【野球】4年特集Force≒4th ⑥コーチャー対談 泉名×大久保

秋春連覇を成し遂げた慶大野球部。他大学と比べて明らかに戦力が優れているわけではない中での連覇は4年を中心としたチーム力による野球の勝利でもある。特に今年はレギュラー野手に4年は2人、4年の投手もメンバーには2人だけと出場選手が少ない中でそれぞれがチームを支えるために動き、栄冠を勝ちとってみせた。今季は各週末に4年を特集したインタビューを掲載。”ラストシーズン”となる秋への意気込みを語ってもらった。

誰より熱い思いを持った2人だ

第6回は一塁コーチを務める泉名翔大郎(商4・慶應志木)と三塁コーチを務める大久保貴裕(商4・慶應)だ。試合に出場するメンバーを支える学生スタッフの中核、チーフスタッフを泉名が副チーフスタッフを大久保が務めている。選手とともに苦難と戦ってきた2人にここまでの4カードを振り返ってもらうと同時に、早慶戦に向けての意気込みを伺った。

――今季ここまでを振り返って、チームの状態は

大久保:選手がどうこうというよりは1年から4年まで全員で戦っている感覚があります。1カード1カード厳しい戦いは多いですが、粘って勝ち点を取れてきたと思います。

 

泉名:東大戦以外ですべて日曜日に負けて第3戦にもつれこんでしまって、選手たちは体力的にも気持ち的にも負けられない厳しい戦いにはなっているのですが、全員でここからだという雰囲気を作ってくれています。それで、むしろ第3戦に行くからこそ、こういう慶應の強さが出来上がってきたのかなと思います。

 

――東大戦では3連覇をかけた開幕カードになりましたが、チーム全体の雰囲気などはいかがでしたか

泉名:簡単なカードは無いですし、東大戦でも途中まで点が取れずに苦しい戦いにもなりました。ただ、開会式から最後終わるまで、自分たちがずっと一番でいようという話はしていました。

 

大久保:本当に簡単に勝てると誰も思っていなくて、今までやってきた野球をしっかりと出そうという試合の入り方をしていました。

 

――明大戦はロースコアのゲームから一発でものにしていきました

泉名:野手の方は、「明治はピッチャー陣が良いのでそこで点を取ってこそだぞ」という中で臨んで、なかなか点が取れませんでした。そういう中で中村(健人=環3・中京大中京)や嶋田(翔=環2・樹徳)が今までチームで出ていなかったホームランを打って勝てたというのが収穫としてありました。あとは、守りをしっかりとやってきた中で、しっかりと守れたのは自信に繋がったかなと思います。

 

大久保:加えてですけど、投手陣が踏ん張ってくれていたのが、後ろの守備だったり、その後の攻撃に繋がっていたのかなと思います。

 

インタビューを受ける泉名

――法大戦では劇的な試合がありました

大久保:2回戦の負けている段階で4年の大平(亮=環4・鎌倉学園)が粘ってヒットを打ったり、リリーフの前田(和真=商4・津西)が気迫のピッチングを見せてくれて、そういった4年の意地というのが、2戦目から3戦目に繋がって、ああいった試合ができたと感じています。

 

泉名:長すぎて思い出せないくらいでしたね(笑)。序盤にもターニングポイントはいっぱいあったんですけど。負けたら優勝はないなというくらいの試合だったので、大平が土壇場で打って追いついて、最後に長谷川(晴哉=政4・八代)が打って、4年で勝てて良かったなという試合でした。ただ、あの試合があったからこそ、本当にいいチームだと思いましたし、ああいう試合ができるチームだと分かったので、絶対優勝したいと思えるようになりました。

 

――サヨナラ勝ちを経て、チームに変化などもあったのでしょうか

泉名:あの試合に限らず反省して試合をしてという感じなので、勝つたびに自信にはなります。ただ、あの土壇場で追いつけた経験は、諦めない姿勢とか4年が頑張ったらこれだけできるというふうに思えました。

 

大久保:最高の試合をしようという姿勢でバッティング練習から入って、そういった姿勢ができて、ああいう試合ができているのかなと思います。

 

――立大戦では髙橋佑樹(環3・川越東)投手が好投を見せました

泉名:ナイスピッチングだよな。

 

大久保:本当に助かった。本当によく投げてくれましたね。

 

泉名:3戦目は、また負けたら優勝が遠のく中での試合で、3年以下に背負わせてしまっている部分が多いのですが、本当に頑張ってくれているなと感じました。3戦目のヒーローインタビューで瀬戸西(純=政2・慶應)が「このチームも4年生も大好きなので、絶対優勝したいです」みたいなことを言ってくれて、そういうのも嬉しいですし、早慶戦も取りたいなという気持ちが強まりました。

 

大久保:2戦目の負け方が、追い詰めたのに勝てなかったという負け方で、今までの落とし方とは違って、精神的にきつい中での3戦目でした。その中でボンバー(髙橋佑)がよく投げてくれました。なので、早慶戦ではなんとか野手がピッチャーを助けられるようにと話をしています。

 

――3回戦までもつれても勝ち切れる要因は何なのでしょうか

泉名:しっかり練習してきているという自信はあります。3回戦になるとやはり体力的にも精神的にもきついですけど、しっかり練習してきているという自信があるからこそ、気持ち的に強く戦えていると思います。あとは平日での戦いですけど、みんなができるだけ神宮に来てくれて、「3戦目の慶應だぞ」という空気を作れていると思います。

 

大久保:そうですね。まだまだここからだぞという空気はあると思います。普段の取り組みから絶対に負けてないという思いがあるので、そこに繋がっているのかなと思います。

 

泉名:練習の時から3戦目もしくは4戦目でも強く戦えるチームになろうというふうにしているので、そこはぶれないですし、今季はカードを重ねるごとに3戦目を取れたことが重なって、そういう雰囲気が作れているのかなと思います。あとは、リーグ戦で1敗もしないことは難しいので、連敗をしないチームにしようとよく話していて、そのためにしっかりと負けを受け止めて、そこから切り替えてできるようにしています。

 

インタビューを受ける大久保

――春とのチームの違いは

泉名:戦力的に言えば、河合(大樹=総4・関西学院)など4年の選手がいないという中で、いるメンバーで勝っていこうという話をして、むしろこれをプラスに変えていこうということで、変わったところだと思います。中村とかは、河合がいたら出てなかったかもしれないですけど、一番の活躍をしてくれています。木澤(尚文=商2・慶應)とかも投手陣が少ない中で良く投げていますし、ボンバーも1戦目も3戦目も投げられる状態になりました。投手がダメなら野手が打つし、野手がダメなら投手が抑えてくれるし、互いに尊敬し合えるような関係性で進められることで、いろんな試合ができるようになったと思います。

 

大久保:守備面だと、外野手の守備力がすごく上がっているなと感じます。打たれたら困るというところでしっかりと守ってくれていますし、ホームでアウトにしてくれたり、一つ一つのキャッチボールのレベルが上がっているのかなと思います。

 

泉名:外野の力はすごい上がってますね。なかなか外野の守備で魅せる機会って少ないですけど、あそこまで外野で勝っているというのは賜物です。

 

――お二人は学生スタッフというポジションですが、そもそもその仕事とは

泉名:いいチームを作って、かつチームを勝たせることです。勝てるチームを作って勝っただけでは嬉しくないですし、いいチームを作っても負けてしまったらだめですし、いいチームで優勝することが本当に大事だと思っています。その中で、練習メニューをどうするか、相手の対策をどうするかなど、いろいろ考えています。

 

大久保:勝つために何でもやる人みたいな感じですね(笑)。

 

泉名:この質問が一番難しいんですよ(笑)。

 

大久保:一言では難しいですね(笑)。コーチなんですけど、上から選手に教えるとかではなくて、選手と一緒に成長していく感じです。

 

泉名:僕たちが考えてやるという中で、キャプテン的な面もありますし、裏方的な面もあります。一人ひとりと話すこともありますし、全体に話さなきゃいけない時もありますし。

 

大久保:それぞれに学生コーチの形があると思います。それぞれがどうしたら勝てるのかを考えて行動に移していると思います。

 

泉名:やることはそれぞれ違ったりはしますけど、チームを優勝させたいという思いは、学生コーチ全員持っていると思います。

 

――学生コーチとしてベンチに入る際に意識していることや難しさは

泉名:難しさはないですね。本当に勝ちたいという思いでいます。ただ、できるだけ冷静に試合を観るようにはしています。

 

大久保:僕は三塁コーチを任されているので、相手の守備能力を誰よりもよく把握して、一回でも多くホームベースを踏ませるぞという思いでやっています。熱くなりすぎるとアウトにしてしまうので、熱くなり過ぎないようにということは意識しています。

 

――プレーしている選手を見て感じることは

大久保:単純なんですけど、ずっと練習してきたのを見ているので、ここでこいつが打ってくれた、守ってくれた、抑えてくれたというのが本当に嬉しいですね。

 

泉名:基本的には選手と同じ気持ちでいるので、いいプレーしてくれれば嬉しいですし、もちろんエラーしたりとか三振したりした時は同じように悔しいです。どれだけやってきたかを知っている分、本人たちよりも嬉しい気持ちはあるかもしれないです。

 

一塁コーチとして出塁した選手に声をかける泉名

――学生コーチになった経緯は

大久保:僕は、監督にやってみないかと誘っていただいたのが一つです。もう一つは3年の秋までに個人としての結果が出なければ、裏方になって自分にできることがないかなと思っていて、夏のキャンプで腹くくってやって、けどいい方向には転ばなくて、だったら裏方に回ろうと思ったのがきっかけです。学年が上がるにつれて、「選手として活躍したい」という思いに加えて、「このチームで勝ちたい」という思いが強くなってきて、その気持ちもあって転向しました。

 

泉名:僕は2年の初めころに、監督に声を変えていただきました。そのタイミングで転向するのは、なかなか無いことなのですけど、それを受けて学生コーチになりました。

 

――学生コーチに転身した当初に感じた難しさは

大久保:チームのために動くというのが、何をしたらいいのか分からない自分はいました。グラウンドに行って選手の手伝いをして終わり、みたいな感じでいいのかとか、まだできることがあるんじゃないかという葛藤みたいなものはありました。

 

泉名:僕は、この人数を一つの方向に向かせられるかなという不安が大きかったです。人数が多い分、いろんな価値観があって、どうしたら一つの方向に向けるかなということはずっと考えていました。

 

――どのように学生コーチというポジションに慣れていきましたか

泉名:僕は最初はやっぱり葛藤はありました。選手でやりたかったという思いはあったのですが、なって3か月くらいの時に、同期がノックバットとバッティンググローブをサプライズでプレゼントしてくれて、それが本当に嬉しくて、このチームのために尽くそうと思える瞬間でした。

 

大久保:僕は選手としてずっとやってきてもダメだったので、「自分はセンスがないんだな」というふうに思って、だったら自分のできることをやろうと。割とすっきりと転身できました。

 

――学生コーチになって、野球に対する接し方などは変わりましたか

泉名:野球が好きなので、その気持ちはあまり変わらないです。

 

大久保:選手と関わる機会がとても多くなったので、コミュニケーションの難しさとかは感じていて、野球に関するというよりかはチームとしてやっていく中での難しさはすごく感じます。

 

泉名:野球の勉強をすることは増えましたね。選手の時は結構がむしゃらに練習をしていたのですけど、学生コーチになってからは本とかネットとかで勉強をするようになって、どうしたら強くなれるかを常に考えるように変わりました。

 

――学生コーチとして、どういったチーム作りを心がけてきましたか

大久保:勝ち続けられるチームを目指してやってきましたけど、その中でもみんなが今のチームを好きだと感じられるようなチームにしたいなと思ってやってきました。

 

泉名:今年のテーマが「I got family」というテーマでやっていて、家族みたいなチームを作りたいと思ってやってきました。みんなが一つの勝利を同じように喜んで、一つの負けを同じように悔しがって、それもみんなで乗り越えて、全員で全員でという意識を持ってやっています。

 

――そのチームには近づいている実感はありますか

泉名:はい、近づいていると思います。試合が終わった後に僕らと河合の3人でスタンドのメンバーのところに話に行くのですけど、その時のメンバーの表情とかを見ると、一緒に戦ってくれていることを感じますし、本当に勝ちたいんだなということを感じます。ベンチのメンバーもスタンドのメンバーが出られない分、死んでも塁にでようというような思いでやれていると思います。

 

大久保:僕は神宮での練習とかで、控えのメンバーが本当にチームを勝たせようという思いを持ってやってくれているのを見て、みんなで戦えているなということを感じます。

 

得点を左右する三塁コーチを務める大久保

――4年の代はどういった代ですか

泉名:ベンチに出ているメンバーが少ない中で本当よく引っ張っているなと思います。ただ、最初からこうではなくて、上手くいかなかったことの方が多かったと思います。それでも今下級生が「4年をまだ引退させないぞ」みたいに思ってくれているので、それを見ると試合に出なくても一生懸命やってチームを勝たせようとしている姿が下級生に響いているのかなと思います。

 

大久保:本当にそうですね。泉名が全部言ってくれました(笑)。

 

――仲はいいのでしょうか

泉名:いいですね。特に寮にいるメンバーはすごく仲良くて、ずっと一緒にいますね(笑)。

 

――河合主将はどういった人物ですか

泉名:春はプレーで引っ張っていたのですけど、秋はあまり出れていません。それでも河合がベンチにいるという安心感とかがベンチにはあります。常に冷静で、全体を見れているというところは、本当にすごいと思います。

 

大久保:人格者です。キャプテンだからとかではなくて、一人の人間として尊敬できる部分は多いです。

 

――早慶戦は3連覇が懸かった試合になります

大久保:僕は一日でも長くみんなと野球がしたいという思いでいて、一つの勝利にみんなが喜べるチームができてきているので、絶対に勝ちたい、それだけです。

 

泉名:チーム目標のリーグ優勝と早稲田に勝つという二つが懸かっていて、春を超越するというところも懸かってます。本当に僕らの代の真価が問われると言いますか、全てが懸かっている試合だと思うので、絶対に勝ちたいです。

 

――今季の早稲田の印象は

泉名:ピッチャーがいいです。小島(和哉=スポ4・浦和学院)もいて、後ろにもいい左ピッチャーがいて、そこを打ち崩せるかが勝てるかどうかのカギかなと思います。

 

――大学生活最後の早慶戦にもなりますが

大久保:4年間というか野球人生で最後の試合だと思うので、なんとか最高の結果で笑って終わりたいです。

 

泉名:野球人生でやってきたことを全部出し切るという思いでやっていきたいです。

 

――早慶戦で自身の見てほしいところは

大久保:僕らなんか見なくてもいいですよ(笑)。僕らを見るのはめちゃくちゃコアなファンです(笑)。

 

泉名:僕らでいえば気持ちじゃないですかね(笑)。自然と溢れてしまうと思うので。

 

大久保:僕らと同じ思いでいてほしいですね。チームとしては、なかなか簡単なゲームにはならないと思うので、粘って食らいついてというところを見てほしいですね。

 

泉名:慶應らしくというのを意識してきているので、泥臭く相手よりも粘って1点でも多く取る、その姿を見てほしいです。

 

――最後に意気込みを

泉名:絶対勝ちます!

 

大久保:絶対勝ちます!

 

――ありがとうございました!

(取材・重川航太朗)

この取材は10月19日に行ないました。

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