他己紹介をお願いします

大平:植田清太は外野手で慶應義塾高校。運良く同期になれて、僕は一浪してるので年齢も同じです。一緒に遊びに行ったりとかしてます。とても面倒見が良くて、僕のわがままにも付き合ってもらったりして仲良くしてもらってます。

 

植田:長谷川はチームのムードメイカーで、声でチームを引っ張ってくれる存在です。4年がチームを引っ張っていかなきゃいけないというなかで、こういう人がいてくれると助かります。正直僕は声で引っ張っていくタイプではないので本当に助かっています。『努力』という言葉が一番似合う男だなと思います。

 

長谷川:大平は、最近仲良くなりました(笑)選手としてはすごく真面目で、表ではクールぶってるけど、裏では真面目にやってる感じですね。最近は活躍もしはじめ、4年から盛り上がっていこうかなって感じです。

 

――4年生全員で遊ぶことは

大平:半年に一回同期で食事会をやるぐらいですね。

 

――この夏、一番の思い出はありますか

長谷川:キャンプ楽しかったな。

 

大平:北海道キャンプは涼しかったですし、楽しかったですね。(大久保秀昭)監督との距離も縮まったかなと思います(笑)

 

植田:どういうこと?(笑)

 

大平:僕は4年になって初めてAチームに入れてもらったんで、そういう意味で監督との距離が縮まったかなと…

 

――現在のチームの状況は

大平:今は三連覇に向けてやっていこうって感じなんです。今(取材日は8月16日)はみんなそれぞれの目標に向かってやってる感じですね。

 

代走や守備固めとして活躍した大平

――昨年のチームと違う点はありますか

植田:去年よりはまとまってるかな。

 

大平:4年のまとまりが、メンバーに入ってない選手も含めて昨年よりもあるかなとは思いますね。

 

――やはり、そういうところが優勝につながった

一同:それは間違いないですね。

 

大平:昨年はスター選手、4年の力で勝ったという感じでした。

 

植田:春はベンチ外の4年の働きが大きかったんじゃないですかね。

 

大平:リーグ戦に出場している選手だけじゃなくて、チーム全員でやってる感じが違うところですね。

 

――一番かわいがっている後輩を挙げるとしたら誰ですか

植田:杉本京平(理3)くんですね。

 

長谷川:熊本の後輩の金澤爽(商3・済々黌)とマネージャーの後生川凜(総3・熊本)です。熊本のつながりが野球部の中の派閥の1つとしてあって(笑)そこがとても仲良いです。

 

大平:齋藤翔(政3・國學院久我山)は、いろいろなところで仲良くしてもらってます。プライベートでも仲がいいですし、野球でもお互いにアドバイスしあったりして、お互いに良い感じかなって思います。

 

――逆に4年生の中で一番優しい先輩は

植田:これは俺しかいない…(笑)

 

長谷川:自分で言う?(笑)やっぱり内田蓮(総4・三重)かな。

 

長谷川晴はついに東大2回戦で初安打を放った

――それぞれ「ここがすごい!」と思う点は

植田:長谷川は、同じ代打のポジションなんですけど、打席に立つと吠えるんですよ。やっぱり気迫があって、これだけ打席に立って気迫を出せるのはすごいな。長谷川だったら詰まってもヒットを打つんじゃないか、ミラクル起こすんじゃないかと思いますね。

 

長谷川:亮(大平)は周りが見てないところでちゃっかり努力してるところがある。きついところをあんまり見せないんですよね。僕なんかきついとすぐに顔に出てしまうんですけど、へっちゃらな顔をしているんですね。いつもはふざけているけど、やるときはやる。オンとオフがしっかりしています(笑)

 

大平:(笑)清太は能天気というか、何も感じないところが逆にすごいなと思います。どんなにプレッシャーがかかっていても、何も感じないで自分のプレーができるのでそれがすごいなと思います。

 

植田:そうでもないです。考えないようにしてます(笑)

 

大平:能天気なところはうらやましいなと思います(笑)僕はいろいろ考えてしまうので、まっすぐで素直なところはすごいなって思います。

 

――6月下旬に行われたマチュアカップを振り返ってどうですか

大平:僕自身はフルで試合に出ることが、2年ぶりぐらいだったので試合に楽しめたかなと思います。楽しめた結果が良い結果につながったと思います。

 

長谷川:同期でまとまって練習したり、試合したりする機会がなかったからこそ、楽しかったなというのが一番の感想です。まんぞー(吉田将大=商4・慶應)のホームランとか盛り上がったし、楽しくやれたかな。

 

――同期と試合ができる喜びが強い大会だった

一同:そうですね。

 

――そのなかで、個人として上のレベルに行こうという意識はありましたか

大平:僕たちは(春のリーグ戦)メンバーに入っていたので、「引っ張れよ」と監督からも言われていました。

 

長谷川:いつもはサポートしてくれてて、練習できてない選手がヒット打ったりすると、うれしかったです。その反面、「俺打ってないな」とも思いましたね(笑)

 

――春のリーグ戦を個人的に振り返ってどうでしたか

長谷川:僕が立ったのは2打席だけだったんですけど、どちらも全日本代表の投手(立大田中誠・早大小島)と対戦できて、とても良い経験になりました。春は満足できていないので、春の経験を生かして、秋につなげていきたいなと思っています。

 

植田:左の代打としてやってきました。僕が出る場面はチャンスかサヨナラの場面とかがすごく多かったんですが、結果が出ませんでした。そういう場面で起用してくれた監督には感謝してますし、春は期待に応えられなくて悔しかったです。春は自分の実力のなさを痛感しました。秋で打って、監督の信頼を取り戻したいと思ってます。

 

大平:僕はベンチに入ったのが初めてで、何もかもが初めての経験でした。毎カード、神宮でアップするだけで鳥肌が立ちました。大学野球までやってよかったなって思いました。すごく新鮮で、楽しかったです。なおかつ、東大戦でラッキーヒットですけど、ヒットも打ち、大事な場面で代走として監督にも起用していただいて、もう一つ上のランクに行けるんじゃないかなと自分の可能性を見つけられたリーグ戦だったと思います。

 

――途中出場の際に、気持ちや技術の面でどのような準備をしているのですか

長谷川:5回の裏に目を氷で冷やしたりしてます。

 

植田:トレーナーに勧められて、試合をずっと見ていると目が疲れて鈍くなるから冷やした方が良いと言われました。それは、春やってましたね。あと、試合前にチョコを食べてました。試合前にロッカールームで隣の柳町達(商3・慶應)と郡司裕也(環3・仙台育英)にあげるんですけど、そしたら二人が打ってくれました。チョコをあげることでチームに貢献していましたね(笑)

 

大平:ブラックコーヒーを試合前に買って飲むくらいですかね。これといって決まってルーティンをするというよりは、試合をよく見ていつ出番が来るかなと予想して、ストレッチをしてたぐらいですね。

 

植田清は左の代打の切り札だ

――代打や代走は一瞬で勝負が決まる世界でありますが、どのような意識でプレーをしていますか

大平:僕は代走なので、絶対に次の塁に行ってやろうとか、絶対にホームに帰ってやろうとかそのような気持ちで、あまりマイナスなことを考えないようにしています。俺が活躍してやろうとかよりは、自分の与えられた役割をしっかりこなせるように、ポジティブな気持ちでグラウンドに行くようにしています。

 

植田:ここで絶対に打ってやろうという気持ちは秘めています。

 

長谷川:試合前に準備は全てやり切ってしまいます。試合中は相手投手を見ながら、アプローチを考えています。打席に立つときだけ試合に入ると緊張してしまうので、ベンチにいるときから試合に出てるつもりでずっと声を出すようにしてます。

 

植田:春思ったんですけど、打席で余裕と自信がないと緊張して力んで打てないです。その前の普段の練習が大事かなと思いましたね。振って振って振って。自信がつくまでやることが一番大事なことですね。

 

――長谷川選手がベンチから選手に声援を送るのは、なにをきっかけにはじめたのですか

長谷川:高校の時からもうただただうるさいやつでした(笑)大学1年か2年の時に、練習試合でここで打たなきゃやばいという場面で、打席で自分に活を入れるために吠えながら打席に入ったんですよ。そしたら、ヒットは打てなかったんですけど、相手投手も嫌だったらしいぞっていう話を聞いて、声を出していくことって大事なんだなって思いました。それに、ベンチで声を出してると、楽しいし、自分も試合出てるわと思えました(笑)自己満足かなとも思いますけど(笑)でも、選手も僕の声聞いて安心してくれたら、それはそれで良いんじゃないかなって思います。

 

――後輩たちの活躍をどのような思いで見ていましたか

大平:チームが勝てれば、誰が出場してようが関係ないと思ってみていました。

 

――ここまで野球部としてやってきて、振り返ってどうですか

大平:僕は1年の頃からずっと二軍でやってきて、自分の実力を監督の前で出せない時期が長かったんです。でもそういった中でも、自分の練習法を継続してやってきたことが、今こうして実を結んでいることを考えると、めげずに自分を律してやってきてよかったと思います。

 

植田:高校の時はスタメンで出てたので、大学に入ったら活躍できるビジョンを描いていました。でも3年になってやっとA(チーム)に上がって、試合に出るとしても代打だけ。やっぱり、スタメンになることが目標じゃないですか。そこで、自分の実力のなさを改めて実感しました。上には上がいるなって。

 

長谷川:僕はめちゃくちゃへたくそだったんですけど、バットだけは人一倍振ってきたなと思います。3年の夏にオール早慶戦でホームランを打ったことが転機となって、3年の秋のリーグ戦、東大戦で一度打席に立ちました。でも、何もできずに三振して、その後はベンチに入れなかった。4年になって、改めて自分のポジションってどういうものなのかなって考えたときに、代打だけじゃこのチームにいる意味ないなって思ったので、ベンチの中で声掛けとか4年としてできることをやろうと思いました。4年間後悔しないような練習、考え方でやってきたかなと思ってます。

 

――ラストシーズンの秋ですが、これまでとは違う特別な想いはありますか

大平:それはもちろんあります。僕は、野球人生最後だなと改めて思っているので、「高校野球の夏の大会以上に頑張ってやろう」という気持ちが強いですね。

 

植田:本当にその通り。出し切ることしか考えていない。悔いないようにやり切る、それだけですね。

 

長谷川:人生で一回ぐらい日本一になってみたいな。優勝して日本一の景色をみんなで見たいな、楽しみたいなと思ってます。今は野球に没頭して、やりたいなと思ってます。

 

――現段階でやり残していることはありますか

大平:日本一じゃない?

 

長谷川:日本一だな。

 

植田:日本一しかないね。

 

――秋に向けての個人的な目標はありますか

大平:僕は今、バッティングの調子が良いので、きれいなヒットが打ちたいです。レギュラーも頑張って狙っています。最後はスタメンで出れるように頑張りたいです。

 

植田:監督から信頼される選手になること。この場面だったらお前いけ、みたいに起用され続けることです。勝負強くなることですね。

 

長谷川:僕はチームの流れを良くすることですね。1本打ちたいというのもあるんですけど、最終的にチームが勝つこと。勝てるチームに必要な存在になりたいなって思います。僕の中では、ベンチの中が試合みたいなところがあるので、ベンチでできることはあると思います。それをした上で、代打で大事なところで一本打てるようにしっかり準備したいなと思います。

 

仲の良い雰囲気が伝わった

――最後に秋に向けて意気込みを一言お願いします!

長谷川:日本一になります!

 

植田:最後は全員笑顔で終われるように、日本一になります!

 

大平:全てを出し切ります!

 

――ありがとうございました!

(取材・菊地輝)

この取材は8月16日に行ないました。

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