ケイスポバレー班は、4年生の門出と3年生率いる新チームの始動に際して、全3弾にわたる「新旧対談」を企画!最終回・第3弾は「新旧副将対談」。前副将・田鹿陽大アナリスト(法4・慶應)、同じく前副将の芳賀祐介選手(環4・札幌北)、新副将・入来晃徳選手(環3・佐世保南)の対談をお届けします。アナリスト、選手、それぞれの立場でチームを支えてきた前副将の軌跡と、新副将の想いに迫ります。さらに、田鹿アナリストに聞いた芳賀選手・入来選手の強みと、両選手がプレー中に見ている景色とはー。お三方の個性が詰まった対談を、最後までぜひご覧ください!
※この取材は2月13日にオンラインで行われたものです。
お三方について
ーー他己紹介からお願いします!
芳賀→田鹿:法学部法律学科4年、アナリストの田鹿陽大くんです。田鹿くんは4年間一緒に戦った同期の1人で、最後の1年間は一緒に副将をやった人です。アナリストという立場にもがきながら、自分なりに4年間で答えを出してやり切った人なのかなと思っています。僕とか、主将の大昭(=渡邊、商4・慶應)みたいにプレーで引っ張ったり、表現することはできないからこそ、行動で示し続けて引っ張るということができていたと思うので、自分にはない凄さがあって尊敬しています。
田鹿→入来:おはようございます。環境情報学部新4年の入来晃徳副将です。ポジションはOPをやっていて、自分の武器は高さのあるスパイクと力強い…
入来:何か読んでます?(笑)
田鹿:読んでないよ(笑)。高さのあるスパイクと力強いサーブかなと思っています。1年生の頃からちょくちょく試合に出させてもらっていて、3年生の時には通年スタメンとして出場させていただきました。本当に武器は高さかなと思っています。これからも高さを重ねて、高さを追求してやっていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
芳賀:他己紹介っていうのは、他人を自分に憑依させて話すことじゃないからね(笑)。
一同:(笑)
入来→芳賀:環境情報学部4年の芳賀祐介さんで、ポジションはMBです。祐介さんはキャンパスも同じだったので比較的話す方で、いろんなことを教えてもらったかなと思います。去年はブロックとしてめちゃくちゃ助けてもらって、クイックの安定感はすごかったと思います。特に最後の1年は、後輩とたくさん話していてすごいなと。信頼とか意外とあったので…意外とって言葉が悪いですけれど(笑)。陽大さんと祐介の良いところを吸収して、同じような立ち回りをできれば良いのかなと思っています。
ーー印象に残っている思い出はありますか
田鹿:バレーボール以外であんまり関わっていないからね(笑)。強いて言うなら、いつも部内アンケートとかの「ギャップのある人」に入来って書いて投票してるんだよね。やっぱり強面なんだけど、抜けてお茶目な一面があるからね。ヨーグルト食べて「ヨーグルト味がする」って言ってたのがまじで忘れられなくて(笑)。
芳賀:オイコスね。
田鹿:オイコスっていうプロテインが入ったヨーグルトを食べて、「ヨーグルトみたいな味がする」って言ったのがね。そういうお茶目な一面が人をクッと惹きつける、入来の良さなんじゃないかなと勝手に思っています。
入来:その時、晟己さん(=大槻晟己、2024年卒)がいたんだよね。それで「何味か言ってみろ」って言われたから「ヨーグルト味です」って答えたんですよ(笑)。
ーー芳賀選手はいかがですか
芳賀:入来からは「それ?」って思われるかもしれないんですけど、SFC で非常に勉強になる授業を一緒に取っていて(笑)。SFCの中では「先端科目」っていう結構大変な単位の方が4単位取れたのと、喜輝さん(=松本喜輝、2024年卒/現・富士通カワサキレッドスピリッツ)と取ってたやつ。なんだっけ。
田鹿:それ生物のやつじゃないの?
芳賀:そうだ。
田鹿:なんで俺が知ってんだよ(笑)。自主練の時に「クイズきたぞ」ってやってたよね。
芳賀:生物の授業を俺と、喜輝さんと、入来で受けていて、結構いろいろ面白かった記憶が…エピソードはないんですけど。
田鹿:ないんかい(笑)。
芳賀:あと、入来は晟己さんを尊敬していたのかなというイメージがあるかな。晟己さんとご飯行ったりとか、晟己さんが卒業されてからも関わりがあるみたいなので、副将として晟己さんからいろんなものを吸収してほしいなとは思いますね。
ーー入来選手はいかがですか
入来:大3から大4になって、お二人はめちゃくちゃ変わったなとは思いましたね。
田鹿・芳賀:本当に!?
入来:大3の時はガチャガチャしていたというか、熱量だけな感じがしてたんですけど…特に陽大さんとかは(笑)。祐介さんもそうですけど、(4年生になってからは)だいぶ寄り添うというか、後輩と仲良くなっていて。そこは今自分が難しいなと感じているところでもあるので、1年を通してそれは感じていましたね。

学年の壁を超えて、仲が良い姿が印象的だった
ーーお二人は何か意識されていましたか
田鹿:特に意識していたわけではないですけれど、3年生の時が尖すぎていたっていうのがあると思います。良くも悪くも丸くなってしまった結果、そうなったのかなと思います。もっと尖ってた方が良かったですかね。
芳賀:そうとは思わないけどね(笑)。俺もそうだね。今考えると、3年生の時は尖っていたというか、思想が強かったというか。
ーーバレーボールを始めたきっかけと、大学で体育会に入った理由を教えてください
田鹿:これ、芳賀祐介がめっちゃ言いたいやつやん(笑)。
芳賀:言いたくないよ別に(笑)。いろんなところで話してるかもしれないけど、小学校2年生の時からミニバスをやっていたんですけど、母校の羊丘中学校にバスケ部がなくて、その当時から身長が大きかったのでバレーを始めました。特に辞める理由もなく高校でも続けていたら、その時は北海道で一番身長が大きいということでいろんな大学から声をかけてもらって慶應に至ります。運とか偶然に恵まれてここまできたので、大昭とかみたいに“周りの影響で始めた”エピソードが羨ましいなと思いながら、対談とかでいつも話しています。
田鹿:俺が始めたのは中学生(=慶應義塾中等部)の時で、体育館に見学しに行ったら先輩が「楽しいよ」って、親身に寄り添って俺の話を聞いてくれたことがきっかけです。それで行ってみたら、ワンマン(一人でコートを守るレシーブ練習)とかダッシュとかいろんなことを経験させてもらって(笑)。きつかったけどバレーボールって楽しいなと思ったので、高校(=慶應義塾高)でも続けて、その時に降さん(=降小雨、2023年卒)、樋口さん(=樋口太樹、2023年卒)、真古都さん(=高倉真古都、2023年卒)とかカッコ良いなと思っていた人たちが大学の体育会に入ったので、自分もレベルの高いバレーに触れたいなと思って大学バレー部に入りました。あとは高3の夏に、濱本さん(=濱本健人、2022年卒)がアナリストをやってほしいと誘ってくださって、僕はバレーが上手くなかったので、アナリストとしてでも貢献できたらなという思いで大学体育会の門を叩きました。
入来:バレーを始めたのは小3で、始めた理由は本当にしょうもなくて。アップ中にブリッジしているのが面白そうだったっていう…
一同:爆笑
芳賀:やばい(笑)。そんなことある?
田鹿:ごめんごめん。まじで最高(笑)。
入来:ボールを投げることもできないところから始めて、身長は大きい方だったのでいろいろ頑張って、中学校の時も良い指導者に恵まれて、全国区で有名な選手の親みたいな人にいろいろ教えてもらって、いろんな場所で活躍させてもらいました。他のメンバーとは違って、(高校が)進学校だったので高校でバレーを辞めるかもしれないと思っていて。これも祐介さんみたいにご縁で、たまたま九州大会で東福岡高校という強豪相手に自分が少しだけ活躍していたところを福大の先生がたまたま見てくれていて。その方と宗雲健司さんっていう慶應の前総監督の方に繋がりがあって、そこで紹介していただいて、声をかけてもらえるならやろうかなという形で続けています。
芳賀:入来って、お母さんがバレーボールをやられていたとかじゃなかったっけ。
入来:やってたんですけど、小学校とかですぐ辞めちゃっていて。
田鹿:ちゃんとブリッジで入ってるじゃん(笑)。ブリッジ単体で。
入来:そうなんです。ちゃんとブリッジで。しかも、サッカー、野球、剣道、空手をみた後に「痛そう」っていう理由でこれが全部ダメで、その後にブリッジで(笑)。
芳賀:ブリッジが決め手だったんだね。じゃあ(笑)。
ーーブリッジから、ここまできたんですもんね
田鹿:面白い。やっぱり、入来ってすごいんだよな。太刀打ちできないな(笑)。
ーーちなみに、田鹿さんが4年間で見つけた「自分なりの答え」とは
田鹿:分かりやすいところでいくと坊主の話で。(アナリストは)自分のやってきたことが必ずしも結果に出ない立場だと思うので、負けた日の夜に、4年生として、スタッフとしてどうしたらいいんだろうって思っちゃって、気づいたら坊主になっていたというか。結果が出ないというのは、アナリストの一つの特徴ですね。それは裏返せば魅力でもあるかなと思っていて、自分のエゴかもしれないですけれど「実は裏でやってますよ」みたいな感じ。後ろで手のひらの上で相手を操っている感は表のプレーヤーとは一味違う魅力なのかなというふうに思います。あとは、シンプルに話術が巧みになったり、頭も使うし、話も上手くなるし、俺ができていたか分からないけど人を見る力もつくのかなと思うので。選手をやっているだけでは得られなかった力が得られるのも、アナリストの魅力なのかなと思いますね。数字とかデータとかそういうのに行きがちなところだけど、実際はそこではなくて。いかに熱量を持ってやるのか、信頼を築くかとか、「本質は冷静さの対極にある情熱の部分だった」みたいなことが、一つの答えかなと信じてやってきました。

ベンチに入り、チームを支える田鹿アナ
ーーコートに立つお二人から見て、田鹿さんはどんな存在ですか
田鹿:教えてよ(笑)。
入来:陽大さんは本とかを読んでいたり、アナリストノートとかも書いていて、4年になって「指示」というよりも「一緒に戦ってくれている感」がより出て、だからみんなついて行ったのかなと思います。結構、話し方が変わったりするじゃないですか。陽大さん見ながら自分もいろいろ考えなきゃなとか、糧にする部分はありました。
田鹿:本当に?本当だったらめちゃめちゃ嬉しい。ありがとう。
入来:本当ですよ(笑)。
芳賀:まずアナリストというか、田鹿くんなしに勝てない試合もあったなというのはよく話していて、いつもは明治にけちょんけちょんにやられる慶應なんですけど、4年の春の明治戦とかは戦術がはまってセットが取れそうなところまで行ったりだとか、結局負けちゃったんですけど。特に僕とかは1年の頃からアナリストのいうことは絶対だと思ってやってきているので、それを実行できているかは別にして、本当に助けになるというか。ブロックがあまり上手くないので、リードブロックの各ローテのコツとかを参考にしていました。アナリストの言葉をどれくらい取り入れるかは人それぞれなところもありますけれど、その中で自分の持ってきたデータとか考えを伝えるために努力していた印象があります。
ーーアナリストの田鹿さんから見た、入来選手と芳賀選手の強みは
田鹿:入来はやっぱ高さだよな。絶対的に。だって今何センチあるの?
入来:348(センチ)になりました。
一同:拍手
田鹿:やっぱ入来は高さだよね。そこにパワーが乗ってきたら手つけられない選手だなと思うから、高さとパワー。これだけ極めて。守備はできなくてもしょうがないやってくらい点を取れる選手になれば、正直OPという性質上良いんじゃないかなと思います。あと意外とね、スキルもあるんだよね。これがまた(笑)。意外と「うわ。そこでブロック出しするか」みたいな繊細さを持ち合わせているすごい選手なんだよね。高さ×パワー×繊細さね。やっぱ入来はすごいね。

コートサイドから見る入来選手のスパイクは圧巻
ーー芳賀選手の強みは
田鹿:祐介はね、やっぱり高さだよねー。
一同:(笑)
田鹿:やっぱり高さがあると手つけられないじゃん。コミットブロックっていう囲いに行くブロックが来ても、その上からクイックを打てちゃうみたいな。かつ3年の終わりくらいからはしっかり打ち分けもするようになって、クロスかと思えば逆にも打てる。上で選択肢が多い選手だなと思います。高さだけじゃなくて、コートが見えているところもあると思います。あとはブロックですよね。星谷さん(=星谷健太朗監督)がMBの指導者だったということもありますし、日本代表で知見を得て、卒論でも研究したりしてブロックにはこだわりを持っているから、そういう意味では4年の秋リーグとかは助かったなと思っています。芳賀の強さは、高さのあるクイックとブロック、上での選択肢ですよね。弱みを挙げたらキリがないから、挙げないけれど(笑)。強いところを伸ばしていって貰えればと思います。

1枚でブロックを決める芳賀選手
ーー芳賀選手は、卒論でどんな研究をされたんですか
芳賀:ブロックの熟達者と準熟達者、上手い人と、熟達者に比べたら上手くない人がリードブロックの時にどこを見ているかという卒論を書きました。結論として、準熟達者はボールを見てる傾向があるという結論が出て、熟達者はスパイカーの助走の入り方とか、セッターとか、ボール以外の情報を見ているという感じです。先行研究でも、バスケとかアメフトとかサッカーでもそういう特徴があるらしいです。
田鹿:スペシャリストやん。
ーーちなみに「2mの世界を見てみたい」という声もよく聞きますが、実際プレーしている時はどのような感覚ですか
芳賀:ボヤーっとコートが見えていて、ボヤーっとブロックがどう出ているか見えていて。打ち分けるという言い方は僕にとって難易度の高い言葉だけど、選択している感じかな。鮮明にコートが見えていて打ち込んでいるというよりも、ボヤーっと見えていて。上から打っているというイメージもあんまりなくて…それこそ入来くんにも聞いてみたい。
入来:ほとんど一緒ですね。ボヤーっと見えていて、今まではコース打ち分けることもなくバコバコと力強い球を高いところで打つという印象だったんですけど、今年はOPとして制限のある中で打たなければいけなくて、ブロックはボヤーっと見えるくらいにはなったかなと思います。でもブロックが見えるというより、強い球を打てて、自分が思いっきり跳べる感触があったら大体決まるかなという感じですね。
田鹿:なんか、みんな感覚派だね。
入来:逆になんかありますか?跳べるジャンプ、ハマる時みたいな。
芳賀:MBとサイドで違うかもだけど、フルジャンプできるのは前提みたいな感じかな。トスに合わせて飛ぶから。もちろん失敗する時もあるけれど、できるだけ高く跳んで選ぶ。合わせるのはもう前提だったから、逆に入来の言葉を聞いてすごいなと思ったのは、自分が100%の全力でジャンプできたら絶対決まるわけでしょ。
入来:そうですね、そしたらブロックもある程度見えるようになるので。感覚が良いと大体決まるかなと思います。
田鹿:面白いな。
芳賀:この春は、入来のスパイクを楽しみにしたいなと思います(笑)。

早大相手にも高さで打ち勝つ
昨シーズンの振り返りと「関東1部」の舞台について
ーー昨シーズンを振り返って
田鹿:坊主にしたくらいだからね。本当におかしなシーズンだよね。でも総じて言うならば、いろんなおかしなことはあったけれど楽しかったなと思います。先輩たちのおかげで春は1部でプレーすることができたし、2部は俺のバレー史上最も苦しい経験だったなと思うけど、今振り返るとすごくいろんなことを考えていたし、いろんなことをやっていたし、休む暇もなかったし、仲間たちと過ごした時間はすごい楽しかったなと思います。

データを元に選手と話し合う田鹿アナ
ーー分析の中でも、やはり1部と2部の違いを感じますか
田鹿:全く違う。1部は詰むんだよね。データ上で詰むんですよ(笑)。トスも配分がフラットだったり、全く隙がないチーム。アナリストが決められるのはサーブとブロックが軸なんだけど、サーブでどこを狙っても崩れないなとか、狙った後にどこに上げるかも何も変化がないなというのが1部の印象で。2部はそこに偏りがあるから、すごい楽っちゃ楽だったというのはアナリストとして1部と2部の差で感じるところです。
ーー芳賀選手と入来選手は、昨シーズンを振り返っていかがですか
芳賀:陽大の言った通り楽しかったというのもそうですけど、過去の4年生の偉大さを思い知った1年だったなと思っています。1年生、2年生の頃はがむしゃらにやっていたし、3年生の時もさっき言ってたみたいに尖っていたというか思想が強かった中で、思い返してみると過去の先輩方って凄かったんだなと思います。そうなれていたか分からないですけれど、ちょっとは偉大さも痛感しながら広く物事を考えてできたと思うので、自分も少しは楽しめたし、成長できたかなと思います。
入来:カッコつけて言うと、人の想いをちゃんと感じられる1年だったのかなと思います。これまでスタメンでやらせてもらったこともなくて、これまでは自分もチャランポランでやってきていた方の人間なので。今まではいろんな人に助けてもらいながらも、それに対して恩を感じられていなかった、感受性が薄かったのかなと思っています。この1年はまがりなりにもOPとしてやらせてもらって、最後に球が上がってきた時に自分が決めて、ベンチとか仲間とかがめちゃくちゃ喜んでいるのを見て、自分がこれまで筋トレとか、自主練とかして貯めてきたものがそこで一気に爆発するみたいな感じで。「いろんな人の想いを背負いながらやれた」というのはものすごく良い経験でしたし、楽しかったなとは思います。ただ、やっぱり結果が出せていないという事実は頭の中に残っているので、楽しくもありながら苦しくもあった1年だったのかなと思いますね。

楽しくも、苦しくもあった1年間
ーー昨シーズンの中で一番印象に残っている試合は
芳賀:僕は東日本の早稲田戦か、早慶戦だね。東日本の早稲田戦は、星谷さんもいなかったというのもあって、自分たちだけで裁量権を持ってやって、フルセットで最後の最後まで追い詰めて負けちゃった試合だから。大体苦しい時とか、そういう時間が試合の中にはあるんですけど、その時の東日本の時だけは試合中ずっと楽しい記憶しかなくて「ずっと笑ってたねー」って2個下の山口くん(=山口快人、経2・慶應)とかと話していて、それがやっぱり去年1年間でもそうですし、自分の中ではバレー人生の中では印象的な試合でしたね。あとはやっぱり最後の早慶戦で、すごい恵まれた環境でやらせてもらっていたし、1年で1回、4回しか出れないので印象的だったなと思っています。
ーー早慶戦では、最終セットの大接戦の中でサーブ順が回ってきましたが
芳賀:3セット目だよね。「これで早慶戦でサーブ打つの最後かも」って突然俯瞰しちゃって、感慨深いというか、もしかしたらこれで終わりなのかあと思ったらすごい不思議だったなという記憶がありますね。映像を見たらめちゃくちゃガチガチだったとかはあるかもしれないですけれど、プレッシャーよりも楽しくて。その時も笑ってた記憶がありますね。

大接戦の中サーブを打つ芳賀選手
ーー田鹿さんと入来選手は印象に残っている試合はありますか
田鹿:やっぱり勝った試合が印象深くて、春だと専修戦で、秋だと山梨学院戦がすごい思い出深いなと思っています。どっちもフルセットだし、手に汗握る展開からやっと掴んだ1勝みたいなのがすごい痺れて。特に梨学戦なんて坊主にした後の試合だったから、入替戦以外で勝って初めて涙が出た試合だったので、梨学戦は俺のバレー史上でも記憶に残る試合だったかなと思いますね。
入来:一番最後の全カレの早稲田戦の2セット目。精神的信頼のある大昭さんがいなくなった中で、克弥さん(=内田克弥、環4)とか祐介さんとかはいたんですけど、OPとして自分が点を決めるという部門においては大昭さんの次くらいに重要な役割ではあったので。なかなか上手くいかない中でも、2セット目はかなり追いついたんですよね。結構いいところまで行って、いつもだったらミスしてた1点をなんとか自分で決められて。その過程にも誰かがレシーブしてくれて、タッチをとってくれてみたいなのがあって、今まではただのスパイクだったんですけど、その時初めて「繋がってきた1点」というのを感じてめちゃくちゃ印象に残っています。

春リーグ専大戦の勝利の瞬間
ーーお三方にとって「関東1部」とは
田鹿:最高の舞台だよね。あそこは。2部にいたこともあるから分かるんですけど、規模も違うし、みんなが懸けている熱量も違うから、体育館に入った瞬間ビビビってくるというか。2部はただの体育館って感じだけど、1部は戦場なんだよね。「ここでやるのか、俺」みたいな。言葉にはできないんですけど身体の全細胞がたぎるというか、そういう最高の舞台ですよね。一挙手一投足に沸く観客もいて。一番「たぎる」がいい言葉だと思いますね。たぎってんだよなあの場所は(笑)。
芳賀:本当に陽大の言ってくれたことに尽きるんだけど、観客とか箱の規模もそうだし、1部でしか会えない、戦えない敵とか、春高のスタープレーヤーとかはやっぱり1部にいるし。熱量とかも、僕らもそうだし2部で頑張っている大学もありますけど、やっぱり1部は完成度も熱量も違くて、その中でもぎ取った1点とか、シャットしたブロックとか、決まったスパイクは本当に価値があるなと思っています。必死に練習した中で1部の1点、決まった1点とかは思い出にも残っているし、ただの1点じゃなかったなと思う。2部と1部に同じくらいいたからこそ、最高の舞台であり、なかなか立てない憧れの舞台でもあったかなと思います。
入来:1部の舞台は下級生にとってはめちゃくちゃ挑戦の舞台だと思っていて、自分も下級生の頃にたまに出させていただいていた中で、スター選手相手に決めるとめちゃくちゃ嬉しいですし、高さも、盛り上がりも2部とは全然違うので。でも上級生になってみて、もし今1部に自分がいたらめちゃくちゃきつい舞台だなと。4年生は勝たせる、結果を出すというのが仕事という捉え方をされると思うので、背負うものがより重くなった舞台なのかなと思います。新チームが始まってから練習試合とかもやっていますけれど、勝たせられないと責任も感じますし、4年生の辛さは徐々に分かってきた気もするので。1部と2部というのもそうですけど、学年によって捉え方が違ったりするのかなみたいなことも思いますね。
副将について
ーー入来選手は副将になられて3ヶ月ほど経ちましたが
入来:大昭さんも、陽大さんも、祐介さんも、みんな人望があって、プレー以外の魅力があって引っ張ることができていたと思うんですけど、今の自分にはプレーしかないと思っています。それ以外の武器で戦う方法を自分なりに模索しているんですけど、その中で難しさは感じていて、例えば先ほど言った陽大さんの話術みたいに人を引き込む話のうまさもなければ、祐介さんみたいに後輩に寄り添うとか、そういう姿勢を自分はあまり持ち合わせていない方なので、人を導くという点で難しさは感じています。

OPとしてチームを牽引する入来選手
ーー入来選手はどんな副将になりたいですか
入来:晟己さん(=大槻晟己、2023年度副将)も、去年の3人も、誰とでも仲良くなれて情熱を持っていない人にも火をつけられるとか、魅力のある人なので。自分も情熱があまりない中で引っ張り上げてもらった一人ですし、誰かを助けられる人間になりたいなとは思うんですけど…難しいですね(笑)。本当に人望とかそこらへんの問題だと思いますね。晟己さんは清風高校で積み上げてきた、重みとか、威厳とかが段違いなので、そこに辿り着けることはないのかなと思うんですけど、自分は身長とジャンプ力という武器が代わりにあるので、なんとかチームを引っ張っていけたらなとは思いますけれど、まだまだ始まったばかりで悩んでいるところなので、この1年なんとか頑張ってみようかなとは思います。
ーー田鹿さんと芳賀選手は、入来選手にこう頑張ってほしいなという思いはありますか
芳賀:自分が去年副将だったということは取っ払ってフラットな感じで言うと、一生懸命バレーボールをするとか基本的なことは4年生として当たり前というか、役職あるなしとかに関わらずやるべきところだと思っていて、そうじゃなくて副将だからできることとか、+αのことをやってもらえたら良いなと思います。入来ならそれができると思ってみんな選んでいるし、俺らも応援しているから、そこは頑張ってほしいなと思っています。
田鹿:入来。さっきも自分で言っていたと思うけど、「プレーしかない」というところで、俺は逆にそれが羨ましい。アナリストだった身からするとプレーで見せられるっていうのは、最大の説得力で、最高の武器かなと思います。ただ、試合だけじゃないんだよねプレーって。プレーって意外と広くて、練習だったり、トレーニングも然り、日頃の言動も然りってところが広義のプレーに含まれていると、俺は思うから。「自分、しっかりやってます。だからついてこい」っていうのが“プレーで見せる”スタイルかなと思うので、そこをしっかりやってほしいなというふうに思います。あとは誰かに憧れない。憧れるのをやめましょう(笑)。過去には偉大な主将・副将の方々もたくさんいらっしゃると思うけど、そういう人にはなれないから。「入来晃徳になれ」じゃないけど、あと1年しかないと言いつつも、あと1年もあると思って自分なりの副将像を見つけてほしいなと思います。自分にないところは他のメンバー、康生(=新主将・山元康生、法3・慶應)だったり、一木(=一木脩平、法3・慶應)が補ってくれると思うので、プレーで見せられるのは自分にしかないスキルだと思ってそこを極めてください。
ーーちなみに、新チームの状態としてはいかがですか
田鹿:気になるね。スプラウトキャンプ観に行くよ!
入来:比較的キャッチは返るようになりましたね。今年は守備的なチームになっていて、練習試合でも国士舘のAチームになんとか勝てたりしていて、良い感じにハマりつつはあります。ただ、パスが返るってことでクイックが生命線になると思うんですけど、そこが確実じゃない。フェイントとかで決まっている点数もあるので、1部で決まるかどうかはまた話が変わってきたり、2部にはレシーブで足が動く選手も多いのでその中で決まるか不透明性があって厳しいところではあるんですけど、4年生の偉大さが自分の中では大きかったので、OH(=内田克弥)とMB(=芳賀祐介)とOP(=渡邊大昭)の3人が抜けてどうなるんだろうなとは思っていたんですけど、意外とうまくいっているのではないかなと思っていますね。でもモチベーションの部分で難しさはあって、4年生が自分一人しかスタメンに入らないのは事実としてはあるので、そういったところで危機感を持たせるチーム運営をするのは自分たちの仕事かなと思っています。

新チームでは入来選手が中心に
お三方の「これまで」と「これから」
ーー田鹿さんと芳賀選手は、卒業後もバレーボールを続けられますか
芳賀:僕は就職先の企業でやろうと思っているので、週1回くらい健康維持も兼ねつつお世話になった先輩方とやろうかなとは思っています。
田鹿:僕も極力やれたらやりたいですね。思い返せば、バレーボールに触っている時が一番笑顔だったなという結論に至ったので。だから、最近笑顔少ないです(笑)。今日もバレーの話ができて嬉しい。っていうくらいバレーが活力だったので、やりたいです。あとは違う方面からバレーに関われたら嬉しいので、そこも期待ですね。
ーー最後に、一言ずつお願いします!
田鹿:まずは2024年度のチーム渡邊を応援してくれたサポーターの方、三田バレーボールクラブの先輩方、保護者の方々、本当に応援してくれてありがとうございました。結果という形で示せなかったことはすごく残念でしたがなんとか走り切ることができたので、皆さんの応援、支援のおかげだなというふうに素直に思っています。残された後輩たちは、1部に上げることができなかった、勝たせることも数少なかったということについては、申し訳ない思いでいっぱいです。僕たちのことは気にしなくて良いけれど、気持ち的には1部に上がってくれたら嬉しいですし、目の前の試合を一つでも多く勝利という形で飾ってくれたら一先輩としてすごく嬉しいなと思っています。なので極力、試合の結果はしっかり見て、試合の内容に思いを馳せながら一人でニヤニヤしたいと思いますので、ぜひ頑張ってください。応援してます。最後にアナリストの後輩へ。選手からの信頼というところが一番何よりも大事ということはずっと説いてきていると思うので、そこをぶらさずにしっかりやってこ!
芳賀:今すごくハッとしたんだけど、僕とか陽大とか引退した人にフォーカスされることはこの対談が最後かもしれないので、まず感謝を述べようかなと思っています。素晴らしいなと。
田鹿:やばい忘れてた。その通りだな。
芳賀:直接会って感謝を述べる機会はあるかもしれないけど、こういう場ではないと思うから、ありがとうございます。北海道に帰ったりした時に、旧友たちから「なんか祐介、人間的に成長したね」って言われることが多くて、それはやっぱりこの4年間でいろんな経験をさせてくれた慶應のバレー部の関係者の皆さんだったりのおかげだなと思うので。応援してくれる人がいるからこそ、自分たちはこうやって苦しい時も一生懸命乗り越えられたかなと思うので「この4年間お世話になりました」というのを伝えておきます。ありがとうございました。後輩には、自分が引退するまでにあと何日で、早慶戦とか、全カレとか、春リーグ、秋リーグがいろんなことがあと何回あるかというのを常に念頭に置いて、考えながら後悔しないようにやってほしいなと思っています。学年ごとに違う大変さというのがあると思っていて、4年生だったらチームを引っ張るとか、勝たせる苦しさがあると思うし、1年生だったら無力感とかもあると思いますけれど、その日、その瞬間は今しか味あわえないから後悔しないでほしい。いろんな苦しいこととか大変なこともあると思うけど、めげずに向き合って頑張ってほしいなというのが、今4年間やり切った者からのメッセージなので。後悔のないように、今を楽しんでください。
入来:「1部復帰」という目標を掲げている中で、それを細分化すると、日大に勝つとか、梨学に勝つとか、いろいろあると思います。この一つ一つのチームにしっかり技術で打ち勝つチームになっていきたいなというのがあります。サーブとかブロックとか各々の課題がありますけれど、他のチームに勝てるだけの能力とかはあると思うので。自分たちの課題とか、活かしきれていない能力にしっかり向き合える1年にしたいなと思います。そうすれば自ずと1部復帰は見えてくると思います。あと、自分が掲げているのは早慶戦で勝ってみたいなというのがあって。10年とか勝ててないですよね。それで黄金世代に勝てたら、めっちゃ気持ち良いんだろうなって思うから、また俺たちの代で実現できたら良いなと思いますね。自分の課題に対して何が足りないのかを細分化していければ、大きな結果を残すことも夢ではないと思うので、このマインドを貫き通す1年にみんなでしていけたらいいのではないかと思います。

2024年は第3セットで30−32まで早大を追い詰めた
田鹿:次早慶戦勝ったら、柳田さん(=柳田将洋、2015年卒/東京グレートベアーズ)の次だからね。2014年以来だからね。
入来:やばいっすよ(笑)。
田鹿:次は入来だよ(笑)。柳田ー入来ライン。これ見たいね。
入来:一気に落ちるなあ全てが(笑)。今まで結果としては残ってなかったかもしれないけど、精神みたいなものはずっと残っているので。着々と積み上げてきたものを、受け継がれてきたものを、たまたま自分たちがラインを超えて発表する代になれればいいかなと思います。
ーー早慶戦も楽しみにしております!貴重なお話をありがとうございました。
新旧対談企画は以上となります。最後まで読んでくださった皆さま、ありがとうございます!そして4年生の皆さん、改めてご卒業おめでとうございます。益々のご活躍をお祈り申し上げます。
(取材:長掛真依)