【What is ○○部?】自分を自由に表現できる“唯一のスポーツ”/File.23 スケート部フィギュア部門

その他競技

慶大の体育会を深掘りしていく新企画、「What is ○○部?」。第23回はスケート部フィギュア部門!今回ケイスポは、三井不動産アイスパーク船橋で行われた氷上練習を取材した。大学の部活動としては珍しいフィギュア部門と、競技の魅力に迫る。また“初心者から世界選手権出場選手まで”多様なスケート歴を持つ、主将・瀧沢匡平選手(商4・筑波大附属)、主務・大谷理麗花選手(薬4・広島女学院)、畠山空選手(商3・相模原中等教育)、大上絵梨果選手(環2・大妻中野)、近藤麻由選手(経2・慶應女子)の5選手のインタビューをお届けする。

 

フィギュアスケートは大学からでも始められる!?

スケート部フィギュアスケート部門は、男子7名、女子16名の計23名(2025年2月時点)で活動している。主として個人競技であるためにフィギュアスケート部を設置している大学は少なく、慶大においても唯一の公認団体だという。そのため、一見「経験者揃いで敷居の高い部活」というイメージを抱きやすいが、実は初心者が4割ほどを締めており、主将を務める瀧沢匡平選手も大学からフィギュアスケートを始めた部員の一人だ。初心者から、10年以上の競技歴を持つ選手や世界選手権で活躍する選手まで、幅広い競技歴の部員が在籍する。現在は、四大学定期戦での団体優勝と全日本インカレ出場を目標に活動をしている。

和気藹々とした雰囲気で練習が行われた

大学から始めた選手の声

瀧沢(スケート歴3年):「体育会として競技にしっかり向き合いつつ、いろんなレベル感の子がいる」というところがうちの魅力であり特徴です。レベル感が違うけれどお互い高め合える、励まし合えるというところが魅力かなと思います!

ポーズの確認をする瀧沢選手

畠山(スケート歴2年):他の大学であったら、経験者しか入れないという制約があったりするとは思いますけど、慶應のフィギュアスケート部は僕みたいな初心者から本当にトップレベルで活躍するような級の人までいっぱいいて、そういう人たちと一緒に氷の上に乗って刺激をもらえて、アドバイスをもらえるのがすごい良い環境だなと思っています。

経験者の声

大谷(スケート歴14年):初心者の子達のための練習も用意してあるので、安心して練習してもらえる環境が整っている部活だと思います!「上級者は下級者をみる」という慣わしみたいなものがあるので、下級者は教えてもらわないと分からないことも多いからこそ、1年生の上級者が4年生の下級者に教えるということもあります。だからこそ話しやすくて、温かい雰囲気で練習できますし、氷から出ても学年問わずみんなしょうもない話もできるので、すごくアットホームな部活かなと思います

上級者としてチームを支える大谷選手(右)

近藤(スケート歴11年):フィギュアは個人競技で部活として活動する大学は結構珍しいと思いますけれど、慶應は毎週部練をやっていて、週1回トレーニングもしているので、同期とか先輩方とかともすごく仲良くなれるし、お互いに指導し合えるので、お互いを高め合える部ではないかなと思っています。

大上(スケート歴12年):ずっとシンクロをやっていて、自分に足りないスキルはシングルのスキルかなと思って、大学のフィギュアスケート部に入ることを決めました。シングルはずっと個人スポーツで「一人」だと思っていましたけれど、部活に入ってみて、一人の競技なのにサポートがすごくて一体感があるなと感じました。

 

練習について

部としての練習は、火曜日と土曜日の週2回。火曜日には氷上練習、土曜日にはフィギュアスケートに必要な体幹を鍛える筋トレ、ストレッチ、ラダーなどの陸上トレーニングを行っている。氷上練習の場所は、主に三井不動産アイスパーク船橋、KOSÈ新横浜スケートセンター、明治神宮外苑アイススケート場。フィギュアスケートはコンディションや感覚の維持が難しいスポーツであり、部員たちは週2回の部練に加えて各自で朝練と夜練を行っている。中には、競技を始めた日から毎日練習に励む選手もいるほど、スケート中心の生活を送っている。

三井不動産アイスパーク船橋での氷上練習

フィギュアスケートの魅力

フィギュアスケートの魅力は、なんといっても「自分を自由に表現できる」ことだ。選手たちは、そのシーズンで「表現したいテーマ」に基づいて選曲を行う。フィギュアスケートにおいては、平衡感覚や体幹はもちろん、氷の上で“足の裏”を繊細に感じ取って滑る基本のスケーティングが重要になる。さらに、氷上を滑っている自分の姿や表現を俯瞰し、必要に応じて修正を加えることで演技に磨きがかかる。また、大谷選手は「プログラムを観れば、『練習してきたんだろうな』というのがやっている人には分かるんですよね。ちょっとした部分で、これってすごい練習している人しかできない技だなとか、技と技の間のジャンプのスケーティングとかでも、この人ってすごい練習してきたんだろうなというのが分かって、その人のスケート人生を感じ取れるのですごく良いです。あとはすごい綺麗なので「美」として、芸術作品としてとても私はすごい大好きです。綺麗な演技をしている人を見るとすごい心がはあーってお風呂に入った気分みたいになります」と語ってくれた。

 

気になる質問

ーーフィギュアスケートを始めたきっかけは

瀧沢:僕は大学から始めた、すごく珍しい人ですけれども。小さい頃から結構フィギュアスケートを見ていて、自分がやることにも憧れがあって興味がありました。まさかやれるとは思っていなくて、中高は陸上の走り幅跳びとか、ハードルとかをずっとやっていた人でした。ただいつの間にか、氷上で跳ぶようになっていました(笑)。

畠山高校生の時まではずっとサッカーをやっていたので、今までずっとチームスポーツをやっていたのですけれども、大学に入って最後に本気でスポーツに機会だと思うので、どうしても個人競技を一度やってみたいというのがあって、小さい頃家の近くでリンクがあってそこで滑っていたのを思い出して、最後にフィギュアスケートをやってみようかなと思ってこの部に入りました。

大谷:すごくありきたりですけれど、オリンピックで浅田真央ちゃんを観て、それで「やりたい!」って母に土下座をしたらしいです。幼稚園生が「お願いします!」って言うくらいやりたかったみたいです。それから毎日ずっとスケートをしていて…(笑)。大学を卒業したら競技を終えるので、あと1年頑張りたいです。

近藤:小学校の受験が終わった後に母がスポーツをやらせたいと言ってくれて、冬に設置される赤坂の屋外リンクに行った時に滑っていたらすごく楽しくて、「やりたい!」と言って小学校1年生の時に始めました。

スケート歴11年の近藤選手

大上:家族の転勤でアメリカに行った時に、「Haydenettes」というシンクロナイズドスケーティングチームの演技を見て、魅了されて始めました。

ーージャンプはどれくらいで跳べるようになるんですか?

瀧沢:例えばシングルジャンプは…僕はすごい早かったんですけど3ヶ月くらいで跳べていたかな。半年くらいでアクセルっていう1回転半のジャンプを跳べていて、ダブルが跳べるようになるには1年くらいかかったかなというイメージです。

ーー衣装にもこだわられていますよね

瀧沢:僕は、OBの先輩の衣装をお借りすることが多いです。結構あれ高いんですよ(笑)。すごい高くて十何万みたいなこともあるので、僕は買えないので…買っている人もいますよもちろん(笑)。

大谷:私はオーダーメイドで衣装を作ってくださる方がいらっしゃって、「この曲をこういう衣装で」「肩はこういうデザインで」というイメージを考えて、それをお伝えして実際に完成するという感じなんですけれど、私はそれがスケートを好きな理由の一つでもあります。可愛い衣装というか綺麗な衣装を自分の好きなように着られて、その衣装を着て滑れるというのが好きなので、オーダーメイドです。お値段は、もう全然可愛くないんですけれど(笑)。オーダーメイドで作っています。

ーーフィギュアスケートの難しい部分は

瀧沢:いろんなことが難しいですけれども、僕はスピンがすごく苦手です。スピンというのは継続して練習するとできるようになるんです。だから、単純に自分の歴がまだ3〜4年と浅いので、スピンが苦手で難しいです。

大谷:練習を毎日しなければいけないのでスケート中心の生活になってしまうので、大学生から見ればキツイかな。周りは遊んでいるけれど、朝と夜(練習)があるから行けないなとかもたくさんあるのでそこが厳しいのと、体重管理とかも300g増えただけで全然違うので体重管理も大変ですし、あとは怪我もしやすいので、そこが一番難しいかなと思います。それこそ今、私は疲労骨折をしてしまっていて、去年の全日本の2〜3週間前に疲労骨折をしてしまってスケート靴が履けなくなってから半年くらい経ちますけれど、疲労骨折って歩けるんですよ。歩くことは痛くなくて、練習もやれちゃうんですよ。だけどやっちゃうとひどくなってという繰り返しで、半年間経っているので、それがキツイなという感じです。

毎日練習を欠かさない大谷選手

ーーちなみにリンクによって氷の質などに違いはありますか

大谷:全然違います!だから自分に合う合わないもあるので、試合会場の氷が合えば「やったー!」ってなるし、合わなかったら「ついてないな…」みたいな。滑り具合とかが違うんですよ。氷上に乗ったら感覚で分かります。

ーー大事にしていること、ご自身の注目ポイントは

瀧沢体幹とかもそうですし、自分が明らかに伸びたなという瞬間は「基本のスケーティング」を大切にし始めた時だなと思います。直接曲掛けとかもあると思いますけれど、エッジに乗るとか地道な基礎練習があるんですね、円をなぞってスケーティングする練習だとか、そういうものの積み重ねをしていくことで徐々にステップアップしていけるのかなと思います。得意な技は、ダブルループですかね。それが跳べるジャンプでは、一番得意だと思います。

大谷:とにかくいろんなことがあって、苦しいこともありますけれど常にスケートが好きという気持ちを大切にしながら前を向いて向上心を持ってやるように心がけています。得意な技はレイバックスピンですね。スピンが得意で好きなのと、イナバウアーとかですかね。私は結構ジャンプよりもスピンとかスケーティングの方が好きなタイプなので。

畠山:入部した当初はすごいジャンプが苦手でスケーティングに重きを置いた練習をしていたのですけれども、最近はようやくジャンプの練習を始めて、それが最近得意になってきたなと感じています。

ジャンプを跳ぶ畠山選手

近藤:本当に私はめちゃくちゃジャンプが好きなんですけれども、ジャンプでうまく降りられた時は本当に達成感がすごくて「気持ち良い!」ってなります。試合の時は広いリンクで一人で滑れますし、綺麗な衣装を着て、自分の好きな曲に合わせて踊るのはなかなかないことだと思うので。360度どこを見てもお客様がいらっしゃるような環境で、それは他のスポーツにはない魅力だと感じていて、踊るのが本当に楽しいです。

大上:私は、曲にこだわっています。絶対に自分が好きな曲で滑ることと、自分自身を最大限に表現できる曲を選んでいます。注目は、ステップシークエンスとかスパイラルです。

ーーちなみに、お客さんの顔は見えているんですか

近藤:フラットなところとかだと全員見えます!あとコーチの顔とかはすごい見てます(笑)。

ーー大上選手は「世界シンクロナイズドスケーティング選手権大会 2025」にも出場されていますが、シンクロとシングルの違いは

大上:目標を持って頑張るのは同じだと思いますけれど、部活とかシングルでは同じ時間に試合をすることはないので応援し合える、刺激を与え合えるのが魅力だなと思います。シンクロだとチームとして仲良くするところもあれば、スポットの争いとかもあるので、また違う刺激があるかなと思います。

練習でも表現力が光る大上選手

 

昨季を振り返って

瀧沢個人としては、今年の1月に全日本インカレがあって3、4級男子部門で準優勝することができて、表彰台という目標は達成できました。振り返ると、就職活動などとの両立がすごく忙しかったですけれども、その中でもしっかり時間を見つけて朝練6時、7時とか、夜とかも上手く滑れたので何とか両立できた1年だと思います。

大谷:大学3年生ということもあって練習にすごい打ち込める時期で、夏休みとか長期休みは朝練、昼練、夜練、毎日5〜6時間くらい練習してきていたのですが、目標にしていた大会の直前に疲労骨折をしてしまって、「もはや、やってきた意味はあったのかな」というくらいの結果になってしまって、その試合の後は頑張った分落ち込んでしまって立ち直れなかったんですけれど、試合から1ヶ月くらいしたら、もう残り1年ですしもう一回できるところまでやってみようという感じで今やり始めている感じですね。

畠山:どうしても怪我に悩まされちゃうことが多かったので、まずは怪我をしないで次の1年間をやり切ることが1番の目標です。

スケート歴3年目を迎える畠山選手の演技に注目

近藤:昨シーズンは自分にとってすごく成長できた1年だったなと思っています。シーズン前半は大学に入ってまだ間もないこともあって、緊張してうまくできない試合も多かったんですけれど、最後の2試合はすごい自分の納得いく演技ができて、全部ジャンプを揃えることができて、最後の1個前の試合で全部を揃えられたからこそ後の自信に繋がって、最後の試合も楽しんでより良い演技ができたと思っているので、自信を得られた1年だったと思います。

大上:部活に入る前は受験もありましたので体型を戻すのに苦労したところもありましたけれど、結果的にレギュラーメンバーとして世界選手権に出場することができたのですごく良かったです。

世界選手権に出場した大上選手

「世界シンクロナイズドスケーティング選手権大会 2025」

大上選手の所属するJingu Ice Messengersは、ショートプログラム 第10位 56.63点、フリースケーティング 第9位 123.44点、総合 第9位 180.07点(20組エントリー)。

 

今季の目標について

瀧沢:自分は今年すごい「情熱」とかを表現したくて、タンゴという演目を踊っていたりするんですけれど、自分がこのシーズンで何を表現したいのかみたいなところを踏まえて、曲を決めて、自分自身で身体を使って表現できるのが一番の魅力かなと思います。

大谷:小学校1年生からやってきたフィギュアスケートが幕を閉じるということで、とにかく悔いがない、これまでフィギュアスケートを続けてきて良かったなと一番最後に思えるような演技を、ノーミスとかじゃなくても良いので、滑り切った後に「幸せだったな」と思える演技ができる練習を積んでいきたいなと思っています。家族、コーチ、友達もそうですし、本当にたくさんの人に支えられながらこの17年間スケートを続けてこられたと思うので、その方々への感謝を忘れずに、私の演技でその恩をお伝えできれば良いなと思ってやっています。

畠山:普段、陸の上で歩くのとは違って、何もしなくても進んだり転んだりするので、氷の上で自由に動けるようになること、まずは怪我をしないで次の1年間をやり切ることが自分の1番の目標です。

近藤:今はショートとフリーができる最高レベルの一個手前の級にいて、その最高レベルに行くには3回転2種類を降りなければいけないので、3回転を取得できたらと思っています。

大上:今年1年は結構初めてでドタバタだったので、しっかり落ち着いて表現していきたいです!

笑顔が印象的な近藤選手

【新入生の皆さんへ】

瀧沢:フィギュアスケートというものは自分を最大限表現できる唯一のスポーツだと思っているので、大学生活を、この4年間を捧げるに値する素敵なスポーツだと思うので、ぜひ入部をお待ちしています!

畠山:フィギュアスケートってすごい難しいスポーツという印象があると思いますが、それこそ慶應スケート部の良いところは初心者から経験者まで幅広くいるところだと思っているので、ちょっとでも氷に乗ってみたいなという気持ちがあったらぜひ気軽にきてほしいなと思います!

チームを温かく牽引する瀧沢主将

(取材・記事:長掛真依、取材:林佑真)

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