4月の開幕戦以来白星から遠ざかっている慶大は、5連敗という状況のなかで東洋大と対戦。25分、FKのチャンスを得ると、主将・田中雄大(商4・成城学園/三菱養和SCユース)の放ったボールがゴール前に転がる。するとリーグ戦初出場初スタメンの斎藤大雅(文3・立命館宇治/京都サンガF.C.U-18)がこれを押し込み先制。最高の形で先制点を奪った。しかし、38分、45+2分と立て続けに得点を奪われると試合は東洋大ペースへ傾く。なんとしてでも得点をあげたい慶大は63分、満を持してスピードスター・齋藤真之介(経4・桜修館/FC町田ゼルビアユース)を投入。必死の思いで攻撃を続け、迎えた82分。齋藤真の完璧なクロスを立石宗悟 (法4・桐蔭学園)が頭で押し込み同点。土壇場で試合を振り出しに戻す。1ヶ月ぶりの勝ち点3を狙う慶大は90+7分、リーグ戦初出場の石田航大(政3・慶應/ブリオベッカ浦安U-18)がペナルティエリア付近でFKのチャンスを得る。この日最後のチャンスを任されたのは荒鷲の心臓・角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース)。角田の放ったボールは相手GKの頭を超え、誰にも触られることなくゴールネットを揺らした。角田の劇的弾で見事逆転。連敗トンネルをなんとか脱出し、目標とする「一部優勝、全国制覇」へようやく光が差し込んだ。
2025/5/17(土)14:00キックオフ@東洋大学朝霞グラウンド
【スコア】
慶應義塾大学3ー2東洋大学
【得点者】
25分 慶大 斎藤大雅
38分 東洋大 福原陽向
45+2分 東洋大 宮本新
82分 慶大 立石宗悟(齋藤真之介)
90+7分 慶大 角田惠風
【慶大出場選手】 | |
ポジション | 背番号 選手名(学部学年・出身高校) |
GK | 1 洪潤太(政4・東京朝鮮中高級学校/三菱養和SCユース) |
DF | 2 三浦成貴(商3・浜松開誠館) |
| → 63分 26 藤平一寿(法4・桐蔭学園) |
| 3 五十嵐宥哉(商4・清水東) |
| 4 斎藤大雅(文3・立命館宇治/京都サンガF.C.U-18) |
| 23 宮地正大(政3・市川/ブリオベッカ浦安 U-18) |
MF | 8 田中雄大(商4・成城学園/三菱養和SCユース) |
| 10 角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース) |
| 11 立石宗悟 (法4・桐蔭学園) |
| 13 三浦大其(経2・慶應) |
| → 63分 7 齋藤真之介(経4・桜修館/FC町田ゼルビアユース) |
| 17 辻野悠河(商4・暁星国際) |
| → 66分 18 石田航大(政3・慶應/ブリオベッカ浦安U-18) |
FW | 9 柳瀬文矢(法4・駒大高) |
前節・国士舘大戦では5失点の大敗を喫し、5連敗中という状況のなか迎えた今節は、昨年の全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)での優勝経験を持つ東洋大と対戦。宮地正大(政3・市川/ブリオベッカ浦安 U-18)がリーグ戦初出場初スタメン、三浦大其(経2・慶應)も2年生ながらリーグ戦初スタメンを飾るなどフレッシュなメンバーで今節を迎えた。

リーグ戦初出場の宮地
試合は早々から流動的な展開になる。6分、9分といきなりCKのピンチを迎えるも無失点に抑える。12分には主将・田中雄大(商4・成城学園/三菱養和SCユース)がFW・柳瀬文矢(法4・駒大高)にスルーパスを送り、絶好のチャンスを作り出すも、これはオフサイドの判定で得点には繋がらない。14分、主将・田中がシュートブロックでピンチを防ぐも、もう一度押し込まれ、あわや失点かと思われたが、ボールはポストに弾かれ、失点は免れる。19分にもペナルティエリア付近でFKのチャンスを与えるなど、序盤はピンチが続く。

主将の田中が攻撃を生み出す
25分、ピッチ中央でFKのチャンスを得ると、精密機械・田中の放ったボールは綺麗にゴール前に飛ぶ。一度は相手GKに弾かれるも、リーグ戦初出場初スタメンの斎藤大雅(文3・立命館宇治/京都サンガF.C.U-18)がこれを押し込み先制。最高の形で先制点を奪った。その後は三浦成貴(商3・浜松開誠館)や五十嵐宥哉(商4・清水東)らが中心となってゴールを守り抜く。

デビュー戦で初ゴールの斎藤雅
しかし、37分CKからピンチを作り出すと、ミドルシュートを打ち込まれる。一度はGK・洪潤太(政4・東京朝鮮中高級学校/三菱養和SCユース)が防ぐも、弾いたボールを押し込まれ、同点とされる。勝ち越したい慶大は43分、田中がシュートを打ち込むも相手GKの正面に飛び、なかなか得点を奪えない。するとその直後の45+1分、またもGK・洪のこぼれ球を押し込まれ、逆転。1-2で前半を折り返した。

気持ちを切り替えて後半へ
後半開始直後の49分、いきなりサイドから攻め込まれるとCKのピンチを作り出してしまう。ここは総和で防ぎ、51分、田中のスルーパスに立石宗悟 (法4・桐蔭学園)が合わせて打ち込むもこれは惜しくも弾かれ、得点には至らなかった。その後もピンチが続くも先制点を決めた斎藤雅らを中心にゴールを守る。63分、三浦大に代えて齋藤真之介(経4・桜修館/FC町田ゼルビアユース)を、全試合出場中の三浦成に代えて昨年6月の産能大戦以来約1年ぶりのリーグ戦出場となる藤平一寿(法4・桐蔭学園)を投入。また66分には辻野悠河(商4・暁星国際)に代えて、リーグ戦初出場の石田航大(政3・慶應/ブリオベッカ浦安U-18)を送る。

宮地とそろって初出場の石田
慶大屈指のチャンスメイカー・齋藤真の投入もあり、試合の流れは徐々に慶大へと傾き始める。74分、ここも田中から右サイドの立石へボールを送る。立石は中央後方の藤平へボールを渡すと、藤平はもう一度立石へ送り返す。そのまま立石がゴール手前までボールを運ぶも惜しくも得点とはならなかった。また76分には左サイドの齋藤真から中央のFW・柳瀬へスルーパスを送るも、これはまたもやオフサイドで決定機を作り切れない。

齋藤真の登場で流れは慶大へ
それでも攻撃をあきらめない慶大は81分、齋藤真のクロスを中央の柳瀬が合わせるも、これも上手く噛み合わず。しかし、完全に流れに乗っている慶大は82分、またも左サイドの齋藤真からクロスが放たれると、ボールは中央やや右寄りにいた立石の方向へ完璧な弾道で飛んでいく。最高の形で飛んできたクロスボールを最後は立石がしっかりと頭で押し込み同点。土壇場で試合を振り出しに戻した。

立石の見事なゴールで同点
その後も立石や柳瀬、田中、藤平などが積極的にゴールを狙うも、なかなかチャンスを決め切れない。90+3分、絶体絶命のピンチが訪れるも、ここは守護神・洪が素晴らしいビックセーブで大事なゴールを守り抜く。もう試合も終了かと思われた90+6分、初出場の石田がペナルティエリア付近でFKのチャンスを得る。この試合最後のチャンスにGKの洪も攻撃に加わり、慶大応援サイドは雨の中この日最大の声援量に。ここでFKを任されたのは荒鷲の心臓・角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース)。ここで決めれば1カ月ぶりの勝利という期待感から、会場は一気に緊張に包まれる。角田の放ったボールは相手GKの頭を超え、誰に触れられることなく、ゴールネットを揺らす。90+7分。最後の最後に副将の劇的弾で見事逆転。4月から続いていた連敗を5で止め、ようやく2つ目の白星を掴んだ。

角田の劇的弾で逆転勝ち

チームを勝たせるのがエースの役目だ
試合前に降っていた雨も気づけば、歓喜の涙に変わっていた今節。慶大の「超攻撃」がようやく火を吹き、厳しい表情を続けていた首脳陣にも笑顔が見られた。前期リーグも残すところ3節となった現在、まずは残りの3試合を3連勝で片づけ、5年ぶりの早慶戦勝利へ弾みをつけてほしい。下田で『若き血』を、もう一度。

最後は笑顔に包まれた
(記事:塩田隆貴 取材:長掛真依、塩田隆貴、髙木謙、川﨑眞)
【選手インタビュー】
◇田中雄大(商4・成城学園/三菱養和SCユース)

主将として攻撃を引っ張った田中
ーーここまで5連敗している中、どういった気持ちで今日の試合に臨んだか
サッカーの戦術的なところではなくて、とにかく勝ちたいという気持ちを前面に押し出そうというのを試合前に話させてもらって、結果的に先制できたので、各々が持つこの試合に勝ちたいという思いが、結果的にいいゲームに繋がったと思います。
ーー5連敗を脱した今の率直な感想
連敗中、毎試合どこかで、この試合一つ勝てれば絶対ここから波に乗っていけるからまず一つ勝っていこう、という話は毎試合していました。やっとここで勝てたので、ここから波に乗っていきたいです。
ーー1点目、田中選手のFKからゴールに繋がった。他の選手とどういった話をして、FKに挑んだか
練習時からいつも蹴るポイントだったりを確認して、とにかくキーパーに向かって速いボールに対して突っ込んでほしいというところは、練習中だったり試合前に伝えているので、結果的には相手のミス絡みでの得点でしたけど、そういった心掛けがゴールにつながったと思います。
ーー前半、先制した中で1対2で逆転されて、後半は追いかける展開に。前半と後半で心情の変化は
前半逆転された時は、「またか」という気持ちは選手全員あったと思いますが、1失点しても2失点しても、決してぶれずに自分たちのやるべきことを徹底しながら後半に入れたので、結果的に最後の最後、劇的な形で逆転できました。とにかく例え失点しようとぶれずに自分のやることをやる、というところを90分間最後まで貫けたかなと思います。
ーー次節・流経大戦への意気込みをお願いします。
もうとにかく勝つだけなので、勢いに乗っていきたいです。今日は勝てたものの、まだまだ自分たちの弱さや課題点があるので、それを改善しながら、勢いそのままに次も勝てればなと思います。
◇角田惠風(商4・慶應/横浜F・マリノスユース)

伝説的なFKでチームを救った角田
ーー今節への意気込み
雨っていうコンディションのなかで、いつも掲げている攻撃的なサッカーっていうのは、立ち上がりからできなかったですけど、勝ちに対する貪欲さが、戦う気持ちが、出てる選手出てない選手含めて表現しようという気持ちで臨んでいたので、それが勝ちに繋がったかなと思います。
ーー自身の劇的弾で連敗を脱出。今の率直な気持ちは
率直に「チームを勝たせるのがエースの仕事」だと思ってるので、それがやっと達成できてよかったっていう気持ちです。安心してます(笑)。
ーー前半と後半で攻撃に変化はあったか
試合が全体的にオープンな展開で、攻めたり守ったりっていう中で、敵のスライドが間に合って無かったので、味方のウィングにどんどんボールを渡して、攻撃していこうっていうのは話し合っていたので、その通りウィングから攻め立てて、2点目は左サイドの真之介からのクロスでしたし、狙い持った攻撃が出来たかなと思います。
ーー3点目のゴールを振り返って
FK貰った時に、変にクロスするよりは直接狙っちゃおうっていうところで、中の選手に「ファーのサイドネットに狙って蹴るからそっちに詰めてくれ」って話して、まぁいい感じに入っちゃいました笑。
ーーFKは普段からどういった練習を
FKってボールスピードが早ければ早いほどGKが反応しづらいので。自分はボールを縦に落とす練習をしてて。壁を横から避けるよりも、壁を上から越した方が時間早いじゃないですか。縦にボールを落とす練習っていうのをいつもしてます。今日は練習通りのゴールでした。
――次節への意気込み
ほんとにこっからなので。5連敗取り返さないと意味ないので、連勝できるように、前期残り全部勝てるように、明日から全員でいい準備したいなと思います。
◇立石宗悟(法4・桐蔭学園)

積極的な攻撃参加で同点弾を放った立石
――1分を挟んで5連敗という中、どんな想いで臨んだか
開幕戦以来なかなか勝てていない中で、どうにかして勝ち点を取ろうという気持ちで、スタメンだけじゃなくてベンチのメンバーも含めて全員で勝つという気持ちで臨みました。
――試合内容を振り返って
先制して良い形で試合に入った後、立て続けに2失点して苦しい展開になりましたけれど、しっかりと諦めずに全員で最後勝ち切ることができて良かったなと思います。
――前半は相手にポゼッションを握られる時間が長かった中で、後半どう立て直したか
前半に関してはピッチコンディションが悪くて自分たちのやりたいサッカーができなかったけれど、後半は芝も乾いてきて「やれるな」という自信もあったので、みんなでそこは自信を持って臨みました。
――この「1勝」をどう捉えているか
本当にとにかく勝ちが欲しかったので、何がなんでも勝つという気持ちで戦って勝てたので、この勝利を機に良い流れに乗っていきたいなと思っています。
――2点目のゴールシーンを振り返って
アシストは結構していたんですけど点は取れていなかったので、なんとしてでも点を取りたいという気持ちで臨みました。しんの(=齋藤真之介、桜修館中等教育 / FC町田ゼルビアユース)が本当に良いパスを出してくれたので、あとは決めるだけでした。
――ご自身のプレーを振り返って
試合の入りは苦労しましたけれど、試合時間が経つにつれてしっかりゲームに入ることができて、点も取ることができたので良かったと思います。
――これから勝ち続けるために必要だと思う部分は
自分たちは一回失点してしまうと相手に流れを握られてしまうことが多いので、失点しても自分たちは大丈夫という自信を持って冷静に試合を進められたらいいなと思います。
――次戦、流通経済大戦への意気込み
なんとしてでも勝ちたいという想いがあるので、勝ち点3を取れるようにチーム全員で準備して、絶対勝ってここから流れに乗っていきたいと思います。
◇斎藤大雅(文3・立命館宇治/京都サンガF.C.U-18)

鮮烈なデビューを果たした斎藤雅
――リーグ戦初出場初スタメンだったが、どのような気持ちで試合に望んだか
チームが勝てていない中で、まず何が何でもチームを勝たせるという思いがありました。
――セットプレーからもぎ取った1点目の感触は
相手のゴールキーパーが弾いたボールが偶然自分の目の前に転がってきたという形だったので、気持ちが生んだゴールだったと思います。
――前半終了間際に逆転されたが、後半も守備でチームの逆転勝利を繋ぎ止めた。どんな意識でプレーをしていたか
リードされた状況で、これ以上の失点は許されないという意識でプレーしていました。ただ、今のチームはセンターバックである自分が攻撃の起点にならなければならないため、そういった部分ではまだまだ改善の余地があると思います。
――次戦・流経大戦に向けて
「勝って兜の緒を締めよ」という言葉通り、しっかり反省点を踏まえて良い準備をしていきたいです。
◇藤平一寿(法4・桐蔭学園)

1年ぶりのリーグ戦も、ブランクを感じさせなかった藤平
――今期初出場となった中、後半からの途中出場。どういった意識、またどういった目的を持って試合に臨んだか
自分と交代した成貴(=三浦)は守備的な選手で、一方自分は攻撃的な選手なので、だからこそ自分が投入される意味をとにかく意識しました。さらに負けている状況だったので、とにかく攻撃的に前にいくことを意識して、前でイレギュラーを起こすってところをまちさん(=中町監督)はよく言っているので、そういうところを意識して頑張りました。
――ベンチから試合を見ていて、ビハインドの場面での起用に、どういった気持ちでピッチに立ったか
先制点決められて、なかなか勝ててない試合が続いている中で、自分が試合に絡めてない現状もあったので、自分が勝たせるという強い思いを持って試合に臨みました。
今後、早慶戦や、自分たちの目標である一部優勝に向けて、まだまだ足りないところもありますが、気持ちで1番負けちゃいけないと思っています。他の大学はプロ目指してる選手やスポーツ推薦の選手がいる中で、自分たちよりクオリティも高いですが、気持ちで負けていては流れを持ってくることもできないと思いました。技術云々より、まずは試合に絶対勝つという強い気持ちで試合を臨みました。
――昨年1部リーグで強さを発揮した東洋大学と実際に戦ってみて、東洋に対する手応えを感じた部分は
手応えについては、正直そこまで長い時間出ていないので、何が通用するかは掴みきれなかった部分もありますが、自分の走力や身体能力を生かして、自分だからこそ届くようなところへ届かせたり、無理を効かせる点は東洋にも通用する部分かなと思いました。