【Last message】己を磨き、仲間と築いた礎/4年生特集「Last message〜4年間の軌跡〜」 No. 32・茅野優希(ソッカー部男子)

ソッカー男子

24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last message~4年間の軌跡~」。第32回となる今回は、ソッカー部(男子)の熱き副将・茅野優希(政4・慶應)。ラストシーズンでは念願の「2部優勝、1部昇格」を成し遂げ、有終の美を飾った慶大ソッカー部。苦しい経験もしながら、最後は副将としてチームに価値を発揮してきた茅野の4年間に迫る。

 

「この景色が見たかった」。関東リーグ最終節、日体大との試合終了のホイッスルが鳴り響き、慶大は関東リーグ2部の頂点を勝ち取った。茅野がピッチ上からスタンドを見上げると、そこには慶應の学生たちや保護者の方々、OBOG、そしてチームの仲間たちの歓喜の表情があった。茅野はこのときの心境を「2部優勝・1部昇格っていう目標を達成できた高揚感と安堵、色々な感情が混ざって涙が出ました」と振り返る。ずっと見たかった景色を自らの手で掴み、強い慶應を取り戻した。

強い慶應を取り戻した

サッカーとの出会いは2歳。父や叔父の影響で自然とボールを蹴るようになり、その姿は写真の中に残っていた。塾高を卒業し、大学では留学を考えていたが、コロナ禍によりその道は諦めざるを得なかったという。新たな選択肢を考える中で、塾高の先輩・柿沼(柿沼亮介:令3卒・慶應)の話を聞き、「厳しい環境に身を置いて成長したい」という思いが強まった。そして憧れの早慶戦でのプレーを目指し、ソッカー部の門を叩いた。

先輩からの助言を受け入部を決めた茅野

2年生までは関東リーグで多くの出場機会を得ていた茅野。しかし、3部降格を喫した入れ替え戦・亜細亜大戦でメンバー外に。浦安の地で泣き崩れる選手たちを、ただ応援席から見届けることしかできなかった。「3部初代王者」を掲げて始動した3年生としてのシーズン。「絶対俺がやってやろう」と、自分を奮い立たせたという。しかし、当時の監督から伝えられたのは「戦力にならない」という言葉だった。この言葉から、自分が描いていた理想と現実のギャップに苦しんだ。結果として3年時は後半からの出場であったが、この挫折は茅野の19年間のサッカー人生のターニングポイントでもあった。

理想と現実のギャップに苦しんだ

サッカー人生の中で最も印象に残る試合として挙げたのは、3年時に2部昇格を果たした青山学院大との入れ替え戦だ。自身のサッカー人生を「17年と2年で分けられる」と語る茅野は、この青学大戦を後者2年の「新しいサッカー人生の1つの正解が見えた試合」と位置づけた。1年間ベンチを温めることの多かった彼が、公式戦で唯一スタメンとしてピッチに立った試合。この試合では、スタメンで出場することのありがたさ、喜びを噛み締めると同時に、「背負って戦う」という感覚を味わった。厳しい日々の中でも組織に自らの価値を見出そうとし続けた茅野にとって、「自分の活躍よりも仲間のために」という新たな原動力や想いを形にすることができたこの試合は、特に印象深いのだろう。

背負って戦うことの重要性に気づく

ラストイヤーを迎えると、茅野は副将に立候補。「1番自分がこの部に価値を発揮できると思って立候補した」と語る。副将としての役割は、自分だけの成長ではなく、チーム全体の成長を促すことにあった。その具体的な行動のひとつとして、自身のトップチームの練習もありながら、最後の1年間、毎週火曜日にBチームの6時半練習にも参加。「Bチームの選手たち全員がどういう顔をしてサッカーをしているのか、どういう風に練習に取り組んでいるのかを見ようと思っていました。それが結果的に全体を良くすることに繋がると信じて行っていました」と口にした。そしてこのような茅野の姿勢が後輩たちにも伝播し、最終的には3年生の選手たちが自ら必要性を感じて、同じようにチームを支える動きを見せるようになった。茅野自ら組織全体の底上げを図り、その姿勢に後輩たちが共鳴した。今後のソッカー部にとっても大切となる、確かな価値を残すことができたことは言うまでもない。

背負うものが増えた茅野

期待する後輩の1人には、弟である茅野直希(新経3・慶應)をあげた。「自分に対してプレッシャーを与え続けてくれた存在」であるという。「俺以上に本当にサッカーが好き。純粋に好きでいれる人って貴重だと思っているので、どういった結果になるにしろ、やっぱりその思いに悔いがないところまでやりきってほしい」。現在は出場機会をあまり得られていないが、幼い頃から同じ環境で一緒にサッカーをしてきた彼の存在が今後チームの中でどう輝いていくのか、大いなる期待を寄せた。

弟への期待も語った茅野

「ソッカー部に入らなかった人生が恐ろしい」と口にするほど、彼にとってこの4年間は人生を大きく変えた時間だった。挫折を乗り越え、誰かのために戦うことを体得し、チームに価値を残した。茅野は引退となるが、仲間と共に築き上げたものが次の世代へとつながり、これからも慶應ソッカー部の礎となることは間違いないだろう。

(記事:愛宕百華)

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